8章 ファンデルワールス結合とファンデルワールス結晶

8章
ファンデルワールス結合とファンデルワールス結
晶(分子性結晶)
出典 有機物性化学の基礎、斉藤軍治、化学同人 2章(2006)
物性化学、松永義夫、裳華房(s
年)4章 (高学年向き)
物性化学、松永義夫、裳華房(s60年)4章
Wikipedia
復習と目的
●水素、酸素、炭酸ガスなどの分子は、共有結合(7章)で形成さ
れた分子である。共有結合を、ハサミなどを用いて切断して、バラ
バラの原子にすることは不可能である。ところが、これらの分子の
集合体でできた固体、たとえばCO
集合体でできた固体、たとえば
2の固体であるドライアイスを布
巾でつつんで、硬い部分に打ち付けて粉砕したり、ドライバーなど
で削りとることは簡単である。同様なことが 水についても言え、水
分子を酸素原子と水素原子に素手で切断することは不可能である
が、水の固体である氷を粉砕するのは容易である。黒鉛(図
参照)
が、水の固体である氷を粉砕するのは容易である。黒鉛 図3.5参照
参照
は、ベンゼン環が蜂の巣状に結合した共有結合板状平面が何枚も
積み重なった層状化合物である。鋭利なカミソリを用いて、黒鉛の層
に沿って層を切り離すこと、また、セロテープで表面一枚をはがし取
り黒鉛一枚の物質(グラフェン
り黒鉛一枚の物質(グラフェン)を得ることは簡単であるが、共有結
グラフェン)を得ることは簡単であるが、共有結
合平面を切断するのは極めて難しい。
●分子の集合体である分子性結晶
●分子の集合体である分子性結晶(ファンデルワールス結晶、例え
分子性結晶(ファンデルワールス結晶、例え
ばドライアイス、
ドライアイス、ワックス)において、個々の分子は、一般に大きな結
ワックス)において、個々の分子は、一般に大きな結
合エネルギーをもつ共有結合やイオン結合(3章)、配位結合(
合エネルギーをもつ共有結合やイオン結合( 章)、配位結合(6章)
章)、配位結合( 章)
で形成されているが、分子間をつなぐ結合は人の指でも十分切断で
きるほど弱い結合である。この弱い結合をファンデルワールス結合とよ
結合とよ
び、ファンデルワールス力
び、ファンデルワールス力が主要なものである。結晶を形成するのに
ファンデルワールス力が主要なものである。結晶を形成するのに
必要なエネルギーの目安は格子エネルギー(=成分分子やイオンに
分離するに必要なエネルギー、昇華熱)である。ファンデルワールス
分離するに必要なエネルギー、昇華熱)である。ファンデルワールス
結晶の格子エネルギーは数10
結晶の格子エネルギーは数 kJ mol−1であり、イオン結晶(この結
合も人の手で切断可能なものが多い)の格子エネルギー250~
~1000
合も人の手で切断可能なものが多い)の格子エネルギー
kJ mol−1に比べてかなり小さい(表
。
に比べてかなり小さい 表4.1)。
●この章の主題は、ファンデルワールス力である。ファンデルワー
ルス相互作用のなかで最も重要な分散効果(ロンドンの分散力とし
て知られる)の起因となる瞬間的電場とそれによる分子間相互作用
エネルギーの大きさを示す。また、分子が充填して結晶を形成する
ときの最密構造と各原子のファンデルワールス原子半径、さらには
有機分子性結晶でのいくつかの重要な特徴を述べる。
表8.1 代表的な4種の結晶と例
結晶の種類
分子性結晶
イオン結晶
共有結合結晶
金属
代表
Ar
O2
NaCl
CaF2
C(ダイヤモンド
ダイヤモンド)
ダイヤモンド
Si
Hg
Na
Cu
Ti
W
凝集エネルギー / kJ/mol
7.74
7.1
764.0
1680
711
446
65
107
336
468
859
融点 /°°C
−189.4
−219.1
803
1360
3572
1410
−38.8
97.8
1083
1725
3400
8.1) ファンデルワールス力 8.1.1) 分散効果
全ての原子、分子に働く弱い力である。瞬間的電場Eにより誘
誘
起分極p
分極率)が生じることにより、分子間相互作
起分極 (~αE、α:分極率
分極率
用エネルギーが発生する。生体組織の形成にきわめて重要な
分子間相互作用である。無極性の原子や分子にも働き、分子
や原子が接近して電子雲がある程度重なり合うと強く現れる。
表8.2にハロゲン、リン、硫黄、希ガスの融点・沸点を示す。分
子量が大きく、電子雲が広がって分極率が大きい右側の分子
ほど分子間相互作用エネルギーが大きく、融点、沸点が高い。
表8.2 ハロゲン分子、リン、硫黄の沸点、希ガスの融点・沸点
F2
Cl2
Br2
I2
P4 白燐(黄燐
白燐 黄燐)[猛毒
黄燐 猛毒]
猛毒
融点/°
融点 °C
-223 -101
-7.3
113.7 44.1
沸点/°
沸点 °C
-187 -34.1
58.8
184.5 280
He
融点/°
融点 °C
沸点/°
沸点 °C
Ne
-248.6
-268.9 -246.0
Ar
-189.4
-185.9
Kr
-157.2
-153.2
紫燐[無毒
無毒]
無毒
硫黄 S8
589.5
119.0
444.6
Xe
Rn
-111.9 -71
-108.1 -62
図8.2に、距離
に、距離r離れた無極性
に、距離 離れた無極性2分子(○)に生じる誘起
離れた無極性 分子(○)に生じる誘起分極
分子(○)に生じる誘起分極pを矢印
分極 を矢印
で示す。電場Eがかかったときの分子の電子雲の歪みやすさの目安
で示す。電場 がかかったときの分子の電子雲の歪みやすさの目安
である分極率αは、物質の誘電率
は、物質の誘電率εや光(電磁波
や光(電磁波)が通る際の媒質の
電磁波)が通る際の媒質の
屈折率κと8.1~8.4式で関係する。
式で関係する。
r
電場E
図8.2無極性
8.2無極性2
無極性2分子に生じる誘起分極誘起分極pは矢印で示される
p = αnE/4πε0
(8.1)
n:単位体積中の分子数 NA/cm3, ε0 :真空の誘電率
nα/ε0 = ε -1
(8.2)
ε =κ2
(8.3)
κ2-1=nα
-1=nα/ε0
(8.4)
●個々の分子に実際に作用する分子電場をE, 外部電場をE’、単位
体積中の分子数をn, 誘起双極子能率をµ, その平均を<
その平均を<µ>とすると、
µ = αE, p = n<µ>で, 電気変位Dは、D = ε0E'+pである。誘電率εは ε
= D/ε0E' であり、E = E'+p/3ε0 と表される。したがってE =
(ε+2)E'/3である。
/3である。E' が余り大きくないときは、<
が余り大きくないときは、<µ> = αE /4π
/4πε0つまりp
= αnE/
nE/4πε0となり、下線付きの式よりε − 1 = αnE/
nE/ε0E' で、 ε -1/ ε
+2=αn/3ε0 となる。n = ρNA/M (ρ: 密度M: 分子量)
分子量)より、
ε − 1 M αN A
=
(クラジウスクラジウス-モソッティの式)
モソッティの式)
ε +2 ρ
3ε 0
となる。E' = Eのときε − 1 = nα/ε0である。
●1920年以前は、無極性分子間に働く力が何に由来するのかが不
1920年以前は、無極性分子間に働く力が何に由来するのかが不
明であった。重力によるものではないかとの見解もあった。この力は
1923年のロンドン(
1923年のロンドン(F.
