早稲田大学 先進理工学部 電気・情報生命工学科 アドバンス制御研究室 バイオメカニクス班 指導教員 渡邊 亮 教授 石毛 佑一 人間-機械モデルによる ステアリング動作における運動指令の再現 運動制御系 研究目標 自動車のステアリングに関する技術として、ステアリングと前輪を繋 ぐ、従来の機械的結合を電気的結合に置き換え、電子制御を用いて自動 車を操作する、ステアバイワイヤが注目されている。これにより、設計 の自由度や安全性の向上、軽量化などといった様々なメリットが考えら れるが、同時に機械的結合により得ていた操作感を喪失してしまうこと による操作性の低下が問題になっている。 そこで、本研究では人間がステアリング操作を行うメカニズムから、 操作感を再現することを考える。 現在は、このメカニズムの解明のため、ステアリング操作時の(1)腕 の挙動、(2)脳から筋肉への運動指令、をそれぞれ再現することに取り 組んでおり、これらの再現から、より正確な操作感の再現やその評価が 可能になると考えている。 ステアリング操作を状態フィードバック制御系と捉え、筋骨格-ステア リングモデルを制御対象とし、腕の位置制御を行う脳の役割を担うコン トローラをPD制御を用いて設計、組み合わせることで、運動制御系を構 築する。 ステアバイワイヤ コンピュータ 機械的に つながっていない シミュレーション結果 実機を用いた計測実験から、ステアリング操作時の腕の動きを示す肩角 と、肩関節に関する各筋肉の筋電位を計測した。 計測した肩角を運動制御系の入力とし、シミュレーションを行った結果 を以下に示す。 筋骨格-ステアリングモデル ステアリング操作時、人体が肘を 自然に伸ばした状態で、肩関節の動 きで自動車を操縦固定している状態 を仮定し、肩関節に関する筋系、腕 の骨格系、ステアリングをそれぞれ モデル化、統合し、筋骨格-ステアリ ングモデルを構築する。 このモデルは、脳から各筋肉への 運動指令をもとに、腕の挙動を再現 するものである。 この腕の挙動は、水平位置からの 腕のずれを示す、肩角を用いて表し ている。 また、各筋肉において、シミュレーション時に得られた運動指令uと、 実験時に計測した、脳からの運動指令に基づき発生する筋電位iEMGを比較 し、これらの類似性をピアソンの積率相関関数を用いて検証した。検証の 結果としてかなり高い類似度が得られたので、その結果を以下に示す。 骨格-ステアリングモデル 以上からステアリング操作時の腕の挙動と、脳から各筋肉への運動指令 を再現できてることがわかる。
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