診断に苦慮した 大量片側胸水の一例

診断に苦慮した
大量片側胸水の一例
徳之島徳洲会病院 研修医2年次
内村 貴之
症例
89歳 女性
主訴:右側胸部痛、呼吸苦、嘔気
既往:特記事項なし
現病歴:1か月前から上記主訴を認めていたが、
平成27年6月某日に症状が増悪し動けなくなった
ため当院に救急搬送された。
来院時vital sign
KT:37.2℃ P:106 回/分 BP:151/90mmHg
RR:25回/分 SpO2:97%(room air)
理学所見
胸部:右肺の呼吸音減弱を認める
右胸部打診で濁音を認める
腹部:平坦・軟
検査所見
<血液検査>
WBC 11460 μl
AST 25 U/l
ALP 178 U/l
T-Bil 0.8 mg/dl
Na 138.5 mEq/l
Ca 9.4 mg/dl
CK-MB 10.0 U/L
CRP 3.25 mg/dl
RBC 523 /μ
ALT 14 U/l
TP 6.7 g/dl
BUN 10.9 mg/dl
K 4.6 mEq/l
BNP 63.6 pg/ml
心筋トロポニン (-)
Plt 29.8 /μ
LDH 203 IU/l
Alb 3.9 g/dl
Cre 0.7 mg/dl
Cl 97.9 mEq/l
CK 39 U/L
検査所見
<胸部レントゲン検査>
検査所見
<胸部単純CT検査>
検査所見
<胸水検査>
外観-軽濁
細胞 350
多核球 19.0 %
LDH 183 U/l
pH 8.0
比重 1.015
単核球 81.0 %
総蛋白 4.4 g/dl
血糖 133 mg/dl
Lightの基準
①胸水中の蛋白/血清蛋白が0.5以下
→4.4/6.7=0.66
②胸水中のLDH/血清LDHが0.6以下
→183/203=0.9
③胸水中のLDH値が血清LDH正常上限の2/3以下
→228×2/3=152
浸出性胸水の鑑別
肺炎
結核性胸膜炎
悪性腫瘍の胸膜浸潤
慢性関節リウマチその他膠原病
アスベスト関連
尿毒症性胸水
肺塞栓
結核の精査の結果
喀痰抗酸菌塗沫検査:陰性
喀痰抗酸菌培養検査:陰性
胸水中の結核菌のPCR(-)
胸水ADA:17 IU/l
検査所見
<胸水細胞診>
Class Ⅳ 陽性 adenocarcinoma を疑う所見
<血中腫瘍マーカー>
CYFRA 39.1 ng/ml
CEA 3.9 ng/ml
SCC抗原 0.6 ng/ml
原発性肺癌による胸水と考えたが・・・
胸水ドレナージを行った後に施行した胸部CT
検査でも明らかなmassを認めない。
腹部単純CTで・・・
考察
・腫瘍マーカーのCYFRAの値が高値であり胸水が
ある場合には肺癌を考えてしまいがちであるが、
腹部の悪性腫瘍の可能性も考えて上腹部~骨盤
のCT検査も施行することで正確な診断につながる
のではないか。
結語
・末期膵癌患者で大量片側胸水を生じている
症例を経験した。
・胸水貯留の疾患でも呼吸器疾患や循環器疾患
以外を考える必要がある。