総合東京病院通信 Vol.21

Southern TOHOKU Healthcare Group.
Tokyo General Hospital
南東北グループ 医療法人財団 健貢会
総合東京病院通信
〒165-0022 東京都中野区江古田3-15-2
2014.7
TEL. 03-3387-5421
( 代)
Vol.
21
南東北グループ 医療法人財団 健貢会
総合東京病院通信 Vol.21
●平成26年7月発行
●編集・発行/総合東京病院
中の予防についてお話ししたいと思います。
特 集
∼脳
生卒
活
習中
慣︵
病脳
の梗
コ
ン塞
ト︶
ロは
ー予
ル防
で
予で
防き
可
能る
!! か
∼?
◎脳卒中とはどのような病気か
神経内科
脳卒中センター
片山 泰朗
脳卒中は年間約 12 万人の方が亡くなり、わ
が国の死因別死亡率では第 4 位の座にある疾
患であります。その内訳は、脳梗塞が約 60%、
脳出血 30%、くも膜下出血 10% であります。
以 前 と 比 べ、 脳 梗 塞 の 割 合 が 増 え て い ま す。
最近では、その死亡率の低下は鈍化し、超高
齢化社会を迎えてむしろ増加傾向にあります。
また、年間約 30 万人の方々が脳卒中を発症し、
脳卒中は要介護原因から見た原因の第 1 位に
あります。
近年、脳梗塞治療は血栓溶解薬、rt-PA(組織
プラスミノーゲンアクチベーター)の使用や血栓
除去ディバイスの使用等、目ざましい進歩がみら
れていますが、rt-PA の使用は発症 4.5 時間と治
療制限時間があり、
その使用率は 4 ∼ 5% に留まっ
ており、大多数の患者さんでは、多かれ少なかれ
片麻痺、構音障害、失語、認知機能障害といった
重大な後遺症を残すこととなります。
脳卒中では急性期治療に目ざましい進歩があっ
たとはいえ、このような状況をみますと、予防に
勝る治療法はありません。そこで、ここでは脳卒
脳卒中とは、脳の血管が障害されることで、
脳組織の損傷が起こり、脳機能障害を生じる病
気、
「脳血管疾患」の総称です。脳卒中は、大
きく 3 つに分類されます。脳血管が詰まってし
まう「脳梗塞」
、
細い脳の血管が破れてしまう「脳
出血」
、そして主に動脈の分岐部に出来る動脈
瘤が破裂して起こる「クモ膜下出血」がありま
す。
(図 1)
脳梗塞
脳出血
クモ膜下出血
(脳動脈瘤の破裂による)
図1
「脳梗塞」は、脳の動脈が動脈硬化などで詰
まってしまい、その先の細胞に十分な血液が送
られず、酸素やブドウ糖不足となり、死んでし
まうことで生じます。また、
「脳梗塞」は、さ
らに 3 つのタイプに分類されます。1 つ目は、
「ラ
クナ梗塞」といって、比較的小さい血管が詰ま
るタイプ。また、太い主要な血管が詰まるタイ
プは「アテローム血栓性脳梗塞」と呼ばれ、動
脈硬化が原因となります。さらに、心臓に心房
細動や弁膜症があることで心腔内に「血栓」と
呼ばれる血の塊が生じ、それが脳血管まで飛ぶ
ことで詰まってしまう「心原性脳塞栓症」があ
PET-CTがんドック早期予約受付中
∼最先端医療PET-CTは「がん」の早期発見を可能にしました∼
10月より
検診開始
特別価格
PET-CT装置
54,000
(定価108,000円(税込))
(税込)
(平成26年9月末日までの申込完了分のみ適用となります。)
※この冊子は左開きが「総合東京病院通信」、右開きが「江古田の森だより」です。
特 集
脳卒中(脳梗塞)は予防できるか? ∼生活習慣病のコントロールで予防可能 !! ∼
ります。
(図 2)
タイプ別に分ける理由は、脳梗塞を起こす原因に
よって、治療法が変わってくるからです。ラクナ梗
塞やアテローム血栓性梗塞では抗血小板薬の投与
が、また心原性脳塞栓症ではヘパリンやワーファリ
ンといった抗凝固薬の投与が行われます。このよう
に、脳梗塞では原因を特定することが、その後の治
療法を選択する上でもとても大切なのです。
一方、脳出血やクモ膜下出血は、高血圧や動脈瘤
を主因として、脳の血管が破裂することで生じる脳
血管疾患です。
それぞれ発症の原因は異なりますが、共通するの
は、結果として脳細胞に障害を与え、脳に障害が起
きてしまうことです。
脳卒中の大まかな病型分類
ラクナ梗塞
アテローム
アテローム
血栓性梗塞
脳 梗 塞
栓子
血栓
血圧レベル別にみた脳梗塞・脳出血発症率
図3
降圧療法による脳卒中リスクの低下
脳卒中発症率 14試験のメタアナリシス
イ
ベ
ン
ト
発
症
数
42%リスク低下
(p<0.0001)
(件)
心原性脳塞栓症
脳卒中
脳内出血
頭蓋内出血
プラセボ
Collins,R.,et al.:Lancet 335:827-838,1990
図4
クモ膜下出血
脳卒中の一般の危険因子
図2
2
β遮断薬/利尿薬
収縮期血圧 10∼12㎜Hg 低下
拡張期血圧 5∼6㎜Hg 低下
◎脳卒中の危険因子や疾患
❶
高 血 圧
一般的に脳卒中では高血圧が最大の危険因子にな
ります。たとえば、1961 年からわが国で実施され
ている非常に有名な臨床研究に「久山町スタディ」
があります。この研究では、血圧値別の脳卒中の発
症率を調査しております。その研究結果によると、
脳出血も脳梗塞も、いずれも血圧が高い方ほど、発
症リスクが高まることが示されました。
(図 3)
また、他の多くの臨床研究でも同様の結果が出て
おり、一般的に、高血圧を治療すると、脳卒中の発
症リスクは40%低下する、
と考えられています。
(図4)
そのため、脳卒中の予防には、高血圧をしっかり
と治療する必要があるのです。
また、糖尿病や脂質異常症と脳卒中の関係につい
ても色々と分かっています。たとえば、糖尿病の方
は脳卒中の発症リスクが 2 倍から 4 倍増加するとい
われています。その他にも、心房細動、喫煙なども
危険因子としてあげられます。
近年は睡眠時無呼吸症候群(SAS)
、メタボリック
シンドロームや慢性腎臓病(CKD)の患者さんも、脳
卒中を発症するリスクが高いことが分かってきまし
た。したがって、これらの危険因子や疾病をしっかり
と管理することがとても大切になります。
(図 5)
❷
糖 尿 病
❸
脂質異常症
❹
心 房 細 動
❺
喫 煙
❻
飲 酒
脳卒中ハイリスク群
❶
睡眠時無呼吸症候群
(SAS)
❷
メタボリックシンドローム
❸
慢性腎臓病
(CKD)
(脳卒中治療ガイドライン 2009)
図5
◎危険因子・疾患の治療
高血圧に対しては、減塩食や肥満の改善の他、降
圧薬の服用による降圧療法、糖尿病に対しては食事
療法や運動療法を実施し、さらには各種糖尿病治療
薬による薬物療法を行います。脂質異常症に対して
は食事療法の他、
高脂血症治療薬の服用を行います。
また、心房細動では心原性脳塞栓症の発症リス
クが高いと評価された方は抗凝固薬を服用します。
このように治療を行い危険因子や疾病をコント
ロールすることによって脳卒中(脳梗塞)を予防
することが可能となります。