◎モヤモヤ病について 患者 は 二 一 歳 の 女 性 。 約 三 年 前 に 右 手 麻 痺 で 約 一ヵ月入院し、モヤモヤ病と診断された。特に既 往歴はない。今回、仕事中に頭痛、次いで左手の シビレ感。CTで脳基底部核付近に小出血の所見 があり、数時間で症状は消失したが、数日後に再 び二回のTIA様小発作があった。 モヤモヤ病の診断の要点、臨床症状の特徴、類 似疾患、予後および治療法は? また、日常生活 での注意点は? ︵東京都・山田道生、内科︶ あきら 回答岡山大学脳神経外科教授西本詮 モヤモヤ病診断の要点 モヤモヤ病は、若年者が脳卒中様症状を呈した によって起こる︶が多い。TIAは再発し易く、 脳梗塞を併発して、麻痺が回復しなくなる場合が あるので、TIAを頻発するものに対しては、後 述するような治療が必要になる。診断には脳血管 撮影が必須で、その特徴的な所見により、診断が 確定する。すなわち、内頸動脈は頭蓋内に入った 部分︵サイフォン部︶で、両側とも閉塞し、その 近傍の脳底部に、モヤモヤとした︵これがモヤモ ヤ病の名称の由来︶異常な血管網が造影される。 従って、本症は別名脳底部異常血管網症とも呼ば れるし、また脳底動脈輪︵ウイリス動脈輪︶が、 ウイリス動脈輪閉塞症とも呼ばれている。 内頸動脈サイフォン部で閉塞することになるので、 多く、小児例では一過性 脳 虚 血 発 作 ︵ T I A ︶ を ピークは、一〇歳以下の小児と三〇歳代の成人に やくったり、運動会で走ったりしたようなとき、 ーフー吹いたり、ハーモニカを奏したり、泣きじ 小児では、過呼吸時、例えば熱いラーメンをフ 臨床症状の特徴 呈するものが多く、成人 例 で は ク モ 膜 下 出 血 ︵ 脳 片麻痺や言語障害、脱力などのTIAで始まるこ 場合、まず考えるべき疾患の一つである。発病の 基底核付近に出血し、それが脳室に穿破すること (691) 9CLINICIAN’88No.373 とが多い。これらは完全に回復し、あるいは反復 し、麻痺が左右交替したりすることもあるが、予 管撮影により明らかに鑑別される。 麻痺を残して回復し、再出血をきたすことは少な ものもある︵一〇%︶が、多くは完全に、または クモ膜下出血︵脳出血︶発作で始まる。死亡する のもあるが、初発症状としては、その六割以上が、 成人では、小児同様、 T I A や 梗 塞 を 呈 す る も の血流を脳内へ流すことが行われる。これには種々 成績をあげている。血行再建術では、外頸動脈系 に血行再建術が行われ、特にTIA発作にはよい る。これで症状改善がみられない場合は、外科的 ど︶、脳血流・脳代謝改善剤の内服などが行われ 抗血小板凝集剤︵アスピリン〇二二9一日量な 治療 い。小児では、出血はまれである。一般的に予後 の方法があるが、血管吻合を行わず、側頭筋や浅 後良好なものと、脳梗塞︵持続的麻痺︶に移行す は、健康なもの約六〇%、神経症状を残すが生活 側頭動脈を脳表に接着する比較的侵襲の軽い手術 本症は原因不明で、根治的な治療法はないが、 可能二〇%余り、重度神 経 症 状 約 一 〇 % 、 死 亡 約 が行われる。TIAは梗塞に移行する可能性が少 るものとに分かれる。六歳未満で、幼時発症する 七%で、比較的軽症なものが多い。厚生省特定疾 なくないので、内科的治療で消失しないときは、 から、脳循環改善が主な治療法で、内科的には、 患︵難病︶に指定され、 研 究 班 の 調 査 で 約 一 五 〇 早目に外科手術に踏み切る方がよい。日常生活の TIAも梗塞症状も脳循環不全によるものである 〇例余りが集められている。鑑別すべきものとし 注意点としては、特別なものはないが、過呼吸を ものほど進行性で、予後 が 悪 い と い う 報 告 も あ る 。 ては、脳動静脈奇形、脳動脈瘤、脳血栓・塞栓な きたすような運動は避けた方がよいと思われる。 知能障害、てんかん、視力障害を伴うものもある。 どの脳血管性疾患、てんかんなどがあるが、脳血 CLINICIAN,88 No.373 10 (692)
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