演習 [1] の詳解

物理学補足資料
というのが正統的な方法であるが,大変な計算となる.ここ
dχ
を 2 次方程式を解かずに求めてみよう.式
dθ
演習 [1] の詳解
では,χ0 ≡
1.(ベクトルの演算)
(3) に −2v02 をかけた式,
【解】 各自確かめなさい.
0=
2.(直線上の等加速運動)
【解】
通過する時の速度を v0 とすると,t 秒後の速度 v(t) と変位
2gχχ0
2gχ2 sin θ
2χv02
0 2
0=
+
−
2χ
v
tan
θ
−
0
2
cos3)θ
cos2 θ
( cos θ
2
2gx
2gχ sin θ − 2χv02 cos θ
2v02 tan θ−
χ0 =
2
cos θ
cos3 θ
x(t) は,
∫ t
a(t) dt = v0 +
−2 dt = v0 − 2t
0
0
∫ t
∫ t
x(t) = x0 +
v(t) dt = 0 +
v0 − 2t dt = v0 t − t2
t
v(t) = v0 +
0
(6)
極大となりうるのは χ0 = 0 の場合であるから,式 (6) の右
0
辺の分子=0 でなければならない.このときの値を χm , θm
と表される.停止した時間 t0 ,さらにその時の変位 x(t0 ) を
と表して,
求め,その値が 16 m であることより,
v(t0 ) = v0 − 2t0 = 0
∴ t0 =
(5)
を θ で微分する.
点 A を通過する時刻を時間 t の原点に取り,A を
∫
g
χ2 − (2v02 tan θ)χ − 2v02 h
cos2 θ
(
)
0 = 2χm gχm sin θm − v02 cos θm
v0
2
∴ tan θm =
v2
v2
v2
x(t0 ) = v0 t0 − t02 = 0 − 0 = 0 = 16 m
2
4
4
√
∴ v0 = 4 × 16 = 8 m/s
v02
1
g 2 χ2m + v04
,
=
gχm cos2 θm
g 2 χ2m
(7)
この値を式 (5) に代入して,
g 2 χ2m + v04
2v 4
− 0 − 2v02 h, g 2 χ2m = v04 + 2v02 gh
g
g
√
v2
2gh
1
∴ χm = 0 1 + 2 , θm = arctan √
g
v0
1 + 2gh
2
3.(高さ h の地点からの放物体)
0=
この問題は一見簡単に思えるが,実は計算が非常に煩雑で長時間を要し,
試験問題には向かない.しかしながら,自宅でじっくり学習するには恰好
の題材である.
v0
y
【別解】2 次方程式の解 x(θ) より求める方法
v0
微分を使っ
て計算する方法も簡単とは言い難いものであった.が,し
θ
かし方法 (4) に従った計算よりは,まだましである事が,実
際に (4) に従った計算をしてみると判る.
