解答例(資料2-6)

電気回路学I及び演習 (web 公開:2015.6.2)
演習解答例 A–10
【演習問題解答】
〔資料 2–6〕
□問題 1.演習図 1(a) の回路は,理想的なコイルを短絡したものである.コイル L の
電流 i(t) を求めなさい.ただし,i(0) = 2 [A] とする (i(0) は,時間 t = 0 における電
流 i の値を表す).
ヒント:枝の特性式を使う.電圧 v はいくらか.
i
(解答例) 演習図 1(a) の回路について,コイルの枝の特性式から,
v(t) = L
di(t)
dt
L
(1)
v
このコイルの端子は短絡されているので,
(a)
v(t) = 0
(2)
i
式 (2) を式 (1) に代入して,
0=L
di(t)
dt
(3)
C
これを満たす i(t) は,
v
i(t) = A
ここで,A は定数である.問題より,i(0) = 2 [A] であるから,A = i(0).従って,
i(t) = i(0) = 2 [A]
···
(答)
(b)
演習図 1
式 (3) は,未知の変数 i(t) の微分を
含む方程式である.このような方程
※積分形の枝の特性式を用いた解き方については,演習問題 2 の解答例を参照のこと. 式を微分方程式と呼ぶ.式 (3) は,
最も簡単な微分方程式の一例である.
※実際にこのような回路を作ると,コイルの巻線などの抵抗により電流が減衰し,最
終的には電流 0 となる.ただし,超伝導 (電気抵抗=0) 状態のコイルでは,電流は減
衰せずに流れ続けることが実験的に確認されている (永久電流).
□問題 2.演習図 1(b) の回路は,理想的なカパシタを開放したものである.カパシタ
C の電圧 v(t) を求めなさい.ただし,v(0) = 10 [V] とする.
(解答例) 演習図 1(b) の回路について,カパシタの枝の特性式から,
∫
∫
∫
∫
1
1 t
1 0
1 t
v(t) =
i(t)dt =
i(τ )dτ =
i(τ )dτ +
i(τ )dτ
C
C −∞
C −∞
C 0
∫
1 t
= v(0) +
i(τ )dτ
(1)
C 0
このカパシタの端子は開放されているので,
i(t) = 0
(2)
式 (2) を式 (1) に代入して,
1
v(t) = v(0) +
C
∫
t
0 dτ = v(0) = 10 [V]
···
(答)
0
※微分形の枝の特性式を使うと,演習問題 1 と同様な解き方になる (計算はこの解答
例より簡単である).一般に積分より微分の計算が簡単なので,積分形で計算につまづ
いたときには微分形に切り替えて考えるのも一つの手である.
電気回路学I及び演習 (web 公開:2015.6.2)
演習解答例 A–11
□問題 3.問題 1 において,L = 10 [mH] とする.このコイルの蓄積エネルギー WL
を求めなさい.
(解答例) i(t) = 2 [A] および L = 10 [mH] より,コイルの蓄積エネルギー WL は,
WL =
1 2
1
Li = × 10 × 10−3 [H] × (2 [A])2 = 20 [mJ]
2
2
···
(答)
□問題 4.問題 2 において,C = 470 [µF] とする.このカパシタの蓄積エネルギー WC
を求めなさい.
(解答例) v(t) = 10 [V] および C = 470 [µF] より,カパシタの蓄積エネルギー WC
は,
WC =
1 2
1
Cv = × 470 × 10−6 [F] × (10 [V])2 = 23.5 [mJ]
2
2
···
(答)
□問題 5.演習図 2(a) の回路について,抵抗 R の電圧 v ,電流 i および電力 p を図示
しなさい.電流源の電流は,i = I sin ωt
i
v
(I > 0 , ω > 0) で表されるものとする.
i
p
R
i
v
(a)
p
L
v
(b)
p
C
(c)
演習図 2
(解答例) 演習図 2(a) の回路について,オームの法則 (抵抗の枝の特性式) と i = I sin ωt
から,
v(t) = Ri(t) = RI sin ωt
抵抗の電力 pR を表す以下の式 (教
科書 p.22) を直接利用しても良い.
次に電力は,次のように求まる.
pR (t) = Ri(t)2 =
p(t) = v(t)i(t) = RI sin ωt × I sin ωt = RI 2 sin2 ωt =
1 2
RI (1 − cos 2ωt)
2
式の変形には,次の関係を利用して
いる.
抵抗 R の電流 i,電圧 v および電力 p を図示すると,次のようになる.
sin2 θ =
1A:B
4
\
f f
.g g
Tf
.g
.f
g
:
Q4
\
QC4
f f
.g g
Tf
.g
.f
g
+ .
. C4
:
\
f
.g
· · · (答)
※上の電力 p のグラフから,抵抗には常に電力が入る様子が見てとれる (p(t) ≥ 0).な
お,ハッチング (電力のグラフの細かい平行線) は説明の都合上つけたもので,特に必
要のないかぎり描かなくてよい.
1
(1 − cos 2θ)
2
IA:B
C4.
