August 17, 2015(PDF:1.22MB) コア技術2

Yamaha Motor
Monthly Newsletter
August 17, 2015 (Issue No. 32)
新型「YZF-R1」に搭載されている 6 軸の姿勢検出ユニット「IMU」(Inertial Measurement Unit)
コア技術2 - 制御技術・FRP加工技術
“ヤマハらしさ”を高める付加価値の追求
モノ創りにおいて、
“ヤマハらしさ”とは、人間の感性に訴えるコンセプト・技術・デザインを追求すること。
その意味で、乗り物や動力を持つすべての製品を快適に、違和感なく操縦・操作できるようサポートする「制
御技術」
、成形の自由度の高さを活かし、斬新な設計・デザインのボート製品やプール製品で事業確立の核と
なった「FRP 加工技術」は、小型エンジンとともに、ヤマハ発動機のコア技術となっています。
今回は、この二つの技術領域についてご紹介しましょう。
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制御技術:機械の力を人間の感覚に近づける
ヤマハ発動機は、1982年発売のモーターサイクル「XJ750D」
に採用したFI(電子制御フューエルインジェクション)を手始め
に、さまざまな事業領域の製品に電子制御技術を織り込んでいま
す。その特徴を端的に物語る代表的な例が、1993年に製品化した
電動アシスト自転車「PAS」です。
その以前にも、自転車に電気モーターを搭載した他社製品が市
販されていましたが、それらはスイッチ操作で単純にモーター動
力を付加するもので、分類上は自転車でなく、50ccモーターサイ
写真は、欧州向けの電動アシスト自転車用ドライブユニット。
2015 年 4 月にはユニットの累計生産台数 300 万台を達成
クルやスクーターと同じです。そこでヤマハは、人間がペダルを踏み込む力をセンサーで読み取り、その力に応じ
て電子制御された電動モーターで補助する「PAS(Power Assist System)
」を開発。自転車の手軽さはそのままに、
坂道や向かい風、荷物積載時の負荷を軽減しました。
「PAS」開発のポイントは、人間が自転車を漕ぐ力に対して、モーター動力をいかに違和感なく融合させるか。
そのために、人間の微妙な感覚を最優先した高速な電子制御で、最適なアシスト量を演算し駆動ユニットを動か
す……。それがヤマハの電子制御技術なのです。
制御技術:より多くの製品をもっと快適に
さて「PAS」が誕生した1990年代、ヤマハは滑りやすい雨の路面や未舗装の路面に対応し、ブレーキの圧力をマ
イクロコンピュータで自動的に制御するアンチロックブレーキシステム(ABS)や、リアタイヤがスライドしすぎ
ないようエンジン回転数を制御するトラクションコントロールシステム(TCS)を市販モーターサイクルに導入。
またロードレースの最高峰GP500用マシンに電子制御サスペンションを投入するなど、厳しい実戦のなかでさまざ
まな電子制御の可能性を追求。その成果を市販モデルにフィードバックし続けており、6軸の「IMU」
(姿勢検出ユ
ニット)と5種の制御システムを搭載する2015年モデルの「YZF-R1」は、もっとも代表的な製品のひとつです。
さらに電動モーターで走るEV二輪車にとっては、電子制御が楽しさを支える不可欠な技術。ヤマハ第4弾となる
「E-Vino」の滑らかな乗り心地と静粛性は、2002年に登場した初代「Passol」から「EC-02」
「EC-03」を通じて培
った、ブラシレスDCモーターとロスの少ないギア駆動システムを統合する電子制御技術によって実現されました。
また、農地に病害虫防除薬剤などを空中散布する産業用無人ヘ
リコプターを初めて実用化したヤマハは、遠隔操作で安定感ある
飛行を確保するため、3軸ジャイロ搭載の姿勢制御装置など各種
の電子制御技術を開発。現在は自律航行が可能な装置も実用化
し、災害調査などでも活躍しています。
人間が機械を動かす。その能力や精度を高め、アシストするこ
とで、機械がまるで人間の一部のように機能する。ヤマハはその
一体感向上をめざし、制御技術を磨いているのです。
後輪ハブ部にブラシレスDCモーター、コントローラー、減速
機、ドラムブレーキなどを一体化した「Passol」の超薄型パワ
ーユニット
FRP加工技術:軽く強く美しい製品を求めて
ヤマハが、
「鉄より強くアルミより軽い」と言われた新素材、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)に注目した
のは1958年。初の海外レース「カタリナGP」に挑戦した際、川上源一社長(当時)がアメリカで購入したFRP
製アーチェリーがきっかけでした。