それでは早速.2 次方程式 (5) の解は,根の公式を用いて
mg
h
等加速度運動
tan θ ±
√
0
χ=
g
2 2v2 cos
2θ
x
0
O
=
【解】 この内容は高校までの学習で解決可能な問題である
=
が,計算がかなり煩雑である.運動はすぐに求まって,
x(t) = v0 cos θ t
1
y(t) = − gt2 + v0 sin θ t + h
2
gχ2
+ tan θχ + h
cos2 θ
2 次方程式 (3) を解いてχ(θ) を求め,
dχ
= 0 となる θ を探る
dθ
g
(
cos θ sin θ +
√
sin2 θ +
g
√
2gh
v02
) [
sin2 θ + β
β=
2gh
v02
]
(8)
(2)
数 v02 /g を除いた部分を θ で微分すると,
(√
)}
√
dχ
dz dχ
dz d {√
=
=
1−z
z+ z+β
(9)
dθ
dθ dz
dθ dz
)
√
dχ
−1 (√
z+ z+β
= √
dz
2 1−z
(
)
√
1
1
√ + √
+ 1−z
2 z
2 z+β
(
)
√
√
√ √
( z + z + β) 1 − z − z z + β
√
=
= 0 (10)
√ √
2 1−z z z+β
(3)
を満たす.よって,
[
v02
sin θ cos θ ± v02 cos θ
ここで,x > 0 より根号は正.z = sin2 θ > 0 とおいて,定
到達位置 χ = χ(θ) は
2v02
v02
(1)
(1) より t を x で表し,(2) に代入して,左辺 = 0 とおくと,
0=−
g
tan2 θ + 4 2v2 cos
2 θh
]
(4)
1
物理学補足資料
よって
5.(加速度円運動)
√ √
z z + β ⇒ 1 − 2z + z 2 = z 2 + βz
1
∴ sin2 θm = z =
(11)
2+β
1+β
cos2 θm = 1 − sin2 θm =
(12)
2+β
1
tan2 θm =
1+β
1
1
= arctan √
θm = arcsin √
2+β
1+β
√
1+β
= arccos
2+β
0=1−z−
(11),(12) を (8) に代入すれば,χm
aθ
a
ar
O
図 1 等加速度円運動する質点の加速度:角度方向成分 aθ がある
v2 √
= 0 1 + β が得られ
g
ため,a は原点を向いていない.
るはず.各自確かめること.
【解】
平面曲座標系の運動方程式,すなわち教科書 p.14
4.(鉛直ばね振動)
の (1·40) 式を適用する.ただし,円運動であるから,ṙ =
【解】
0, r̈ = 0 であり,速度は角度方向の成分 vθ しかない.よっ
題意より,単位質量変化 ∆m = 1 に応じた力の変
て題意より
化は ∆mg = g であり,それに応じた長さの変化が ` である
から,
vθ = Rθ̇ = 12θ̇ = 6 ∴ θ̇ =
g
g = k∆x = k` ∴ k =
`
v˙θ =
このばねに質量 m のおもりをつけた場合のばね振動の周
d(Rθ̇)
1
= Rθ̈ = 12θ̈ = 3 ∴ θ̈ = rad/s2
dt
4
従って,半径方向および角度方向の加速度は
期T は
2π
T =
= 2π
ω
1
rad/s
2
√
√
m
= 2π
k
( )2
1
= −3 m/s2
ar = 0 − Rθ̇ = −12 ·
2
1
aθ = Rθ̈ + 0 = 12 · = 3 m/s2
4
m`
g
2
以下,実際に単振動することを運動方程式を立てて確か
める.
単振動することの確認
◆ 時間微分の略記法
ばね定数 k ,自然長 `0 のばねの端
物理量 A の時間に関する 1 階微分,
2 階微分は,式が煩雑になるのを避けるために,以下のよう
に質量 m のおもりをつけ,他端を原点に固定して鉛直にた
にドット,2 重ドットを用いて略記することが多い.
らし,つりあわせた時のばねの伸びを ∆` とすると,
Ȧ ≡
mg = k∆`
dA
d2 A
, Ä ≡
dt
dt2
(*)
が成り立つ.つりあいの位置を原点,鉛直下向きを x 軸と
【別解】デカルト座標系を用いた場合 『何とかの一つ覚え』
定め,おもりを A だけ引っ張って静かに離したとすると,
ということで,とにかくデカルト座標系を用いて解析してみ
おもりの運動方程式は
よう.円の半径を R とすると,変位,速度,加速度の x, y
mẍ = mg − k(x + ∆`) = mg − kx + mg = −kx
√
と与えられる.これは角振動数 ω = k/m の単振動であ
成分は,
x = R cos θ, y = R sin θ
り,一般解は,
vx = −R sin θθ̇, vy = R cos θθ̇, v = Rθ̇
}
ax = −R cos θθ̇2 − R sin θθ̈
ay = −R sin θθ̇2 + R cos θθ̈
√
√
2
2
a = ax + ay = R θ̇4 + θ̈2
x(t) = C cos(ωt + α)
である.さらに,初期条件より,
ẋ(0) = −ωC sin(α) = 0,
∴ α=0
x(0) = C cos α = A
と表される.題意より,ある時の速さを v0 ,このときの速
さの変化率を v̇0 とおくと,
と任意定数 C, α が定まり,
v0 = Rθ̇0 (= 6), v̇0 = Rθ̈0 (= 3)
x(t) = A cos ωt
これは,原点を中心にして振幅 A の単振動を表している.
