情 報 報 告

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シカゴ
●米国環境産業動向
○連邦控訴裁判所、クリーンパワー計画の実施延期を求める申し立てを却下
1 月 21 日、ワシントン DC の連邦控訴裁判所は、米国内 27 の州と産業団体が、オバマ政権によるク
リーンパワー計画の実施を、法的異議申し立てが解決されるまでの間、延期するように求めていた訴え
を退けた。これで、環境保護庁(EPA)は、裁判が行われている間でもクリーンパワー計画の実施を進
めることができる。既存発電所からの排出量削減を義務付けるクリーンパワー計画は、気候変動枠組条
約締結国会議(COP21)のパリ協定で合意した米国の排出量削減目標を達成するために必要不可欠だと
考えられているが、共和党が支配的な州や化石燃料関係の産業団体は、実施の遅延を図って数度に渡っ
て申し立てを繰り返している。クリーンパワー計画は、既存の発電所からの二酸化炭素排出量を 2030
年までに 2005 年よりも 32%削減し、代替エネルギー発電の開発をさらに促進することを目指している。
○米国の景気回復とともに世界の炭素市場の取引高が 9%増加
炭素市場への注目が沈静化する中で、2015 年の世界の炭素市場の取引高は前年比 9%増加して 528 億
ドルに達したことが、トムソン・ロイター社から 1 月 11 日に報告された。この成長は、北米市場にお
ける排出権価格の値上がりが主な理由であり、2015 年の北米市場の排出権の取引量は 4 億 7,200 万ト
ンから 10 億 420 万トンへ前年比で 121%増加し、取引金額では実に 220%増の 115 億 9,000 万ドルと
なった。北米市場は今や取引量で世界の 17%、取引金額では 22%を占める。米国で炭素市場が成長し
た最大の理由は、カリフォルニアとケベックの炭素取引市場『西部気候イニシアティブ(Western
Climate Initiative)』が、排出権取引の対象を輸送燃料排出量にまで拡大したことである。また、中
国の炭素市場が 2017 年に開始されると取引規模は一段と拡大すると予想される。
○米国の産業施設からの 2014 年の有害化学物質放出量、前年比で 6%減
米国の産業施設で 2014 年に廃棄やその他の手段で放出された有毒化学物質量(鉛、水銀、ダイオキ
シン等)は、2013 年よりも 6%減少したことが環境保護庁(EPA)から 1 月 19 日に報告された。とり
わけ大気への放出量は、前年比で 4%減、2003 年比で 55%減少して 5 億 7,300 万ポンドとなり、発電
所のエネルギー源が石炭から他のエネルギーに移行したことや、石炭火力発電所の制御テクノロジーが
整備されて塩酸などの放出量が大幅に減少したことが主な理由である。大気への放出量が放出量全体
(大気、土壌、河川や海、その他)に占める割合も、2003 年の 36%から 2014 年には 19%へと減少し
ており、一方で土壌への放出量は 2003 年の 48%から 2014 年には 65%へと増加した。
○ニューヨーク州、2020 年までに石炭火力発電所を完全撤廃
ニューヨーク州のクオモ知事は、2020 年までに州内の石炭火力発電を完全撤廃する計画を 1 月 13 日
に発表した。既にイギリスとカナダのアルバータ州が同様の声明を発表しているが、ニューヨーク州は
さらに野心的な目標となる。クオモ知事は、ニューヨーク州の排出量を 2030 年までに 40%、2050 年
までに 80%削減すること、および同州の使用電力の 50%を 2030 年までに再生可能エネルギーから賄う
ことを誓っている。目標を達成するために、環境保護基金(Environment Protection Fund)へ 3 億ド
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ルを拠出し、2020 年までに太陽パネルを 15 万枚、風力タービンを 300 基増やす計画である。また、ニ
ューヨーク州の公益事業委員会は、州内の再生可能エネルギー電力を支援するために、10 年間で 50 億
ドル拠出するクリーンエネルギー基金を 1 月 22 日に承認した。クオモ知事は、シェール層のフラッキ
ング(水圧破砕)も禁止しており、気候変動への取り組みで全米的に注目されている。
