上下院議員、法務長官ら - 日本産業機械工業会

情 報 報 告
シカゴ
●米国環境産業動向
○大手 IT 企業、上下院議員、法務長官ら、クリーンパワー計画を支持する意見書を提出
4 月 1 日、大手 IT 企業のグーグル、アップル、マイクロソフト、アマゾン社は、オバマ政権のクリ
ーンパワー計画を支持する法廷助言書をワシントン DC の連邦控訴裁判所に提出した。石炭火力発電所
からの炭素排出量を 2030 年までに 2005 年レベルよりも 32%削減することを目指すクリーンパワー計
画は、27 の州政府や業界団体からの訴えによって最高裁判所から実施の一時停止を 2 月に命じられて
いたが、その直後に反対派の最高裁判事が 1 人死亡したことで、延期が翻る可能性が出ている。また、
38 州からの現職・前職の上院議員 44 人、現職・前職の下院議員 164 人も、4 月 1 日に法廷助言書を提
出したほか、環境保護庁(EPA)は炭素排出の危険性に関する 200 頁に及ぶ書簡を提出している。
そのほか、3 月 29 日には、カリフォルニア、マサチューセッツ、ニューヨークなど 17 州からの法務
長官とアル・ゴア元副大統領が、気候変動への取り組みを州レベルで支援する共同声明を発表した。
○証券取引委員会、気候変動の情報公開に関して株主総会で決議するようエクソン・モービル社へ
3 月 24 日、米国の証券取引委員会は、エクソン・モービル社に対して、ニューヨーク州の会計監査
官から提案された気候変動の情報公開に関する決議を 5 月の定時株主総会の委任状に含めるよう命じた。
エクソン社は、気候変動やその関連法規が会社の収益性に与える具体的なリスクを株主に説明するよう
義務付けることを提案されていたが、エクソン社は、適切な炭素情報は既に公開していると反論してい
た。この提案が株主総会の議題に上げられて株主投票で承認されれば、エクソン社は、気候変動やその
関連法規が会社の収益性に与える具体的なリスクを説明するよう義務付けられる。エクソン社の株主が
過去に気候変動関係の提案を承認したことはこれまで無く、今回の提案が通るかどうかは不透明である。
○オバマ政権、大西洋の採掘権の入札を撤廃
オバマ政権は、大西洋の中央部と南部の 1 億 400 万エーカーにおよぶ海域の採掘権を入札にかけると
いう当初の計画を撤廃したことが 3 月 15 日に発表された。一方、北極海のチュクチ海とボーフォート
海、アラスカのクック湾、メキシコ湾の石油とガス採掘権の販売は段階的に設定され、2017 年から
2022 年まで 10 回の入札が暫定的に計画された。何十年も前に開発コストの高さで採掘が断念された大
西洋海域は、陸上の採掘量がいずれは減少していく中で将来性の高い未開地と考えられており、大西洋
からの撤退は石油業界にとって大きな痛手である。環境団体や漁業、ホテル業界は歓迎している。
○大手金融機関、石炭火力発電所への融資を撤廃
JP モーガン・チェイス社は、世界の新しい炭鉱への融資と経済協力開発機構(OECD)の“高所
得”国で開発される新しい石炭火力発電所への融資を撤廃することを 3 月 7 日に発表した。石炭プロジ
ェクトからの撤退は、すでにバンク・オブ・アメリカ、シティ・グループ、モーガン・スタンレー、ウ
ェルズ・ファーゴといった大手金融機関が表明しており、JP モーガン・チェイス社はこれに続くこと
になる。この動きの背景には、世界経済を化石燃料から撤退させようという環境団体等による幅広いキ
ャンペーン活動があり、安価な天然ガスに発電所の市場シェアを奪われ、排出量削減の規制強化や世界
の石炭需要の鈍化といったマイナス要因で停滞している石炭業界にとっては新たな痛手となる。
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○DOE、複数州にまたがる送電線プロジェクトを個々の州の意見に優先して承認
エネルギー省(DOE)は、オクラホマで発電された風力電力 4,000MW を米国南東部に送るために、
25 億ドルを投じて全長 705 マイル(1,134km)の送電線『大平原&東部クリーンライン(Plains and
Eastern Clean Line)』を建設する計画を 3 月 25 日に承認した。この送電線は、オクラホマからアー
カンソーを通ってテネシーに入るもので、複数の州にまたがるプロジェクトは個々の州の反対に優先す
ることを定めた 2005 年の法律を利用した初のケースである。開発業者クリーンライン・エナジー社は、
2017 年から建設に着手して 2020 年までにサービスを開始する予定であり、同社によると、米国で最大
のクリーンエネルギーインフラのプロジェクトになるという。電力需要の大きい都市部へ遠隔地から豊
