「ポーランドを第二の日本に！」 … しないほうがいいかもしれませんマルタ・シチギェウ私は若いときから日本が好きでした。大学で日本研究を専攻にして、憧れの日本に１年の留学もしました。卒業後、当然のように、母国のポーランドで日系企業に勤めましたが、やはりもっと勉強したいと再び日本への留学を決めました。そして昨年、大阪大学の博士課程に進学することができました。「そんなに好きなら、日本で就職しないの？」とよく聞かれますが、今は「無理！」と答えます。多くのポーランド人は日本人の働き方を高く評価します。それは１９８０年にポーランドも日本のように戦後復帰を果たすという意味で、レフ・ヴァウェンサが「ポーランドを第二の日本に ! 」と発言したからです。彼はその後大統領になって、ノーベル平和賞を受賞しました。実は、以前私もできるものなら日本で働きたいと思っていたのです。国際化が進む中、それはただの夢ではないと目標を定めました。しかし、色々と調べ始めたら、日本で働きたい気持ちが変わりました。やはり、少なくとも仕事面では、ポーランドを第二の日本にしないほうがいいかもしれません。なぜか、この小論文で説明します。まず、日本の企業文化についてですが、とりあえず、労働時間が長すぎます！図１上のグラフに示すとおり、日本の男性の一日当たりの平均労働時間は３７５分、 OECD ２６ヶ国の中で最長です。原因は残業の大量ですが、その中で特に多いのはいわゆる付き合い残業、つまり自分が定時に退社したくても、上司が帰るまで会社に残ることでしょう。それに会社の飲み会もよくあるそうです。行きたくないときには断ればいいと思いますが、昔言われていた「飲み会も仕事のうち」と未だに考える上司の誘いなら簡単に断れないものです。私の友達の話ですが、彼は入社後に殆ど毎日終電まで飲まされていたそうです。新人は大体２０代前半で、お酒にまだ慣れていない人がかなり多いため、次の日に仕事できるように途中で何回もトイレへ行って吐くのが普通だそうです … 若い世代に急速する過労自殺の背景にそのようなこともあると言えるかもしれません。図２日本企業は総合職と一般職という構造から成り立ちます。企業によって違うでしょうが、一般的に言うと総合職は将来の幹部候補で給与が高めですが、残業や転勤が多いです。それに対して、一般職は残業などのないサポート業務ですが、給与が低くてあまり昇進の見込みがありません。しかし、私はアルバイトをしている英会話教室での、ある会話が記憶に残っています。－ Can you tell me the difference between 「総合職」 and 「一般職」 in Japan? － Well, basically it's the same… The only difference is that 職」 is for men and 「一般職」 is for women. 「総合 1 なるほど … 確かに、総合職の女性率は３．５％にしか及ばないようです。しかし、もう一つの違いがあります。仕事の内容が同じにもかかわらず、一般職の給料がおよそ３３％も低いのです。 2 日本企業に入社すると、技術的な専門職を除いて、みなが一から企業のノウハウを教わります。人的資本理論ではそれを企業特殊的熟練と言います。当然、熟練を教える費用は 1 2 和訳：－日本での「総合職」を教えてもらえます？－まあ、基本的に一男性の、そして「かね。２００３： OECD 、と「一般職」との違い緒ですが、「総合職」は一般職」は女性の仕事です１８．会社が負担するので、費用節約のため、熟練を受ける人は長い間働いてくれそうな社員に限定するのです。女性は出産・育児のため休む傾向があるので、教育の対象になりにくいとされます。 3 会社側からすれば理屈が通っていますが、そもそもなぜ女性が出産後働かないという前提になっているのでしょうか？また、なぜ休暇を取ること自体が悪いのでしょうか？それは企業特殊的熟練を持っている人数が少なすぎるからだと言えます。一人が担う仕事が多すぎるせい、その社員が休んだら、同僚がカバーしなければならない仕事の量が多すぎて、みなに大きな負担をかけることになります。