システム制御工学Ⅰ 電気電子工学科 2015年度 今日の講義内容 制御系の定常特性 • 定常偏差 • 目標値の変化に対する定常偏差 – 制御系の分類 – 定常位置偏差 – 定常速度偏差 – 定常加速度偏差 • 外乱に対する定常偏差 • (補足)内部モデル原理 2 定常偏差 𝐷(𝑠) 𝑅(𝑠) 代表的な目 標値につい て考える 𝐸(𝑠) + − 定常偏差 lim 𝑟 𝑡 − 𝑐 𝑡 𝑡→∞ + 𝐺1 (𝑠) + 𝐺2 (𝑠) 𝐶(𝑠) 目標値を考える場合は直結 フィードバック系で,外乱を考え る場合は上の形で考える = lim 𝑠{𝑅 𝑠 − 𝐶 𝑠 } = lim 𝑠𝐸(𝑠) 𝑠→0 𝑠→0 • 代表的な目標値に対する定常偏差は? • 外乱の挿入される位置に対して定常偏差はどう変わ るか? (開ループ伝達関数の内,外乱挿入位置の前 を 𝐺1 (𝑠),後ろを 𝐺2 (𝑠) とする) 3 代表的な目標値 • 単位ステップ入力 1 𝑟 𝑡 =𝑢 𝑡 ↔𝑅 𝑠 = 𝑠 • 単位ランプ入力 1 𝑟 𝑡 = 𝑡𝑢 𝑡 ↔ 𝑅 𝑠 = 2 𝑠 • 加速度入力 𝑡2 1 𝑟 𝑡 = 𝑢 𝑡 ↔𝑅 𝑠 = 3 2 𝑠 ラプラス変換はいずれも 1 𝑠𝑗 の形 4 制御系の分類 直結フィードバック系 𝑅(𝑠) + 𝐸(𝑠) 𝐺(𝑠) 𝐶 𝑠 𝐶(𝑠) − 開ループ伝達関数 𝐺 𝑠 = 𝑅 𝑠 1+𝐺 𝑠 𝐶(𝑠) 𝐸 𝑠 = 𝐺(𝑠) 1 = 𝑅(𝑠) 1+𝐺 𝑠 𝐾(1 + 𝑠𝑇1 ′ ) ⋯ (1 + 𝑠𝑇𝑚 ′ ) 𝐺 𝑠 = 𝑗 𝑠 (1 + 𝑠𝑇1 ) ⋯ (1 + 𝑠𝑇𝑛 ) 定常偏差は極 𝑠 = 0 の次数 𝑗 に大きく依存 • 𝑗 = 0 の場合 0次の制御系 • 𝑗 = 1 の場合 1次の制御系 • 𝑗 = 2 の場合 2次の制御系 ⋮ 5 定常位置偏差 目標値が単位ステップ入力のときの定常偏差 1 1 𝜀𝑝 = lim 𝑠𝐸 𝑠 = lim 𝑠 𝑠→0 𝑠→0 1 + 𝐺(𝑠) 𝑠 1 1 = lim = lim ′ 𝑠→0 𝐾(1 + 𝑠𝑇1 ) ⋯ 𝑠→0 1 + 𝐾 1+ 𝑗 𝑗 𝑠 𝑠 (1 + 𝑠𝑇1 ) ⋯ 𝑠𝑗 = lim 𝑗 1次以上の制御系では定常 𝑠→0 𝑠 + 𝐾 偏差0 1 𝑗 = 0 のとき 𝜀𝑝 = ≠ 0 0次の制御系では定常偏差 1+𝐾 𝑗 ≥ 1 のとき 𝜀𝑝 = 0 は0ではないが,定数ゲイン 𝐾 を大きくすれば偏差は減る 6 定常速度偏差 単位ランプ入力のときの定常偏差 1 1 𝜀𝑣 = lim 𝑠 𝑠→0 1 + 𝐺(𝑠) 𝑠 2 1 1 = lim = lim ′ 𝐾 𝑠→0 𝑠→0 𝐾(1 + 𝑠𝑇1 ) ⋯ 𝑠 + 𝑗−1 𝑠 + 𝑗−1 𝑠 𝑠 (1 + 𝑠𝑇1 ) ⋯ 𝑠 𝑗−1 = lim 𝑗 𝑠→0 𝑠 + 𝐾 2次以上の制御系では定常偏差0 𝑗 = 0 のとき 𝜀𝑣 → ∞ 𝑗 = 1 のとき 𝜀𝑣 = 1 𝐾 𝑗 ≥ 2 のとき 𝜀𝑣 = 0 1次の制御系では定常偏差は0で はないが,定数ゲイン 𝐾 を大きく すれば偏差は減る 0次の制御系では制御量が発散 7 定常加速度偏差 加速度入力のときの定常偏差 1 1 𝜀𝑎 = lim 𝑠 𝑠→0 1 + 𝐺(𝑠) 𝑠 3 1 1 = lim = lim ′ 𝐾 𝑠→0 𝑠→0 2 𝐾(1 + 𝑠𝑇1 ) ⋯ 2 𝑠 + 𝑗−2 𝑠 + 𝑗−2 𝑠 𝑠 (1 + 𝑠𝑇1 ) ⋯ 𝑠 𝑗−2 = lim 𝑗 3次以上の制御系では定常偏差0 𝑠→0 𝑠 + 𝐾 2次の制御系では定常偏差は0で 𝑗 = 0,1 のとき 𝜀𝑎 → ∞ はないが,定数ゲイン 𝐾 を大きく 1 𝐾 𝑗 = 2 のとき 𝜀𝑎 = 𝑗 ≥ 3 のとき 𝜀𝑎 = 0 すれば偏差は減る 0次・1次の制御系では制御量が 発散 8 目標値の変化に対する定常偏差 まとめ 1. 定常偏差は目標値入力の形に依存する. 2. 開ループ伝達関数 𝐺(𝑠) の積分の次数 𝑗 が 大きい方が定常偏差は小さい.ただし,位相 遅れが大きくなるので安定性が悪くなる. 3. 開ループ伝達関数のゲイン定数が大きいほ ど定常偏差は小さい.ただし,ゲイン定数を 大きくすると普通は安定度が悪くなる. 9 例題(1) 開ループ伝達関数が 𝐾 𝐺 𝑠 = 𝑠(𝑠 + 1)(𝑠 + 2) である直結フィードバック系を考える.ただし, 𝐾 > 0 とする. 1. 閉ループ系が安定となる 𝐾 の範囲を求めよ. 2. 閉ループ系が安定となる範囲において,ランプ 状の目標値に対する定常偏差を求めよ. 10 例題(2) 1. 閉ループ伝達関数 𝐾 𝐺(𝑠) 𝑠(𝑠 + 1)(𝑠 + 2) 𝐺𝑜 𝑠 = = 𝐾 1 + 𝐺(𝑠) 1 + 𝑠(𝑠 + 1)(𝑠 + 2) 𝐾 𝐾 = = 3 𝑠 𝑠 + 1 𝑠 + 2 + 𝐾 𝑠 + 3𝑠 2 + 2𝑠 + 𝐾 フルビッツの方法を使うと安定条件は 𝐷1 = 𝑎1 = 3 > 0 𝑎1 𝑎3 3 𝐾 𝐷2 = 𝑎 𝑎 = =6−𝐾 >0 0 2 1 2 よって,𝐾 < 6 であれば閉ループ系は安定 11 例題(3) 2. ランプ状の目標に対する定常偏差(定常速 度偏差)は 1 1 𝜀𝑣 = lim 𝑠 𝑠→0 1 + 𝐺(𝑠) 𝑠 2 1 2 = lim = 𝐾 𝑠→0 𝐾 𝑠+ (𝑠 + 1)(𝑠 + 2) よって,𝐾 < 6 の範囲内では 2 𝜀𝑣 > ≅ 0.33 6 12 問 開ループ伝達関数が 𝐾 𝐺 𝑠 = 𝑠(𝑠 + 1)(𝑠 + 3) である直結フィードバック系を考える(𝐾 > 0). 閉ループ系が安定で,ランプ状の目標値に対 する定常偏差が0.1以下となる定数ゲイン 𝐾 の 範囲を求めよ. 13 外乱に対する定常偏差 𝐷(𝑠) 𝑅(𝑠) 𝐸(𝑠) + − + 𝐺1 (𝑠) + 𝐺2 (𝑠) 𝐶(𝑠) 外乱が存在する場合の誤差の式 1 𝐺2 𝑠 𝐸 𝑠 = 𝑅 𝑠 − 𝐷(𝑠) 1 + 𝐺1 𝑠 𝐺2 𝑠 1 + 𝐺1 𝑠 𝐺2 𝑠 外乱に対する定常偏差 −𝐺2 𝑠 𝜀𝑑 = lim 𝑠 𝐷(𝑠) 𝑠→0 1 + 𝐺1 𝑠 𝐺2 𝑠 14 外乱入力位置の影響(1) 𝐺1 (𝑠) の積分次数を 𝑗 ,𝐺2 (𝑠) の積分次数を 𝑘 とすると −𝐺2 𝑠 𝜀𝑑 = lim 𝑠 𝐷(𝑠) 𝑠→0 1 + 𝐺1 𝑠 𝐺2 𝑠 𝐾2 (1 + 𝑠𝑇21 ′ ) ⋯ − 𝑘 𝑠 (1 + 