富なクリーン電力を送ることは、将来の電力グリッドを構築する上で必要不可欠である。
○2015 年に廃業した発電容量のうち 80%が石炭火力発電
2015 年に操業を停止した発電所の総発電容量 18GW のうち、80%以上が石炭火力発電であったこと
が 3 月 8 日にエネルギー情報局(EIA)から発表された。EIA によると、石炭火力発電が減少した主な
原因は、天然ガスとの競争が激化したことと、環境保護庁(EPA)の水銀大気有害物質基準(Mercury
and Air Toxics Standards)が 4 月に施行されたことである。実際、2015 年中の石炭発電所の廃業の約
30%が 4 月に集中しており、同基準の適用について 1 年の延長を認められた石炭発電所も 2016 年 4 月
に多くが廃業すると予想される。廃業した石炭火力発電所は、平均すると開業後 54 年経過して発電容
量が 133MW となり、他の石炭火力発電所に比べて 20 年ほど古くて発電容量も約 150MW 小さい。州
別で廃業した石炭発電容量が最も多かったのはオハイオ州で、州の石炭発電容量の 15%が廃業した。次
いで、ジョージア州は全体の 18%、ケンタッキー州では 10%が廃業した。
○アップル社、世界の全施設の 93%を再生可能エネルギー電力からまかなう
アップル社は、世界の同社施設の 93%が再生可能エネルギー電力によってまかなわれており、特に
23 ヶ国では再生可能エネルギー100%の目標が既に達成されたことを 3 月 21 日に発表した。同社は、2
年前に世界の全施設を再生可能エネルギー100%でまかなうという目標を設定しており、達成に向けて
順調に進んでいる。また、アップル社の新しいリサイクルプログラム『アップル・リニュー(Apple
Renew)』では、消費者が使用済みのアップル製品をアップルストアに持ち込めば、リサイクルロボッ
ト Liam がバッテリーやカメラといった部品毎に解体して、重要な金属を新しい製品のために再使用す
る。
○テスラ社初の量販車『モデル 3』の予約が開始後 1 日で 18 万台
テスラ社は、2017 年後半から生産開始予定の同社初の量販車『モデル 3』の予約台数が、受付開始か
ら 1 日で 18 万台に達したことを 4 月 1 日に発表した。モデル 3 は 5 人乗りのプレミアムセダンで、1
回の充電で 215 マイル(345km)を走行し、6 秒以内に時速 60 マイル(100km)まで素早く加速でき
る。競合 EV 車である日産のリーフが発売から 5 年間で累計 20 万台を販売したことと比較しても、モ
デル 3 の売り出しは極めて好調と言える。モデル 3 の本体価格は、既存のモデル S やモデル X の半額
以下の$35,000(約 390 万円)となり、平均的なオプションを付けても約$42,000 だという。
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○ユナイテッド航空、バイオ燃料でロス-サンフランシスコ全便の運行を開始
ユナイテッド航空は、バイオ燃料 30%と一般のジェット燃料 70%を混合した燃料を使って、ロサン
ジェルス-サンフランシスコ間の定期便全便を運行する計画を 3 月 11 日に発表した。さらに同社は、
将来的にはロサンジェルス空港から出発する全てのフライトにバイオ混合燃料を使用する計画である。
米国の航空会社が商業用の定期運行に再生可能燃料を利用するのは初めてのことである。今回のバイオ
燃料は、ハネウェル(Honeywell)社が開発したテクノロジーを利用して、アルトエア・フューエルズ
(AltAir Fuels)社のロサンジェルス精製所で作られたものである。ユナイテッド航空は、アルトエア
社から 3 年間にわたって 1,500 万ガロンのバイオ燃料を購入する契約を 2013 年に結んでいる。
そのほか、サウスウェスト航空やフェデックス社も、再生可能ジェット燃料をレッド・ロック・バイ
オフューエルズ(Red Rock Biofuels)社から購入する契約を結んでおり、海運の分野でも、米国海軍
が再生可能燃料を 2016 年 9 月までに 7,700 万ガロン購入する契約を結んでいる。
○GM 社、自動運転テクノロジーの新興企業クルーズ・オートメーションを 10 億ドル以上で買収
ゼネラル・モーターズ(GM)社が、自動運転テクノロジーの新興企業クルーズ・オートメーション
(Cruise Automation)社を推定 10 億ドル以上で買収したことが 3 月 11 日に発表された。クルーズ社
は、アウディ A4 や S4 等のモデル向けに高速道路の運転時のみ自動運転に変えられる “改造用キッ