年のロンドン(F. London, 19001900-1954)による提案(ロンドンの分
1954)による提案(ロンドンの分
散力)により明確になり、すべての原子や分子の間に働く弱い力の
根源と見なされた。2
根源と見なされた。2分子間に働くロンドン力は弱いが、それらが集
まると、有機物の結晶、ローソク、さらに生体組織まで、柔軟性をも
つ集合体や固体を形成する力になる。
ロンドンの分散力は短距離で初めて働く力であり1/
ロンドンの分散力は短距離で初めて働く力であり1/r7の関数である
(クーロン力は遠方でも働く1/
(クーロン力は遠方でも働く1/r2の関数)。ポテンシャルエネルギー
の関数)。ポテンシャルエネルギー
は1/r6の関数である(8.5
の関数である(8.5式
分子の固有振動数(第1イオン化電
8.5式 ν0: 分子の固有振動数(第1
位))。
2
2
0
0
(8.5)
2 6
6
0
αν
3 α hν
U =−
∝
4 (4πε ) r
r
F. London(ドイツ
London(ドイツ→
ドイツ→イギリス→
イギリス→アメリカ)
ハイトラーとともに分子間力の起源を解
明、超流動
8.1.2) 電場の大きさ
●真空中における2
●真空中における2つの単位電荷
つの単位電荷(
単位電荷(–e:e = 1.6×
1.6×10–19 C, 距離3
距離3
Åとする)
とする)間のポテンシャルエネルギーは 7.7×
7.7×10-19 Jであり、
この値はCO
この値はCO2 (直径3.24
直径3.24 Å)が接したときの
Å)が接したときの2
が接したときの2分子のポテンシャ
ルエネルギー(1.4
ルエネルギー(1.4×
(1.4×10-20 J)より大きい。水中の
J)より大きい。水中の2
より大きい。水中の2電子間では10
電子間では1020 Jであり、帯電していない分子間のポテンシャルエネルギー
であり、帯電していない分子間のポテンシャルエネルギー
は水中の電子間のポテンシャルエネルギーにほぼ等しい。
は水中の電子間のポテンシャルエネルギーにほぼ等しい。
●つまり、これらの電場の大きさは約
●つまり、これらの電場の大きさは約10
電場の大きさは約108 Vcm−1 つまり E~1
VÅ−1で非常に大きい電場である。ちなみに、水素原子中のボー
で非常に大きい電場である。ちなみに、水素原子中のボー
ア(r = 0.529 Å)の第
Å)の第1
の第1軌道の電子には60
軌道の電子には60 VÅ−1の電場がかかっ
ており、分散力を誘起する瞬間的電場は原子内部の電場の数
十分の一である。
8.1.3) ファンデルワールス式
●気体分子の体積や分子間の相互作用をゼロ(ファンデルワールス
力=0)とする理想気体n モルの体積V、圧力Pの間でP V = nRTと
するのがボイル・シャルルの法則である。しかし、現実の気体では、
気体分子の体積や分子間の相互作用を考慮した圧,
気体分子の体積や分子間の相互作用を考慮した圧, 体積を用いる
必要がある。
●圧力:
●圧力: 外壁にぶつかり圧力を示す分子は壁内側にある分子と相互
作用を持ち内側に引き寄せられ理想気体での圧より小さい圧力とな
る。圧力の低下は、外壁にぶつかる分子の濃度(n/V)と内側にある
分子の濃度(n/V)に比例するので、分子間相互作用のない時の圧
は、P + a(n/V)2 となる。
●体積:気体分子が動き回る実際の体積は容器の体積より小さい。
体積の減少は、気体分子自体に加え、他の分子がどこまでその分
子に接近できるかを考えることが必要である。分子の半径をrとすれ
ば、他の分子はその分子の中心から2
ば、他の分子はその分子の中心から2rまで近寄れる(接する)が、そ
まで近寄れる(接する)が、そ
れ以内に入ることは不可能である。1
れ以内に入ることは不可能である。1個の分子が他の分子を近寄せ
ない範囲は4
ない範囲は4p(2r)3/3であり、
/3であり、2
であり、2分子でその範囲を共有するので、1
分子でその範囲を共有するので、1分
子あたり2
子あたり2p(2r)3/3で
/3で, nモル当たり2
モル当たり2pn(2r)3/3=
/3=nbである。
従って、体積はV − nb となる。8.6
となる。8.6式、図
8.6式、図8.4
式、図8.4がファンデルワールスの
8.4がファンデルワールスの
a
式である。
(P +
)(
V
−
b
)
=
R
T
2
V
V :モル体積,
(8.6)
R = NAkB
臨界点
T↓
D
B
A
図 8. 4 フ ァ ン デ ル ワ ー ル ス 等 温 曲 線
に関する3次式でVがbに近ずく
に近ずくと
ずくとP軸に平
V に関する3
行な点線H
行な点線 H となる。
となる 。 G は曲線Ⅲ
は曲線 Ⅲ の飽和蒸気
圧である。
圧である。負の圧力は液体が張力を受けて
いるような準安定状態を示し、
いるような準安定状態を示し 、 張力の極大
の点は極小点J
の点は極小点Jである。
である。
b
特徴
●高温で曲線Ⅰ
●高温で曲線Ⅰのように (∂P / ∂V ) T は常に負で、 V に関する3次式
の1根は実数で他の2
根は実数で他の2根は虚数となる。8.6
根は虚数となる。8.6式を変形すると
8.6式を変形すると P V = RT
+(b – a/RT)Pとなるので、a =bRT の温度で理想気体の挙動を示す。
●温度の低下に伴い等温曲線が点C
●温度の低下に伴い等温曲線が点Cで水平となり(曲線V
で水平となり(曲線V)、3
)、3根は等
(∂ 2 P / ∂V 2 )T = 0 T = Tc (8.7)
しくなる。 C点 臨界点:
臨界点: (∂P / ∂V )T = 0,
この時の気体と液体のモル体積は等しい。この点での温度、圧力、モ
ル体積を臨界温度
臨界温度、臨界圧力、
臨界圧力、臨 界体積といい、まとめて
界体積といい、まとめて臨界定数
といい、まとめて臨界定数
ル体積を臨界温度、
という。臨界温度以上で、液化は起こらない。臨界点は(
という。臨界温度以上で、液化は起こらない。臨界点は(∂P/∂ )T=
RT
2a
2P/∂ 2) = 2RT − 6a = 0 より、V = 3b, T =
−
+
=
0
,
(∂
∂
(
c
c
T
(V − b) 2 V 3
(V − b) 3
V
4
8a/27Rb, Pc = a/27b2、PcVc/Tc = 3R/8, a = 27R2Tc2/64Pc, b =
RTc/8Pc となる (表8.3)。
8.3)。
●臨界温度Tcより下で、 の3つの値は実数(曲線
つの値は実数(曲線Ⅱ
値は実数(曲線Ⅱ、Ⅲ)である。
●水平部分の等温線は気体―
●水平部分の等温線は気体―液体の平衡を示す。A
液体の平衡を示す。A点:気体、B
点:気体、B点で
