23 【アジソン病】(慢性副腎不全・副腎皮質機能低下症) 《症 状》 ・色素沈着 ・体重減少 ・低血圧 ♪ ・低血糖 ・体毛脱落 ・倦怠感 など 《検査所見》 ・低 Na 血症 ・高 K 血症 《その他》 ・アシドーシス,過換気,HCO3-減少 《カテコールアミン》 ・交感神経系の作用の増強 ストレスや緊急時にからだの働きを亢進させる ・血圧上昇,心拍数増加,血糖上昇など *副腎髄質そのものが交感神経節後線維 【褐色細胞腫】 :副腎髄質の腫瘍.カテコールアミン分泌増加 ・高血圧.高血糖.代謝亢進.発汗過多.頭痛.(5H) *p185 性腺疾患 クラインフェルター症候群:47XXY,身長高い? ターナー症候群:45XO,低身長,翼状頸,外反肘,第 4 趾骨短縮 《一般臨床医学 各論まとめ》 24 ■貧 血■ ◆貧血とは…末梢血管中のヘモグロビン濃度が減少した状態 *貧血 = ヘモグロビン濃度減少 = 赤血球減少 p187 《一般症状》 ・息切れ,めまい,立ちくらみ,易疲労感,動悸,眼瞼結膜蒼白など ・頻脈 *最悪の場合は心不全に陥る 《貧血の形態的分類》 ①小球性低色素性貧血 ②正球性正色素性貧血 ③大球性正(高)色素性貧血 ひとつの赤血球の:大きさ・ヘモグロビンの濃度がどれだけあるか 【鉄欠乏性貧血】 《原 因》 ①鉄の摂取不足:胃・小腸切除.ダイエットなど ②鉄の需要増大:成長期,妊娠 ③鉄の排泄増加:月経過多.慢性出血(主に消化管) 《病態生理》 ・貯蔵鉄 → 血清鉄 → ヘモグロビン鉄 → 組織鉄の順番で減少 フェリチン ヘモジデリン=フェリチンの集合体 *組織鉄まで減少してしまうと:スプーン状爪(さじ状爪) [特徴的な症状] 舌炎(舌乳頭萎縮) 《検査所見》 ・小球性低色素性貧血 トランスフェリン=肝臓で産生.鉄が足りないと産生亢進 [補 足] 鉄の貯蔵や組織鉄 *鉄は水溶性の蛋白とくっついてフェリチンとして貯蔵されている *血清鉄=トランスフェリン+鉄 貯蔵鉄からヘモグロビン鉄への橋渡し・運搬業 *組織鉄:酵素の成分など 《一般臨床医学 各論まとめ》 25 ◆巨赤芽球性貧血 [原 因] ・DNA 合成障害に基づく核の成熟障害 *ビタミンB12 や葉酸は DNA 合成に必要な因子 ↓ *細胞分裂の際に必要となる因子 細胞分裂の多い臓器・・・造血器.他に消化器粘膜 ↓ ♪ 核が未成熟で細胞質だけが普通より大きくなってしまう ↓ 大球性[正(高)色素性]貧血 *赤血球だけでなく他の血球(白血球・血小板)も障害されるため,汎血球減少となる 【悪性貧血】(巨赤芽球性貧血のひとつ) 《原 因》 実は悪性貧血は胃の病気 ・胃内因子や壁細胞に対する自己抗体が関与する自己免疫疾患 *B12 の吸収:胃内因子と結合してから回腸で吸収される 胃内因子は胃粘膜の壁細胞から作られる ・胃内因子欠乏による B12 吸収障害 → ビタミン B12 欠乏 《症 状》*貧血症状の他 ・消化器症状・ハンター舌炎 ・白髪(これも DNA 合成障害)・神経症状 《検査所見》 ・大球性[正(高)色素性]貧血 ・汎血球減少 *胃癌の発生率が高い 葉酸欠乏による貧血は,大量飲酒者や妊婦などに起こる.神経症状は出現しない 《一般臨床医学 各論まとめ》 26 ■白血病■ 《ポイント》 1.