ト”を開発したことで良く知られている。しかし GM 社は、クルーズ社のテクノロジーを最初の製造段
階から取り入れることに関心を持っており、今回の買収は、自社内に自動運転車開発チームを作るとい
う GM 社の狙いに沿ったものである。買収は 2016 年第 2 四半期に完了する予定で、現在 GM 社は、キ
ャデラック CT6 セダン向けに自動運転車オプションを 2017 年から登場させることを計画している。
○エネルギー省、長距離大型トラックのエネルギー効率改善プロジェクトに 8 千万ドルを拠出
エネルギー省は、『スーパートラック・イニシアティブ』の一環として、長距離大型トラックのテク
ノロジーの研究・開発・実証に 8 千万ドルを出資する『スーパートラックⅡ』計画を 3 月 1 日に発表し
た。2010 年に開始された同イニシアティブは、先の『スーパートラックⅠ』計画の下でクラス 8 の 18
輪トラックを開発し、トラクタートレーラーの燃費やエンジンと駆動系の効率性を劇的に向上させるこ
とに成功している。18 輪トラックは、国内貨物輸送を支える屋台骨として全貨物の 70%を運搬してい
る。今回の『スーパートラックⅡ』計画では、大型トラックの貨物輸送効率を 2009 年型トラックに比
べて 100%以上向上させるテクノロジーを目指す。
また、中型・大型車向けのプラグイン電気パワートレイン技術の研究・開発・実証プロジェクト 3 件
に 1,200 万ドルを出資する計画も 3 月 1 日に発表された。
○ロッキード・マーティン社のハイブリッド飛行船、初の受注 12 機
航空サービス会社のストレートライン・アビエーション(Straightline Aviation)社は、ロッキー
ド・マーティン社が開発したハイブリッド飛行船 12 機を約 4 億 8 千万ドルで購入する同意書に 3 月 30
日に署名した。3 本の細長い風船を合わせたような形のハイブリッド飛行船 LMH-1 は、全長 300 フィ
ート(91m)、高さ 78 フィート(24m)、重量が 21 トンで、トラックサイズの貨物を従来の輸送手段
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ではアクセスできない地域へ運ぶことを想定して開発された。貨物 47,000 ポンド(21 トン)と乗員 19
人を収容でき、従来の飛行機よりも使用燃料が少ない。2017 年後半までに初飛行、2018 年までに商業
向けの利用が開始される。ストレートライン社によると、LMH-1 の最大の特徴は船底部分のエアーク
ッション着陸システムであり、これによって地表を吸着カップのように掴むことができるという。同社
は、主に石油、ガス、採掘会社が貨物を遠隔地へ運ぶために利用すると予想している。
○フィリップス社と携帯大手ボーダフォン社、街灯を接続管理するために IoT を利用
大手家電メーカーのフィリップス(Philips)社と英国の携帯電話大手のボーダフォン(Vodafone)
社は、世界の街灯システムを IoT を使って接続管理することで協力する契約を 3 月 14 日に結んだ。両
社は、世界の市町村がスマート街灯システムを導入していく手助けをし、ワイヤレスで接続された街灯
システムは、省エネとメンテナンスの簡略化に役立つ。フィリップス社のシティタッチ街灯管理システ
ムは、個々の照明地点を接続するためにボダフォーン社の M2M(機械同士の)ネットワークを利用す
る。接続される街灯には、全てボダフォーン社の M2M の SIM が搭載される。市町村は、ユーザーが
利用しやすいフレキシブルなシステムを通して、街灯照明のモニターと管理を行うことができる。
○オークリッジ国立研究所、カーボンファイバーの生産コストを半減するテクノロジーを開発
オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)が、カーボンファイバー(炭素繊維)
の生産コストを半減し、使用エネルギー量を 60%以上削減可能な生産テクノロジーを開発したことが 3
月 22 日に発表された。高コストは、カーボンファイバーの普及を阻む唯一最大の障害であり、今回の
成功によって、自動車、風力タービン、圧縮ガス貯蔵、ビルなど産業用途へのカーボンファイバーの
大々的な活用が加速されていくと期待される。カーボンファイバーは、炭素を含むポリマー繊維前駆体
(ポリアクリロニトリル:PAN)に加熱と伸張を繰り返すことで純粋な炭素繊維へ転換したもので、こ
の PAN と多大なエネルギーを要する転換工程が、コスト高の主な要因である。しかし、この PAN と
似た化学的性質を持つアクリル繊維は、衣類やカーペット業界向けに日常品として約半分のコストで生
