米国環境産業動向 - 日本産業機械工業会

情 報 報 告
シカゴ
●米国環境産業動向
○EPA、史上初めて石油・ガス部門からのメタン排出量を削減する基準案を発表
環境保護庁(EPA)は、石油と天然ガス部門の新規または既存の生産施設から排出されるメタン量を
削減するために、史上初の基準案を 5 月 12 日に最終的にまとめた。この基準案は、新規もしくは改
良・再建された石油・ガス田やフラッキング(水圧破砕)地に対して、メタンだけでなく、スモッグの
原因となる揮発性有機化合物(VOC)、ベンゼンなど有毒汚染物質の排出量を包括的に規制する。今回
の規制は、オバマ大統領の気候行動計画(Climate Action Plan)の一環であり、石油・ガス部門から
のメタン排出量を 2025 年までに 2012 年レベルから 40~45%削減することを目指している。メタンは
天然ガスの主要成分であり、CO2 の 25 倍以上の温暖化効果を持つ。米国で人間活動から排出される温
室効果ガスとしては 2 番目に多く、その 1/3 は石油と天然ガスの生産や流通から排出されている。
○WHO:ディーゼルの影響で大気汚染は米国よりもヨーロッパの方が深刻
有害大気汚染物質の削減に関して、ヨーロッパ諸国は米国よりも遅れており、ヨーロッパの方がディ
ーゼル燃料への依存度が高いことがその大きな理由であることが、世界保健機構(WHO)から 5 月 12
日に報告された。103 ヶ国の 3,000 都市を調査したところ、ヨーロッパの都市の 60%が WHO が推奨す
る大気汚染上限値を超えているのに対して、北米の都市で基準に満たないのは 20%以下だった。ヨーロ
ッパの大気汚染の要因としては、都市圏で肥料が広範囲に利用されていること、ディーゼル燃料への規
制が緩いこと、ディーゼル車の人気が高いこと等が挙げられる。またアジアでは、日本、韓国、シンガ
ポールなど高所得国は基準値を満たしている一方で、インド、パキスタン、中国などは遅れている。
○IEA:OECD 諸国の 2014 年の経済成長と CO2 排出量は連動せず
2014 年の OECD(経済協力開発機構)加盟 34 ヶ国の総エネルギー生産量は前年比で 4%増加して過
去最高となった一方で、エネルギー消費量と燃料燃焼による CO2(二酸化炭素)排出量は 1.4%減少し
たことが、国際エネルギー機関(IEA)から 5 月 6 日に報告され、経済成長と炭素排出量が連動してい
ないことが改めて確認された。2009-2014 年の 5 年間で見ると、OECD 加盟国の経済は 10%成長した
一方で、排出量は微増に留まった。経済成長にも拘らず排出量が減少した要因としては、OECD 諸国経
済のエネルギー強度の減少、エネルギー効率の向上、暖冬、再生可能エネルギー(水力を除く)電力の
シェアが増加して総電力の 10%にまで達したこと等が考えられる。
○G7 諸国、化石燃料への補助金を 2025 年までに段階的に廃止する合意
G7(主要先進 7 ヶ国)諸国は、石炭・石油・天然ガスなど化石燃料への補助金の廃止期限を初めて
2025 年に設定したことが 5 月 27 日に発表された。米国、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、イタ
リア、日本、EU は、10 年以内に全ての国が“非効率的な化石燃料の補助金”を廃止する試みに参加す
るよう勧めている。G7 諸国を全般的に見ると、すでに商品価格の値下がりも相まって補助金が減少し
ているところが多い。しかし、イギリスは北海油田の開発のために新税を導入し、日本は国内外の新し
い石炭プロジェクトへ出資し、カナダは天然ガスへの補助金を一部拡大している。化石燃料への巨額な
― 50 ―
情報報告 シカゴ
国家補助金については、OECD(経済協力開発機構)が 2015 年 9 月に報告書を発表したほか、世界銀
行は化石燃料プロジェクトへの支援を廃止することを先頃発表している。
○米国、3 年連続で石油と天然ガスの生産量が世界一
