June 15, 2015(PDF:1437KB) マザーファクトリー生産

Yamaha Motor
Monthly Newsletter
June 15, 2015 (Issue No. 30)
製造・生産のさまざまな技術やノウハウを生み出す本社工場
マザーファクトリー
生産の基盤強化を世界へ展開
世界で約 140 のグループ会社を展開し、モーターサイクルや船外機、ウォータービークル、RV など多彩
な製品を 200 以上の国や地域に提供しているヤマハ発動機。そのなかで、本社を中心とする日本の工場
は、企画・設計・デザインなどの開発セクションと緊密に連携しながら、より高度な製造技術、効率のよい
生産体制を追求。さらにそのノウハウを世界各地の生産拠点に広げ、ヤマハならではの独創的で高品質、高
機能なモノ創りを支えています。
今回は、こうしたマザーファクトリーとしての取り組みについて、創業以来の基幹事業モーターサイクルを
例にご紹介しましょう。
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日本から世界へ。広がる生産拠点
ヤマハ発動機が創立した1955年、唯一の製品、モーターサイクル
「YA-1」は現在の本社(静岡県磐田市)から北東へ約12kmほど離れ
た浜名工場(現・浜北工場/浜松市)で作られていました。小規模な
がら、「きれいで芯の通った模範的なものにしたい」という川上源一
社長の意向に沿って改装したばかりの工場は、まっ白にペイントされ
た建物が並び、主要な職場の床にはアルミ部品を傷つけないよう木製
フローリングを採用。「泥や埃を場内に持ち込むな。座敷だと思え」
と、出入りに靴の履き替えが義務づけられていました。
磐田市に新工場を建設したのは1966年秋(本社移転は1972年)の
整理整頓が行き届いた浜名工場のエンジン生産ライン
(1957 年)
こと。1960年代初めから北米、東南アジアを中心にモーターサイクルの輸出が本格化し、生産台数が1965年24
万台、1966年38万台と一気に増加したことに対応するものでした。
ところがその後、東南アジア各国は自国の産業振興をはかるため輸入制限に踏み切り、日本企業は輸出から現
地生産へと方向転換。ヤマハもCKD、技術・資本提携、合弁など相手国の事情に沿った形で現地組立・生産の方
法を探り、パール・ヤマハ(インド)
、サイアム・ヤマハ(タイ)
、功學社(台湾)などで小排気量スポーツやアン
ダーボーンモデルの生産・販売を開始しました。
それをきっかけに、ヤマハは世界各地に生産拠点を増強。2014年末現在、その数は17ヵ国26ヵ所に達し、年
間約580万台の二輪車を出荷しています。
マザー機能1:「ヤマハらしさ」を作り込む
そのなかで、日本の本社工場は生産台数こそ約20万台、世界の3%
に過ぎませんが、マザーファクトリーとしてヤマハのモノ創りを支
える中心拠点であることに変わりはありません。
「新製品の企画・開発段階から参加して意見を出し合い、こうい
う品質、性能をこの条件で実現して欲しいと言われれば、コンカレ
ントエンジニアリングのアンカー役として製造・調達・生産一体で
対応。要求値以上の内容で応えられるよう努めています」と話すの
自動車業界向けイベントで新型 YZF-R1 に搭載している
技術の数々を展示し、多くの来場者から注目を集めた
は、本社・生産企画部の杉村部長。
「独創のコンセプト、卓越した技術、洗練されたデザインが開発面でのヤマハ
らしさとするならば、私たち製造・生産部門にとってのヤマハらしさは、それを具体的な製品として形にする圧
倒的な現場力です」
そのもっともシンボリックな製品が、高難度の製造技術に挑戦し、FSチタンコンロッド、マグネシウム鋳造ホ
イール、アルミ燃料タンクを盛り込んだ2015年型YZF-R1。そのほか大型・小型のスポーツモデルやコンペモデ
ル、大型スクーター、スノーモビルなど約90機種が本社工場で生産され、日本、北米、欧州など先進諸国を中心
に輸出されています。
マザー機能2:海外拠点への技術支援
また本社を中心とする日本の工場には、つねに最新モデルを手がけ、そのなかで培ってきた製造・生産のさま
ざまな技術やノウハウがあります。それを必要に応じて海外拠点に展開し、品質、生産性を高めることも役割の
ひとつ。
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製造技術で言えば、ダイアジル(DiASil)鋳造。海外生産モデル
の半分以上が、この方法で作られるメッキレス・アルミシリンダー
を採用しています。ピストンやギアなどを初めから最終形に近い状