液化が開始し、圧力は液体の蒸気圧で、液化中は一定
液化が開始し、圧力は液体の蒸気圧で、液化中は一定で、点
液化中は一定で、点D
で、点Dで液
化は終了。温度が上がると液化開始点と液化終了点は近づき(図8.4
化は終了。温度が上がると液化開始点と液化終了点は近づき(図8.4
中、曲線II
中、曲線IIの水平部分は省略)、曲線
IIの水平部分は省略)、曲線V
の水平部分は省略)、曲線VでB点、D
点、D点は一致する(C
点は一致する(C点)。
●さらに低温(曲線Ⅳ
●さらに低温(曲線Ⅳ)で、V軸と交わる。V軸の下は負の圧力である。
●Vの小さな領域で、破線を漸近線(V = b)とするように、Pは発散的
に増加する。
表8.3 気体の臨界定数と8.6式中のa, b
Pc/atm
12.8
水素
2.26
ヘリウム
33.5
窒素
50.1
酸素
76.1
塩素
48.0
アルゴン
45.8
メタン
アンモニア 111
218
水
二酸化炭素 72.7
Tc/K Vc/cm3 mol-1
33.2 65.0
5.21 57.8
126.3 90.1
154.8 78.0
417.2 124
150.7 73.3
191.1 99
405.5 72.5
647.4 55.3
304.2 94.0
PcVc/RTc
0.305
0.306
0.291
0.308
0.226
0.285
0.289
0.241
0.227
0.274
超臨界流体(supercritical
fluid)
超臨界流体
Tc, Pcを越えた温度、圧力の状態(超臨界状態)のガスは、密度が急
激に上昇するため、気体とも液体ともつかぬ流体
流体の状態にある。超臨
流体
界流体は化学的親和性のある物質を溶解する能力をもつ。これを利
用して物質の分離、生成、分解が可能となる(コーヒー、タバコからカ
フェイン、ニコチンの除去。産業廃棄物の分解)。流体として二酸化炭
素、エチレン、プロパン、トルエンが利用される。
8.1.4) 分子間力の起源
8.1.4a 重力か?
1920年以前、ファンデルワールス力の起源は重力かとの議論があっ
1920年以前、ファンデルワールス力の起源は重力かとの議論があっ
た。結果は否である。
証明]
証明] 帯電していない粒子CO
帯電していない粒子CO2間の相互作用エネルギーは
–E0 = 14.0×
14.0×10-21 Jである。一方、2
である。一方、2分子のCO
分子のCO2 (分子直径 約3.24 Å)
が接したときの重力は、
-E0*= - [(44 × 10 −3 / 6.02 × 10 −23 ] 2 × 6.67 × 10 −11
−51
3.24 × 10
−10
= −1.1 × 10
J
となり、重力は分子間力に寄与しないと結論できる。しかし、重力は
となり、重力は分子間力に寄与しないと結論できる。しかし、重力は
r-2, 分子間力はr-7の関数であるから 分子が十分離れると重力
≥分子間力となる。 r~0.5 mmで
となり、2隣接CO
隣接CO2分子が0.5
分子が0.5
mmでE = E0*となり、2
mm以上離れると重力のほうが大きくなる。
mm以上離れると重力のほうが大きくなる。
8.1.4b 1923年 ロンドンの提案
無極性分子の平均電場は0
無極性分子の平均電場は0であるが、ロンドンは、正電荷から
負電荷に向かう力線をもつ電場が瞬間的に存在するはずで、
電荷q の 電場はq/r2 であるなら、双極子能率p(q×rの次元)の
双極子の電場はq×r/r3 = p/r3であろう(r:双極子からの距離)と
推論した。すると電場中の他の分子の分極ポテンシャルはEp =
–αp2/2r6 となり、ロンドン力の引力は1/
となり、ロンドン力の引力は1/r7の関数となる。分散
効果は8.5
効果は8.5式
8.5式(分極率の2
分極率の2乗、距離の−
乗、距離の−6乗に比例)
乗に比例)で示された。以
下で、双極子モーメントをもつ分子による効果を考察する。
e
r’
8.1.5) 双極子がつくる電場
図8.5の双極子モーメント
8.5の双極子モーメントp (= ed)が点
Oにつくる 静電ポテンシャルは以下の
ようになる。
e 1 1
1
( − ) , d<<rより、 =
V (r ) =
4πε 0 r '
r
(r 2 + 2rd cosθ + d 2 ) −1 / 2
r'
O
r
d
θ
-e
図 8.5 双 極 子 ed が 作 る
静電ポテンシャル
1
( r + d cos θ ) + d sin θ
2
2
2
=
1
2rd cosθ + d 2 −1 / 2 1
d cosθ
= (1 +
)
≈ (1 −
)
2
r
r
r
r
ed cos θ
p cos θ
=−
V (r ) ≈ −
2
4πε 0 r
4πε 0 r 2
したがって、O
したがって、O点での電場の強さEは
r方向の成分 −
∂V
2 p cos θ
=−
∂r
4πε 0 r 3
これに垂直方向( y方向)の成分 (dy = rdθ )
−
1 ∂V
∂V
p sin θ
=−
=−
∂y
r ∂θ
4πε 0 r 3
従って、O
従って、O点に誘起される電場は8.8
点に誘起される電場は8.8式である。
8.8式である。
p sin θ 2 1 / 2
p(1 + 3 cos θ )
2 p cosθ 2
E = −{(
) +(
) } =−
3
3
4πε 0 r
4πε 0 r
4πε 0 r 3
2
1/ 2
(8.8)
8.1.5.1) 誘起効果
双極子edから距離x離れた位置O
離れた位置Oにある誘起双極子を考える(
にある誘起双極子を考える(図8.6)
8.6)。
O
x
点Oでの電場
での電場Eに存在
ed
1
2
図8.6 双極子edが作る誘起双極子
する分子に生じる誘起双極子モーメントはpi = ex = αEで、モーメントpi
2
xe x
を生じるに必要な仕事は x
e2 x2 1 2
∫
0
eEdx = ∫
0
α
dx =
= αE
2α
2
生じた双極子モーメントのもつポテンシャルエネルギーは–
生じた双極子モーメントのもつポテンシャルエネルギーは–piE = –
αE2で、それらの和に8.8
で、それらの和に8.8式を代入する。
8.8式を代入する。
2
1/ 2
2
θ
α
1
1
p
(
1
+
3
cos
)
p
2
2
2
全エネルギー: − αE = − α {−
}
=
−
(
1
+
3
cos
θ)
3
2 6
2
2
4πε 0 r
2(4πε 0 ) r
分子の向きが無秩序であると
<cos2 θ> = 1/3
(8.9)
αp 2
U 1→2 = −
なので、
(4πε 0 ) 2 r 6
となり、同種2
となり、同種2分子間の相互作用エネルギーは、8.10
分子間の相互作用エネルギーは、8.10式で表される