休暇を取ることがわがままだとみなされて、周りに迷惑をかけないように取らない人が殆どです。そのため、妊娠すると退職してしまう女性が大勢いるのです。結果的に日本人は休む楽しみを忘れてしま 3 Estevez-Abe 、２００７：７０－７２．ったと思います。ある日本人友達と彼女の一泊二日沖縄旅行について話していたときに「でも、ちょっと短かったな」とコメントしたら、「ううん、それ以上だったら仕事へ戻りたくなるの」と言われました。次に、性別役割分担について考えましょう。明治時代から「良妻賢母」が婦人の理想でした。皮肉なことに、その理念が国家主義から生まれて、戦争を支えてきたイデオロギーにもかかわらず、未だに結婚して子供を産むことが女性の生き甲斐と信じる日本人がいます。最近それは変わりつつありますが、昔女性社員が結婚すると、仕事がいわば「婚活」かのように寿退社、言い換えれば仕事から「卒業」して、夫を支える妻として新たな生活がスタートしたらしいです。そして結婚して２年内に出産しないと「この子、大丈夫か」と周りから疑われることもあったそうです。女性の幸せは家庭にあるのに対して、男性の生き甲斐は仕事だという偏見はあります。長年不況が続いている中、仕事があること自体がありがたくて、自分を多少犠牲にしても会社のために尽くさなくちゃと思う男性がかなりいるでしょう。昔から「会社は家族だ」という理念が社員の努力に理屈を付けています。実は、これは戦後の日本を立て直すには労働力が必要であるという状況の中で、家族のためなら、最も頑張れるという人間の原動力を利用したスローガンです。最近、ポーランド人の若者の中で、ポーランド人民共和国、つまり第二次世界大戦後のときを思い浮かべるようなアクセサリーが流行っています。ポーランド人民共和国はプロパガンダの時代だと知られていて、当時使われていた不条理なスローガンのおかしさが現在のブームの原因です。例えば、下のスローガンが載っているカップなどが購入できます。図３その意味は「覚えろ！職場はあなたの第二の家」 4 です。日本の「会社は家族だ」にかなり似ていると言えます。しかし、さらに男性を縛りつける観念があります。平成２５年度の男女共同参画白書では「今、幸せだと感じている」男性が３割にも満たないことを受けて、ある番組がアンケートを行いました。その結果、男性の５４％ 4 当時、このようなポスター自体は存在しなかったのですが、職場で労働者がそう思わせるようなことをよく言われていたそうです。は生きづらさを感じているということが明らかになりました。そしてその男性の多くは「求められる男らしさとのギャップ」という理由を挙げました。 5 ３高からイクメンへと、男らしさの定義が時代と共に変わって、男性たちがそれに付いていけないようです。性別に関する固定観念は日本人の働き方にも反映しています。図４就業形態別の特徴を分析すると、女性の労 5 働力率が M 字カーブの形状をしていることが NHK ２０、１４．わかります。よく言われるように、それは出産・育児期のために就業率が落ち込んで、子育てが一段落した後に再就職する女性が多いことを示します。しかも、正社員として働き始めた女性でも、結婚や出産後に再就職すると非正規雇用者になる傾向が強いようです。なぜ女性が出産前の仕事に戻らないでしょうか？非正規雇用は給料や労働条件があまりよくない一方、働く時間が自由に選択できるメリットがあります。上記に述べたように、女性の生き甲斐が家庭を守ることという考え方の影響でしょう。では、男女別で家事労働時間を調べましょう。図５女性の家事労働の一日あたり５時間弱に対して、男性が１時間しか家事しないようです。上の統計ではそれははっきりしていないのですが、男性がする家事の内容を調べれば驚くかもしれません。なぜかと言えば、最近女性と男性にとってのワークライフバランスが大部違うことが指摘されつつあるからです。 6 家庭を持つ女性の多くは有給労働を終えると、家で子供の面倒を見たり、料理を作ったりして、つまり無給労働を始めるのです。一 6 Lo 、２０１５．方、男性は仕事から帰宅すると、子供と遊ぶことが一般的なようです。