広島県立広島高等学校 国語科(国語総合)学習指導案 指導者 1 日 時 平成22年6月 日( 2 対 象 高等学校第1学年5・6組(スタンダード クラス) 30名(男子8名 3 場 所 高等学校第1学年5組教室 4 単元・教材名 5 単元について 『伊勢物語』 ) 三谷 弘子 第2時限(10:00∼10:55) 女子22名) 「芥川」 単元・教材観 『伊勢物語』は,平安時代の歌物語で,各章段に必ず和歌が含まれ,そこにテーマが集約さ れている。そのことを可能にしたのが,和歌に集約される緊密な,切り詰められた文体である。 『伊勢物語』は,いつ,どこで,だれがといった物語の具体的な構成要素を明示せずに展開さ れることが多く,人物の内面や心情を語ることも少ない。置かれた状況,内面に連なる行動, 行為のみを最小限切り取って語っている。それだけ,読み手としては想像力が喚起される教材 であるといえる。教材としては定番で,短い文章の中にドラマがあるところが生徒を惹きつけ る。 本教材は, 『伊勢物語』の中の有名な章段で,前半は女を盗み出した男の,女を守りたい一心 であばらなる蔵に押し入れたばかりに鬼に喰われてしまう悲劇が描かれている。後半は後世の 人が書き足したと思われる叙述で,この話の種明かしとして実際にあった出来事を下敷きにし ていることが明かされる。特に前半はドラマ性に富み,男の先を急ぐ心情と,女の,男と一緒 にいることの安心感,物珍しさから来る「かれは何ぞ」という質問など,男と女の心情対比が 鮮やかである。 生徒観 本クラスは,1年生のスタンダードクラスで,これまでの古文入門期から2学期にかけて, 基本的な用言の活用,主な助動詞の活用と用法を学習し,夏休み前には少し長い文章にも挑戦 してきた。概ねまじめでおとなしい生徒が多いが,自信がないため,自分の意見を述べること に消極的な生徒が多い。発表するときの声も小さく,年度当初より,自分の意見を恐れずに全 員の前で発表させることを心がけてきたが,なかなか自信を持って答えることができないまま である。高校に入学してから,予習はきちんとしてくるが,家庭での復習が定着していない。 また,高校の授業の進度の速さにとまどうことが多く,古典を苦手としている生徒が多い。予 習,授業,復習のサイクルを定着させることを,まずは指導しているところである。 和歌については,これまで,『十訓抄』の,「大江山」で「掛詞」について学んでいる。この 後,「東下り」を読み,3学期に『万葉集』『古今和歌集』 『新古今和歌集』を読む予定である。 和歌についても多くを読んでいるわけではないので,まだ苦手意識はあるままである。 指導観 高等学校における新学習指導要領(平成 21 年3月)が示された。新教育課程では,各教科等 における言語活動の充実が改訂のポイントの一つである。基幹教科である国語科においては, このことを踏まえ,言語活動の充実を実際に図っていくことが求められている。 古典の授業の中では,古文の調子を味わいながら音読させることによって,内容理解を促し たり,小グループで話し合いをさせたり,意見発表をする際には根拠を示させたりすることに よって,内容について考えを深めさせることができる。本単元においても,斉読や音読,小グ ループによる意見交流などを位置づけている。また,苦手意識を払拭するため,新しい教材に 入る前には,古典常識や時代背景などの話をできるだけ詳しくするように心がけている。 本教材ではドラマ性のある構成を活かして,「男」「女」双方の立場から,一人称の物語を作 ることによって読みの深まりを意識させたい。すなわち 2内容のC読むこと(1)ウを, (2) アを通して指導することとする。 指導においては,作成する物語が,個別の勝手な読みから出発しないように,教えるべきと ころを明確にし,しっかり考えさせた上で,物語作成という課題に取り組ませ,伝え合いの中 で更に読みを深めさせる授業を目指したい。また,今回は,物語を書かせたが,脚本を書かせ たり,男の心情を考えながら朗読をさせたりすることも考えられる。 