8.10式で表される(
式で表される(分
極率の1
極率の1乗、双極子モーメントの2
乗、双極子モーメントの2乗、距離の−
乗、距離の−6乗に比例)
乗に比例)。
2αp 2
αp 2 (8.10)
U =−
∝− 6
2 6
(4πε 0 ) r
r
8.1.5.2) 配向効果
双極子モーメントが熱的にゆらいでいるときの分極率αは, と
なるので、8.10
なるので、8.10式に代入すると、
8.10式に代入すると、1
式に代入すると、1対の双極子同士の相互作用エ
ネルギーは8.11
ネルギーは8.11式
8.11式(双極子モーメントの4
双極子モーメントの4乗、温度の−
乗、温度の−1乗、距離
の−6乗に比例)
乗に比例)となる。
4
4
2
p
p
U =−
∝− 6
2
6
3 (4πε 0 ) k BTr
Tr
(8.11)
8.1.6) ファンデルワールス相互作用
ファンデルワールス力による相互作用エネルギーは、8.5
ファンデルワールス力による相互作用エネルギーは、8.5式の分
8.5式の分
散効果,
散効果, 8.10式の誘起効果および
8.10式の誘起効果および8.11
式の誘起効果および8.11式の配向効果
8.11式の配向効果(
式の配向効果(この項の
みが温度依存を示す)
8.4で、2
で、2分子間ポテ
みが温度依存を示す)の加算で示される。表
の加算で示される。表8.4で、
ンシャルを比較し(20
ンシャルを比較し(20°
(20°C)、
C)、その特徴をまとめる。
表8.4
分子
He
Xe
CO
HCl
HBr
HI
NH3
H2O
2分子間ポテンシャルエネルギー(
分子間ポテンシャルエネルギー(-Ur6 J m6/10-79)*)
p/10−30 C m α/10−40 Kg−1 S4 A2
hν0/ eV 配向効果 誘起効果 分散効果
0
0.22
24.5
0
0
1.2
0
4.45
11.5
0
0
221
0.40
2.21
14.3
0.0034
0.057
67.8
3.44
2.93
13.7
18.6
5.60
114
2.60
3.98
13.3
6.1
4.34
204
1.27
6.01
12
0.35
1.57
420
5.0
2.46
16
83
10
94
6.14
1.65
18
189
10.0
48
*単位)p
単位)pについて: 1D(デバイ
1D(デバイ)
デバイ) = 10−18 esu cm = 3.36×
3.36×10−30 C(クーロン
C(クーロン)
クーロン) m; αについ
て:Kg
て:Kg−1 S4 A2 = C m/ V m−1を4πε0=1.113×
=1.113×10−10 m−3 Kg−1 S4 A2で割ると、単位はm
で割ると、単位はm3
1) NH3とH2O以外は、分散効果が相互作用エネルギーの大部分を占
以外は、分散効果が相互作用エネルギーの大部分を占
めている。
めている。2) 永久双極子モーメントをもつハロゲン化水素において、
ヨウ素のように分極率の大きなイオンを含むHI
ヨウ素のように分極率の大きなイオンを含むHIでの
HIでの分散効果は
での分散効果は(
分散効果は(配向
+誘起)
+誘起)効果の200
効果の200倍程度、臭素の場合は
200倍程度、臭素の場合は20
倍程度、臭素の場合は20倍程である。
20倍程である。HCl
倍程である。HClでも、
HClでも、(
でも、(
配向+誘起)
配向+誘起)効果より分散効果のほうが5倍程度大きい。3)
効果より分散効果のほうが5倍程度大きい。3) NH3にお
いてもまだ分散効果の方が配向効果より少し大きい。
いてもまだ分散効果の方が配向効果より少し大きい。4) H2O分子で
の配向効果は分散効果の4
の配向効果は分散効果の4倍程度である。
倍程度である。このように、瞬間的電場
によって引き起こされる引力(分散効果)は、分子性化合物の凝集に
大きな寄与をしている。
大きな寄与をしている。
単原子分子Ne,
単原子分子Ne, Ar,
Ar, Kr, Xeは面心立方格子
Xeは面心立方格子(
は面心立方格子(次節参照)
次節参照)をとる。1
をとる。1原
子当たりの凝集エネルギーは8.5
子当たりの凝集エネルギーは8.5式の
8.5式の6
式の6倍、さらに遠くの原子との相
互作用を加味すると7.38
互作用を加味すると7.38倍となる。従って、
7.38倍となる。従って、1
倍となる。従って、1モルあたりの結晶の引
力ポテンシャルエネルギーは7.38
力ポテンシャルエネルギーは7.38NA×(8.5式
(8.5式)となる。式中のr(格子
定数aの面心立方格子でr = a/√2)は固体密度
2)は固体密度ρ(= 4M/a3NA)を零K
を零K
に外挿して求める。これらの引力ポテンシャルエネルギーと電子雲
に外挿して求める。これらの引力ポテンシャルエネルギーと電子雲
間反発エネルギー(~r-12)により、全ポテンシャルエネルギー(固
体では格子エネルギー=昇華熱)が決まる。
体では格子エネルギー=昇華熱)が決まる。Ne, Ar,
Ar, HCl,
HCl, HIの計算
HIの計算
で求めた引力ポテンシャルエネルギーは1.67,
で求めた引力ポテンシャルエネルギーは1.67, 7.66, 16.9, 27.2 kJ
mol-1で、表4.5
で、表4.5中の実測昇華熱との一致はよい。
4.5中の実測昇華熱との一致はよい。
表8.5 Ne, Ar, HCl, HIの実測蒸発熱と昇華熱
蒸発熱(kJ mol-1)
昇華熱(kJ mol-1)
Ne
1.7
2.47
Ar
6.4
8.49
HCl
16.1
21.1
HI
19.8
26.0
分子間ポテンシャルエネルギーの引力項をr-mで、斥力項をr-n
で代表したのがレナード・ジョーンズ・ポテンシャルで、そのうちm
= 6, n = 12が気体運動論や統計力学でよく使われる。
12が気体運動論や統計力学でよく使われる。
8.2) 結晶中での分子の充填
8.2.1) 六方最密構造と立方最密構造(章末の単位格子を参照のこと)
章末の単位格子を参照のこと)
同じ大きさの球(パチンコ玉を考えるとよい)を箱に詰めることをする。
第1層に隙間なく詰めた状態は、1
層に隙間なく詰めた状態は、1個の玉の周りに6
個の玉の周りに6個が配位した六方
最密平面格子となる。その格子点をA
最密平面格子となる。その格子点をAとすると、隙間にB
とすると、隙間にBとCの2種類が
ある(
ある(図8.6)。
8.6)。2層目の1
層目の1個のパチンコ玉がB
個のパチンコ玉がB点を占めたとすると、他の
すべての玉も位置B
すべての玉も位置Bを占めることにより2
を占めることにより2層目の六方最密平面格子(B
層目の六方最密平面格子(B
層とする)ができる。もし、2