産されており、これを低コスト化への鍵として自動車メーカーと協力して研究と実証を重ねた。
○テラビア(元ソラザイム)社、ユニリーバ社へ 5 年間の藻類油供給契約
藻 類 油 メ ー カ ー の テ ラ ビ ア ( TerraVia ) 社 - 元 ソ ラ ザ イ ム ( Solazyme ) - は 、 ユ ニ リ ー バ
(Unilever)社に 5 年間にわたって藻類油を供給する契約を 3 月 14 日に結んだ。ユニリーバ社は、ソ
ラザイム社からパーソナルケア製品の原料として 2014 年から藻類油を購入しており、今回の契約はそ
の取扱幅を拡大して固定化するものである。テラビア社は、主にブラジルの自社工場で藻類油を生産し
ており、今回の契約の取扱高は総額で 2 億ドル以上になると予想される。藻類油を、単なる燃料として
ではなく、より付加価値の高い製品原料として生かすことによって、生産の安定に繋がると期待される。
○BASF 社、再生可能原料から室内塗料のディスパージョン(光分散剤)
総合化学メーカーの BASF 社は、室内塗料向けのディスパージョン(光分散材)の生産初期段階に投
入する原料を、従来の化石原料 100%から再生可能なバイオマス原料へ切り替えたことを 3 月 17 日に
発表した。再生可能なバイオマス原料からマスバランス(質量平衡)アプローチを利用して作られたデ
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ィスパージョンは、塗料メーカーの DAW 社で既に室内塗料ブランド Caparol と Alpina に採用されて
いる。マスバランス工程によって、ディスパージョン内のバイオマス原料の割合は均一に配分され、化
石原料から作られた製品と極めて良く似た状態になる。
○エナジャイザー社、世界で初めてハイブリッド車の使用済みバッテリーから充電可能乾電池
乾電池メーカーのエナジャイザー(Energizer)社は、世界で初めてハイブリッド自動車の使用済み
バッテリーを特許工程を通して精製し、AA と AAA の充電可能乾電池を製造したことを 3 月 1 日に発
表した。このエナジャイザー・リチャージ(Energizer Recharge®)は、リサイクルバッテリー材を
4%含んでおり、何百回も充電が可能だという。また同社は、世界で初めてリサイクル乾電池材を 4%含
む AA と AAA のアルカリ乾電池 エナジャイザー・エコアドバンスト(Energizer® EcoAdvanced®)を
2015 年 2 月に発売しており、コストの高さからリサイクル業者が敬遠する中で、使用済み電池に含ま
れるマンガン、亜鉛、鋼といった再利用可能な物質の回収と再利用に取り組んできた。
○GE 社、IIoT を使って水道業界の課題解決
ゼネラル・エレクトリック(GE)社と、米国最大の上下水道事業者アメリカン・ウォーターは、
IIoT(産業用モノのインターネット)の進歩を利用して水道業界の緊急の課題に取り組む『デジタル・
アライアンス』を発足させたことを 3 月 22 日に発表した。デジタル・アライアンスは、GE 社が開発
した世界初の産業用クラウド・プラットフォーム Predix を利用して、ソフトウェアや先進予測分析と
診断ツールを開発する。これによって、オペレーターはリアルタイムのデータを入手して生活に必須の
水インフラを毎日 24 時間管理するとともに、環境への負荷を少なく運転コストを減らすことができる。
○EPA、中小企業の環境テクノロジーの開発を助成
環 境 保 護 庁 ( EPA ) は 、 中 小 企 業 技 術 革 新 研 究 制 度 ( Small Business Innovation Research
Program)の下で、環境テクノロジーを開発している中小企業 8 社に各 30 万ドルを助成することを 2
月 29 日に発表した。EPA は、同制度の第 1 段階で、環境技術の研究企画に対して各 10 万ドルまで助
成しており、今回はその第 2 段階として、製品やアイディアの開発を進めて商業化する資金を助成する。
助成先としては、アスペン・プロダクツ・グループ(Aspen Products Group)の飲料水供給網の汚染
物質を管理する濾過装置、ETSVP-JV 社のナノ原料を利用して汚染気流からガス状汚染物質と粒子を除
去する革新的な空気浄化装置、メソコート(MesoCoat)社の有毒性の少ない鋼鉄耐腐食性コーティン
グ、サステイナブル・バイオプロダクツ(Sustainable Bioproducts)社の菌類を使って都市固形ゴミ
を燃料に転換する低コストで拡大可能な微生物工程などがある。
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