1 6 単元の目標 (1) 重要古文単語,助動詞,敬語の用法,修辞法に習熟し,的確に読解することができる。 【知識・ 理解/読む能力】 (2) 歌の内容と,その役割を理解し,歌物語のおもしろさを味わい,登場人物の人物像と,それ に対する筆者の見方を読み取ることができる。 【関心・意欲・態度/読む能力】 (3) 作品の時代や社会背景を知り,読解に活かすことができる。 【読む能力】 7 8 単元の評価規準(3時間) 関心・意欲・態度 読む能力 ・歌物語に興味を持ち,登 場人物の心情について進 んで話し合ったり,読み 取ったりして,他の作品 を読もうとしている。 ・叙述に即して,登場人物の人間 像と,それに対する筆者の見方 を読み取ることができる。 単元の指導計画(4時間) 次 時 学 習 内 容 関 読 知 伊勢物語の成立,内容や歌物語につい 1 て知り,前半の展開と内容を理解し, ○ ○ 女を喪失した男の心情を考える。 評 価 評価規準 いる。【関心・意欲・態度】 古文を正しく明瞭に読むことが 取 組 み できる。【読む能力】 の様子 作品世界に関心を持とうとして 【知識・理解】 後半の人物関係を系図を参照しながら 2 理解し,前半と後半の描き方の違いを 理解する。 ○ ○ 考えたことを自分なりに筋道を たててまとめることができる 【読む能力】 前半部分を現代語で物語の形にまとめ る。 (男の立場,女の立場に分け,それ 3 ぞれ独白体で書くこととする。 ) 【本時】 評価方法 発表 ノート 適切に現代語訳ができる。 1 発表 ノート 取 組 み の様子 読み取ったことからイメージを 取 組 み ○ ○ 広げ,考えたことを自分なりに物 語としてまとめることができる 2 の様子 【読む能力】 できあがった物語を一冊にまとめ,読 ○ 4 み合い,相互評価する。 9 知識・理解 ・平安期における貴族社会の在り 方やしくみ,日常生活について 理解を深めている。 ・古文単語,助動詞,敬語の用法 について正しく理解し,読解に 活かすことができる。 作品世界に関心を持ち,人の作品 評価表 を読み,評価することができる。 取 組 み 【関心・意欲・態度/読む能力】 の様子 本時の展開(本時:第2次・第3時) (1) 本時の目標 ① 読解した内容に従って,イメージを広げ,考えたことを自分なりに物語としてまとめる ことができる。 【読む能力】 2 (2) 学習の展開 学習活動 1 前時までの振り返り ○前時までの学習内容 を振り返る。 導 指導上の留意点 ○これまでの学習を振り返らせる。 ・ 『伊勢物語』の歴史的位置づけや, 「芥川」 で読み取った物語の世界,前段と後段のつ ながりや描かれ方の違いについて学習した ことを振り返る。 入 評価規準 (評価方法) 【関心意欲態度】 『伊勢物語』や, 平安朝の貴族の 生活について関 心を持っている。 (発表・取組みの 2 本時の学習内容確認 ○本時の目標を知る ○本時の目標と,学習内容を説明する。 様子) 3 音読と,内容把握 ○全文を意味を考えな がら音読する。 ○全文を音読させ,内容を振り返らせる。 ・場面 ・状況 ・男の心情の推移 ・女の立場と心情 【読む能力】 展 全体を通して内 容を大まかにつ かむことができ ている。 (発表・取組みの 4 物語の創作 ○男,女それぞれの立 場で一人称独白体の 物語を書く。 開 ○男の立場,女の立場のどちらかを選ばせる。 様子) 【読む能力】 ○書くときの留意事項として ・場面と心情がよく分かるように工夫して 書かせる。 ・読解を創作に活かすようにさせる。 読解した内容に 従って,イメージ を広げ,考えたこ とを自分なりに 物語としてまと めることができ る。 (取組みの様 子・作品) 4 ま と め 学習のまとめ ○学習成果を確認す る。 ○次時の学習内容を 確認する。 ○本時の目標について振り返らせ,自己評価 を記入させる。 ○本時の成果と課題を評価する。 ○次時の予告をする。 3
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