急性白血病:白血病裂孔(+) A) 急性骨髄性白血病:成人に多い B) 急性リンパ性白血病:小児に多い 2.慢性骨髄性白血病:フィラデルフィア染色体 3.成人 T 細胞白血病:HTLV-Ⅰ(HTL ウイルス) 《顆粒白血球の分化》 造血幹細胞→骨髄系共通前駆細胞→顆粒球マクロファージ系前駆細胞→… …→骨髄芽球→前骨髄球→骨髄球→後骨髄球→桿状核球→分葉核球 【急性白血病】 ・幼若な白血球が増加(芽球) ・前駆細胞が異常増殖する ・分化も障害される → 正常な白血球の減少 ・白血病裂孔がみられる ・骨髄で白血病細胞が異常増殖 → 正常な骨髄組織を圧迫 *貧血,易感染性,出血傾向 → 汎血球減少 末梢血液中の白血球数は,増えることもあれば減ることもある # 骨髄中に顆粒球が増殖すれば・・・急性骨髄性白血病 骨髄中にリンパ球が増殖すれば・・急性リンパ性白血病 《一般臨床医学 各論まとめ》 27 【慢性骨髄性白血病】 ・分化は障害されず,異常な白血球が増加 ・末梢血中の白血球は異常に増える ・白血病裂孔はない ・フィラデルフィア染色体 ・脾腫,肝腫,著しい白血球増加など 血小板は増加のちに減少,赤血球減少 # 急性転化を起こすと非常に危険 ♪ ■その他の血液・造血器疾患■ 【多発性骨髄腫】 ・形質細胞(プラスマ細胞)起源の悪性腫瘍 高 Ca 血症 ・40 才 以降の男性 に多い 赤色骨髄を侵す ・扁平骨 や短骨 に多発する.頭蓋骨,脊椎,骨盤,肋骨など ・X 線:骨打ち抜き像 ・M 蛋白(異常グロブリン) IgG・IgA・IgD・IgE・ベンス・ジョーンズ型 ・血液の粘稠度が増す 異常蛋白の増加による ・尿中にベンス・ジョーンズ蛋白 腎障害を起こす ・合併症:腎障害,アミロイドーシス 汎血球減少 腫瘍化した細胞が破骨細胞を活性化させるサイトカインを放出 サリドマイド:血管新生抑制 【溶血性貧血】 ・正球性正色素性貧血 ・黄疸,脾腫 胆石を伴いやすい ・間接 ビリルビン増加 ・血管内溶血:ヘモグロビン尿 ・Coombs 試験:自己抗体があるかどうか調べる 陽性であれば…自己免疫性溶血性貧血 【血友病】 ・血友病 A(血液凝固第Ⅷ因子の欠乏),血友病 B(第Ⅸ因子の欠乏) ・伴性劣性遺伝 ・関節内出血 → 関節症 整形 p106:初発は足関節に多い.好発部位は膝,足,肘 【播種性血管内凝固(DIC)】 ・悪性腫瘍,重症感染症,広範囲の熱傷などにより発症 ・微小血栓による臓器障害 ・線溶系亢進による出血症状 《一般臨床医学 各論まとめ》 28 ■腎・尿路疾患■ 《尿の異常》 1-1.乏尿:1 日の尿量が 400ml 未満 1-2.無尿:1 日の尿量が 100ml 未満 急性腎不全 1-3.尿閉:主に尿道の閉塞 2.多尿:1 日の尿量が 3,000ml 以上 3.頻尿:膀胱炎,前立腺肥大など 4.排尿痛:尿路感染症,尿路結石など 5.血尿:肉眼的血尿と顕微鏡的血尿がある.腫瘍,結石,炎症など 6.蛋白尿:1 日尿蛋白排泄量が 150mg 以上 *濃尿:尿路感染症,尿中に白血球を多く認める *排尿困難:前立腺肥大症.前立腺癌.膀胱・尿道結石など.残尿感を伴うことが多い 【腎 不 全】 1.