電力系統入門補足メモ 1. 三相交流による回転磁界 2. 三相三線式と単相二線式(低圧配電) 3. 単相電力と三相電力 4.無効電力供給源は、消費箇所に近いところに置くべ きであることの説明 5.設備利用率と負荷率 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 1 1. 三相交流による回転磁界 A+ c b b θ b 相磁界 a a 相磁界 B+ b c 巻線配置 三相交流 2π −θ 3 B− C− c 相磁界 a θ a 2π +θ 3 C+ c 位置θと各相磁界 A− 位置θにおける合成磁界 1 a 相の寄与分 : sin (ω t ) cos θ = {sin (ω t − θ ) + sin (ω t + θ )}L (注.単相交流による磁界 ) 2 2π ⎞ ⎛ 2π 4π ⎞⎫ ⎛ ⎞ 1⎧ ⎛ − θ ⎟ = ⎨sin (ω t − θ ) + sin⎜ ω t + θ − b 相の寄与分 : sin ⎜ ω t − ⎟ cos⎜ ⎟⎬ 3 ⎠ ⎝ 3 3 ⎠⎭ ⎝ ⎠ 2⎩ ⎝ 4π ⎞ ⎛ 2π 2π ⎞⎫ ⎛ ⎞ 1⎧ ⎛ + θ ⎟ = ⎨sin (ω t − θ ) + sin ⎜ ω t + θ − c 相の寄与分 : sin ⎜ ω t − ⎟⎬ ⎟ cos⎜ 3 ⎠ ⎝ 3 3 ⎠⎭ ⎝ ⎠ 2⎩ ⎝ 3 Φ θ = sin (ω t − θ )L 右欄の説明を参照 合計: 2 ⎡a相の注の通り単相交流による磁界は、互いに逆回転する二つの磁界で表される。 ⎤ ⎢ ⎥ ⎢回転子は、始動時に一方の磁界に従い回り始め回転を続けるので、単相電動機で⎥ ⎢は始動回路を設けて回転方向を定めてやる。 ⎥ ⎣ ⎦ 3 sin (ω t − θ )の意味 2 t → t + t ' のとき、θ ' = θ + ω t ' Φθ = の位置では、 3 N sin{ω (t + t ') − (θ + ω t ')} 2 3 = sin (ω t − θ ) 2 となり。一定に保たれている。 Φθ ' = すなわち、磁界が角速度ωで 回転することを意味する。 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 2 s n S 2. 三相三線式と単相二線式(低圧配電) 送電方式別電線1条当り送電電力の比較 実効値で線間電圧を V , 線路電流を I とする。 力率角をφとする。 三相三線式 P3 = 3 VI cos φ、 1条当たり送電電力 p31 = 電線 3 VI cos φ ≈ 0.57735KVI cos φ 3 単相二線式 P1 = 3 VI cos φ、 1 1条当たり送電電力 p11 = VI cos φ = 0.5000 VI cos φ 電線 2 ∴ p31 > p11 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 3 3.単相電力と三相電力 単相電力 e φ i 図のように、電流位相 が電圧より φ だけ遅れている場合を 考えます。 e = E m sin ω t , i = I m sin (ω t − φ ) p = ei = E m I m sin ω t sin (ω t − φ ) Em I m {cos (2ωt − φ ) − cos φ } 2 加法定理から、 p=− Em I m {cos φ − cos (2ωt − φ )} 2 E I = m m {cos φ − cos 2ω t cos φ − sin 2ω t sin φ } 2 E I = m m {cos φ (1 − cos 2ω t ) − sin φ sin 2ωt } 2 LL (1) = 三相電力 左の(1)式を用いて、三相分を 書くと、 E I p a = m m {cos φ (1 − cos 2ω t ) − sin φ sin 2ω t } 2 E I ⎧ ⎛ 2π ⎞ ⎞ 2π ⎞ ⎫ ⎛ ⎛ p b = m m ⎨cos φ ⎜⎜1 − cos 2⎜ ω t − ⎟⎬ ⎟ ⎟⎟ − sin φ sin 2⎜ ω t − 2 ⎩ 3 3 ⎝ ⎠⎭ ⎝ ⎠ ⎝ ⎠ E I ⎧ ⎛ 4π ⎞ ⎞ 4π ⎞ ⎫ ⎛ ⎛ = m m ⎨cos φ ⎜⎜1 − cos ⎜ 2ω t − ⎟⎬ ⎟ ⎟⎟ − sin φ sin ⎜ 2ω t − 2 ⎩ 3 ⎠⎠ 3 ⎠⎭ ⎝ ⎝ ⎝ E I ⎧ ⎛ 2π ⎞ ⎞ 2π ⎞ ⎫ ⎛ ⎛ p c = m m ⎨cos φ ⎜⎜1 − cos 2⎜ ω t + ⎟ ⎟⎟ − sin φ sin 2⎜ ω t + ⎟⎬ 2 ⎩ 3 ⎠⎠ 3 ⎠⎭ ⎝ ⎝ ⎝ E I ⎧ ⎛ 4π ⎞ ⎞ 4π ⎞ ⎫ ⎛ ⎛ = m m ⎨cos φ ⎜⎜1 − cos ⎜ 2ω t + ⎟⎬ ⎟ ⎟⎟ − sin φ sin ⎜ 2ω t + 2 ⎩ 3 ⎠⎠ 3 ⎠⎭ ⎝ ⎝ ⎝ p = p a + p b + p ca 3E m I m cos φ 2 これは、角速度 ωで振動する脈動電力で 、 角速度 ω で変動する部分が三相 分加えると0になるの で p の値は一定であって、 単相の場合のように脈 動はない。 