総合東京病院通信 Vol.25

Southern TOHOKU Healthcare Group.
Tokyo General Hospital
南東北グループ医療法人財団健貢会
総合東京病院通信
〒165-0022 東京都中野区江古田3-15-2
TEL. 03-3387-5421
（代）
2014.11
Vol.
25
南東北グループ医療法人財団健貢会
総合東京病院通信 Vol.25
●平成26年11月発行
●編集・発行／総合東京病院
の子供は非常に少ないのですが、口唇裂
特集
顔
の
形
態
異
傷常
あや
と
の
治
療
に
つ
い
て
や口蓋裂は東洋人においては 400 ∼ 500
形成・美容外科
センター長
人に 1 人発生します
兼口唇・口蓋裂
センター長
小耳症（写真 1）
のでかなりの患者さ
保阪善昭
んがいます。
日本では生後 3 カ
月頃に口唇裂の手術
を行いますので口唇
昨年、フィリピンから顔に重度の変形
が裂けた状態をみる
障害を持った子供（エンジェルちゃん）
ことはほとんどあり
が来日し、当院で手術を行う機会があり
ませんが、東南アジ
ました。
アなど福祉行政の整
いわゆる唇や上あごだけが裂けている
備されていない国で
口唇裂や口蓋裂の場合よりもっと重症
は大人になるまでそ
で、裂け目は目のほうにまで達していて、
のままで放置されて
眼の位置も異なっている顔面裂という病
きた患者さんが多く
気の子供でした。１回の手術ですべては
みられます。
治せませんでしたが、顔貌は大きく改善
顔面の先天異常と
しました。幸い手術後の経過も順調で無
してはこの口唇裂
事帰国させることができましたが病院の
や口蓋裂の他に、耳が小さかったり、耳
皆様や患者様にも多大なる御支援、御協
の穴もなく耳たぶしかない小耳症と呼ば
力をいただき心より感謝しております。
れる病気や鼻が極度に低く軟骨の発育障
エンジェルちゃんのような重度な変形
害を伴った鞍鼻、目が開きにくかったり、
術前
術後
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※この冊子は左開きが「総合東京病院通信」、右開きが「江古田の森だより」です。
特集
顔の形態異常や傷あとの治療について
やリンパ管を閉塞させたり、取り除いたり
先天性眼瞼下垂（写真 2）
する治療が行われます。
先天的なものとしてはこの他に赤アザ、
茶アザ、黒アザと呼ばれる皮膚の異常があ
りますが、これらは各種のレーザー機器を
術前
使って治します。どうしても取れないアザ
に対しては時に切除術や植皮術も行われま
す。また手術のあとや何かの原因でおこっ
た顔面神経麻痺の治療も行っています。
顔面の傷跡も多くみられます。子供の頃
に机の角にぶつけて口唇を切ったとか、転
2
術後
倒して眼の上を切ったなどはよくある事で
眼が小さくて瞼が完全に挙がらない眼瞼下垂
すが、自転車で転倒したり、交通事故など
や眼瞼包皮症などの病気があります。耳がな
で顔を切ったり、顔面の骨を骨折したりす
い小耳症の時には胸から肋軟骨を採取して耳
ることもよくみられます。顔の傷は出血が
の形を作ったり、側頭部に穴を開けて聞こえ
止まれば後は一度傷が治った後に手術的に
を良くする手術が行われます（写真 1）
。また
きれいに治すことができます。ですから怪
鼻がなかったり低かったりした場合には周囲
我をしてから数年経っても傷跡が目立つよ
の皮膚を使って鼻を作り、その中に骨や軟骨
うであれば一度受診して下さい。しかし顔
や人工物を入れ鼻を高くします。眼が開かな
面の骨が折れた時には、
骨は２週間位でくっ
い眼瞼下垂の時には大腿部から筋肉を包んで
ついてしまいますので、もし骨の位置がず
いる筋膜を少し採取して、その筋膜を上まぶ
れているような時には２週間以内に治した
たに移植して眼が開くようにします（写真 2）
。
ほうがよいといえます。もちろん程度が極
その他、頭の骨に異常があり特殊な形を呈し
くわずかであればそのまま治癒させてもよ
放置すると脳に障害が起きる頭蓋骨早期癒合
いでしょう。顔の骨の骨折は特に突出して
症、また顎の骨に異常があり、顔が左右に大
いる鼻骨や頬骨、下顎骨に多くみられます
きく曲がっている片側顔面萎縮症などさまざ
が、変形だけでなく物が二重にみえる眼窩
まな病気があります。これらに対してはそれ
底骨折や咬合異常をきたして物がうまく噛
ぞれ手術によって改善を計りますが現在では
めなくなる下顎骨骨折など機能にも影響を
治療技術も非常に進歩しております。
及ぼすことが少なくありません。顔面を強
また血管やリンパ管の異常によって顔面の
く打撲した時にはまず形成外科を受診して
一部が赤く盛り上がったり、また膨隆してい
下さい。その他柔道やレスリングなどで耳
る血管腫やリンパ管腫と呼ばれるものもあり
が団子のようになってしまった柔道耳や、
ます。これは先天的にその部位の血管やリン
何らかの手術によってできた傷跡など、ど
パ管が異常を呈していて勝手に増殖してしま
のような傷も治療しますのでお気軽にご相
う病気です。これは一つの腫瘍と考えて血管
談下さい。

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