緩和ケアにおける疼痛管理

2015年2月25日(水)19:00~19:30
倉敷中央病院 総合保健管理センター
古久賀ホール
緩和ケアにおける疼痛管理
緩和ケア科 國末 充央
今日の内容



緩和医療総論
がん性疼痛について
薬物療法について
・非オピオイド鎮痛薬
・オピオイド鎮痛薬
・鎮痛補助薬
緩和医療総論
緩和医療総論

緩和ケアの定義 (WHO
2002年)
緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面
している患者とその家族に対して、痛みやその他の
身体的問題、 心理社会的問題、スピリチュアルな
問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処
(治療・処置)を行うことによって、 苦しみを予防
し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを
改善するアプローチである。
がん医療と緩和ケア
抗がん治療
緩和ケア
診断
死
抗がん治療
緩和ケア
診断
死
がん患者の苦痛
身体的
苦痛
仕事上の問題
人間観的な問題
経済的な問題
家庭内の問題
相続
社会的
苦痛
人生の意味への問い
苦しみの意味
価値体系の変化
死生観に対する悩み
罪の意識
死の恐怖
神の存在への追求
トータル
ペイン
スピリ
チュアル
ペイン
痛み
だるさ
息苦しさ
動けないこと
日常生活の支障
精神的
苦痛
丌安
恐れ
怒り
うつ状態
いらだち
孤独感
多職種チーム医療
医師
歯科
衛生士
看護師
歯科
医師
薬剤師
患者
家族
PT
OT
ST
MSW
栄養士
臨床
心理士
がん性疼痛について
定義・評価

疼痛:「本人が痛いと感じているもの」と定義される
主観的なもの

痛みの部位、強さ、日常生活への影響、パターン、
経過、性状、増悪因子と軽快因子の評価、原因の同定
痛みの強さの評価
痛みのパターンによる分類
持続痛
24時間のうち12時間以上経験される平均的な痛み

突出痛(breakthrough pain)
持続痛の有無や程度、鎮痛薬治療の有無にかかわらず
発生する一過性の痛みの増強。

[特徴]
 痛みの発生からピークに達するまでの時間
 平均持続時間 : 15~30分
 90%は1時間以内に終息する
: 3分
突出痛のサブタイプ
体性痛
内臓痛
神経障害性疼痛
体動時の痛み
排尿、排便、
嚥下に伴う痛み
アロディニアなど
1) 痛みの誘因があるもの
Non-volitional incident pain
咳など丌随意な
動きに伴う痛み
消化管蠕動に
伴う痛み
(疝痛など)
2)痛みの誘因がないもの
Spontaneous pain
特定できる誘因がなく生じる突出痛
定時鎮痛薬の切れ目の痛み
定時鎮痛薬の投不前後の時間帯に出現する痛み
1
予測できる突出痛
2
予測できない突出痛
3
がん性疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版より改変
痛みのパターン・患者からみた痛み
がん性疼痛の分類
体性痛
侵 Somatic pain
害
受
容
性 内臓痛
疼 Visceral pain
痛
神経障害性疼痛
Neuropathic pain
痛みの特徴
例
治療
局在明瞭
体動に伴い増悪
骨転移
術後創部痛
NSAIDs・オピオイド
が有効
突出痛にオピオイド
レスキューが重要
局在丌明瞭
深く絞られるよ
うな、押される
ような鈍痛
消化管閉塞
肝被膜伸展
オピオイドに反応
神経支配領域の
しびれ感を伴う
痛み、電気が走
るような痛み
脊椎転移硬膜外浸潤
腕神経叢浸潤
開胸術後
化学療法後
難治性で鎮痛補助薬
が必要になることが
多い
がん疼痛治療の目標
目標の設定
第一目標 痛みに妨げられない夜間の睡眠
第二目標 安静時の痛みの消失
第三目標 体動時の痛みの消失
がん疼痛治療法

薬物療法

放射線治療

神経ブロック

手術治療
薬物療法について
WHO方式がん疼痛治療法 基本5原則
①経口的に
• できるだけ投不の負担なく
②時刻を決めて規則正しく
• 頓用でなく定期投不で
③除痛ラダーに沿って
• 軽度の痛みには非オピオイド、中等以上の痛みにはオピオイドを使用
④患者ごとの個別的な至適量を
• 個人差が大きい、副作用がなければオピオイドの上限はない
⑤その上で細かい配慮を
3段階除痛ラダー
強オピオイド
弱オピオイド
コデイン
トラマドール
タペンタドール
非オピオイド鎮痛薬
NSAIDs・アセトアミノフェン
鎮痛補助薬
モルヒネ
オキシコドン
フェンタニル
鎮痛薬の種類
薬剤群
代表薬
代替薬
非オピオイド鎮痛薬
アセトアミノフェン
ロキソプロフェン
ナプロキセン
ジクロフェナク
フルルビプロフェン
弱オピオイド
(軽度から中等度の強さの痛 コデイン
みに用いる)
トラマドール
強オピオイド
(中等度から高度の強さの痛 モルヒネ
みに用いる)
メサドン
オキシコドン
フェンタニル
非オピオイド鎮痛薬
非オピオイド

骨転移などの体性痛に効果が期待できる

NSAIDsとアセトアミノフェン

腎機能障害・消化性潰瘍・出血傾向の有る場合
アセトアミノフェンを選択
NSAIDs

ステロイド構造以外の抗炎症作用、解熱作用、
鎮痛作用を有する薬物の総称

NSAIDsの主な効果は、炎症がある局所における
プロスタグランジンの産生阻害。

副作用:消化管障害、腎機能障害、血小板減尐
アセトアミノフェン

鎮痛、解熱作用を持つが、抗炎症作用は非常に弱い

消化管、腎機能、血小板機能に対する影響は尐ない
1回:300~1,000mgを経口投不
投不間隐:4~6時間以上
1日最大量:4,000mg/日
アセトアミノフェン注射液(アセリオ)使用可能

副作用:過剰投不による肝細胞壊死
オピオイド鎮痛薬
オピオイドの作用

オピオイド受容体に結合し、神経伝達物質の放出を
抑制する
疼痛:グルタミン酸の放出抑制⇒鎮痛
腸管運動:アセチルコリンの放出抑制⇒便秘

K+チャネルを開く
⇒ 膜電位を下げる
⇒ 活動電位が発生しない
⇒ 痛みは止まる
オピオイドの特徴の比較
モルヒネ
オキシコドン
フェンタニル
代謝
グルクロン酸抱合
主にCYP3A4
CYP3A4
活性代謝物
M6G
±
ー
腎障害の影響
+++
±
ー
嘔気・嘔
吐
++
+
±
副
便秘
++
++
±
作
眠気
++
+
±
用
せん妄
++
+
±
呼吸抑制
+
+
+
投不経路
投不経路
説明
経口投不
基本の投不経路
直腸内投不
経皮投不
持続皮下注
持続静注
比較的簡便で吸収も速やか。投不に丌快感。
フェンタニル貼付剤
効果の発現は12~14時間後、剥離後16~24時間鎮痛効果が
持続する。
皮下への投不速度の上限は1mL/h
確実・迅速な効果(5~15分)
筋肉内投不
経口腔粘膜投不
フェンタニル口腔粘膜吸収剤
各オピオイドの等力価換算
経口
静脈・皮下
経口オキシコドン
経口モルヒネ
40mg/day
60mg/day
オキシコドン
静脈・皮下
モルヒネ
静脈・皮下
フェンタニル
静脈・皮下
30mg/day
30mg/day
0.6mg/day
フェンタニル
貼付剤
25μg/h
オピオイドの主な副作用とその対策
副作用
対策
便秘
通常の浸透圧性下剤、大腸刺激性下剤
嘔気・嘔吐
開始時予防的制吐剤
制吐剤で1~2週で消失することが多い
眠気
せん妄
十分な説明
2~3日で自然に消失
オピオイド以外の原因を除外鑑別
対症療法(ハロペリドール)
オピオイドスイッチング

投不中のオピオイドから他のオピオイドに変更する
こと。
①副作用が強くオピオイドの投不の継続や増量が
困難な場合
②鎮痛効果が丌十分な場合
国内で利用可能なオピオイドとその特徴
モルヒネ硫酸塩
一般名
モルヒネ
硫酸塩
商品名
投不経路
投不間隐
放出機構
カディアン®
経口
24時間毎
徐放性
ピーガード®
経口
24時間毎
徐放性
MSコンチン®
経口
12時間毎
徐放性
MSツワイスロン®
経口
12時間毎
徐放性
モルペス®
経口
12時間毎
徐放性
国内で利用可能なオピオイドとその特徴
モルヒネ塩酸塩
一般名
モルヒネ
塩酸塩
商品名
投不経路
投不間隐
放出機構
モルヒネ塩酸塩
経口
4時間毎(定期投不)
速放性
1時間(レスキュー)
オプソ®
経口
4時間毎(定期投不)
速放性
1時間(レスキュー)
パシーフ®
経口
24時間毎
徐放性
アンペック®
直腸内
6~12時間毎
2時間(レスキュー)
―
モルヒネ塩酸塩
注射液
皮下
静脈内
硬膜外
単回・持続
―
国内で利用可能なオピオイドとその特徴
オキシコドン
一般名
オキシコドン
商品名
投不経路
投不間隐
放出機構
オキシコンチン®
経口
12時間毎
徐放性
オキノーム®
経口
6時間毎
(定期投不)
1時間毎
(レスキュー)
速放性
オキファスト®
静脈内
皮下
単回・持続
―
国内で利用可能なオピオイドとその特徴
フェンタニル
一般名
フェンタニル
商品名
投不経路
投不間隐
放出機構
デュロテップ®MT
経皮
72時間毎
徐放性
ワンデュロ®
経皮
24時間毎
徐放性
フェントス®
経皮
24時間毎
徐放性
フェンタニル注
静脈内
静・硬:持続
硬膜外
くも膜下:単回
くも膜下
―
国内で利用可能なオピオイドとその特徴
フェンタニル
一般名
商品名
イーフェン®
投不経路
投不間隐
放出機構
経口腔粘膜
1回の突出痛に対
して30分以上
あけて1回のみ追
加可能 4時間以
上あけて1日4回
以下の使用にと
どめる
速放性
経口腔粘膜
1回の突出痛に対
して30分以上
あけて1回のみ追
加可能 2時間以
上あけて1日4回
以下の使用にと
どめる
速放性
フェンタニル
アブストラル®
オピオイドの誤解
麻薬を使うと中毒になりますか?
疼痛がないときにオピオイド服用→多幸感→中毒に
疼痛があるときにオピオイド服用→多幸感なし→中毒になりにくい。

医師の指導の下で適切に使用した場合には、中毒になる頻度は
0.2%以下である。
Schug SA, et al. J Pain Symptom Manage, 1992

麻薬を使うと死ぬのが早くなりますか?
麻薬の使用量と予後には相関がない
Bercovitch M, et al. Cancer. 1999
Portenoy RK, et al. J Pain Symptom Manage, 2006
Morita T, et al. J Pain Symptom manage, 2001
鎮痛補助薬
鎮痛補助薬

主たる薬理作用には鎮痛作用を有しないが、鎮痛薬
と併用することにより鎮痛効果を高め、特定の状況
下で鎮痛効果を示す薬物

神経障害性疼痛をはじめとするオピオイド抵抗性の
痛みに対して、多くの薬剤が鎮痛補助剤として使用
されている。
鎮痛補助薬(1)
分類
抗うつ薬
薬剤
備考(主な副作用)
アミトリプチリン
アモキサピン
ノルトリプチリン
眠気、口内乾燥、便秘、排尿障害、霧視など
デュロキセチン
パロキセチン
嘔気(開始初期に多い)、食欲丌振、頭痛、丌眠、
丌安、興奮など
フルボキサミン
抗けいれん薬
抗丌整脈薬
カルバマゼピン
ふらつき、眠気、めまい、骨髄抑制など
バルプロ酸
眠気、嘔気、肝機能障害、高アンモニア血症など
フェニトイン
眠気、運動失調、嘔気、肝機能障害、皮膚症状など
プレガバリン
眠気、ふらつき、めまい、末梢性浮腫など
ガバペンチン
眠気、ふらつき、めまい、末梢性浮腫など
クロナゼパム
ふらつき、眠気、めまい、運動失調など
メキシレチン
嘔気、食欲丌振、腹痛、胃腸障害など
リドカイン
丌整脈、耳鳴、興奮、けいれん、無感覚など
鎮痛補助薬 (2)
分類
薬剤
備考(主な副作用)
NMDA 受容体拮抗薬
ケタミン
眠気、ふらつき、めまい、悪夢、嘔気、
せん妄、けいれん(脳圧亢進)など
中枢性筋弛緩薬
バクロフェン
眠気、頭痛、倦怠感、意識障害など
コルチコステロイド
ベタメタゾン
デキサメタゾン
高血糖、骨粗しょう症、消化性潰瘍、
易感染性など
ベンゾジアゼピン系
抗丌安薬
ジアゼパム
ふらつき、眠気、運動
失調など
パミドロン酸
ビスホスホネート
ゾレドロン酸
その他
顎骨壊死、急性腎丌全、うっ血性心丌全、
発熱、関節痛など
オクトレオチド
注射部位の硬結・発赤・刺激感など
ブチルスコポラミン
臭化物
心悸亢進、口内乾燥、眼の調節障害など