創業者・川上源一挑戦、そして感動創造の原点(2)

Yamaha Motor
Monthly Newsletter
February 16, 2015 (Issue No. 26) ヤマハ発動機 25 周年にあたり「これからの発展を考える年にしよう」と挨拶(1980 年/川上会長) 創業者・川上源⼀一 挑戦、そして感動創造の原点(2) ピアノ、オルガンで名を成した⽇日本楽器製造(現・ヤマハ株式会社)の新事業として、モーターサイクルの
製造・販売に進出。⾃自ら陣頭指揮を執って最初の製品「YA-‐‑‒1」を完成させた川上源⼀一は、1955 年年 7 ⽉月、
ヤマハ発動機を創⽴立立。さらに国内最⼤大規模のレースで勝利利し、ヤマハモーターサイクルと「YA-‐‑‒1」の名を⼀一
躍全国にアピールしました。創⽴立立 60 周年年にあたって、川上社⻑⾧長の功績や⼈人となりをたどる第 2 回は、その
後の事業拡⼤大と世界進出を⽀支えたお客さま第⼀一の信念念、飽くなき挑戦の⾜足跡をご紹介します。 Yamaha Motor Monthly Newsletter
1 品質絶対:お客さま第⼀一のモノ創り 1955年年7⽉月1⽇日、従業員数約150名でスタートしたヤマハ発動
機は、「YA-‐‑‒1」に続いて175ccモデル「YC-‐‑‒1」も発売。急ピッ
チで⽣生産体制の整備・拡充をはかりました。 その過程で、⼤大きな課題となったのは品質管理理。組み上がった
製品の性能や機能にバラつきが多いため、出荷前に1台1台実⾛走
⾏行行テストを実施。また川上社⻑⾧長も⼯工場内にデスクを置き、毎⽇日の
ように不不良良品対策や⽣生産性改善の陣頭指揮を執りました。そして
ついに、2機種合計で⽉月間1,000台の⽣生産をクリアしたのです。 工場に掲げられていた「品質絶対」の看板
ところがそんな⽮矢先、⼤大きな危機が訪れました。オリジナル設計・デザインで創り上げた250ccスポーツモデ
ル「YD-‐‑‒1」(1957年年発売)に、簡単な補修では解決できない不不具合が発⽣生。川上社⻑⾧長は、全国の販売拠点にス
ペアエンジンを送り、対象⾞車車約3,000台のエンジンをまるごと交換するよう指⽰示し、わずか数カ⽉月ですべての対
応を完了了させました。現在のリコールに当たるこの⽅方法は、当時ほとんど例例がなく、莫⼤大な費⽤用と労⼒力力を要する
ものでしたが、川上社⻑⾧長は「ヤマハを信頼して買ってくれたお客さまに、絶対に迷惑をかけてはならない。クレ
ームが発⽣生したような時こそ、“品質のヤマハ”に対する信⽤用を得るチャンスである」と信念念を貫き、その姿勢は
全社に深く浸透していきました。 海外進出:技術と性能をレースで証明 「YA-‐‑‒1」「YC-‐‑‒1」「YD-‐‑‒1」。創⽴立立からわずか2年年で製品を3モデルに増強し、着々と販売を伸ばしたヤマハ。その
好調を⽀支えた要因のひとつが「製品の優秀性を証明し、広く知らしめる」ために始めたレース活動です。そこで川上
社⻑⾧長は、国内に続き海外レース参戦を計画。その最初の舞台が1958年年の「第8回カタリナGP」でした。このレースは
ロサンゼルスの南に浮かぶサンタ・カタリナ島で開催され、欧⽶米の有名メーカーが多数参加するビッグイベント。
「世
界に通⽤用しないものは商品ではない」という信念念で磨いてきた技術と性能を試す絶好の機会です。 川上社⻑⾧長も現地で⾒見見守るなか、250ccファクトリーマシン「YDレーサー」を投⼊入したヤマハチームは、エース
ライダーがたび重なるアクシデントにも負けず果敢な追い上げを⾒見見せ、6位というリザルトに関わらず1万5,000
⼈人の観客を魅了了。盛んな称賛を浴びました。 それをきっかけに、1961年年からヨーロッパの世界GPやアメリカ本⼟土のデイトナレース、さらにインドネシア、マ
レーシアなどレース活動の規模を⼀一気に拡⼤大。現地モータースポーツファンの⼼心をつかむことで、メキシコやアメリ
カの⽇日本楽器製造の現地法⼈人や各国代理理店を拠点にスタートした輸出販売の促進に⼤大きく貢献したのです。 挑戦:マリン事業への進出 ⽇日本楽器製造の社⻑⾧長に就任して間もなく、世界を旅して回っ
た際にマリンレジャーを満喫する欧⽶米のライフスタイルを⽬目に
した川上社⻑⾧長は、⽇日本にもボートやヨットなどマリンレジャー
を楽しむ時代がきっとやってくると確信しました。そして以前
から温めていた「モーターサイクルのエンジンを使って船外機
を作る」というアイデアの実現に動き始めたのです。 1960年年に発売した最初の製品「P-‐‑‒7」は、「YA-‐‑‒1」の125cc
エンジンをベースに開発したもので、1961年年にはさらに⼩小型の
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ヤマハ初の FRP 製ボート「CAT-21」 2 「P-‐‑‒3」を発売。沿岸漁業やレジャー施設など中⼩小船舶を扱う⼈人たちを中⼼心に普及し、やがて業務からクルージ
ング、フィッシング、スポーツまで幅広い⽤用途の製品へと発展していきました。 その⼀一⽅方、川上社⻑⾧長はカタリナGPに同⾏行行した際、アメリカで軽くて強い新素材・FRPを使ったボートとアーチェリ