2A:B
C4
v(t)2
R
f
g
Tf
.g
.f
g
:
電気回路学I及び演習 (web 公開:2015.6.2)
演習解答例 A–12
□問題 6.演習図 2(b) の回路について,コイル L の電圧 v ,電流 i および電力 p を図
示しなさい.電流源の電流は,i = I sin ωt
(I > 0 , ω > 0) で表されるものとする.
(解答例) 演習図 2(b) の回路について,コイルの枝の特性式と i = I sin ωt から,
v(t) = L
di(t)
= LIω cos ωt
dt
次に電力は,次のように求まる.
p(t) = v(t)i(t) = LI 2 ω sin ωt cos ωt =
式の変形には,次の関係を利用して
いる.
1 2
LI ω sin 2ωt
2
sin 2θ = 2 sin θ cos θ
コイル L の電流 i,電圧 v および電力 p を図示すると,次のようになる.
1A:B
4
IA:B
2A:B
04g
\
f f
.g g
Tf
.g
:
.f
g
\
Q4
+ .
. 04 g
f
.g
f
g
\
Tf
.g
.f
g
:
f
.g
f
g
Tf
.g
.f
g
:
Q +. 04.g
Q04g
···
(答)
※上の電力 p のグラフから,コイルに電力が出入りしている様子が見てとれる (入り:
p(t) > 0, 出:p(t) < 0).
□問題 7.問題 6 において,i = I cos ωt
(I > 0) とする.ω = 0 のときのコイル L の
電圧 v を求めなさい.また,得られた結果はどのように考えればよいか.
ヒント:ω = 0 は,直流を意味する.
(解答例) 演習図 2(b) の回路について,コイルの枝の特性式と i = I cos ωt から,
v(t) = L
di(t)
= −LIω sin ωt
dt
この式において ω = 0 とおくと,コイルの電圧は,
v(t)
= −LI · 0 · sin(0 · t) = 0
ω=0
···
(答)
となる.これは,今考えている ω = 0 では,コイルは短絡状態に等しいことを意味
する.
一方,このときの電流は,
i(t)
= I cos 0 = I = (定数)
ω=0
となり,一定電流すなわち直流電流がコイルに流れていることになる.
以上の結果から,直流電流をコイルに流した場合,コイルの電圧は 0 になり,コイ
ルは短絡状態とみなせる.
···
(答)
•
ω=0
は,ω = 0 という条件を入
れて計算した,ということを表す.
電気回路学I及び演習 (web 公開:2015.6.2)
演習解答例 A–13
□問題 8.演習図 2(c) の回路について,カパシタ C の電圧 v ,電流 i および電力 p を
図示しなさい.電圧源の電圧は,v = V sin ωt
(V > 0 , ω > 0) で表されるものと
する.
(解答例) 演習図 2(c) の回路について,カパシタの枝の特性式と v = V sin ωt から,
i(t) = C
dv(t)
= CV ω cos ωt
dt
次に電力は,次のように求まる.
p(t) = v(t)i(t) = CV 2 ω sin ωt cos ωt =
式の変形には,次の関係を利用して
いる.
1
CV 2 ω sin 2ωt
2
カパシタ C の電圧 v ,電流 i および電力 p を図示すると,次のようになる.
2A:B
7
IA:B
1A:B
N7g
\
f f
.g g
Tf
.g
:
.f
g
Q7
\
sin 2θ = 2 sin θ cos θ
+
.
. N7 g
f
.g
f
g
\
Tf
.g
.f
g
:
f
.g
Q +. N7.g
QN7g
···
(答)
※上の電力 p のグラフから,カパシタに電力が出入りしている様子が見てとれる (入
り:p(t) > 0, 出:p(t) < 0).
※抵抗,コイル,カパシタのいずれの場合でも,素子に入る電力 p は電源の 2 倍の速
さ (2ω) で振動する.
□問題 9.問題 8 において,v = V cos ωt
(V > 0) とする.ω = 0 のときのカパシタ
C の電流 i を求めなさい.また,得られた結果はどのように考えればよいか.
(解答例) 演習図 2(c) の回路について,カパシタの枝の特性式と v = V cos ωt から,
i(t) = C
dv(t)
= −CV ω sin ωt
dt
この式において ω = 0 とおくと,カパシタの電流は,
i(t)
= −CV · 0 · sin(0 · t) = 0 · · ·
(答)
ω=0
となる.これは,今考えている ω = 0 では,カパシタは開放状態に等しいことを意味
する.
一方,このときの電圧は,
v(t)
= V cos 0 = V = (定数)
ω=0
となり,一定電圧すなわち直流電圧がカパシタに加わっていることになる.
以上の結果から,直流電圧をカパシタに加えた場合,カパシタに電流は流れず,カ
· · · (答)
1 章の直流回路でコイルやカパシタが出てこなかったのは,直流回路ではコイ
パシタは開放状態とみなせる.
補足
ルとカパシタはそれぞれ短絡と開放になり,回路素子としては抵抗だけが残るからで
ある.これは,直流回路は交流回路の特別な場合(ω = 0) であると考えられることを
示している.
f
g
Tf
.g
.f
g
: