乃村 久代

初めての海外勤務、
マルチ外交の現場で
私は現在、パリにあるOECD(経
済開発協力機構)日本政府代表部で勤
務しています。OECDで働いている
と誤解されがちなのですが、日本政府
代 表 部 は、 O E C D 本 体( 国 際 機 関 )
ではなく、OECDと東京の本省との
間の連絡調整を担う外務省の出先機関
です。OECDは、経済や開発だけで
なく、教育、科学技術、農業、雇用な
ど様々な分野を取り扱う「世界最大の
シンクタンク」とも呼ばれる研究機関
で、先進国間で共通の政策課題に関す
あ り ま す が、 興 味 が あ れ ば 積 極 的 に
チャレンジしていただきたいと思いま
すし、私も国際社会での仕事の面白さ
をもっと伝えていきたいです。
仕事の原点、やりがい、悩み
平成22年 英国留学
社会政策、公共政策の修士号取得
る議論や、国際比較データの提供等を
行っています。
代表部の役割は、日本の政策等を紹
介してOECDの議論に貢献するとと
もに、OECDの研究結果や政策提言
を我が国の政策に活用していくという
双方向での橋渡しを行うことですが、
その中で、私は医療や年金など社会保
障分野を担当しています。これまで2
年間の留学期間を除けば、厚生労働省
の外で仕事をすることは初めてなので
す が、代 表 部 に は、外 務 省 だ け で な く
私のような他省庁からの出向者も多
く、様々なバックグラウンドを持つ方
と議論をしながら新たな視点を得るこ
平成20年 職業能力開発局総務課総括係長 金融危機後の緊急雇用対策、職業訓
練の充実等に関する業務
情報の質・量も変わってきますし、人
脈を築く機会も増え、自分の仕事の意
義について考え直したり、新たな問題
意識を得るチャンスにもなります。ま
た、仕事のメリハリがつけられるよう
になり、自由時間とのバランスが取り
やすくなるというメリットもあります。
私自身も異動したり立場が変わった
りする度に、最初はきつく感じること
も多いのですが、とにかく何でも吸収
する気持ちで勉強し、さらに周りの人
とよくコミュニケーションを取って
チームワークを良くすることを心掛け
るようにしてきました。これからも、
きっと多くの困難な場面があると思い
ますが、目の前に課されたタスクをこ
な す だ け で は な く、 よ り 広 い 視 野 を
持って前向きに仕事に取り組んでいき
たいです。
とができ、
毎日良い刺激を受けています。
OECDの会議に出席したり、事務
局のカウンターパートと話をする機会
も多いのですが、そこでまず驚いたの
が、会議での他国からの出張者の顔ぶ
れや、事務局の中で活躍する女性の割
合の多さでした。個別に話を聞くと、
それぞれに家庭や育児との両立には苦
労している様子が伺えますが、国際社
会の現場で当たり前のように多くの女
性が活躍している様子は印象的でした
し、日本からもっと多くの女性に出て
きてもらいたいという思いを強くしま
し た。 も ち ろ ん、 ラ イ フ ス テ ー ジ に
よって海外勤務や出張が難しいことも
平成27年 在パリ OECD 日本政府代表部一等書
〜現在 記官
アタッシェ業務(医療、社会保障分野)
25
りたいことを見失ったり、急に部下を
持ってマネジメントに戸惑ったりと悩
むことが多かったのですが、うまく自
分なりの気分転換方法を見つけなが
ら、一つ一つ着実に成果を出していく
ことで、少しずつ自信をつけていくこ
とができたような気がしています。
ま た、 霞 が 関 の 仕 事 は 現 場 業 務 と
違ってその成果を直接実感しづらいこ
とも多いですが、自分が携わった仕事
の成果を思いがけない形で目にするこ
ともあり、そんな小さな喜びがやりが
いにつながっています。例えば、入省
5年目に子育て支援サービスの普及を
目指した制度改正に関わったのです
が、それから数年後、子育て中の同僚
から「この制度は利用者も多く、我が
家でも頻繁に活用している」という話
を聞いて、現場の方々の努力もあって
着実に成果が出ていることを非常に嬉
しく感じました。
乃村久代
M o d e l . 13
女性国家公務員のワークスタイル事例集
Hisayo Nomura
就寝
メールチェック、フランス語の勉強等
平成18年 雇用均等・児童家庭局保育課企画法
令係長
子育て支援の充実、認定こども園の
立ち上げ等に関する業務
キャリアアップを通し て得られるもの
女性職員へのメッセージ
乃村 久代
帰宅
平成26年 職業安定局派遣・有期労働対策部企
画課長補佐
若年者雇用対策の法制化
良い意味で、これまで職場で「女
性であること」を意識させられた
ことはありません。バリバリ働く
もよし、ライフステージに応じて
家庭・育児との両立を目指すもよ
し、様々な選択肢があるのがキャ
リア女性の魅力だと思っています。
よ
さ
ひ
ら
む
会議終了
私は元々国際分野の仕事に興味が
あ っ た の で す が、 そ の 土 台 と し て、
人々の生活を支える社会保障について
我が国の制度がどうなっているのかを
学びたい、そしてその制度づくりに携
わりたいとの思いから厚生労働省に入
省し、これまで医療、雇用、保育など
の分野で経験を積んできました。
と言ってもずっと順調だったわけで
はなく、特に入省後5年目くらいまで
は、目の前の仕事に追われて自分のや
OECD の会議出席(日本の政策紹介)
Pr ofil e
以前、尊敬する女性の先輩が仰って
い た「 キ ャ リ ア ア ッ プ の チ ャ ン ス が
あったら、迷わずにチャレンジして欲
しい」という言葉が心に残っていま
す。確かに、キャリアアップすること
で責任が増えて重い仕事を任される場
面も多くなりますが、その分、
得られる
age
厚生労働省(外務省出向中) 在パリ OECD 日本政府代表部一等書記官
昼食
(OECD の担当課長と意見交換)
平成24年 厚生労働省医薬食品局総務課医薬品
副作用被害対策室長補佐
再生医療製品に対する薬事規制の法
制化
Mess
「 国 際 社 会 の 舞 台 か ら 」 一日のタイム 例
スケジュール
平成15年 厚生労働省入省(Ⅰ種(法律区分)採用)
労働基準局安全衛生部計画課法規係員
労働者の安全やメンタルヘルス対策
等に関する業務
26
出勤
13
本省課長補佐級
の
夕食(日本からの出張者と今後の対
応について打合せ)
22:30
23:00
24:00
メール・電話で日本と連絡。※時差
の関係上、日本との調整は午前中に行う。
13:00
14:30
18:00
19:30
起床
7:30
9:20
10:00
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