平均値は = Em I m cos ϕ = E e I e cos ϕ 2 です。 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 4 4.無効電力供給源は、消費箇所に近いところに置くべきであることの説明 ケース1 電源側のVs側から無効電力Qを送電している状態 Vs R I jX 3相回路の1相分のみ表示 P − jQ P Q = −j Vr Vr Vr 電流 I = Vr P+jQ ⎧⎪⎛ P I = ⎨⎜⎜ ⎪⎩⎝ Vr ⎫⎪ ⎬ ⎪⎭ ⎧⎪⎛ P 送電損失 有効電力 Pl = ⎨⎜⎜ ⎪⎩⎝ Vr 2 2 ⎞ ⎛Q ⎟⎟ + ⎜⎜ ⎠ ⎝ Vr ⎞ ⎟⎟ ⎠ 2 2 2 ⎞ ⎛ Q ⎞ ⎫⎪ ⎟⎟ + ⎜⎜ ⎟⎟ ⎬ R ⎠ ⎝ Vr ⎠ ⎪⎭ ⎧⎪⎛ P 無効電力 Ql = ⎨⎜⎜ ⎪⎩⎝ Vr 2 2 ⎞ ⎛ Q ⎞ ⎫⎪ ⎟⎟ + ⎜⎜ ⎟⎟ ⎬ X ⎠ ⎝ Vr ⎠ ⎪⎭ ケース2 負荷側のV側から無効電力Qを供給している状態(負荷側にコンデンサ設置) V ' s R jX 電流 I ' = I’ Vr ⎛P I ' = ⎜⎜ ⎝ Vr 2 3相回路の1相分のみ表示 jQ P+jQ P P = Vr Vr ⎞ ⎟⎟ ⎠ 2 2 ⎛P 送電損失 有効電力 Pl = ⎜⎜ ⎝ Vr ⎞ ⎟⎟ R ⎠ ⎛P 無効電力 Q = ⎜⎜ ⎝ Vr ⎞ ⎟⎟ X ⎠ ' ' l Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 2 5 ケース1 電源側のVs側から無効電力Qを送電している状態 ⎧⎪⎛ P 負荷 P + JQ, 送電損失 有効電力 Pl = ⎨⎜⎜ ⎪⎩⎝ Vr Vs 側からの送り出しは、 ⎧⎪⎛ P 有効分 (P + Pl ) = P + ⎨⎜⎜ ⎪⎩⎝ Vr 2 ⎞ ⎟⎟ ⎠ ⎞ ⎛Q ⎟⎟ + ⎜⎜ ⎠ ⎝ Vr 2 2 ⎞ ⎛ Q ⎞ ⎫⎪ ⎟⎟ + ⎜⎜ ⎟⎟ ⎬ R, ⎠ ⎝ Vr ⎠ ⎪⎭ 2 ⎧⎪⎛ P ⎫⎪ ⎬ R, 無効電力 Ql = ⎨⎜⎜ ⎪⎩⎝ Vr ⎪⎭ ⎧⎪⎛ P 無効分 (Q + Ql ) = Q + ⎨⎜⎜ ⎪⎩⎝ Vr 2 ⎞ ⎛Q ⎟⎟ + ⎜⎜ ⎠ ⎝ Vr ⎞ ⎟⎟ ⎠ 2 ⎫⎪ ⎬X ⎪⎭ 2 2 ⎞ ⎛ Q ⎞ ⎫⎪ ⎟⎟ + ⎜⎜ ⎟⎟ ⎬ X ⎠ ⎝ Vr ⎠ ⎪⎭ ケース2 負荷側のV側から無効電力Qを供給している状態(負荷側にコンデンサ設置) ⎛P 負荷 P + jQ − jQ = P, 送電損失 有効電力 Pl = ⎜⎜ ⎝ Vr Vs' 側からの送り出しは、 ' ⎛P 有効分 P + Pl = P + ⎜⎜ ⎝ Vr ( ' ) 2 ⎛P ⎞ ⎟⎟ R, 無効分 Q + Ql' = Q + ⎜⎜ ⎝ Vr ⎠ ( ) 2 2 ⎞ ⎛P⎞ ⎟⎟ R, 無効電力 Ql' = ⎜⎜ ⎟⎟ X ⎠ ⎝ Vr ⎠ 2 ⎞ ⎟⎟ X ⎠ 両者の損失の差分を取るとケース1はケース2より下式だけ損失が多い。 2 2 ⎛Q⎞ ⎛Q⎞ 送電損失 有効電力 Pl = ⎜⎜ ⎟⎟ R, 無効電力 Ql' = ⎜⎜ ⎟⎟ X ⎝ Vr ⎠ ⎝ Vr ⎠ 1 のVs' 側からの送り出しは、この損失の差分だけケース2よりも大きくなる。 ケース ' すなわち、無効電力の必要な負荷側に遠いVs 側ではなく近い側である Vr 側にその 供給源(コンデンサ)を置くケース2が有利である。 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 6 5.設備利用率と負荷率 設備利用率はある発電機など個別の設備、あるいは原子力発電設備全体など 特定の設備あるいはその集団について使うことが多い。 すなわち、「昨年度の日本の原子力発電所の平均利用率は72%であった」などという 使い方が普通です。 すなわち、設備がどのくらい有効に稼動できたかを表すのに使います。 これに対し、負荷率は特定の地域合成で捉えるのが普通で、○○電力の負荷率は57% 、その中で△△地区は60%などと言う使い方をします。 これは、負荷の平坦さの度合いを表すのに使うもので、「深夜需要の開拓により負荷率 が55%から65%に向上した」などという使い方をします。 以上で数値は仮定のもので実際の数値ではありませんので念のため。 Copyright (c) 2009 宮田明則技術士事務所 7
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