修 論 要旨

修⼠論⽂要旨
論文タイトル:「原価企画の導⼊についての研究―中国における場合―」
学籍番号:AM12030
氏
名:王
蓉
指導教授:大島正克教授
【論文の構成】
はじめに
第 1 章 問題意識の提示と研究目的の設定
第 2 章 日本企業の原価企画
第3章
中国原価管理の現状と問題
第4章
中国自動車産業の現状
第 5 章 原価企画を導入する手順
おわりに
参考文献
【論文の内容】
1.研究目的
近年、中国では、自動車の需要量が急速に拡大し、中国が世界最大の自動車市場となった。この世界
最大の自動車販売市場は中国本土の自動車メーカーだけでなく、世界の自動車メーカーにとっても大き
いなチャンスである。その一方、中国政府は、深刻化する交通渋滞及び大気汚染などの問題を改善する
ため、一部の都市で乗用車の購入を制限する規制を取り入れた。それによって、自動車の購入量が抑え
られ、自動車産業の競争が激化し、中国自動車メーカーの存続がより難しくなると予測できる。
また、中国国家統計局のデータによると、中国自動車の製造原価はアメリカ自動車の製造原価よりも
2~3 割りも高い。多くの中国企業は製品の生産段階における原価管理だけに焦点を当てるが、製品が
生産する前の開発段階を無視する状態となり、企業全体のバリューチェーンにおける原価を考慮してい
なければ、長期計画もない。原価管理の手法も後進的であり、中国自動車メーカーに適合する先進的な
原価管理システムは非常に必要である。
顧客のニーズや好みは徐々に多様となり、技術革新が加速し、需要が様々な方向へ変化するため、製
品のライフサイクルが短縮され、中国自動車市場における競争が激化する一方である。中国自動車メー
カーは競争優位の確保、限られたリードタイムで高品質、多機能、低原価、低価格などの新製品の設計
を開発することが非常に重要になってくる。製品の生産段階だけに焦点を当てているのでなく、原価発
生の源流に遡って原価維持・原価改善を実施し、長期的な経営計画を重視する手段として、多くの日本
企業が実行している「源流管理」-原価企画は以上の問題を解決できると考える。
本論文は日本原価企画をモデルとして、中国原価管理に存在している問題点の改善及び中国自動車産
業の競争優位を高めるため、中国自動車メーカーに適合する原価管理システムを検討することを目的と
して研究する。
2.研究方法
本研究は問題意識と研究目的、日本特有の原価管理システムとしての原価企画の基礎知識、中国原価
管理の現状と中国自動車産業の状態、原価企画の導入と海外移転、中国自動車メーカーにおける原価企
画を導入する手順という 5 つの部分で構成される。
第 2 章は中国自動車メーカーにおける原価企画が導入できることを大前提として、原価企画の基礎知
識を説明する。第 3 章は中国の+原価管理の現状、中国の原価管理に存在している問題点及び中国の原
価管理と日本の原価企画の違いなどの面から中国の原価管理の現状を紹介する。第4章は中国自動車市
場の状況、中国自動車産業の状態について様々な方面によって原価企画の導入の必要性を検討する。第
5章は以上の三章の内容に基づいて、トヨタ自動車(NUMMI)におけるケース及び日産自動車の原価
企画における購買管理という二つの事例を取り上げて、原価企画を導入する実例に紹介と分析し、原価
企画を導入する注意点を研究し、原価企画を導入する前の準備、原価企画を導入する手順を紹介する。
3.研究結果
以上のようなことから、本研究では、中国の自動車メーカーが原価企画を導入する際に、まず、自社
の存在している「魂」-経営理念と営業目的を明確に認識しなければならない。そうすれば、原価企画
の目標を決定しやすくなり、明確にできる。また、顧客のニーズ及び政府政策の変化などを調査、把握
しておき、サプライヤー、卸売業者や小売業者などの上流と下流企業と一緒に協力しあうことも重要で
ある。
他の原価企画の導入事例を参考するのもよいのだが、企業ビジネスの大きさ、企業の性質、自社の技
術などの条件により、新たな原価管理の手法であれば、何でも適合すると限らない。また、新たな原価
管理手法を導入するとしても、従来の原価管理の考え方を完全に除外してはいけない。自社の実際状況
に相応しい原価管理方法が求められる。すなわち、企業は自社の営業状況に見合った原価管理システム
を採用することと、その手段と内容を完全に理解し、自社の状況によって原価管理活動を実施すること
が一番重要である。
【主要参考文献】
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小川正樹(2010)『見える化でわかる開発段階の製品原価管理』日刊工業新聞社。
岡野浩(2003)『グローバル戦略会計 : 製品開発コストマネジメントの国際比較』有斐閣。
孙茂竹(2013)『成本管理学(第二版)
』中国人民大学出版社。
田中雅康(1995)『原価企画の理論と実践』中央経済社。
谷武幸(1997)
『製品開発のコストマネジメント : 原価企画からコンカレント・エンジニアリングへ』 中央経済社。