○石炭採掘リース制度の見直しのため、公有地における新採掘権リースの発行を一時停止
内務省は、国有地における石炭採掘活動が米国のエネルギーニーズを満たしつつ国民への恩恵と環境
への影響の両面で適切であるか確認するために、連邦石炭採掘リース制度の包括的な見直しを行うこと
を 1 月 15 日に発表した。これは、オバマ大統領が 1 月 12 日の一般教書演説で示した化石燃料からクリ
ーンエネルギーへの移行を推進する政策の一環である。米国の石炭の 40%以上が国有地で採掘されてお
り、ワイオミングを中心にコロラド、ニューメキシコ、ユタ州に広がっている。同制度の見直しは、
1970 年代と 1980 年代に実施されて以来 30 年以上振りであり、新規の石炭採掘権リースの発行は、見
直しが完了するまで最大で 3 年間停止される可能性がある。
○米国 2 位の石炭会社アーチ・コールズ社が破産
長引く石炭業界の不況の中で 45 億ドルの負債を負う米国第 2 位の石炭採掘会社アーチ・コール
(Arch Coal)社が、破産法第 11 条による破産保護申請を 1 月 11 日に提出した。同社は、2011 年にイ
ンターナショナル・コール・グループを 34 億ドルで買収した財政負担や、石炭価格の急激な下落、中
国からの需要減少、天然ガスとの競争といった問題に悩んでいた。アーチ・コール社は、国内外に顧客
を持ち、ワイオミング州の生産効率の良いパウダーリバー盆地から石炭の 84%を産出してたが、アパラ
チア中央部の不振が業績全体への打撃となった。米国では、中小企業を中心に 50 社以上の石炭会社の
破産が相次いでおり、破産した石炭会社は全体で米国石炭の 25%以上を支えていたという。
○カリフォルニア州の太陽電力ネットメータリング制度、僅差で存続決定
カリフォルニア公益事業委員会は、2 年間の審議の末、住宅の太陽パネルで発電した余剰電力を電力
会社が小売価格で買い取るネットメータリング制度を継続することを、1 月 28 日に僅差で決定した。
過去 5 年間で住宅用太陽発電システムの設置費用が 40%も下落したのに伴い、ますます多くの太陽電力
が送電網に取り込まれているが、太陽発電システム利用者の電力費が圧縮される分だけ一般顧客が負担
しなければならない送電網の維持費用は大きくなる。現在のところ、ネットメータリング制度はほとん
どの州で法律によって認められているが、制度の廃止か大幅な改革を求める電力会社の声は大きくなっ
ており、ネバダ州では 12 月にネットメータリング制度の変更を承認している。
○エネルギー省、全米のグリッド近代化計画に 2 億 2,000 万ドル拠出
エネルギー省は、東海岸から西海岸まで全米にまたがるグリッド近代化プロジェクト 88 件に 3 年間
で総額 2 億 2,000 万ドルを拠出する計画を 1 月 22 日に発表した。14 の国立研究所と 100 以上の企業、
電力事業者、研究機関、州政府等が協力して、ルーフソーラーパネル、エネルギー貯蔵システム、スマ
ートビル、電力会社の管理ソフトなどを統合し、米国の送電網の信頼性を高めつつ、効率的かつ継続的
に再生可能エネルギーを可能な限り大量にグリッド(送電網)に取り込むことを目的としている。顧客
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が所有する機器と電力会社が管理するテクノロジーが絡み合う複雑なものであるうえに、サイバーアタ
ックや極端な荒天にも耐える必要がある。プロジェクトは、アラスカの遠隔マイクログリッドから、バ
ーモントやハワイの再生可能エネルギー統合、カリフォルニアやニューヨークのエネルギー州規制の見
直しと多様である。このうちテキサス、シカゴ、ボストン、ホノルルなどでは、『サンショット
(SunShot)イニシアティブ』の一環として、太陽光電力を夜間や曇天時のために貯蔵する総額 1,800
万ドルのプロジェクト 6 件が行われ、1 年以上の現場実証が含まれる予定である。
○連邦政府がフォルクスワーゲン社を提訴、カリフォルニア州は修理リコール案を却下
連邦政府は、フォルクスワーゲン社が違法な排出量制御装置を 60 万台近いディーゼルエンジン車に
搭載した件で 1 月 4 日にデトロイト連邦裁判所に提訴した。同社は既に事実を認めており、問題のディ