急性腎不全・急性腎障害 *急激な腎臓の排泄機能(糸球体濾過量)の低下 *血清クレアチニン値の上昇と乏尿 1.腎前性:腎血流量の低下…出血,熱傷,心不全,ショックなど 2.腎 性:腎内の障害…急性糸球体腎炎,急性尿細管壊死など 3.腎後性:尿路の閉塞…腫瘍,結石,前立腺肥大など ・症状の経過:発症期 → 乏尿期 → 利尿期 → 回復期 2.慢性腎臓病(CKD)・慢性腎不全 *慢性的に続く腎障害や腎機能低下(機能的ネフロンの低下) *不可逆性の腎機能低下 ・原因疾患:糖尿病,慢性糸球体腎炎,多発性嚢胞腎,腎盂腎炎など ・末期になると尿毒症 ↑透析導入原因の多い順 ↑慢性腎不全の末期を尿毒症という? 《検査所見》 1.血清尿素窒素上昇 2.血清クレアチニン上昇 3.高カリウム血症 4.代謝性アシドーシス 滴定酸の排泄障害,HCO3-の再吸収障害,NH4+の排泄障害 NH4+:アンモニウムイオン 他に・・・貧血,低カルシウム血症,高リン血症,副甲状腺ホルモンの上昇 《一般臨床医学 各論まとめ》 29 【急性糸球体腎炎】 《特 徴》 ・小児 に多い ・A群β溶連菌 の先行感染 ・予後良好 ・Ⅲ型 アレルギー ♪ 《経 過》 ・乏尿期 → 利尿期 → 回復期 → 治癒期 《症 状》 1.血尿:顕微鏡的血尿・肉眼的血尿 全例に認められるが肉眼は 30~50% 2.蛋白尿:0.5~1.0g/日 3.高血圧 利尿とともに軽快 4.浮腫:顔面(特に眼瞼部) 脂肪組織や筋肉が少ない薄い部分がむくみやすい 【ネフローゼ症候群】 *独立した疾患ではなく,様々な原因疾患から共通の臨床症状を呈して発症する症候群 《症 状》(診断基準) 1.蛋白尿(3.5g/日以上) 2.低蛋白血症 特に 1 と 2 が大事 3.浮腫 4.脂質異常症 *血液凝固能が亢進するため血栓症を合併しやすい 《原 因》 1.原発性:微小変化群,膜性腎症巣状糸球体硬化症.膜性増殖性糸球体腎炎 2.続発性:糖尿病,全身性エリテマトーデス,多発性骨髄腫 【膀胱炎】 ・頻尿,排尿痛,尿混濁 ・ほとんどが大腸菌による感染 ・通常,発熱はない 多発性嚢胞腎:常染色体優性遺伝 『前立腺肥大』内線に発症 癌は外腺に発症 p219 尿路結石:救急搬送は上部結石に多い.低カルシウム食は尿路結石の原因となる 《一般臨床医学 各論まとめ》 30 ■脳血管障害■ 【脳梗塞】 *血栓と塞栓の違いを理解すること 1.脳血栓 ・脳を栄養する動脈のどこかで血管がつまる ・前駆症状として,一過性脳虚血発作を繰り返していることが多い ・安静時に発症し,症状はゆっくり段階的に進行していく 2.脳塞栓 ・主に心房細動 により心臓内に血栓が出来,それが脳動脈へ 流れて,つまってしまう ・発症は突然 起きる ・活動時に発症することが多い ・出血性梗塞を起こしやすい 【脳内出血】 ・被殼出血が多い.ついで視床出血 ↑内包でもよい *梗塞も出血も中大脳動脈の枝に多い ◆脳血管障害(錐体路障害)による主な症状 ・片麻痺 (痙性麻痺) ・病的反射出現:バビンスキー反射 ・深部(腱)反射亢進 ・マン・ウェルニッケ姿勢 ・分回し歩行 など 《一般臨床医学 各論まとめ》 31 【クモ膜下出血】 ・クモ膜下腔内の出血 ・脳動脈瘤破裂によるものが多い.