認知症ドキュメンタリー映画へ の返信から

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認知症ドキュメンタリー映画へ
の返信から
伊
勢
真
一
妻の 年間に及ぶヒューマンドキュメンタリー、
﹃妻の病﹄
ドキュメンタリー映画﹃妻の病︱レビー小体
映画﹃妻の病﹄は、四国・南国市の小児科医
型認知症︱﹄を撮り上げ、上映を始めておよそ
と認知症の日々を生きる妻、石本浩市・弥生夫
1年、いかにこの映画が待望されていたかに驚
かされている。
友人である石本夫妻への応援歌のつもりで創っ
ったと、観てくれた方の反応から、今は受け止
た映画だ。結果的に多くの人々への応援歌にな
クターによる認知症講演会とセットの上映会も
めている。
った方がいいかもしれないが。
介しよう。
くれた。まだ2万人しか観られていない、と言 ﹁認知症﹂と向き合っている一人ひとりから
の、映画への返信のような感想のいくつかを紹
行われ、2万人を超える方々がこの映画を観て
各地のミニシアターでの上映、自主上映に加
え、エーザイが全国 カ所で企画・開催したド
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『妻の病―レビー小体型認知症―』
﹁余分な解説のないドキュメンタリーで感動
しました﹂
﹁実写はすごい。レビー小体型認知
症のことが、少しわかったような気がします﹂
﹁ドキュメンタリーの力を感じました。しかし、
情に流されてサイエンスの視点が不足している
ように思います﹂
サブタイトルの︿レビー小体型認知症﹀に、
強い関心を示して映画を観に来る人も多い。
﹁記念すべき日になりました。このように素
晴らしい映画に出会えた日でしたから⋮姉はレ
ビーと思われます﹂
﹁母もレビーと診断され手
さぐりの日々⋮苦労した母になんとか笑顔で過
ごしてほしい一心で介護してまいりましたが、
どんなに尽くしても、夜、シクシクと泣いてい
る母を前に、途方に暮れてしまうこともありま
す⋮﹂
人もの方々から頂いた。
︿アルツハイマー型﹀
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︿レビー小体型認知症﹀にフォーカスを当て
ていることへの感謝の言葉を、上映の場で、何
Ⓒいせフィルム
で映画と向き合ってくれている。
いうことだろう。ワラをもすがる、という思い
以外の認知症に関する情報がまだまだ少ないと
んでした。そんなキレイなもの、笑い飛ばせる
いっぱいあったでしょうが、場面は出てきませ
いました。でも裏では日常生活の汚いところが
ようなものではないよ、という気がしました﹂
﹁早く正確な診断が大事と言われていたが、
答えよりむしろ問いを深めるためにこそ、映
どのようなところでその判断ができるのか?
画にする意味がある、と私は考えている。しか
できる病院はどこ?﹂
し、認知症介護に役に立つ情報が、この映画に
当事者の切実な思いが綴られている。
まるでないわけではない。
﹁私自身も夫も、レビー小体型認知症です。
その一つは、夫の石本浩市さんが、妻の弥生
このドキュメントを観て非常に感動しました。
さんの認知症発症前後からの日常の様子の変化
いこうとしている人がいる〟ということを、改
こにもこういう形で介護、仕事、家族を守って
共感してしまう。だから〝どう?〟ではなく〝こ
ため息をつく、そのため息の意味すらわかり、
す﹂
﹁全編うなずきながら観た。同感なのだ。
気だと思う⋮﹂と語っている。
人間が、しっかり症状を観察する必要がある病
になったのだという。石本さんは﹁一番身近な
ビー小体型認知症という診断が確定する決め手
による画像診断と同時に、この詳細な日記がレ
を、詳細に日記に書き留めていたこと。MRI
これからのことを教えていただいた気持ちで
めてわからせてくれる映画だ﹂
﹃ゆめのほとり﹄
映画を観て批判的な感想を抱く人もいる。
﹁いつも笑い声が響き、明るくふるまわれて 映画﹃妻の病﹄と、ほぼ並行して製作された
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『ゆめのほとり―認知症グループホーム 福寿荘―』
映 画﹃ ゆ め の ほ と り ︱ 認 知 症 グ ル ー プ ホ ー
ム 福寿荘︱﹄も完成、上映が始まった。グル
ープホームで暮らすお年寄りたちの生き生きと
した日々を、2年間にわたって記録したドキュ
メンタリーだ。認知症の解説をするのではなく、
認知症の人の存在そのものに〝耳を澄ます〟と
いう立ち位置は両作とも同じ、姉妹作のような
ものだ。観た方々の反応もよく似ている。自分
事として映画を観てくれ、
﹁自分の映画だ﹂と
共感を寄せてくれているのだ。映画への共感が、
一人ひとりに、ささやかな気持ちの変化を起こ
させてもいるようだ。
﹁私は介護以来、お年寄りが嫌いになってい
た︵自分もいい年だが︶
。母に会いに行くのも、
いつも気が重かった。この映画を観て、新しい
気持ちで母に、あの場所に、会いに行きたくな
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った。なんだか幸せな気持ちです﹂
認知症の人、すぐ近くにいる人に、ほんの少
しだけでも寄り添う気持ちになる映画、と受け
Ⓒいせフィルム
止めてもらえたことを嬉しく思う。たった一人
の心に小さなさざ波を立てることができたなら、
それでよい。
﹃ゆめのほ
﹃妻の病︱レビー小体型認知症︱﹄
とり︱認知症グループホーム 福寿荘︱﹄
、認知
症を描いた2本の映画は、自主上映を募ってい
る。それぞれの地域で上映に取り組んでほしい。
︵ドキュメンタリー映画監督︶
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