態で成形し、後加工の手間を減らすニアネット工法もその例です。
さらに生産方式としては、作業者一人ひとりの無駄な動作をなく
す理論値生産と、それに基づく分業流れラインが挙げられます。こ
れは、2008年のリーマンショック以降、生産台数が大幅に減少した
日本で抜本的な構造改革(工場の集約、生産規模・組立工数に応じ
た生産システムの導入など)を実施し、その成果から世界基準の組
インドネシア工場での振り向き作業ゼロの分業流れライン。
本社工場で確立された無駄のない製造方式は海外でも多く
導入されている
立方式として抽出。すでに数多くの海外拠点で導入され、稼働効率向上に貢献しています。
「40年近い生産実績があるインドネシアは、年間二輪生産台数も250万台とケタ違いに多く、新しい工法や生
産方式を導入するのに適した拠点のひとつ。最近は、基本的な技術開発を日本で行ない、インドネシアの大量生
産ラインに導入してからタイやベトナムなど近隣諸国にローカライズする方法を採っています。このように、い
くつかの海外拠点がマザー化していけば、本社はグランドマザーとしてもっと先行開発的な仕事、世界全体を見
渡した役割を担うことになるでしょう」
(杉村部長)
マザー機能3:最適地生産と“人財”育成
従来、スポーツバイクなどの高付加価値モデルはすべて日本から世
界に供給され、比較的工数が少なく、特殊な製造・生産技術を要しな
い中小排気量コミューターは、大消費地の工場で必要な台数を生産す
るという図式が一般的でした。しかし、各地の生産拠点が能力を高め
てきた昨今、台湾のように独自開発の製品を欧州や北米、日本などに
供給したり、インドネシアのYZF-R25、タイのTRICITY125のように
高付加価値モデルを手がける例も増えています。
今後プラットフォーム化が進めば、隣り合う国で同じモデルを同時
に作るのではなく、デザインやカラーリング、細部の仕様が異なるバ
リエーションモデルをいくつかの国でシェアし合う関係が一般化し
ていくに違いありません。
地産地消から最適地生産へと変化していくなか、杉村部長は「必要
工具の扱い方、作業の手順といった基本動作から、仕事に
向き合う心構えなど精神面まで教え込み、ヤマハ品質の伝
承を行なう「赤とんぼ道場」
なのは、高付加価値モデルにも対応できる生産能力と品質。そのために、いま力を入れているのが“人財”育成です」
。
日本の本社モーターサイクル組立工場には、創立時のモノ創りを象徴する製品・YA-1の愛称にちなんだ「赤とんぼ
道場」と呼ばれる座学・実習施設があり、専門の人財育成チームによって、新人、オペレーター、ラインキーパー、
職場リーダー、監督者まで各段階ごとの教育プログラムを実施。自分の職場の前後工程を理解し、複数の作業領域、
さらには異なる事業の工場までも担当できるマルチスキルなスタッフや、自らの作業に深く習熟し、2人で大型スポ
ーツモデルを完全組立できるエキスパート、幅広い視野と的確な判断力を備えたリーダー、監督者の育成が進んでい
ます。
このうち、基本知識や技能を徹底する活動は海外拠点の新人教育にも活かされ、リーダークラスの人たちが半年間
本社工場で実務研修できるシステムもありますが、
「海外拠点に対しては、まだまだこれから」と杉村部長。その取り
組みが成果を表わす時、ヤマハはさらに高い世界競争力を発揮するに違いありません。
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今年もインドネシアで二輪車開発の新会社、南インドとパキスタンで二
輪車製造拠点がそれぞれ稼動を開始。さまざまな国でヤマハ製品が日々生
み出されています。オートメーションが進んでも、世界のどこでも「ヤマ
ハらしさ」を形にするのは、人の手であることは今後も変わらないでしょ
う。
YMCでは年間を通して、モーターサイクルの組立工場見学のほか、お子
さま向けにさまざまな工作教室を開催し、モノづくりの楽しさを伝えています。私も今回「赤とんぼ道場」を見
学し、モノを生み出す喜びや責任を感じるとともに、モノづくりのDNAが伝えられていく姿に背筋の伸びる思い
でした。
太田涼子
Global PR Team, Corporate Communication Division, Yamaha Motor Co., Ltd.
2500 Shingai, Iwata, Shizuoka, 〒438-8501 Japan
TEL. 0538-32-1145 FAX. 0538-37-4250
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