他に,脳動静脈奇形,もやもや病 ・突然の激しい頭痛 ・通常,片麻痺などの障害はみられない ・髄膜刺激症状:項部硬直・ケルニッヒ徴候・ブルジンスキー徴候 *動脈の分岐部では中膜が途切れていて,血流の負担がかかりやすいため動脈瘤が出来やすい. ♪ 《脳血管障害の主な疾患の特徴》 TIA の先行 発病する時間 高血圧の既往 脳梗塞 脳内出血 クモ膜下出血 (+) (-) (-) 活動時 安静時+活動時 (+)~(-) (++) (+)>(-) 安静時 (塞栓では活動時) 頭 痛 (-) (+) 嘔 吐 (-) (+) (+) ときにみられる よくみられる 意識障害>麻痺 あまりみられない 髄膜刺激症状 麻痺と意識障害 な い 麻痺>意識障害 《一般臨床医学 各論まとめ》 激 烈 32 ≪運動障害の部位による分類≫ 1) 上位運動ニューロン(錐体路)の障害 *いわゆる錐体路徴候 ・疾患例:脳血管障害 2) 錐体外路系の障害 ・疾患例:パーキンソン病.舞踏病 3) 下位運動ニューロン(α運動細胞)の障害 ・疾患例:末梢性顔面神経麻痺,ギラン・バレー症候群 4) 神経筋接合部の障害 ・疾患例:重症筋無力症 5) 筋の障害 ・疾患例:進行性筋ジストロフィー *臨床や国試では,錐体路のみを上位運動ニューロンと表現することが多い *機能的に,錐体外路・大脳基底核・小脳を合わせて錐体外路系という 《運動障害部位の鑑別》 教科書 p224 上位運動ニューロン 下位運動ニューロン 筋 (トーヌス) 亢進(↑) 痙性麻痺 低下↓ 弛緩性麻痺 一般に↓ 深部腱反射 亢進(↑) 減弱・消失 正常もしくは減弱 病的反射 + - - 筋萎縮 -ない + (遠位筋に著明) + (近位筋に著明) 線維束攣縮 - + - 筋緊張 脳血管障害もパーキンソン病も筋緊張が亢進するが,違いがある 脳血管障害(脳卒中)=上位運動ニューロン障害=錐体路障害の場合 痙直=痙縮 ・痙性麻痺(痙直):他動的に素早く伸張すると抵抗があり,さらに伸張すると突然抵抗が 消失する「折りたたみナイフ現象」がみられる.他動的にゆっくり伸張させた場合,抵抗はない パーキンソン病の場合 ・固縮:他動的に屈曲伸展させた時,速度に影響なく,常に抵抗がある.鉛管現象・歯車現象 《一般臨床医学 各論まとめ》 33 ■錐体外路系(小脳含む)の障害■ 【パーキンソン病】 *中脳の黒質 のメラニン細胞の変性脱落により, ドーパミン が欠乏し,レヴィ小体 が出現 *絶対覚える症状* ・静止時振戦:丸薬まるめ様 ♪ ・筋固縮:歯車様固縮,鉛管固縮 ・寡動(無動):仮面様顔貌 ・姿勢保持反射障害:突進歩行,小刻み歩行,前屈姿勢 [その他] ・初発症状の多くは片側の上肢の安静時振戦 ・他の症状として,便秘・起立性低血圧・小字症・脂漏性皮膚など ・うつ状態,睡眠障害など 精神症状は一般に伴わない ・治療薬としては,L-Dopa,抗コリン薬 【小脳の障害】= (運動失調) ・企図振戦 :何かをしようとする時に震える ・歩行障害:酩酊様歩行 ・筋緊張:低下 (振子様運動・反跳現象) γ運動ニューロン障害 ・測定障害:指鼻テスト,踵膝テスト ・変換運動障害:回内回外運動,足先でのタッピング,膝打ち試験 *運動失調は脊髄の後索の障害でもみられる ・ロンベルグ徴候が陽性(+)の場合・・・脊髄後索の障害 陰性(-)の場合・・・小脳の障害 《一般臨床医学 各論まとめ》 34 ■下位運動ニューロンの障害■ 【ギラン・バレー症候群】 《特 徴》 ・末梢神経 の急性炎症性脱髄 疾患 ・主に運動神経 が障害される感覚神経・自律神経の障害も起きることはある ・自己免疫疾患といわれている ・ウイルスや細菌の先行感染 発症前の前駆症状として,上気道炎や胃腸炎などを認める. 《症 状》 ・感染症などの数日後,下肢 から次第に上行する 弛緩性 麻痺が急性に発症 ・両側性 顔面神経麻痺 呼吸筋の麻痺をきたすこともある. ・約 4 週までに進行は止まり,徐々に自然回復 する.予後良好 ・検査所見として,蛋白細胞解離をみる 他に末梢神経伝導速度の低下 《治 療》 ・基本的には経過観察 ・免疫グロブリン療法や血漿交換療法なども行なわれる 【末梢性顔面神経麻痺】 《特 徴》 ・原因不明の一側性末梢性顔面神経麻痺:ヘルペスウイルスが関与? ・冷たい風に当たったり,ストレスにより発症することもある 《症 状》 ・兎眼 :目が閉じられないため充血してくる ・ベル現象 :閉眼努力で眼球上転 ・麻痺側…鼻唇溝が浅くなる 口角は下がり,健側 に引っ張られる ・舌前 2/3 の味覚,涙と唾液分泌の低下 神経根というのは,シュワン細胞から別の支持細胞(オリゴデンドログリア)へ移行する中間地点.ゆえに, 髄鞘が薄くなっている.なので,髄鞘に障害が起きるとまずやられるのが神経根となる. ・蛋白細胞解離とは:髄液中に細胞は増えないが蛋白が増える現象. 髄液中(脳脊髄液)を通る神経から損傷した髄鞘(脱髄の破片)が剥がれ落ちるため生ずる. 《一般臨床医学 各論まとめ》 35 ギラン・バレー症候群 ♪ 急性灰白髄炎(ポリオ) 末梢性顔面神経麻痺 中枢性の場合 《一般臨床医学 各論まとめ》 36 ■特殊な運動神経疾患■ 【筋萎縮性側索硬化症】(ALS) 《特 徴》 ・運動ニューロンのみの変性疾患 ・原因は不明で進行性の経過をたどり予後不良である ・40~70 歳頃に発病し男性 に多い 《症 状》*上位・下位ニューロン共に障害が起きる* ①上位運動ニューロン変性症状:下肢に強く現れる ・深部腱反射亢進,病的反射出現,痙性麻痺など ②下位運動ニューロン変性症状:上肢に強く現れる ・筋萎縮,線維束攣縮,筋力低下など ・筋力低下は左右非対称のことが多い 球=延髄 ③球麻痺症状:下位運動ニューロン障害 ・舌筋萎縮 ・構音障害 ・嚥下障害 ④仮性球麻痺症状:上位運動ニューロン障害 ・下顎反射亢進 ・情動失禁 ⑤四大陰性徴候:みられない症状 ・膀胱直腸障害(はない) ・眼球運動障害(はない) ・感覚障害(はない) ・褥創(はない) ⑥他の陰性症状 ・小脳症状,錐体外路症状,知能障害はない 《一般臨床医学 各論まとめ》 37 筋萎縮性側索硬化症(ALS) ♪ *発症様式により 3 つに分類 「普通型」・・・上肢の脱力で発症 「球型」・・・言語障害・嚥下障害で発症 「偽多発神経炎型」・・・下肢の歩行障害,脱力で発症 *初発症状は自発痛,しびれ,冷感,熱感などの異常感覚 ただし,一般に感覚障害は無い 《一般臨床医学 各論まとめ》 38 ■脱髄疾患■ 【多発性硬化症】 《特 徴》 ・中枢 神経の脱髄性疾患 末梢神経の髄鞘は障害されない.