治療とケア DLBの理解とケア はじめに 武 田 純 子 でいるのか﹂を見極めることは難しく、また、 そのときどう支援したらよいのかが分からない LBの特徴に合わせたケアの在り方を実践して 状の特徴の違いがあきらかになってきた今、D ケアを目指してきましたが、DLBとADの症 ︵AD︶を中心としたケアの在り方で尊厳ある 症介護の現場では、アルツハイマー型認知症 て考えてみたいと思います。 証言からヒントをもらい、対応の在り方につい 交流会から︶と言います。そこで、本人たちの 型認知症サポートネットワーク[DLBSN] 受けていても、しっくりこない﹂ ︵レビー小体 ADの人たちと病気が違うので介護サービスを いように思います。本人や家族は、 ﹁DLBは、 というのでは、本人の不安や苦しみも軽減しな 初めてDLBの人にとってのパーソンセンター 認知症の中でレビー小体型認知症︵DLB︶ が占める割合が約 %といわれています。認知 ドケアが実現できるのではないでしょうか。 知識として症状を理解していても、日常生活 支援の中で﹁今、本人は何にどのように苦しん 98 CLINICIAN Ê16 NO. 648 (538) 20 ︽視覚認知機能の障害と記憶障害︾ DLBの症状の訴えとケア 本人の意向を確認しながら、支援したいもので 生活の困難さなどを訴えることができるため、 す。 DLBの人は初期に記憶障害を訴えることが ADであれ、DLBであれ、人としての尊厳 少なく、視覚認知機能の障害を訴えることが多 を大切に、一つひとつの訴えを大切に聞き誠意 のか、今後どうなっていくのかなどの不安を抱 す。DLBの人は、視覚認知障害がなぜ起こる では、本人の生活の困難さは大きく違ってきま で見えたり、いないはずの人が現れるという人 ︽幻視︾ されてしまいます。 やごまかしなどをすると信用ならない人と評価 の人とかかわるときは、その場限りの言い逃れ をもって応えることは当然ですが、特にDLB いので、物忘れで困っている人と、物がゆがん えていますが、それは病気による障害で、治療 認知症の人とかかわるとき、物忘れがあるこ とを前提にコミュニケーションを取りますが、 ざしで、見えている物を確認し、時には声をか しんでいる様子がうかがえます。宙を見るまな とを確認しながら、自分の中で整理しようと苦 視覚認知機能障害の代表的なものが幻視です。 を受け、ストレスの軽減や生活リズムを整える 予期しない物︵人︶が現れ、そのうちに消える。 その様子をDLBの人が見ていると﹁要領の得 と症状は軽減し、穏やかに暮らせることが理解 ない話をしている﹂と見えるようです。多くの け、時には追い払うようなしぐさを行います。 ように考えるのでしょうか。初期には起きたこ 自分の身にそのようなことが起きたとき、どの DLBの人は、初期には記憶力があり普通の暮 できると自己努力する姿が見えてきます。 らし方ができ、本人の中で起こっている症状や、 その状況は現実とかけ離れていることもあり、 CLINICIAN Ê16 NO. 648 (539) 99 ﹁このようなことを言ったら狂ったと思われ ると、落ち着いた生活になっていきます。 また、壁に掛かっている洋服・壁のシミや模 る﹂ ﹁精神科病院に入れられる﹂などと心配し、 様が幻視の引き金になる︵錯視︶こともあるの の面談のときなどに、さりげなく﹁今までいな ります。受診のとき・もしくはケアマネジャー ︽認知機能の変動︾ さの調整も大切です。 で、環境はシンプルに整理整頓に心掛け、明る 誰にも言わず、一人で悩んでいることが多くあ かった人︵物︶が急に現れたり急に消えたりす 認知機能の変動について本人や家族から症状 るような体験をしたことがありますか?﹂など として具体的に訴えられることは少ないのです の質問をして、幻視の状況を確認することが大 いて質問すると明確に答えてくださるので、否 りした状態が、交互にやってきます。その周期 す。寝ぼけたようなボーッとした状態とすっき が、DLBの多くの人に見られる症状と言えま 定をしないように聞き、不安な気持ちや恐怖心 はまちまちで、人によって大きく違います。 切になります。さらに、見えている人や物につ について共感し、医療的対応につなげるように るくするなどで消えることがあります。周りの るときなどは、傍に行ってみる・電気をつけ明 DLBの人とかかわるにあたって信頼関係を 深めることはとても大切で、幻視で苦しんでい ものです。また、デイサービスに通う・友人と きには無理な働きかけを控え見守っていきたい きは良いかかわりを持ち、ボーッとしていると ることがあると言います。はっきりしていると していくとよいでしょう。 人には見えず、自分だけに見えていることが分 の交流など、コミュニケーションを図ることが 家族や介護者は、ボーッとした状態を﹁怠け ている﹂とか﹁嫌がらせしている﹂と感じてい かり、病気の症状の一つであることが理解でき 100 CLINICIAN Ê16 NO. 648 (540) 大切と考えます。 ︽レム睡眠の行動障害︾ 切に考えています。 する場合が多いことから、医療連携はとても大 にはベッドから飛び出したりするような激しい 睡眠中に大声を出して手足をばたつかせる・時 見られるとのことです。具体的な症状としては、 言語による意思表示も困難になりますが、会話 不可能となり、最終的に嚥下困難となります。 睡眠の前にリラックスし、音楽を聴く・会話を 睡眠障害に関しては、医療的な治療とともに、 まとめ アも有効です。 楽しむ・マッサージを受けるなどのストレスケ ∼ 歳代で、DLBを発症し初期からパー キンソニズムがあり、身体が動かなくなってい の内容は理解していると思います。 よって多少効果はあっても、筋拘縮が強く歩行 症状があります。 DLBと診断され、初期からパーキンソニズ レム睡眠行動障害の場合は、生活リズムが乱 ムの症状が出る場合は進行が速く、薬物治療に れることから、介護者の大きな負担になります。 ︽パーキンソニズム︾ レム睡眠期に夢内容に伴う精神活動が行動化 DLBの症状を正しく知ることは、家族の心 を示すレム睡眠行動障害が、DLBの約 %に 理的負担軽減になり、治療によって症状が軽減 75 のかかわりが大切になっていきます。 うな場合は、家族との関係からスピリチュアル めていく努力が必要かと思われます。 ながらも、DLBのケアについて実践例をまと いるではないかと思うこともあります。そのよ ように思います。自分の意思で食事を拒否して DLBの症状に対するケアは、まだまだ手探 りの状況であり、尊厳ある個別ケアを主体にし くときの本人の苦悩は計り知れないものがある 70 (541) CLINICIAN Ê16 NO. 648 101 60 疾患の特徴を理解して、徹底した個別ケアを 行うということは認知症ケアの目指すべきとこ ろであり、 ﹁認知症になって残念だけれど不幸 ではない﹂と安心して豊かに暮らせる社会を目 指していきたいと思います。 ︵レビー小体型認知症サポートネットワーク札幌 代表、有限会社ライフアート 代表取締役︶ 102 CLINICIAN Ê16 NO. 648 (542)
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