企業業績のここに注目!-企業業績は底入れ

2016 年 10 月 19 日
第 78 号
企業業績のここに注目!-企業業績は底入れ
大和住銀投信投資顧問
部長
経済調査部
門司 総一郎
4-9 月期の決算発表が近づいてきました。今年度の為替前提を 105 円程度に設定している企業が多く、
その修正が予想されるため、企業の業績見通しは下方修正との見方が多いようですが、自分は逆に今
回の決算発表で、業績の底入れムードが高まると見ています。今回は企業業績について考えます。
証券会社のアナリストの業績見通しに基づく 2016 年度の日本の予想増益率は(EPS、MSCI 日本株ベー
ス)は 8 月の 9.2%から 9 月の 10.3%に上方修正されました。今年に入って 2 月、5 月など上方修正され
た月はありますが、これらはいずれも前年の業績見通しが下方修正された影響が大きかったと思われ
ます (前年の EPS を下方修正、翌年を据え置けば業績の伸び率は上方修正されます)。実質的な上方修
正は今回が初めてといってよいでしょう。
予想増益率の推移( 前年比、E PS)
リビジ ョ ン・インデ ック ス( 月次、社)
15年度
300
16年度
1月
14.5%
9.7%
2月
5.6%
10.6%
3月
5.6%
6.4%
4月
5.5%
2.7%
5月
-0.8%
16.4%
6月
-2.8%
14.8%
7月
-
8月
-
9月
-
出所:Thomson Reuters、大和証券、MSCIベース
200
100
0
-100
リビジョン
3ヵ月移動平均
10.7% -200
9.2% -300
2011年
10.3%
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
出所:Thomson Reuters、MSCIベース
リビジョン・インデックス(アナリストが業績見通しを上方修正した企業数から下方修正した企業数
を差し引いたもの)の推移を見ると、7 月には▲258 社まで低下しましたが、9 月は▲60 社に持ち直し
ました。リビジョン・インデックスはマイナスなので、下方修正が多いことに変わりはありません。
しかし、上方修正が増え下方修正が減り始めたことは、業績が持ち直し始めた可能性を示していると
考えられます。
日本経済新聞の報道にも、業績の持ち直しを示すものが目立ちます。10 月 15 日の同紙によれば、三
菱ケミカルホールディングスや DOWA ホールディングスの 4-9 月期利益は前年同期比 2 ケタ減益ながら
も会社予想対比で上振れが見込めるとのことでした。これは会社予想に比べての上振れですが、アナ
リスト予想との比較でも同じと思われます。
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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市場のここに注目!
2016 年 10 月 19 日
三菱ケミカルの業績上振れの理由には石油化学製品の市況が想定より堅調だったこと、また DOWA の
場合は亜鉛市況が好調だったことが挙げられています。いずれもその企業固有の要因というよりは他
企業にも共通する要因です。世界経済が思ったよりよかったと言い替えることもできるでしょう。
年初の段階では内外経済に様々なリスクが指摘されていました。新興国の通貨や経済、原油安、円
高などです。加えて 6 月の英国の欧州連合(EU)離脱も世界経済への不安を掻き立てました。こうした
中、企業やアナリストの業績見通しは下振れリスクにバイアスがかかった、極めて慎重なものになっ
たと思います。
7 月から 8 月にかけて発表された 4-6 月の決算においてはアナリスト予想を上回る企業の方が多数で
した。にもかかわらず予想増益率の下方修正が続いたのは、当時為替レートが 1 ドル=100 円に達して
おり、「円高はまだまだ続き、業績は悪くなる」と多くのアナリストが考えたためでしょう。しかし、
実際の展開は全く違ったものでした。
新興国の景気や通貨は持ち直し、原油価格は大幅反発しました。円高は 1 ドル=100 円を前に足踏み
しており、ポンド安を受けて大陸からの買い物客が増加したことにより英景気はむしろ好調です。こ
のように前提条件が下振れでなく、上振れしてしまったことが業績上振れの背景にあります。
以上を踏まえて、10 月末から 11 月にかけての決算発表後に、アナリストは業績見通しの上方修正を
迫られると見ています。見通しにかなり弱気バイアスがかかっていると思われるため、上方修正余地
は大きいと考えてよいでしょう。
現在の日本株は底堅いながらもカタリスト不足で一進一退の動きですが、決算発表に連れて、業績
は底打ちとの見方が広がり、日経平均は 17000 円を超えて上昇すると予想しています。
以上
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