神経変性も無い ・多発性:空間的 … いろいろな部位が障害される 時間的 … 寛解と再発を繰り返す ・日本では少なく,欧米に多い.主に 20~40 歳代に発症 ・炎症を起こした髄鞘が増殖し硬化してしまう. 《症 状》目を動かす神経がやられるとなる.ものが二重に見える↓ ・初発症状で多いのは…視力障害 複視もみられることあり. ・球後視神経炎:視神経乳頭は正常. ・企図振戦 ・レルミット(Lhermitte)徴候:頻度は低いが特異性は高い *頚部を前屈すると背中や手足に電気が走るように感じる *損傷された部位によって多彩な症状を呈する.症状は急速に進行.1 週間ほどでピークに達する ■筋疾患■ 【進行性筋ジストロフィー】 ・筋原性疾患 ・遺伝性の疾患で,進行性に筋の脱力と変性をきたす ・デュシェンヌ型が多い 『デュシェンヌ型』 ・伴 性劣 性遺伝 ということは,ほとんど男にみられる疾患 ・仮性 肥大:腓腹筋にみられる ・登攀性起立 (Gowers 徴候) *近位筋の萎縮による.大腰筋・腸腰筋・大腿筋 ・アヒル歩行,歩行開始遅延 ・血清 CK 上昇,尿中クレアチン上昇,尿中クレアチニン低下 ・2~4 歳頃に発症し,20 歳前後までに死亡 《筋緊張性》 ・常染色体優性遺伝 ・筋萎縮は基本的に遠位部で起こる ・男性では前頭部脱毛が必発 《一般臨床医学 各論まとめ》 39 ■神経筋接合部の疾患■ 【重症筋無力症】 《特 徴》 ・アセチルコリン受容体 に対する自己抗体により, 筋収縮の障害をきたす ・5 歳未満もしくは 20~40 歳頃に発症.女性に多い ♪ 《症 状》 ・筋肉の異常な疲労性:夕方から夜にかけて現れる ・眼瞼下垂,複視 ・嚥下障害,構音障害がみられることもある ・胸腺腫を合併することもある ・一般に筋萎縮,筋痙攣は生じない ■認知症■ 【アルツハイマー病】 ・認知症の約半数を占める ・記憶障害から始まり,進行すると人格が失われ完全介護が必要となる 【レビー小体型認知症】 ・パーキンソン病とアルツハイマー病を合併したような症状 ・初期には幻覚や妄想 【脳血管性認知症】 ・脳梗塞の多発によるものが多い ・人格や判断力は保たれていることが多い ・まだら痴呆ともいう 《一般臨床医学 各論まとめ》 40 ■自己免疫疾患■ ★自己免疫疾患とは:自己の細胞・組織に対して免疫反応を起こす疾患 ★膠原病とは:結合組織の炎症性疾患 Rheumatoid Arthritis リウマチ様の関節炎 【関節リウマチ】 *関節リウマチとは *Ⅲ型アレルギーに分類 ・結合組織(主に滑膜 )に炎症をきたす自己免疫疾患 ・慢性に経過する非感染性の多発性関節炎 ・滑膜が異常増殖し,骨,軟骨組織を破壊する. 《好発年齢と性別》 ・20~50 才の女性に多い. 《症 状》 *臨床経過はきわめて多彩 初発症状 ・両側の手指の関節痛.