ーゼルエンジン車は、米国の基準よりも最高で 40 倍も多くの汚染物質を排出していたのにも関わらず、
クリーン自動車に対する連邦税額控除を受けていた。また、カリフォルニア州の大気資源委員会は、排
出量違法ソフトを搭載した 2 リットル式ディーゼル車をリコールして修理するというフォルクスワーゲ
ン社の提案を、技術的評価に関する情報が不足しており、自動車の性能や排出量と安全性への総体的な
影響に十分に対応していないという理由で 1 月 13 日に却下した。これにより、排出基準に違反した何
十万台という自動車をフォルクスワーゲン社が買い戻さなくてはならない可能性が高まった。
○NASA、商業飛行機の燃費を半減する新テクノロジーを開発
NASA は、商業飛行機が現在よりも燃料使用量を 50%、大気汚染を 75%、騒音を約 8 分の 1 に削減
することが可能な一連の新テクノロジーを開発したことを 1 月 4 日に発表した。2009 年から官民合わ
せて 4 億 5,000 万ドルを投資した NASA の『ERA(Environmentally Responsible Aviation:環境的責
任航空)』プロジェクトで開発された一連の新テクノロジーによって、米国の航空業界は 2025 年から
2050 年の 25 年間で 2,250 億ドルの運転費用を節約できると試算される。具体的には、飛行機の垂直安
定板の表面に空気を噴出す埋め込みノズルによって尾部を小型化し軽量化するテクノロジーや、モーフ
ィング翼によってフラップを途切れ無く滑らかに広げることができるテクノロジーなどである。
○デュポン社と ADM 社、バイオ由来の 100%再生可能ポリマーを開発
化学薬品大手のデュポン社と穀物メジャーのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)社が、
フルクトース(果糖)から、バイオベース化学物質や樹脂の基礎となるフランジカルボン酸メチルエス
テル(FDME)を生成する新しい手法を開発したことが 1 月 19 日に発表された。FDME はフランジカ
ルボン酸の一種であり、包装、繊維、プラスティック工学など幅広い業界で高性能な再生可能素材とし
て利用される。長年にわたって研究されていたが、商業規模で安価に生産される方法は未だ実用化され
ておらず、この新テクノロジーは効率性と工程の単純性から画期的と言える。FDEM を利用したポリ
マーとしては、ボトルや飲料容器向けの 100%再生可能でリサイクル可能なフラジンカルボン酸ポリト
リメチレン(PTF)が開発中であり、気体遮断性が高いため製品の保存期間を長くすることができる。
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○EPA、住宅のラドン濃度検査を推奨
ラドンは、土壌や岩石に含まれるラジウムから生成され、土壌中より気圧が低い屋内に吸引されて侵
入する。米国では、年間約 21,000 人がラドンを原因とする肺ガンによって死亡すると推定されるが、
環境保護庁(EPA)は、国民に住宅のラドン濃度を検査するよう 1 月 11 日に呼びかけた。冬季は窓や
戸を閉め切って室内で過ごす時間が多くなるため、検査の実施に最適だという。オンラインやホームセ
ンターで入手できるラドン濃度検査キットを利用するほか、州のラドン関連制度を調べ、ラドンの進入
を防ぐ住宅の購入や建設業者を雇うことなどを推奨している。EPA は、住宅都市開発省(HUD)、保
健社会福祉省(HHS)等と共に、2015 年 11 月に国家ラドン行動計画を開始している。
○2014 年に LEED 認証されたビル面積が多かった州トップ 10
1 月 26 日、米国グリーンビル評議会(USGBC)は、2014 年に LEED(Leadership in Energy and
Environmental Design)認証を受けた州民 1 人当たりのビルの床面積が大きな州のトップ 10 を発表し
た。2014 年の特色としては、既存ビルの運営管理に対しての LEED 認証が全体の 48%と最大になった
ことが挙げられる。新規ビルの設計建設に対してが 46%が認証を取得し、残りは内装の設計建設による
認証であった。2014 年に認証された 1 人当り LEED 床面積が最も広かったのはイリノイ州で、174 件