要するに、男性はワークライフバランスを生かそうとしていますが、女性はワーク対ワークの状態にいるわけです。とは言っても、もし男性が積極的に家事や育児に参加したくても、長労働時間のためそれは不可能です。日本のお父さんたちについてよく「蚊帳の外」と言いますが、極端な場合は家族と赤の他人かのような存在になるケースもあります。近年注目を集めるいわゆる「主人在宅ストレス症候群」がその一例です。長年別々の生活をしてきた夫婦が定年後に毎日顔を合わせることが妻のストレスの原因になるという問題です。家族とは何かを考え直す必要があるでしょう。では、日本政府にかかわる問題を取り上げたいと思います。まず、保育園は待機児童が多いです。保育園は一般的に朝から６時半まで０～１歳児からの子供を預かる厚生労働省の福祉施設です。文部科学省に属する幼稚園もありますが、それは３歳からの子供を一日数時間しか預からない教育施設です。従って、共働き夫婦は子供を保育園に入れるしかいのです。しかし、公的、つまりリーズナブルな保育園が足りないという問題があります。子供を入園させない場合は父母の一人が仕事を辞めて、家で子供の世話をすることになります。保育園の不足が男女共同参画を防ぐ深刻な問題です。また、保育園と同じく特別養護老人ホームも足りないです。有料老人ホームなら数多くありますが、公的＝リーズナブルな介護老人福祉施設が需要に応じないのです。老いた両親を預けられる施設がないと、家で介護するしかなくて、共働きが無理に近い状態です。育児休業の取得も問題視されます。育児介護休業法によって男女を問わず育児休業を取得することができます。しかし、育児休業を利用したい男性はおよそ３割を超えるにもかかわらず、 7 ２０１３年に男性の育児休業取得者の割合は２．０３％でした。 8 男性取得者の割合を上げる目的も含めて、ちょうど今年の 4 月 1 日から半年に限って給付金が５０％から６７％までに引き上げされました。父母とも半年ずつ休業を取得すれば、二人とも賃金の６７％をもらえる、かなりお得な政策だと言いましょう。しかし、それによって男性が急に育児休業を取り始めることがやはり想像しにくいです。今まで有給休暇すら使わないサラリーマンが半年を休むことがあり得るのでしょうか？ここで指摘したいのは、男性が育児休業を取らないのが給付金の問題ではなくて、そもそもあらゆる休暇が取りにくいということです。また、子育ては女性の責任と思い込んでいる男性はまだ結構いるようです。私がポーラ 7 ニ 8 厚生労働省、２０１３．ッセイ基礎研究所、２００８．ンドで働いていたとき、とてもやさしい日本人の社長に恵まれました。あるとき妻が出産したので、育児休業を取りたいと同僚の一人が社長に申し出たことがありましたが、法律で定めているように社長は当然賛成しました。しかし、社長とプライベートで話したところ、「休むのはいいけど、育児はやっぱり女性しかできないじゃない？」のようなことを言われました。そのとき、固定観念にとらわれる人は悪意がなくて、ただ他の生き方を知らないだけだろうと思いました。「年収１０３万円の壁」と「年収１３０万円の壁」をよく耳にします。パート労働者が年収１０３万円を超えると、税金を支払わなければならない、そして配偶者の所得税の算定にあたって配偶者控除を受けることができなくなります。また、年収１３０万円を超えると、自営業者を除いて、税金はもちろん、それ以外に「健康保険料」および「国民年金保険料」の支払いが必要になってくるわけです。収入が年に１７０万円以上でないと、税金や保険料などを引くと、プラスにはなりません。 9 しかし、非正規雇用者が年収１７０万円を超えるということはかなり難しいです。そういうわけで、年収の壁は一見家庭を扶養するものですが、同時に女性の働き方を大きく制限する、不平等な性別役割分担を固めるものでもあります。「男女共同参画社会基本法」は男女とも働きやすい環境を整える法律ですが、詳しく見てみると、企業側には努力義務がありますが、制裁措置はありません。 10 つまり、会社が法秩序に反する行為をなしても制裁が課せられないという深刻な問題があります。