𝑠𝑇21 ) ⋯ = lim 𝑠𝐷 𝑠 ′ ′ 𝑠→0 𝐾1 (1 + 𝑠𝑇11 ) ⋯ 𝐾2 (1 + 𝑠𝑇21 ) ⋯ 1+ 𝑗 𝑠 (1 + 𝑠𝑇11 ) ⋯ 𝑠 𝑘 (1 + 𝑠𝑇21 ) ⋯ −𝐾2 𝑠 𝑗 = lim 𝑗+𝑘 𝑠𝐷(𝑠) 𝑠→0 𝑠 + 𝐾1 𝐾2 15 外乱入力位置の影響(2) 1 ステップ状の外乱(𝐷 𝑠 = )の場合 𝑠 0, 𝑗 ≥ 1, 𝑘 ≥ 0 1 𝑗 −𝐾2 𝑠 − , 𝑗 = 0, 𝑘 ≥ 1 𝐾1 𝜀𝑑 = lim 𝑗+𝑘 = 𝑠→0 𝑠 + 𝐾1 𝐾2 −𝐾2 , 𝑗 = 0, 𝑘 = 0 1 + 𝐾1 𝐾2 1 ランプ状の外乱(𝐷 𝑠 = 2)の場合 𝑠 0, 𝑗 ≥ 2, 𝑘 ≥ 0 1 −𝐾2 𝑠 𝑗−1 𝜀𝑑 = lim 𝑗+𝑘 = − , 𝑗 = 1, 𝑘 ≥ 0 𝑠→0 𝑠 𝐾1 + 𝐾1 𝐾2 −∞, 𝑗 = 0, 𝑘 ≥ 0 定常偏差が0 になるかどうかは前段の積 分次数 𝑗 の値で決まり,定常偏差の大き さは前段の定数ゲイン 𝐾1 で決まる 16 例題 • 1 ,𝐺2 𝑠(𝑠+1) 𝐺1 𝑠 = 𝑠 = 乱が加わった場合 1 𝑠+2 で単位ステップ状の外 1 −𝑠 + 2 1 −𝑠(𝑠 + 1) 𝜀𝑝 = lim 𝑠 = lim =0 1 1 𝑠 𝑠→0 𝑠 𝑠 + 1 𝑠 + 2 + 1 𝑠→0 1+ 𝑠(𝑠 + 1) 𝑠 + 2 • 𝐺1 𝑠 = 1 ,𝐺2 𝑠+1 𝑠 = 乱が加わった場合 1 𝑠(𝑠+2) で単位ステップ状の外 1 − 1 −(𝑠 + 1) 𝑠(𝑠 + 2) 𝜀𝑝 = lim 𝑠 = lim 1 1 𝑠→0 𝑠 𝑠→0 𝑠 𝑠 + 1 𝑠 + 2 + 1 1+ 𝑠 + 1 𝑠(𝑠 + 2) = −1 17 問 𝐺1 𝑠 = 𝐾 ,𝐺2 𝑠+1 𝑠 = 1 𝑠(𝑠+4) のとき,閉ループ 系が安定で,単位ステップ状の外乱に対する定 常偏差の大きさが0.1以下になるような定数ゲ イン 𝐾 の範囲を求めよ.ただし,𝐾 > 0 とする. 18 (補足)内部モデル原理 𝑅(𝑠) と 𝐷(𝑠) が Re[𝑠] ≥ 0 に極を持つとき,誤 差𝑒(𝑡) が0に収束する必要十分条件は • 閉ループ系が安定 • 開ループ伝達関数 𝐺1 (𝑠)𝐺2 (𝑠) の極が, Re[𝑠] ≥ 0にある 𝑅(𝑠) の極をすべて含む • 𝐺1 (𝑠) の極が, Re[𝑠] ≥ 0にある 𝐷(𝑠) の極を すべて含む 目標値や外乱の変化に対応する要素が開ループ系 に含まれるときだけ定常偏差は0になるということ (今まで述べてきたのは,𝑅 𝑠 , 𝐷(𝑠) の極が 𝑠 = 0 19 にある場合) 練習問題 𝐺1 𝑠 = 𝐾 ,𝐺2 𝑠+1 𝑠 = 1 𝑠(𝑠+10) である制御系に おいて,以下の条件を満たす定数ゲイン 𝐾 の 範囲を求めよ.ただし,𝐾 > 0 とする. • 閉ループ系が安定 • ランプ状の目標値に対する定常偏差の大き さが0.1以下 • 単位ステップ状の外乱に対する定常偏差の 大きさが0.05以下 20
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