ーに注⽬目。帰国後さっそく成形技術の修得を指⽰示し、1960年年にはヤマハ最初のFRP製モーターボート「RUN-‐‑‒13」
「CAT-‐‑‒21」を発売。現在もヤマハのマリン事業を担う2つの製品、船外機とボートがそろい踏みしたのです。 普及と需要創造:市場は⾃自ら創り出すもの 「イタリアではいつも、楽しげに歌い楽器を奏でる⼈人の姿が⾒見見
られた。しかし⽇日本に帰ってくると、オルガンがたくさん売れて
いるはずなのに、演奏する⾳音は聞こえてこない。せっかく買って
いただいても、弾いてもらえなくては意味がない」。こうした、
⾳音楽をもっと⾃自然に、⾝身近に親しんでもらおうという川上社⻑⾧長の
思いから1954年年にスタートした⼦子ども向けの⾳音楽教室は、やが
て⽇日本楽器製造から⾮非営利利の財団法⼈人「ヤマハ⾳音楽振興会」へと
引き継がれ、グローバルな⾳音楽普及活動に発展しました。 製品を売る⼿手段ではなく、⾳音楽を通じて⼈人々の⽇日常⽣生活に、⼼心
豊かな安らぎや潤いを提供したいという純粋な思い。ヤマハ発動
「DT-1」シリーズの発売に合わせ、ヤマハはオフロード走行
に親しむ教室やワンメイクレース(写真/1970 年頃)を開催。
全国で大きなブームとなった 機は、そうした考え⽅方やノウハウを、⽇日本でまったくなじみのなかったマリンレジャーの普及に活⽤用。1962年年、
⽔水上スキーの体験イベントや安全に楽しむための教室を開始し、1970年年代にはそのメニューをさらに拡⼤大してい
きました。またモーターサイクル事業でも、1960年年代後半から⼈人気が⾼高まってきた新ジャンル、モトクロスやト
ライアルに着⽬目。オフロード製品ラインアップの拡充と同時に体験会や教室、競技会の開催、⾛走⾏行行施設の整備を
全国規模で推進。普及と需要創造を兼ねた独⾃自の市場開拓拓スタイルを確⽴立立しました。 飽くなき挑戦:事業の多軸化 「会社が業績を挙げ、資本的に余裕があるうちに新しい仕事の
⽷糸⼝口を作っておく」という信念念に従い、モーターサイクル事業を
興し、マリン事業に進出した川上社⻑⾧長は、1960年年頃から四輪輪ス
ポーツカーの研究を指⽰示。1964年年にはトヨタ⾃自動⾞車車と提携し、
「トヨタ2000GT」の開発・製造に乗り出しました。 またその頃、北北⽶米で⼈人気を集めていたスノーモビルにも注⽬目。
試⾏行行錯誤の末、1968年年、「SL350」を発表して新たな事業化に
成功しました。そして1970年年代に⼊入ると、汎⽤用エンジンを利利⽤用
スポーツカーの試作車に乗り、開発担当者の説明を受ける
(1964 年) した発電機、除雪機、レーシングカート、FRP技術を⽣生かしたプ
ールなど多彩な製品開発を促進。1974年年、第2代・⼩小池久雄社⻑⾧長に後を譲るまで、つねにヤマハ発動機を牽引し
続けたのです。そして創業者である川上社⻑⾧長が⾃自ら⽰示したチャレンジスピリットやお客さまに感動を提供し続け
る姿勢はDNAとして脈々と引き継がれ、陸陸・海・空をフィールドに、グローバルに事業を展開するヤマハ発動機
の原動⼒力力となっています。川上源⼀一⽒氏は2002年年5⽉月25⽇日、90歳で逝去されましたが、⽣生前の輝かしい功績が評価
され、2012年年には「⽇日本⾃自動⾞車車殿堂」殿堂者に選ばれました。 Yamaha Motor Monthly Newsletter
3 Message from the Editor
前回のヤマハ発動機誕⽣生の時代は”昔だなぁ”と感じた⽅方もいらっしゃるか
もしれません。今回は多軸化・海外進出などを経て、現在私たちが働く会社
の姿にぐっと近づきましたね。 「モノ」を作ることだけが⽬目的ではない。「モノ」が⽣生む感動、⼼心豊かなくら
しを創造するために「モノ」を作るという、まさに今の私たちの仕事のコアは
既に初代社⻑⾧長の信念念にあったのですね。挑戦を前に、迷ったりつまずいたり、
⾜足がすくんだ時は……原点に戻ると案外答えが⾒見見つかるかも知れません。 海外進出の⾜足がかりとなった海外レースへの参戦ですが、去る2⽉月5⽇日
にマレーシアで開催されたヤマハ モータースポーツ プレス発表会の
様⼦子が以下のURLからご覧になれます。今年年もレースから⽬目が離離せま
せん! http://www.image.net/yamaha_̲racing_̲media_̲meeting_̲2015 さて、次回からは「ヤマハ発動機のコア」について、また新たなトピックでお送りします。 太⽥田涼⼦子 Global PR Team, Corporate Communication Division, Yamaha Motor Co., Ltd.
2500 Shingai, Iwata, Shizuoka, 〒438-8501 Japan
TEL. 0538-32-1145 FAX. 0538-37-4250
E-mail: [email protected]
*Prior to any use of the article(s) and photographs contained within this newsletter, please contact me.
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