そのため、上司や相談所に被害に遭ったと申し出しても、基本的に指導以外の処理がなくて、「そういうのだめよ」と相手に注意することで終わり 9 「アルバイトの選び方講座」 10 Boling 、２０１５：１２７－１２８．ます。しかしその後、相手の嫌がらせがエスカレートする恐れがあります。実は被害者が何もできないのです。日本政府は法的措置の代わりに、公表に頼っているのです。例えば調査によって重大な違反が確認されたら、その企業が「ブラック企業」と名づけられて、社名や違反内容が公表されます。一方、育児をしやすくする企業は「子育てサポート企業」という認定を受けて、その証として事業主が「くるみんマーク」を付けることができます。ちなみに、どのような基準を満たしたら「くるみんマーク」がもらえるかを見ると、「男性の育児休業取得者が 1 名以上」という目標があります。 11 はい、一人だけです … 色々な意味で政府の真剣さを疑わずにはいられません。最後に、私を最終的に日本で仕事ができな 11 １厚生０．労働省・藤堂府県労働局、２０１５：いと思わせた問題を紹介したいと思います。それは日本で働く外国人の扱いです。この問題について語り始めたらキリがないので、最も不当なポイントのみにします。東北復興や２０２０年東京五輪に伴う工事が進んでいますが、少子高齢化のため労力が不足しているのです。国内で需要に対する供給が足りない場合は海外から取り寄せるのが当然です。しかし、日本での外国人労働力者率はおよそ１％にしか及ばなくて、先進国の中で最低レベルです。 12 また、安倍総理は日本が単一民族国家という伝説を信じているかのように「移民政策を取ることは考えていない」 13 と述べて、その代わりに研修制度の拡大を決意しました。研修制度の目的は開発途上国から人材を招いて、日本の優れた技術の修得を支援することですが、実際に多くの場 12 13 Kakuchi 、産経ニ２０１４．ュース、２０１４．合に安い労働力の提供に過ぎないのです。ひどいケースでは労働者のパスポートが取られることもあるそうです。アメリカ国務省は、「２０１３年度人身売買報告」の中で日本の研修制度を「搾取的」と批判しました。また、日本弁護士連合会は人権問題の観点から、この制度は廃止すべきと主張していますが、政府にはそのような声が届かないようです。 14 政府は外国人の短期在留を推進するかのようです。日本で働く上で、国民年金と健康保険に加入して、毎月掛金を払う必要があります。２５年間以上日本で働くと、年金の対象にはなりますが、母国が日本と双務契約を結んだ者以外は、 15 ３年～２４年だと毎月掛金を払っても年金を受け取ることができません。一方、３年以内だと、その期間に払った一時金の脱退を請求することができますが、３年 14 15 NewsSphere 、２０１４．現契約を結ん在双務だのは１３カ国のみ。以上働いても、一時金脱退の対象になるのは最初の３年間のみです。要するに、日本政府は外国人に働きに来て欲しがるのですが、目的を達したら、「もう帰っていいよ」というメッセージを送っています。「者」は「物」と違って、人権があります。このような使い捨て扱いは人権を侵害していると言わざるを得ません。小娘が愚痴ばかり吐くなんてと言われそうになりました。では、私はどのような社会で働けば満足するのでしょうか？私のことを人として見てほしい。「女だから早く子供を産め！」「男だからもっと仕事しろ！」「外人だからどうせこの国のことわからない。」人間の「個」を認めないのは人権無視の一種だ。人生の中で様々な役割を持つことになるが、担うのはいつも人。仕事を楽しくしたい。生涯で約９０００時間も働くのだから、その大事な時間を無駄にしたくない。自分の仕事を誇りに思いたい。奴隷扱いされたくない。人間は仕事のために生まれてきたのではなくて、生活できるように働くのだ。一所懸命働くご褒美に、たまに一泊二日以上の旅行したい。そして大切な人と一緒にいるときは、誰かに迷惑をかけるといううしろめたい気持ちになりたくない。私は欲張りなのでしょうか … ？当然のことだと思いますが、私が間違っているのでしょうか？