層とする)ができる。もし、2層目に置く最初の1個がC
層目に置く最初の1個がC点なら、C
点なら、C点のみ
を占めた六方最密平面格子(C
を占めた六方最密平面格子(C層とする)ができる。この段階で下層か
らの積層様式はA
らの積層様式はA→BまたはA
またはA→Cの2種類が可能である。A
種類が可能である。A→Bの場
合、3
合、3層目はA
層目はAまたはC
またはCの格子点を占める六方最密平面格子が可能と
なる。このように箱に満杯になるまでパチンコ玉を詰めた場合、どのよ
うな詰め方でも個数は同じであるが、その積層方向の周期性は多彩
である(
である(図8.7)。
8.7)。そのうち、最も単純なABABAB••
そのうち、最も単純なABABAB••の
ABABAB••の2層周期の積層様式
が六方最密構造(hexagonal
六方最密構造(hexagonal close packing, hcp)
hcp)で、ABCABC•••
で、ABCABC•••の
ABCABC•••の3周期
が立方最密構造(cubic
立方最密構造(cubic close packing, ccp)
ccp)である(より長周期の積層
構造をとる物質も知られている:ZnS
構造をとる物質も知られている:ZnS,
ZnS, SiC,
SiC, CdI2, CdBr2, PbI2, NbSe2,
TaSe2のポリタイプ)。
ともに,
ともに, 1個の玉は同じ層に属する6個、上下の層に属すそれぞれ
1個の玉は同じ層に属する6個、上下の層に属すそれぞれ3
個の玉は同じ層に属する6個、上下の層に属すそれぞれ3
個の玉に接しているので、配位数
個の玉に接しているので、配位数(coordination
number)は12である。
12である。
配位数(coordination number)は
配位数12
配位数12の構造はイオン結晶では見られず、単体原子または分子
12の構造はイオン結晶では見られず、単体原子または分子
が密に詰まり安定化する系で見られる。
が密に詰まり安定化する系で見られる。
左:格子点
格子点A(黄)と隙間B(赤),C(緑)、
格子点
右:最密充填の2層(A層とB層)
六方最密平面格子
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
図8.6
•
•
•
•
•
A
B
C
A
B
A
C
C
C
A
A
B
B
B
C
A
C
A B B C A C A C A B B C A B
図8.7 六方最密平面格子の積層様式と六方最密構造(
)と
立方最密構造(
)。ABABA(
), ABCAB( )の他に
ABABC, ABACA, ABACBなど16種の充填様式を示す。
立方最密構造は面心立方格子
立方最密構造は面心立方格子(face
面心立方格子(face centered cubic, fcc)
fcc)(図8.8
(図8.8
左)に相当し、不活性ガス(Ne,
左)に相当し、不活性ガス(Ne, Ar,
Ar, Kr, Xe)、貴金属類(
Xe)、貴金属類(Au,
)、貴金属類(Au, Ag, Cu,
Pt)、
Pt)、C
)、C60(図8.8
(図8.8右)などがとる。図
8.8右)などがとる。図8.8
右)などがとる。図8.8で、球の半径を
8.8で、球の半径をrとするとA
とするとA層中
のA1の球はB
の球はB層に属する球のうち面心に位置する3
層に属する球のうち面心に位置する3個の球と接して
いるので、球の半径は4
いるので、球の半径は4r=√2a (aは格子定数)
は格子定数)を満たす。単位格
子中に4
子中に4個の球があるので、球の占有率
個の球があるので、球の占有率(
球の占有率(充填率)
充填率)は
(4π/3)×
/3)×(√2a/4)3×4/a3 = √2π/6 = 0.741である
0.741である。つまり、箱いっぱい
である。つまり、箱いっぱい
のパチンコ玉を熔かすと、箱の約3/4
のパチンコ玉を熔かすと、箱の約3/4弱を金属が占めることになる。
3/4弱を金属が占めることになる。
図8.8 立方最密格子(面心立方格子)とC60単結晶
B
A
C
a
A
図8.9に示す六方最密構造の体積は
8.9に示す六方最密構造の体積は3
に示す六方最密構造の体積は3√3a2c/2 (最密時の軸比
(最密時の軸比c/a
= 2√
2√2/√
2/√3 = 1.633) = 3√
3√2a3で、単位格子中に6
で、単位格子中に6個の球があり、その
充填率も√
充填率も√2π/6となる。六方最密構造をとる元素は、
/6となる。六方最密構造をとる元素は、Be(
となる。六方最密構造をとる元素は、Be(軸比
Be(軸比
=1.57)、
=1.57)、 Mg(1.62)、
Mg(1.62)、Cd(1.89)
Cd(1.89)、
(1.89)、 β-Co(1.63)、
Co(1.63)、 Ti(1.60)、
Ti(1.60)、 Zn(1.86)、
Zn(1.86)、希
土類元素である。六方最密と立方最密のエネルギー差は小さく、
互変、共存などがある(例、La,
互変、共存などがある(例、La, Pr, Nd,
Nd, Pm, Sm, Ca, Co, Sc, Ce, 図
8.10)。図
8.10)。図8.10
)。図8.10に金属元素の充填構造を示す。最密といいながらも、
8.10に金属元素の充填構造を示す。最密といいながらも、
体積中の約1/4
体積中の約1/4は隙間である。この隙間(
1/4は隙間である。この隙間(interstitial
は隙間である。この隙間(interstitial site)の形や
site)の形や
大きさを考察することは重要である
(図8.6
(図8.6参照)。というのは、この隙間
8.6参照)。というのは、この隙間
A
に、別種の原子やイオンを入れるこ
に、別種の原子やイオンを入れるこ
とにより岩塩型、
とにより岩塩型、CsCl
より岩塩型、CsCl型、閃亜鉛鉱
CsCl型、閃亜鉛鉱
B
c
型(CuCl
型(CuCl型)、ホタル石型、
CuCl型)、ホタル石型、ZnO
型)、ホタル石型、ZnO型な
ZnO型な
どの結晶構造が形成される。
A
図8.9 六方最密格子
a
図8.10 金属元素の充填構造
8.2.2) ファンデルワールス半径
分子性結晶の結晶構造解析より原子のファンデルワールス半径が与えら
れる。多くの論文や教科書においてポーリング(L.
れる。多くの論文や教科書においてポーリング(L. C. Pauling)のファンデル
Pauling)のファンデル
ワールス半径が使用されてきた。しかしポーリングの値は、有意な分子間原
子接触を過大に見積もることが明らかで、この教科書ではポーリングの値よ
りも一般に少し小さなファンデルワールス半径を用いる(ボンデイ(A.