2
物理学補足資料
したがって,このときの加速度の大きさ a0 は
√
a0 = R θ̇04 + θ̈02 = R
√(
= 12
√(
v0
R
)4
(
+
v̇0
R
【解】 題意より,軌道の接線方向ベクトル t および法線方
向ベクトル n は
)2
t = (cos θ, sin θ), n = (− sin θ, cos θ)
√
√
6 )4 ( 3 )2
+
= 12 2−4 + 2−4 = 3 2
12
12
である.従って,加速度速度 a とそれぞれの方向ベクトル
との内積を計算する.加速度の x,y 成分は
と求まるが,加速度ベクトルの向きはすぐには把握できな
d2 x
d(vt)
=
=0
dt2
dt2(
)
d2 1 2
d2 y
gt = −g
ay = 2 = 2
dt
dt
2
い.もちろん,r̂ = er = (cos θ, sin θ) と a = (ax , ay ) のな
ax =
す角度 φ は
cos φ =
r̂ · a
=
a
θ̇2
−Rθ̇2
√
= −√
θ̇4 + θ̈2
R θ̇4 + θ̈2
であるから(これは明らかに重力加速度 g である)
,at ,an
はそれぞれ
であるから,この問題では
(
6
12
at = a · t = −g sin θ, an = a · n = −g cos θ
)2
1
cos φ0 = − √
= −√
3 2/12
2
∴ φ0 =
3
π
4
(1)
と求まる.
であることが求まる.これでも,図 1 の加速度ベクトルの
10
イメージが頭に浮かばないのではないだろうか.結局,a の
8
r, θ 方向成分を求めることになり,
6
at
(1)
aθ = a · eθ = a · (− sin θ, cos θ) = Rθ̈
(2)
加速度
ar = a · er = a · (cos θ, sin θ) = −Rθ̇2
at , an
4
という,平面極座標による表現にたどり着く.
2
0
-2
-4
【別解 2】自然座標系を用いた場合 自然座標系では,加速
an
-6
度を接線加速度 at = v̇ と法線加速度 an = v 2 /ρ に分解す
-8
る.円運動では曲率半径 ρ = R 一定であるから,
-10
0
2
4
at = v̇ = Rθ̈
an =
6
時間
v2
(Rω)2
=
= Rω 2 = Rθ̇2
ρ
R
8
10
t
図 3 接線加速度 at ,法線加速度 an の時間変化.初速度 v をパラ
メータにしている.v = 0.2β, β, 5β (β = 9.8).
となり,式 (1),(2) と同じ結果を得る.(an は中心方向を向
いていることから an = −ar に注意)
◆ 時間の関数として求める
6.(放物運動の接線加速度・法線加速度)
ということであるが,θ = θ(t) であるから,at ,an も時間 t
題意は θ の関数として表わせ
の関数として記述できるはずである.軌跡の接線の傾きを θ
y
とすると,
dy
dy dt
1
=
·
= −gt ·
dx
dt
v
( gdx)
∴ θ(t) = arctan − t
v
tan θ =
n
t
θ
x
である.この結果を式 (1) に代入すればよい.t = 0 では速
度ベクトルは水平右向きであり,at (0) = 0,an (0) = −g と
なる.また,じゅうぶん時間が経過した後は速度ベクトル
a
は鉛直下方を向いているので,at (∞) = g ,an (∞) = 0 に
図 2 加速度ベクトル a,接線方向ベクトル t,法線方向ベクトル
漸近する (図 3 参照).
n の位置関係
3
物理学補足資料
補題 1. (滑らかな円弧内面上の運動)
図のように,半径 R の滑らかな半球を内面に持つ台の端
O
から質点が静かにすべり出した.