米国は、石油と天然ガスを合わせた総生産量が 2015 年に 3 年連続で世界一となったことが、米エネ
ルギー情報局(EIA)から 5 月 23 日に報告された。石油は、2012 年にロシアを、2013 年にはサウジ
アラビアも抜いて世界一の産油国となった。天然ガスは 2011 年から世界一の生産国となり、石油と天
然ガスを合わせた総生産量では 2012 年から世界一となった。米国とロシアは、それぞれ石油と天然ガ
スのシェアがほぼ半々である。米国では、2015 年に原油価格が比較的低く推移し、石油・天然ガスの
リグの操業台数が 60%減少したにも拘らず、産油量は 1 日当り 100 万バレル増加した。また天然ガス
は、東海岸を中心に 1 日当り 37 億立方フィート増加した。EIA によると、原油価格の低迷が続くにつ
れて、米国の産油量は 2015 年の日産 1,500 万バレルから、2016 年と 2017 年には日産 1,450 万バレル
まで徐々に減少していくと予想される。
○シェル社、風力発電に投資するグリーン・エネルギー部門を設立
欧州最大の石油会社シェル(Shell)社が、再生可能エネルギーと低炭素電力へ投資する新しいクリ
ーン・エネルギー部門として、ニュー・エナジーズ(New Energies)社を設立したことが 5 月 15 日に
発表された。シェル社は、リスクの高い北極海の原油採掘からは撤退したものの、深海油田プロジェク
トと CO2 含有率の高いカナダのタールサンドの開発に関わっており、化石燃料の削減を唱える環境団
体の批判の的となっていた。17 億ドルを投じて、風力、バイオ燃料、水素プロジェクトに焦点を当て
て いく 予 定 で あ る 。ほ か に石 油 会 社 が グリ ー ンエ ネ ル ギ ー に 進出 す る動 き とし て は、 ト ー タ ル
(Total)社や BP 社も、再生可能エネルギーや代替エネルギーに特化した部門を設立している。
○GE 社、ベトナムへ風力発電 1GW とジェットエンジン LEAP-1B を提供
ゼネラル・エレクトリック(GE)社は、オバマ大統領のベトナム初訪問に合わせて、同国へ少なく
とも 1GW 以上の風力発電の開発を支援する覚書をベトナム経済産業省と 5 月 23 日に結んだ。これは、
ベトナムの 180 万世帯を賄うことができる電力量である。また同時に、ベトナム初の民間航空会社べト
ジェットエア(VietJetAir)へ、次世代ボーイング 737MAX 機 100 機の動力となる LEAP-1B ジェッ
トエンジン 215 台(30 億ドル相当)を提供する契約も結んだ。LEAP-1B エンジンは、GE アビエーシ
ョン社とサフラン・エアクラフト・エンジン(Safran Aircraft Engine)社が同額出資する CFM イン
ターナショナル社が開発したもので、世界で初めて 3D プリンタ部品や、ガスタービン用に開発した先
進セラミックス製のコンポーネントを利用している。
○グーグル社、『サンルーフ』プロジェクトを 42 州に拡大
グーグル社は、住宅オーナーが自分の家がソーラーパネルに適しているかオンラインで調べることが
できる『サンルーフ(Sunroof)』プロジェクトを 42 の州に拡大したことを 5 月 20 日に発表した。こ
のプロジェクトは、カリフォルニア州のサンフランシスコ、フレスノ、マサチューセッツ州のボストン
という 3 都市で 2015 年 8 月に開始され、2016 年 1 月にアリゾナ、ニューヨーク、ニュージャージーな
― 51 ―
情報報告 シカゴ
どの 20 都市に拡大し、4 月には 42 州、およそ 4,300 万の住宅を網羅できるまで拡大した。同プロジェ
クトでは、航空写真とマッピングデータを利用してルーフトップ太陽システムの潜在発電力を計算し、
20 年のリース契約でどの位節約できるかを推計する。数ヶ月後には全 50 州にまで拡大する予定である。
○EPA、2017 年の再生可能燃料基準(RFS)を発表
環境保護庁(EPA)は、セルロース系バイオ燃料、バイオマスディーゼル、先端バイオ燃料、および