りも一般に少し小さなファンデルワールス半径を用いる(ボンデイ(A. Bondi)
Bondi)、
表8.6)。表中の
8.6)。表中のLi,
)。表中のLi, Na, K, Ga,
Ga, In, Sn の値は非結合状態の金属での値で、こ
れに相当するのは他に、Tl
れに相当するのは他に、Tl:
Tl: 1.96, Pb:
Pb: 2.02, Ni: 1.63, Cu: 1.4, Zn: 1.39, Pd:
1.63, Ag: 1.72, Cd:
Cd: 1.58, Pt: 1.75, Au: 1.66, Hg: 1.55, U: 1.86 Åがある。また、
Åがある。また、
パラフィン中のH
パラフィン中のH、パラフィン中のC
パラフィン中のCやCH3に、各々、1.35,
に、各々、1.35, 1.90, 2.0 Åがある。
Åがある。
表8.6ファンデルワールス半径[2](Å, 上はポーリング、下はボンデイ)
H 1.20
1.20
Li ―
1.82
Na ―
2.27
K ―
2.75
Mg
―
1.73
Ga ―
1.87
In ―
1.93
C ―
1.70
Si ―
2.10
Ge ―
2.1
Sn ―
2.17
N 1.5
1.55
P 1.9
1.80
As 2.0
1.85
Sb 2.2
O 1.40
1.52
S 1.85
1.80
Se 2.00
1.90
Te 2.2
2.06
F 1.35
1.47
Cl 1.80
1.75
Br 1.95
1.85
I 2.15
1.98
He 1.50
1.40
Ne 1.60
1.54
Ar 1.92
1.88
Kr 1.97
2.02
Xe 2.17
2.16
8.2.3) 有機分子の充填率
形状が多彩な有機分子の充填率は、最密充填構造での値(0.741)
形状が多彩な有機分子の充填率は、最密充填構造での値(0.741)
を上回るものがある(表8.7
を上回るものがある(表8.7)。これは、充填率を高めると、より多くの
8.7)。これは、充填率を高めると、より多くの
分子との間でファンデルワールス相互作用が働き、結晶の安定化エ
ネルギーの利得があることによる。
表8.7 有機化合物結晶、黒鉛の充填率
結晶
ベンゼン
p-ベンゾキノン
ベンゾキノン
充 填 結晶
率
0.681 コロネン
0.693 ナフタセン
充 填
率
0.765
0.800
デユレン
0.704
0.805
アントラセン
0.722
デユレン
ビフェニル
充 填 結晶
率
0.726 アントラキノン
0.735 9,10-ジクロロアントラ
ジクロロアントラ
セン
p- ジ ブ ロ モ ベ ン 0.740 ペリレン
ゼン
0.740 黒鉛
ビフェニル
9,1010-ジクロロ
アントラセン
アントラキノン
ペリレン
コロネン
0.887
8.2.4) 芳香族炭化水素の結晶
芳香族炭化水素の結晶の例として、アントラセン、ピレン、ペンタセ
ンをとりあげ、それらの結晶構造と特徴的な物性を記述する。アント
ラセン分子の結晶は、図8.11
ラセン分子の結晶は、図8.11に示すように単位格子に
8.11に示すように単位格子に2
に示すように単位格子に2種の配向を
もつ分子(
もつ分子(Ⅰ,Ⅱ)から形成される。溶液中のアントラセンの吸収およ
び蛍光スペクトルを図8.12
び蛍光スペクトルを図8.12に示す。
8.12に示す。吸収スペクトル
に示す。吸収スペクトルと
吸収スペクトルと蛍光スペクトル
はおのおの振動構造をもち、26
はおのおの振動構造をもち、2626-27×
27×103 cm-1(370(370-385 nm)を中心と
nm)を中心と
して互いに鏡像関係
して互いに鏡像関係にある
鏡像関係にある。吸収スペクトルは、基底状態の最低振
にある。吸収スペクトルは、基底状態の最低振
動準位から励起状態のいくつかの振動準位へのフランク
動準位から励起状態のいくつかの振動準位へのフランクフランク-コンドンの
原理による光学遷移に対応する。つまり、図
原理による光学遷移に対応する。つまり、図8.13
による光学遷移に対応する。つまり、図8.13に示す模式的ポテ
8.13に示す模式的ポテ
ンシャルエネルギーにおいて、核配置座標を変化させずに、振動準
ンシャルエネルギーにおいて、核配置座標を変化させずに、振動準
位ν = 0から
0から1
から1重項の励起状態の振動準位ν ' = 0, 1, 2, 3への
3への遷移
への遷移に
遷移に
より、4本の振動構造をもつ吸収スペクトル(
より、4本の振動構造をもつ吸収スペクトル(図8.13の下図、実線
8.13の下図、実線)
の下図、実線)が
得られる。励起された電子はν ' = 3, 2, 1の振動状態から
1の振動状態からν ' = 0の振
0の振
動状態にエネルギー失活し、ν ' = 0から基底状態の
0から基底状態のν = 3, 2, 1, 0へ
0へ
の発光が蛍光スペクトルの4本の振動構造として現れる(
発光が蛍光スペクトルの4本の振動構造として現れる(図8.13の下
8.13の下
図、点線)
図、点線)。
図8.11 アントラセンの結晶構造
図8.13 ポテンシャルエネルギー(模式図)
Ⅰ
Ⅱ
fs
ps
図8.12 アントラセン/ベンゼン溶
液の吸収-蛍光スペクトル
●ν = 0から
からν ' = 0の吸収遷移エネルギーは
の吸収遷移エネルギーはν ' = 0から
からν = 0への
への蛍光
への蛍光
遷移エネルギーに一致し、これらの遷移は0-0遷移
遷移エネルギーに一致し、これらの遷移は 遷移といわれる。
遷移といわれる。フラン
といわれる。フラン
ク-コンドンの原理による光学遷移は
コンドンの原理による光学遷移はフェムト秒
、10-15秒)の、また励
コンドンの原理による光学遷移はフェムト秒(
フェムト秒(fs、
起状態から基底状態への過程はピコ秒
起状態から基底状態への過程はピコ秒(
ピコ秒(ps, 10-12秒)の速さである。
秒)の速さである。
●励起状態が周囲の原子、分子と相互作用を行って励起エネルギー
の一部を熱エネルギーなどの形で失うと、鏡像関係は崩れ、ν ‘ = 0か
か
らν = 0への
への発光は、より低エネルギー側(長波長側)に現れる。励起
への発光は、より低エネルギー側(長波長側)に現れる。励起
状態で2量化が起こる系でよく見られる。このときの励起光と発光のエ
状態で 量化が起こる系でよく見られる。このときの励起光と発光のエ
ネルギー差をストークス・シフト
)という。一方、励起過程
ネルギー差をストークス・シフト(
ストークス・シフト(Stokes shift)という。一方、励起過程
において熱励起や付加的な電子励起が加わると、逆に発光スペクト
ルはエネルギーの高い短波長側に現れる(反ストークス・シフト)。
●純粋なアントラセン結晶は紫色の蛍光を発する。しかし、市販のア
ントラセンは一般に微量のテトラセン(ナフタセン)を含むため、テトラ
センによる蛍光を示す。テトラセンの励起1
センによる蛍光を示す。テトラセンの励起1重項は、アントラセンの励
起1重項よりエネルギーが低い。アントラセンの励起状態は、隣接アン
トラセン分子に次つぎと移動することが可能で(励起子