では、日本社会が働きやすくなるために具体的に何をすればいいかを考えましょう。上記に指摘した不当な法律の廃止のような当然の対策以外に改善方法を提案してみます。まず、一刻も早く長労働時間を改善せねばならないです。週労働時間を短縮すればいかがでしょう？現在フランスでは週３５時間労働法が実施されています。また、スウェーデンのヨーテボリ市では一日６時間労働が試されているそうです。労働時間の短縮が人間らしい生活を促して、また失業率の低下へもつながるものです。労働時間の短縮によって効率が下がると思いがちかもしれませんが、それは逆です。最新の研究が短労働時間が生産性を向上させると指摘しています。 16 次、非正規雇用を不利益にすることを辞める必要があります。短い時間働く人は正社員より劣った作業をするというわけではありません。例えばオランダではパート社員は正社員と時給が同じく、さらに社会保険の対象にもなっています。それは様々な働き方・ライフスタイル尊敬の証拠でしょう。また、教育対象者を拡大すればいいと思います。企業特殊的熟練を持っている社員を増やせば、誰かが急に休むことになっても同僚がカバーできるようになります。その上で、一人当たりの仕事を分担するか、もしくは範 16 Pencavel 、２０１４．囲を減らすといいです。最初はコストがかかるでしょうが、長い目で見ると労働環境の改善と生産性の増加を期待できます。では、女性活用について考えましょう。まず、女性活用が経済的な問題だと主張したいです。「女性の輝く社会」は女性を幸せにするためのものではなくて、経済成長をもたらす作戦なのです。女性活用を語る多くの政治家がただ女性を利用したいように感じて仕方ありません。仕事するかしないかは各個人の選択です。夫婦の一人は外で働いて、もう一人は内で働くことも、両者がそれを望むのなら、何も悪くないです。但し、現在女性は仕事するか、家庭を持つかをどちらか選ばないといけない状態なので、他の選択も提供するという意味での女性活用を支持しています。それを実現するにはまず保育園の数を増やさなければなりません。もちろん、安倍政権もそれを理解しているのですが、５年間で待機児童ゼロを目指す方針を決めても、未だに具体的に何をするか公表していません。そこで待機児童が多い保育園とそうではない幼稚園を合併すればいいと Boling が提案します。 17 その合併によって待機児童を解消するだけではなくて、子供園が同じ行政機関に属すれば、経費節約にもなるでしょう。一石二鳥ではないでしょうか。別の対策として、認可ベビーシッター制度の導入も考えられます。自宅で子供の世話をするベビーシッターを管理する制度があれば、親が安心して子供を預けることができます。それに、場所はベビーシッターの自宅になるので、建物を準備しないで済みます。但し、前提として管理制度が不可欠です。次、育児休業を取り上げたいです。上記にも述べたように、育児休業を取りやすく、そしてお得にしても、男性が取得しない可能性が高いかもしれません。そこで、育児休業を 17 Boling 、２０１５：１１９．義務にすればいいと思います。確かに完全な義務化は急進的かもしれませんが、少なくとも女性と同じく男性も義務的に８週間を育児休業を取るべきです。男性が育児休業を取らないことは子育ては女性の責任という偏見を固めることです。家庭の中で平等な役割分担が成立しなければ、社会でもそれは不可能です。だからこそ家事の分担が非常に大事だと思います。子供にとって両親が大人の手本です。父親が家族が起きる前に出社して、みんなが寝ている頃に帰宅すると、子供は男性がこうであるべきと思うようになるのです。そのため、若い人でも伝統的役割分担に反対していても、無意識に子供の頃身についた行動パターンを繰り返してしまうのです。まさに悪循環のようです。私が家事分担にうるさい理由はそれです。本当の男女共同参画を目指すなら、家庭から始まらないと！多くの対策は政府が主導ですが、労働社会学を専攻にする私の指導教官は「法律を作るのはオヤジばかり！」とよく言います。その意味は、若者や女性の観点を理解せず、自分が身近に感じる高齢者問題にしか取り組まない傾向があることです。