f mg sin

運動の法則
摩擦(friction)
重い荷物を横に引っ張る際に、滑らかな床面だとわず
かな力で動き出すが、粗い床面だとなかなか動かない。
これは物体の底面と床面との間に引く力 F [N]と逆向き
に摩擦力 f [N]が生じるためである。この摩擦力 f は物体
N 垂直抗力
外力 F
dが静止しているときに働くので、 静止摩擦力 と呼ばれ
摩擦力 f
ている。
物体を引く力 F を次第に大きくしていくと、それに伴
重力 mg
って静止摩擦力 f も大きくなる(つりあっているから)が
静止摩擦力には限界があるから引く力が限界を越えると
物体は動き出す。動き出す直前の静止摩擦力は最大だか 接触物体(面の状態) 静止摩擦係数 動摩擦係数
0.7
0.5
ら、 最大静止摩擦力 という。物体が動いているときの摩 鋼鉄と鋼鉄(乾燥)
鋼鉄と鋼鉄(塗油)
0.005~0.1
0.003~0.1
擦力を 動摩擦力 という。この値は、一般に一定で最大静
ガラスとガラス(乾燥)
0.94
0.4
止摩擦力よりも 小さ い。
0.35
0.09
摩擦力は物体が床面を押す力の大きさに比例する。 ガラスとガラス(塗油)
氷と氷
0.1
0.03
この物体が面を押す力は、物体が面から受ける力 N [N]
( 垂直効力 )の反作用である。比例定数をμ(ミュ
人の関節
0.01
0.003
ー)とすると摩擦力 f [N]は
いろいろな物体間の摩擦係数
f = N
[N]
で表される。比例定数μを摩擦係数といい、静止しているときを 静止摩擦係数 、最大のときを 最大静止摩擦係数
という。通常静止摩擦係数の数値は最大静止摩擦係数である。物体が動いているときは 動摩擦係数 といい、μ’
で表す。
摩擦角
物体を粗い斜面に置くと物体は静止する。しかし、斜
面の角度を大きくしていくとある角度で物体は滑りだす。
この現象を考えてみよう。
質量 m [kg]の物体が水平面からの角度θの斜面の上に
乗っている。物体と面との間の静止摩擦係数をμ、重力
下速度の大きさを g [m/s2]とする。
今、物体が静止しているとしよう。この物体に働く力
は右図の様になる。座標軸を図のようにとって力を分解
して力の釣り合いを考えると
x 方向
y 方向
= mg sin  f
N = mg cos 
N
mgsinθ
y
f
mgcosθ
mg
x
θ
…①
…②
となる。また、摩擦力 f [N]の大きさは垂直抗力の大きさ N [N]を用いて表すと
f=
N
…③
この 3 式より静止摩擦係数μは
μ=
tan 
となる。このことから静止摩擦係数は角度θに依存することが分かる。
角度θを大きくして物体が滑りだす直前の角度を 摩擦角 といい、θ0 で表す。tanθ0 は 最大静止摩擦係数 を表し
ている。このように、摩擦角を測定することにより最大静止摩擦係数を測定することができる。
No.4
その他の力
とりあえず力学の分野で覚える力の他に自然界では様々な力が存在する。そのうち使うものも出てくるので、今は
何となく覚えておこう。
万有引力
全ての物体間に働く引力。大きさは物体の質量の積に比例し、物体間の距離の二乗に反比例する。
静電気力
電荷(+の電気、-の電気)に働く力。同種の電荷は反発し、異種の電荷は引き合う。大きさは電
荷の積に比例し、電荷間の距離の二乗に反比例するクーロンの法則に従う。
磁気力
磁荷(N 極、S 極)に働く力。同種の磁荷は反発し、異種の磁荷は引き合う。大きさは磁荷の積に
比例し、磁荷間の距離の二乗に反比例する磁荷に関するクーロンの法則に従う。
ローレンツ力 磁場(磁界)の中を運動する電荷に働く力。フレミング左手の法則に従う。大きさはそのときに…
強い力
原子核を構成している力。原子核内で陽子と中性子を結合させている力。原子核程度の大きさの範
囲にしか伝わらない。理論的には中間子と呼ばれる微粒子を陽子と中性子間でやりとりするときに
生じていると考えられている。
弱い力
β崩壊に関係している力。
正確には素粒子のうち、
レプトンと呼ばれる種類の素粒子にのみ働く力。
ここで、万有引力、静電気力、強い力、弱い力は全ての力の根元で、物理学で扱う力は理論上この 4 つに集約され
る。また、現代物理学ではこの 4 つの力を 1 つにまとめる研究がなされている。現在までに一応 3 つまで統一されて
おり、大統一理論と呼ばれているが、まだ矛盾点も残されているため、完成には時間がかかりそうである。
復習を兼ねて…
運動方程式と落下運動
ここで運動方程式を用いて落下運動(斜方投射)を考えてみよう。質量 m [kg]の物体が仰角θ、初速度 v0 [m/s]
で投げられたとする。
物体が運動している間に働く力は重力だけであるから、x 方向、y 方向の加速度をそれぞれ ax、ay [m/s2]とすると
max =
may =
0
 mg
y
これより
mg [N]
ax = 0 →等速直線運動
ay = g →等加速度直線運動
v0 [m/s]
θ
x
x 方向、y 方向の初速度はそれぞれ
x 方向:v 0 cos 
y 方向: v 0 sin 
[m/s]
[m/s]
となる。よって t [s]後の速度 vx、vy、x、y はそれぞれ
vx = v 0 cos  [m/s]
x = v0 cos  t [m]
vy = v 0 sin   gt [m/s]
1
y = v sin   t  2 gt [m]
2
0
と求めることができる。このように運動方程式で様々な運動を記述できる。
運動方程式は物体の加速度を求めるための式(法則)であるから、必ずマスターしておかなければならない。そ
のためには物体に働く力がどのようになっているかをしっかりと理解しておく必要がある。