励起子またはexciton
またはexciton,
exciton,
トラセン分子に次つぎと移動することが可能で(励起子または
エキシトンの伝播)、その励起エネルギーは約
エキシトンの伝播)、その励起エネルギーは約200
の伝播)、その励起エネルギーは約200分子離れたアントラ
200分子離れたアントラ
セン分子まで移動することが知られており、その間にテトラセン分子が
存在すると、そこに励起エネルギーはトラップされ、テトラセン分子
から緑色の蛍光を発する。
●図8.14
●図8.14にピレンの結晶構造を示す。アントラセンと似たパッキン
8.14にピレンの結晶構造を示す。アントラセンと似たパッキン
グであるが、ピレン2
グであるが、ピレン2量体が単位となっている。ピレンの蛍光波長は
大きなストークスシフトを示す。これは、励起状態のピレン分子(M*)
大きなストークスシフトを示す。これは、励起状態のピレン分子(M*)
が基底状態のピレン分子(M)
が基底状態のピレン分子(M)と相互作用をして、
(M)と相互作用をして、2
と相互作用をして、2分子で励起エネ
ルギーを共有した励起
ルギーを共有した励起2
量体(excited dimer: excimer,
excimer, エキシマー)
エキシマー)
励起2量体(excited
(MM)*を形成することによる。同種分子でない場合にも、励起状態
(MM)*を形成することによる。同種分子でない場合にも、励起状態
で錯体の形成が行われる例があり、これを励起錯体
で錯体の形成が行われる例があり、これを励起錯体(
励起錯体(excited
complex: exciplex,
エキシプレックス)という(
)という(例:アントラセンとN,Nexciplex, エキシプレックス)という
ジメチルアニリン)
ジメチルアニリン)。励起2
励起2量体を含め、これらの励起錯体の発光は、
分子単独での発光よりも低エネルギー領域に現れる。
M* + M → (MM)*
(8.12)
M1* + M2 → (M1M2)*
(8.13)
図8.14 ピレンの結晶構造
●ベンゼン(無色、融点5.4
●ベンゼン(無色、融点5.4°
5.4°C)、ナフタレン(
)、ナフタレン(無色、81
無色、81°
81°C), アントラセン(無色、
216°
216°C)、テトラセン(橙、335
)、テトラセン(橙、335°
335°C)のように、1
)のように、1次元状にベンゼンを接続した多環芳香
次元状にベンゼンを接続した多環芳香
族炭化水素を
族炭化水素をアセン系という。環が増えると共役領域が広がり、
アセン系という。環が増えると共役領域が広がり、HOMO
という。環が増えると共役領域が広がり、HOMOHOMO-LUMO
ギャップが小さくなり、分子の吸収スペクトルは低エネルギー(長波長側)に移動し、
無色から有色となる。π電子部分の拡張につれ、一般に結晶中での分子間π-π相互
作用が増加し、色が濃くなるとともに導電性(半導体)が増す。これは、HOMO
作用が増加し、色が濃くなるとともに導電性(半導体)が増す。これは、HOMOHOMOLUMOギャップに由来する結晶の価電子帯
LUMOギャップに由来する結晶の価電子帯ギャップに由来する結晶の価電子帯-伝導帯のギャップが減少することにとも
ない,
ない, 光や熱により結晶中に伝導キャリヤー(電子とホール,
光や熱により結晶中に伝導キャリヤー(電子とホール, 密度n)が生じやすく
なることと、分子間π
なることと、分子間π-π相互作用が強まることにより価電子帯や伝導帯の幅が大きく
なり、それにとなって移動度(µ)が増加することによる。電気伝導度σ、
neµ
(8.14)
σ = ne
µ
であり、分子間π–π相互作用の増加はnおよびµの増加を誘引する。
幾つかの多環芳香族炭化水素(色、吸収
位置nm)。左よりナフタレン(白,320)、アント
ラセン(白、374)、ピレン(淡黄、336)、ペリレ
ン(黄橙、437)、テトラセン(ナフタセン)(黄褐
色,471)、ペンタセン(青、580)。図にない6個
のベンゼン環が一列に並んだ分子ヘキサ
センは緑色で600 nmに吸収位置を持つ。
●ペンタセン(図8.15
●ペンタセン(図8.15、
8.15、濃青色、融点~271
濃青色、融点~271°
271°C)は大きな移動度(µ=
0.01 cm2 V−1 sec−1から0.7
から0.7 cm2 V−1 sec−1の報告があるが、吸着酸素
の影響による移動度が得られているとの実験もあり、まだ決着がつ
いていない)をもつ物質である。この結晶に極めて多量のキャリヤー
を強制的に注入し、超伝導を観測したとの捏造報告があった。
超伝導の嘘報告 多環芳香族炭化水素の超伝導を実現したとの嘘報告がベル研
究所のシェーン(J.H.Schön)らにより出された。図8.16にその嘘報告の結果を示す。
超伝導の転移温度TcはBCS理論に従う場合、格子を構成する原子イオンや分子イ
オンの質量(M)が小さいほど大きな値となる[Tc~(M)-1/2]。図8.16まさにそれに一致
しており、超伝導転移温度はアントラセン>テトラセン>ペンタセンの順で、分子量
の減少が転移温度を上昇させていた。この点は大きな説得力があり、この嘘の実
験結果が他の研究者に受け入れられた所以である。本人を
含めだれも追試に成功しなかった。
図8.16ポリアセン
のFET素子での
超伝導の偽報告
シェーン
図 8.15 ペ ン タ
センの結晶構造
8.2.5) 脂肪族炭化水素の融点
融点Tmは、生成エンタルピー(
は、生成エンタルピー(∆H)と融解エントロピー(
と融解エントロピー(∆S)により8.15
により8.15
式で定められる。
∆H = T m ∆S
(8.15)
一般に、分子間相互作用エネルギーが大きいほど(∆
一般に、分子間相互作用エネルギーが大きいほど(∆Hが大きい)、ま
た、対称性の高い分子ほど(∆
た、対称性の高い分子ほど(∆Sが小さい)、高い融点を示す。図8.19
が小さい)、高い融点を示す。図8.19
に直鎖の飽和炭化水素(パラフィン)、アルコール、カルボン酸、テトラ
チアフルバレン(TTF
チアフルバレン(TTF)に
TTF)に4
)に4本のチオアルキル鎖(SC
本のチオアルキル鎖(SCnH2n+1)のついた
のついた
TTCn-TTF, 片側の2本のチオアルキル鎖をエチレンジチオ基で置換
したC
したCnTETTET-TTFの融点を比較する。
TTFの融点を比較する。
融点は、nの小さな領域でおおよそパラフィン<アルコール<カルボ
ン酸<TTC
ン酸<TTCn-TTF<
TTF<CnTETTET-TTFの順に高くなる。
TTFの順に高くなる。nの小さな領域で炭
素数が偶数の系列と奇数の系列で異なる挙動(偶奇効果)を示しな
がら融点が上昇し、nの大きいところではなだらかな融点増加を示し、
化合物によらず一定の値に近づく傾向を示す。nの小さな領域(1
の小さな領域(1 ≤ n
≤ 4)での
4)でのTTC
でのTTCn-TTFでは、アルキル基が
TTFでは、アルキル基がTTF
では、アルキル基がTTF分子骨格どうしを遠ざけ
TTF分子骨格どうしを遠ざけ