トウモロコシ原料エタノールを含めた再生可能燃料全体に対して、2017 年の再生可能燃料基準
(RFS)を増量することを 5 月 31 日に発表した。ガソリンへ混合が義務付けられる再生可能燃料の割
合が増えることから、原料の生産が増強されてバイオ燃料業界がさらに成長すると期待される。再生可
能燃料全体の RFS は、2016 年の 181 億ガロンから 188 億ガロンへ 7 億ガロン増加したものの、2005
年のエネルギー法に基づいて想定された 240 億ガロンには遠く及ばない。EPA は、これまでも数回に
わたって当初の目標値を下回る RFS を設定しているが、今回はトウモロコシ原料エタノールを除いた
バイオ燃料の開発が予想よりも遅れていることを事由として挙げている。
○ニューヨーク市バス、無料 Wi-Fi や USB 充電ポートを備えた新型バスが登場
米国最大の輸送ネットワークであるニューヨーク州都市交通局(MTA)は、Wi-Fi や USB 充電ポー
トを搭載した新型バスを、ニューヨーク市内に 5 月 18 日に初めて登場させた。MTA は 5,667 台のバス
を保有して毎日 200 万人以上が乗車しており、このうち 2,042 台が今後 5 年以内に新しい新型モデルに
交換される予定である。新しいバスには、全て無料の Wi-Fi と USB 充電ポートが搭載され、旧型を含
めた数千台に情報スクリーンが設置される予定である。また、端末を通じてバスと電車の乗車券を購入
できる新システム『MTAeTix』が年末までに利用可能となる。MTA は、地下鉄、バス、インフラの整
備へ 2015-2019 年に 290 億ドルという巨額な投資計画を 2015 年 10 月に承認されている。
○フォルクスワーゲン社、電気自動車に注力するために 155 億ドルのバッテリー工場を建設
ディーゼル車の排気量違反ソフト問題に悩むフォルクスワーゲン社は、ターボディーゼル車から電気
自動車(EV)へ徐々に重点を移しつつある。同社は、2025 年までにハイブリッド車を含む EV の年間
総販売数 100 万台という目標を達成するために、155 億ドルを投じて大規模なバッテリー自社工場を建
設する計画が 5 月 30 日に報じられた。同社の 2015 年の EV 販売台数は 67,000 台である。EV メーカ
ーにとってバッテリーは最も高額な部品であり、自社工場で製造するコスト面でのメリットは大きい。
現在、テスラ社がパナソニック社と 69 億 6,000 万ドルを投じて建設中のギガファクトリーでは、バッ
テリーコストを従来より 30%削減できると予想されている。フォルクスワーゲン社のバッテリー工場
の建設地は未だ決定されていない。
○フォード社、初めて CO2 から自動車用の発砲プラスティックを開発
フォード社は、業界で初めて回収した二酸化炭素から自動車向けの発砲プラスティックを開発する計
画を 5 月 17 日に発表した。CO2 ベースのポリオールを最高 50%含む発砲プラスティックを、座席やボ
ンネット内に利用することによって、年間 6 億ポンド(27 万 2 千トン)の石油を節約できると試算し
ている。フォード社は、この新素材を 5 年以内に自動車に実用化できると考えており、将来的には回収
― 52 ―
情報報告 シカゴ
炭素を利用して他のプラスティック素材も開発し、石油系プラスティックの必要量を減らしていくこと
を目指している。フォード社は 20 年に渡って持続可能な素材の開発に努めており、大豆を原料とする
発泡プラスティック材を既に北米の全自動車に採用しているほか、リサイクルタイヤをミラーガスケッ
トに、リサイクル PET ボトルを再生した繊維 REPREVE を F-150 のシートなどに利用している。
○エネルギー省、既存窓の断熱性を高めるコーティングや窓ガラス開発プロジェクトへ出資
エネルギー省のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)は、既存の住宅や商業ビルの窓のエネルギー