静止
R
θ
補題 2. (斜面上の質点の運動)
y
( i ) 内面の各点における質点の速度 v ,円運動の向心力 f の
大きさ,内面から受ける垂直抗力 N ,加速度ベクトル
A
m
の大きさ a を求めなさい.
x
( ii ) θ = 45° における加速度ベクトルの大きさ |a| を求めな
さい.
h
【解答】
z(t)
θ
( i ) エネルギー保存則より,
1
mv 2 − mgR cos θ = 0
2
∴ v=
√
図 4 斜面上の質点の運動
2gR cos θ
平面極座標系の運動方程式の r 方向成分を考えて,
水平から角度 θ 傾いた滑らかな斜面(平面)上に質量 m
2
の小物体 A(質点と考えなさい) を静かに置いてはなしたと
v
= g cos θ − N/m
R
∴ f = −mar = 2mg cos θ
)
(
v2
= 3mg cos θ
N = m g cos θ +
R
ar = −
ころ,A は斜面上を滑り降りた.A が置かれた位置の高さ
を h として,次の各問いに答えなさい.
( i ) 斜面に沿って(最大傾斜方向)x 軸,斜面に垂直に y 軸
をとり,それぞれの成分について運動方程式を求めな
なお,θ 方向成分より
maθ = mR
さい.
d2 θ
d2 θ
g
= −mg sin θ ∴
= − sin θ
2
dt
dt2
R
( ii ) A に働く垂直抗力を求めなさい.
(iii) 斜面上の移動距離 x(t) を求めなさい.
は,t = t(θ) について形式的には解けて楕円積分で表現
( iv ) A の運動エネルギー K(t) を次の二通りの方法で算出し
される.また,加速度ベクトルの大きさは,
√
a=
=g
a2r
√
+
a2θ
=
√
(2g cos θ)2
4 cos2 θ + sin θ2 = g
√
+
一致することを確かめなさい.
(a)v(t) より直接算出する.
(−g sin θ)2
(b)水平面からの高さ z(t) を求め,力学的エネルギー
1 + 3 cos2 θ
保存則を用いて算出する.
( ii ) 45° では,
√
√
√
π
5
2
= g 1 + 3/2 = g
a = g 1 + 3 cos
4
2
【解答】
( i ) 垂直抗力を N として,y 方向には変位しないので,運
動方程式はそれぞれ
なお,加速度ベクトル a の変化は下図のようになる.
x 方向:mẍ = mg sin θ
∴ ẍ = g sin θ
y 方向:mÿ = N − mg cos θ = 0
( ii ) 式 (2) より
N = mg cos θ
4
(1)
(2)
物理学補足資料
(iii) (1) を時間 t で積分すると,
∫
v(t) = ẍ dt = g sin θ · t + C
∫
1
x(t) = v(t) dt = g sin θ · t2 + Ct + C 0
2
初期条件 v(0) = x(0) = 0 より,C = C 0 = 0
( iv ) 定義から v(t) = g sin θ · t を用いて直接算出される値を
Kd ,力学的エネルギー保存則 U + K = 一定 より求め
られる値を Kc とすると,
1
1
mv 2 = m(g sin θ)2 t2
2
2
Kc = mg(h − z) ∵ Kc + mgz = 0 + mgh
Kd =
(3)
高さの変化 h − z(t) は,斜面に沿った変位 x の鉛直方
向成分であるから,
h − z = x sin θ =
1
1
g sin θ · t2 · sin θ = (g sin θ2 )t2
2
2
式 (3) に代入して,
1
Kc = mg(h − z) = mg (g sin θ)t2 · sin θ
2
1
2
2
2
= mg sin θ · t
2
この値は Kd に等しい.
5