まだ記憶に新しい東京都議会セクハラやじ問題はまさに政治家が女性の立場などまったく理解していない証でしょう。とはいっても、政府は何も変えようとしないというわけではありません。ただ政府を当てにするだけではなく、他にも積極的な取り組みが必要なだけです。ここは企業の出番です！前提として総合職と一般職の区別を廃止すべきです。原案はそうではなかったかもしれませんが、今それは男女共同参画を妨げる仕組みに過ぎないでしょう。また、原則として採用する男女の割合を同じくする必要があります。私は昔性別ではなくて、才能が大事という理由でそのようなポジティブ・アクションに批判的でしたが、女子大生と話したら意見が変わりました。専業主婦になりたがる彼女らの過半数はどうせ仕事で成功できないという理由で専業主婦を希望するとわかったのです。女性が自分にもキャリアが持てると信じられるように優遇措置を採らないと、女性たちはそもそも働きたいと思わないでしょう。また、管理職の女性率も増やせばいいです。上司が男性ばかりということは女性の昇進が無理というサインと一緒です。管理職に女性もいれば、「このような女性になりたい！」と目指す若い女性も増加するはずです。日本にある本社への出張のときに、どこにも「安全第一」のポスターがあることに感服しました。毎日視覚的メッセージを見るだけに、無意識に内容を身に付けるわけです。では、固定観念を払うようなポスターはいかがでしょうか？例えば「私はウエートレスじゃないよ。コーヒーは自分でどうぞ！」と女性社員がカップを持って微笑むポスターです。社員が不平等だと思うことについてポスターの募集を行えば、社員の悩みに応じた改善を実施できるでしょう。管理職が長労働時間問題の鍵を握るとよく言われます。管理職が定時に退社しないと、部下が帰宅しづらくなります。管理職が早く帰る、そして部下に積極的に「残業したらあかん！」と注意することで職場の風土の変化を見込めます。しかし、第一歩として管理職の意識を変えなければならないわけです。様々な対策が考えられますが、一例として管理職が定時に帰ったかどうか匿名の投票はどうでしょう。誰がどう答えたかばれないように、全員に必ず ○ か × の投票を要求して、週ごとに結果をまとめます。管理職がある週に残業すれば、注意と共にイエローカードを出して、一ヶ月に３枚のイエローカードが集まったら、何かの懲罰を与えます。但し、その懲罰は厳格でなければ意味がありません。有給を取らせるや辞任させる、ひどいケースでは解雇することまで考慮に入れるべきだと思います。過激な対策ですが、深刻な現状に応じるものだと思います。ここで残業なしでは仕事が成り立たないと怒った声が上がりそうですが、私が在職中に残業をしたのは関係会社が潰れたという緊急時の二週間くらいのみです。残業なしで仕事が成り立たないことは仕事の構造の問題を示しているのです。最後に、企業側に日本人と同じ条件で外国人を採用して欲しいです。優遇扱いなんかは求めていないのですが、私たちは日本人と同じ人間です。今は確かに工事現場の労働者が必要とされていますが、正社員になって、日本企業の成長に貢献できる外国人材も数多くいます。職場に外国人がいることによって、日本人社員の個人的成長、職場の風土の変化、いわば国際化が進みます。日本の大学は今の時代にこのようなダイバーシティが不可欠になったと理解しているようで、この数年留学生の人数を積極的に増やしてきました。そのおかげで私は今日本にいるのです。結構ダメ出ししてしまいました … しかし、最後に男女共同参画が実現していないのは、決して日本だけではないと強調したいです。もちろん実現レベルが異なりますが、男女を問わずワークライフバランスを完全に実現した国は、もちろんポーランドも含めて、まだないかもしれません。男女が本当の意味でイキイキと働ける社会を推進するのが世界の課題です。確かに、現在の日本での働き方をまねして、他の国を「第二の日本に」することは薦められないと思いますが、私はこれからの日本に大変期待しています。なぜかと言えば、心のどこかではやはりいつか憧れの日本で仕事したいなと未だに思っているからです。