のビルが認証され、1 人当り 3.31 平方フィートとなり、2 年連続の 1 位となった。2 位はコロラド州、
イリノイ州とともに 2010 年以来 5 年間連続でベスト 10 入りしている。次いでメリーランド州、バー
ジニア州、マサチューセッツ州、ハワイ州、カリフォルニア州が続いた。2014 年には 10 州合わせて
1,662 件のプロジェクトが LEED に認証され、世界全体では 4,502 件が認証された。
○病院からの排出物による水質汚染を調査する新プロジェクト
水質研究基金(Water Research Foundation)は、病院や医療施設から排出される汚染物質への懸念
に取り組む新しいプロジェクト『病院排出物の現状と水中の懸念汚染物質(Hospital Discharge
Practices and Contaminants of Emerging Concern in Water)』の発足を 1 月 5 日に発表した。同プ
ロジェクトは、有害物質が排出されている現状と現在の規制を調査し、医療業界に必要とされる適切な
対応モデルを提供する予定である。化学療法の薬品やレントゲンや CT スキャンに使われるヨード造影
剤などは、標準的な下水処理では処理できないことがあり、下水系や飲料水網に入り込まないよう防止
することが重要となる。化学的な汚染物質のほか、微生物的な汚染に関する調査も行う予定である。
○連邦政府、ヘルスケア製品に含まれるマイクロビーズを禁止
ハミガキ粉、スクラブ洗顔料、ボディウォッシュ等の原料として微細プラスティック粒子“マイクロ
ビーズ”を利用することを 2017 年半ばから禁じる法律に、オバマ大統領が 2015 年末に署名した。マ
イクロビーズは、皮膚の汚れや油脂を除去する軽い研磨剤として幅広く利用されているが、極めて微小
であるため、下水処理場では濾過しきれずに河川や海へ排出されて食物連鎖の中に入り込んでしまうこ
とがある。2013 年に五大湖でカラフルなマイクロビーズが検出されてから全国的に注目を集めており、
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過去 2 年間で 8 州が使用を禁止している。既に自発的に使用を取り止めているメーカーもあり、天然素
材の代替物として、砂、砂糖、砕いたクルミ殻などが考えられているという。
○EPA、全国の下水インフラの改善に 2,710 億ドルが必要という調査結果を公開
環境保護庁(EPA)は、全国の下水インフラを維持し改善するためには今後 5 年間で約 2,710 億ドル
が必要になるという調査結果を 1 月 13 日に公開した。州政府や自治領の協力の下で実施されたこの調
査によると内訳は次の通りで、関連業界にとって大きなビジネスチャンスになると考えられる。
法律で義務付けられた最低基準を満たすために生物学的工程を利用した二次廃水処理のために 524 億
ドル。窒素やリン、アンモニアや金属などの有害汚染物質も処理できる先進廃水処理へのアップグレー
ドに 496 億ドル。配管システムの修理に 512 億ドル。新しい下水管システムやポンプステーションの
設置など新配管システムに 445 億ドル。雨天時に未処理廃水と雨水が溢れ出す配水管や管理プログラム
の整備に 672 億ドル。廃水の再利用処理やリサイクル水配管に 61 億ドル。
○コロラドとユタ州で、配水管内の水力を利用したマイクロ水力発電プロジェクト
レントリシティ(Rentricity)社が、浄水場の重力利用配水管内の過剰な圧力と水流を利用した初め
ての超小型水力発電装置を、コロラド州グランドレイクとユタ州フェロンの 2 ヶ所の浄水場に設置した
ことが 2 月 2 日に紹介された。ロッキー山脈から流れ落ちる清水を取り入れる注水口に 6.5kW から
6kW の超小型水力発電装置を設置して発電し、発生した電力は施設内で利用したり地域のグリッド
(送電網)に供給している。レントリシティ社は、5kw から 30kW までの超小型タイプのほか、30kW
から 350kW という大型用途向けの装置も備えており、データセンターや医薬品、食品や飲料工場など、
大量に重力利用型配水を利用する施設を念頭に売り込んでいく計画である。
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