るように配向し(図4.20
るように配向し(図4.20)、アルキル鎖の増加に伴い
4.20)、アルキル鎖の増加に伴いTTF
)、アルキル鎖の増加に伴いTTF分子がもつ
TTF分子がもつπ
分子がもつπ
共役部分の分子間相互作用が阻害され、融点が減少する。n≥4で、
アルキル鎖が互いに密に並び始め、それとともに分子中央部分のπ
アルキル鎖が互いに密に並び始め、それとともに分子中央部分のπ
共役部分が互いに平行に、また緊密にそろう(図8.21
共役部分が互いに平行に、また緊密にそろう(図8.21)。アルキル鎖間
8.21)。アルキル鎖間
のファンデルワールス相互作用(
のファンデルワールス相互作用(赤紫矢印)
赤紫矢印)が、π
が、π共役分子面の配向、
配列、また面間距離を制御(青矢印)したもので、4
配列、また面間距離を制御(青矢印)したもので、4 ≤ n ≤ 10で面間距
10で面間距
離が短くなりπ
離が短くなりπ共役分子面間の相互作用が増加することにより、イオン
化ポテンシャルの減少、電気伝導度Tの増加、移動度の増加が見られ
る。このようなアルキル鎖の効果をファスナー効果という。
1:アルカン
2:アルコール
3:カルボン酸
4:TTCn
4:TTCnTTCn-TTF
5:CnTET
5:CnTETCnTET-TTF
図 8.20 TTC1-TTF, TTC2-TTF
の結晶での分子の配向
図8.21 TTC9-TTFの結晶構造下図
はπ電子部分を横方向から見た積層
形式を示す
パラフィン部分の
vdW相互作用
vdW相互作用
π–共役部分
ラングミュアー・
ラングミュアー・ブロジェット(Langmuir
ブロジェット(Langmuir・
Blodgett)膜 長いアルキル鎖の
(Langmuir・Blodgett)膜
カルボン酸のように疎水基(
カルボン酸のように疎水基 ( アルキル鎖)
アルキル鎖 ) と親水基(
と親水基 ( カルボン酸)
カルボン酸 ) とを
共に持つ分子を有機溶媒(
共に持つ分子を有機溶媒(ベンゼン、
ベンゼン、エーテル)
エーテル)に溶かし、
に溶かし、溶液を1
溶液を1滴
ずつ水面上に撒くと溶液が水面上に広がる。
ずつ水面上に撒くと溶液が水面上に広がる。溶媒はすぐ蒸発し、
溶媒はすぐ蒸発し、分子
は水中に親水基を、
は水中に親水基を、空気中に疎水基を配置する。
空気中に疎水基を配置する。この状態で横方向
から圧力を静かに加えると、
から圧力を静かに加えると、分子同士が集合し、
分子同士が集合し、ある適当な圧力のと
ころで単分子膜(
ころで単分子膜(図8.22a
22a)が形成され、
が形成され、更なる加圧で単分子膜が重畳
する。
する。圧を単分子膜が形成されている状態に保ったまま、
圧を単分子膜が形成されている状態に保ったまま、表面を洗浄
した金属板やガラス板をゆっくり入れると、
した金属板やガラス板をゆっくり入れると、 疎水基が基板に付着して
(A型とする)
型とする)単分子膜を基板上にすくい取ることができる(
単分子膜を基板上にすくい取ることができる(図8.22b)
22b)。
b)。
a
b
c
d
e
d
f
図8.22 a) 疎水基(ジグザグ線)と親水基(丸)を持つ分子の水面近傍での
膜形成、b) 基板下降時のすくいとり、c)bに続く基板上昇時でのすくいとり、
d)Y累積膜、e)X累積膜、f) Z累積膜
この操作をラングミュアー(
この操作をラングミュアー(界面科学への貢献で1932
界面科学への貢献で1932年ノーベル化学
1932年ノーベル化学
賞)・ブロジェット法という。
ブロジェット法という。基板を水中から引き上げると、
基板を水中から引き上げると、親水基同士
が互いについてA
が互いについてAと逆向きのB
と逆向きのB型の膜がA
型の膜がA型の上にでき、
型の上にでき、 この繰り返
しでABAB
しでABAB・・
ABAB・・の
・・のY累積膜が作成される(
累積膜が作成される(図8.22c
22c、d)。
d)。作成条件を変える
とAAA・・
AAA ・・の
・・ のX累積膜(
累積膜 ( 図 8.22e
22e ) 、 BBB・・
BBB・・の
・・ の Z 累積膜(
累積膜( 図 8.22f)
22f)が作成さ
f)が作成さ
れる。
れる。このような多層膜をLB
このような多層膜をLB膜という
LB膜という。
膜という。実際のLB
実際のLB膜は図のような欠陥
LB膜は図のような欠陥
の無い整然とした均質の秩序構造ではなく、
の無い整然とした均質の秩序構造ではなく、数µm2の秩序ドメインが
面内で無秩序に基盤を占めている上、
面内で無秩序に基盤を占めている上、面垂直方向においても部分的
重なりがある。
重なりがある。膜中でドメインが存在しない部分は、
膜中でドメインが存在しない部分は、ピンホ-ルとして
作用する。
作用する。
ラングミュアー
ブロジェット
自己組織化膜(
自己組織化膜(SAMs
SAMs)
LB膜での基板と基質間
LB 膜での基板と基質間、
膜での基板と基質間 、 および基質間の相互作用は弱いファンデ
ルワールス相互作用であるが、
ルワールス相互作用であるが、基板と基質を強い共有結合や配位結
合で結んだ膜では無秩序性や欠陥が少ないであろうと予測された。
合で結んだ膜では無秩序性や欠陥が少ないであろうと予測された。こ
れが自己組織化膜(
れが自己組織化膜(selfself-assembled monolayers,
monolayers, SAMs)
SAMs)であるが、
であるが、用
語として何を示すのかあいまいである。
語として何を示すのかあいまいである 。 一般的な組み合わせは基板
Auの
Au の (111)
111) 面とチオール基またはチオアセチル基の付いた有機物
(R−
(R−SH, R−SCOMe)
SCOMe)の反応により基板表面でAu
の反応により基板表面でAu・・
Au・・S
・・S−Rを形成するもの
である(
である(生体物質に利用できる)
生体物質に利用できる)。Rとしてアルキルを用いた場合は、
としてアルキルを用いた場合は、ピ
ンホールの無い膜形成が可能であるが、
ンホールの無い膜形成が可能であるが、π電子をもつ複雑な構造の分
子を用いたSAM
子を用いたSAMs
SAMsは単純に有機物の入った溶液に金の結晶を漬ける
だけで作成されており、
だけで作成されており、必ずピンホールなどの欠陥を含む。
必ずピンホールなどの欠陥を含む。基板の特
定の一端から膜形成を順次進行させる技術がない限り、
定の一端から膜形成を順次進行させる技術がない限り、このような無
秩序性をなくすることは困難である。
秩序性をなくすることは困難である。SAMs
SAMsの他に化学結合膜や有機
メッキなどといわれる膜や作成手法がある。
メッキなどといわれる膜や作成手法がある。これらは全て有機物と無
機金属(
機金属(化学結合膜はシリコン)
化学結合膜はシリコン)間での共有結合の形成が基本で、
間での共有結合の形成が基本で、電
極電位を制御するため有機物で金属電極を化学修飾(
極電位を制御するため有機物で金属電極を化学修飾(共有結合)
共有結合)した
研究の発展である。
研究の発展である。