効率性を高める革新的な窓コーティングや窓ガラスの開発を目指して、『高断熱性透明単窓デザイン
(Single-Pane Highly Insulating Efficient Lucid Design (SHIELD)』プロジェクト 14 件に総額
3,100 万ドルを拠出することを 5 月 23 日に発表した。一般的なビルの窓は断熱性を持たない 1 枚式窓
ガラスであることが多く、これを全面的に新しい高断熱性窓へ交換するのはコストや外観の面から難し
いこともある。今回のプロジェクトでは、既存の単板窓から失われる熱量を半分にまで抑える素材を開
発することで、ビルのエネルギー効率を高め、冷暖房費を大きく節約することを目指している。
○PG 社、初のバイオベース洗剤を発売
PG 社は、10 年以上に渡って環境負荷の少ない洗剤の開発に努めてきたが、同社初のバイオベース洗
剤『タイド・ピュアクリーン(Tide purclean)』を 5 月 19 日に全国的に発売開始した。 タイド・ピ
ュアクリーンは、原料の 65%がバイオベースでありながら、従来製品と同等の洗浄力・染み抜き力を
持ち、色落ちも少ない。冷水でも十分な洗浄力を発揮するように処方されており、水使用量の少ない
HE(高効率)洗濯機でも、従来の洗濯機でも利用可能である。埋立て廃棄物ゼロの工場で再生可能な
風力電力を利用して生産され、容器には 100%リサイクル可能なボトルを使っている。50 オンス(1.5
リットル)、75 オンス、100 オンス入りボトルで販売され、小売価格は 12~20 ドルである。
○ニューヨーク市、レジ袋を 5 セントに有料化
ニューヨーク市議会は、小売店で配るレジ袋をプラスティックか紙かに関わらず、最低 5 セントに有
料化する条例を 5 月 5 日に可決した。条例は本年 10 月 1 日から施行され、薬局、レストランのテイク
アウトなどは免除されるが、違反した店舗には最高 500 ドルの罰金が課される。同市では、2 年前に同
様の動きが起こったが法制化には至らなかった。すでにカリフォルニア州や、ワシントン DC に同様の
規則があり、米国最大の都市ニューヨークが加わることでレジ袋削減の動きが促進されると期待される。
ニューヨーク市は、2017 年に約 10 万枚のエコバッグを配布する計画である。
○ユニリーバ社、ボトル類のリサイクル率を高める啓蒙キャンペーン
ユニリーバ(Unilever)社は、シャンプー等の容器のリサイクルを進めるために“リンス・リサイク
ル・リイマジン(Rinse. Recycle. Reimagine)”という啓蒙キャンペーンを 4 月 30 日から開始した。
同社の調査によると、大半の米国人はシャンプーや化粧品のボトルがリサイクルできることは知ってい
ても、実際に分別してリサイクルするのは僅か 34%に過ぎないという。非営利団体 Keep America
Beautiful と Ad Council と協力して、中身を濯いで分別する手順を紹介するほか、実際に回収ボトル類
― 53 ―
情報報告 シカゴ
が再生された情報を公開して効果を実感させる。米国の主要都市の中でシャンプー類のリサイクル率が
最も高いのはフィラデルフィアの 52%、最も低いのはアトランタの 23%であった。
○サンフランシスコ市、世界初の上下水道インフラ向けのグリーン公債を発行
サンフランシスコ公益事業委員会は、世界で初めて気候公債基準(Climate Bonds Standard)に基
づいて認定された上下水道インフラ向けのグリーン公債を発行したことが 5 月 18 日に発表された。こ
の公債で集められた基金 2 億 4 千万ドルは、サンフランシスコ公益事業委員会の下水道システム改善プ
ログラムを含め、第 3 者認定機関サステイナリティックス(Sustainalytics)社が認定した持続可能な
雨水管理プロジェクトや廃水処理プロジェクトへ出資される。上下水道インフラは、近年全国的に老朽
化が進む中で膨大な資金不足の状態が続いている。
― 54 ―