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石油から作られる一般的なプラスチックは、軽くて耐久性が高いなど多くの利点を兼ね備えた材料ですが、曲
りやすくて強度的に弱いという弱点も持っていました。そこで硬くて強いガラスなどの繊維に、不飽和ポリエス
テルなど熱で硬化する液体樹脂を混ぜて浸み込ませ、何層にも積み重ねて固めることにより、軽くて強い性質に
“強化”した複合材料FRPが生まれたのです。
さっそく生産技術の修得と製品開発に着手したヤマハは、1961年に最初のFRPボートとして、軽快な走行性の
「RUN-13」と安定性に優れた双胴艇「CAT-21」を発売。同時にレースや水上スキー、クルージング、フィッシ
ングなど豊富なイベントも提供し、日本で初めてのボートブームを呼び起こす原動力となりました。
FRPのもっとも基本的な製造方法はハンドレイアップ(手積み)と呼ばれ、製品の元となる型に表面材となる
ゲルコート樹脂を塗り、ガラス繊維を貼り、液体樹脂を塗布する手順を丹念に繰り返していきます。人形に水で
濡らしたガーゼを重ね貼りするような感覚で、微妙な曲線や凹凸も型どおりに再現できるため、設計・デザイン
の自由度が高い。表面の仕上がりが美しく滑らかで、固く傷つきにくい。工程がシンプルで修得しやすく、高度
な機械設備も必要としない。小さな破損なら容易に補修できる、
などが特長です。
ヤマハは、こうした利点をフルに活かし、その後も船型、サ
イズ、デザインが異なる個性的なレジャー向けボートや漁船、
和船など業務用途の船を数多く手がけ、船外機と並ぶマリン事
業の主柱を確立。1970年代以降は、社会的価値創出ビジネスの
一環として中南米やアフリカ、中東諸国でハンドレイアップに
よるFRP和船の現地生産を指導し、地域の漁業振興と世界市場
の拡大に役立てています。
ケニアでの FRP 和船製造風景
FRP加工技術:素材の特性を磨き、応用を広げる
FRPの製造方法は、ハンドレイアップばかりではありません。時代とともに製品をより強く美しく仕上げるSMC
(Sheet Molding Compound)やRTM(Resin Transfer Molding)など新しい製造技術が開発され、原料となる樹脂や
繊維には多彩なバリエーションが生まれました。
ヤマハも積極的にこれらを採り入れながら、各種マリン製品はもちろん、1968年に誕生したスノーモビルや1975
年から販売を開始したゴルフカーのボディパーツ、1983年発売のオリジナルヘルメットなどに展開。1987年に新開発
した産業用無人ヘリコプターでは、軽さと強さ以外にも重心位置の設定、静的バランス、捩れ特性、重量バランスな
ど高い精度が求められるプロペラにFRPを採用しています。
また1974年に世界で初めてオールFRPプールを発売して以来40
周年を超えたプール事業は、学校や幼稚園、公共施設、フィットネ
スクラブなどを対象に、組立式で工期が短く、デザイン性にも優れ
た画期的なユニットプールを数多く送り出し、いまや国内トップの
信頼を獲得しています。
今後も、FRPはさらに多彩な分野、製品でヤマハの事業活動を支
えていくことでしょう。
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軽量で比強度が高く錆びずに形状の自由度が高い FRP の特
性を活かし、さまざまなデザインのプールを手がけている
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スムーズな乗り心地や操作で人に寄り添う技術・電子制御に、さまざまな
乗り物の車体やプールに使われているFRP加工。使う人の感覚に、そして
生活やレジャーにあまりに溶け込んでいて、
「知らないうちに」私たちと共
にある技術ですが、気づかない程「自然に」ある、これってつまり本当の
使いやすさかなぁと思います。
スペック上の数値だけでなく人間感覚を重視する、ヤマハらしい製品に欠
かせないこれらの技術を改めて見直す機会となりました。
太田涼子
Global PR Team, Corporate Communication Division, Yamaha Motor Co., Ltd.
2500 Shingai, Iwata, Shizuoka, 〒438-8501 Japan
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*Prior to any use of the article(s) and photographs contained within this newsletter, please contact me.
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