拡散律速反応 B [B] 10.1 節の(10-3)に拡散律速反応にお B JB ける Smolchowski の式を与えた。本節 V(r) [B]r B ではこの式の導出を行う。10.1(a)で示 dr したように、溶液中での拡散は反応物 A B r 濃度の濃度勾配によって引き起こされ、 濃度勾配の大きさに比例した速さで起 rAB B B こる。1 次元方向での、反応分子 A か らの距離 r における反応分子 B の濃度 B を[B]r とすると、拡散によって B 分子 B が A 分子へと向かう単位時間・単位面 積あたりの流束の大きさは、Fick の法 図 10.1 拡散律速反応のスキーム 則(10-1)に従って、 d [B]r (1) J B = - DAB dr で与えられる。DAB は溶媒中における A、B の相互拡散係数である。つぎに、 3 次元で、A 分子からの距離 r の球面を通過して B 分子が流れ込んでくる全 流束を考えると、図 10.1 から解るように、 (1)式は d [B]r (2) J B = -4pr 2 DAB dr と書き直される。JB は全流束であるから、その大きさは r によらず一定であ る。(2)を書き直して r = r ~ ∞にわたって積分すると -ò ¥ r [ B]¥ JB dr = ò d [B]r 2 [ B]r 4pr DAB すなわち、 [B]r = [B] + JB 4prDAB ([B]∞=[B]) (3) である。r=rAB とおくと、rAB では A と B が衝突と同時に反応確率1で反応す るので、[B]r = 0 となることから、上式は AB J B = -4prAB DAB [B] (4) と書ける。反応速度は、rAB を横切る B の流束と[A]の濃度に比例するので、 d [B] (5) = k[ A][ B] = -[ A] J B dt 1 である。ここに(2)式の JB を入れると k = 4prAB DAB (ただし DAB = D A + DB ) (6) となり、Smolchowski の式を得る。D として、(10-2)に示した Stokes-Einstein の式を用いると、拡散律速反応速度定数は溶媒の粘性hを用いて、 k = 4prAB DAB = 4p (rA + rB ) ( DA + DB ) = 4p ( rA + rB ) = æ1 1ö 2k BT (rA + rB )çç + ÷÷ 3h è rA rB ø k BT æ 1 1 ö ç + ÷ 6ph çè rA rB ÷ø (7) と与えられる。 2
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