朝の手のこわばり 関節症状 ・好発部位:PIP 関節,MP 関節,手関節,MTP 関節 ・進行すると,膝・肘・股・肩などの大関節も障害される ・脊椎では環軸関節 が障害されやすい ↑正中環軸・外側環軸関節どちらもやられる:前屈すると亜脱臼 関節変形 ・尺側偏位(クルケンベルグ変形),スワンネック変形, ボタン穴変形,外反母趾,槌趾(ハンマー趾),オペラグラス変形 関節外症状 ・皮下結節(リウマトイド結節):肘周辺に好発,無痛性 ・肺:肺線維症(間質性肺炎) ・末梢神経:手根管症候群 ・心臓:心外膜炎,心筋炎,心嚢液貯留 他に,貧血,易疲労感,体重減少,微熱など 《検査所見》 ・リウマトイド因子:IgM に対する自己抗体(IgM の IgG のところ) 特異性ではないが感受性は高い ・抗 CCP 抗体(抗シトルリン化ペプチド抗体):早期 RA 診断に有効 ・X 線所見:骨びらん,関節狭小化,破壊,硬直,変形など ・炎症反応:赤沈亢進,CRP 陽性,白血球増多 白血球は増えないことも?活動性による 《一般臨床医学 各論まとめ》 41 《診断基準・評価法など》 ・米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会の新分類基準(2010) ・スタインブロッカーの病期分類,機能分類 ・ランスバリーの評価法 日本リウマチ学会の診断基準もある アメリカリウマチ協会の診断基準 関節リウマチ 新分類基準 *6 点以上で関節リウマチと診断 【関節病変】 ♪ (1)中・大関節に 1 つ以上の腫脹または疼痛関節あり 0点 (2)中・大関節に 2~10 個の腫脹または疼痛関節あり 1点 (3)小関節に 1~3 個の腫脹または疼痛関節あり 2点 (4)小関節に 4~10 個の腫脹または疼痛関節あり 3点 (5)少なくとも 1 つ以上の小関節領域に 10 個を超える腫脹または疼痛関節あり 5点 【血清学的因子】 (1)RF(リウマトイド因子),ACPA(抗 CCP 抗体)ともに陰性 0点 (2)RF,ACPA の少なくとも 1 つが陽性で低力価 2点 (3)RF,ACPA の少なくとも 1 つが陽性で高力価 3点 【滑膜炎持続期間】 (1)6 週間未満 0点 (2)6 週間以上 1点 【炎症マーカー】 (1)CRP,ESR(赤沈)ともに正常 0点 (2)CRP,ESR のいずれかが異常 1点 《治 療》 ・薬物療法:非ステロイド系抗炎症薬,ステロイド,抗リウマチ薬 ・手術療法:滑膜切除術,関節固定術,人工関節置換術 ・適度の安静と運動 《一般臨床医学 各論まとめ》 42 【全身性エリテマトーデス】(SLE) 《概 説》 systemic(全身の) lupus(狼瘡) erythematosus(紅斑) ・多臓器の障害を特徴とする全身性の炎症性疾患 ・妊娠可能年齢の女性 に多い ・多数の自己抗体(抗核抗体)を産生 全身性紅斑性狼瘡 《症 状》 *初発症状は発熱,全身倦怠感, 体重減少などの全身症状 1.皮膚症状 ・蝶形紅斑 ・光線過敏 ・ディスコイド皮疹(円板状紅斑) ・ジャクー変形 ・口腔内潰瘍,レイノー現象,脱毛など 2.腎症状 ・ループス腎炎 ・糸球体腎炎,蛋白尿など wire loop lesion 3.中枢神経症状:痙攣,精神症状,脳血管障害など 4.心血管障害:Libman-Sacks 型心内膜炎,心外膜炎,心筋炎など 弁周囲に疣贅が生じる 5.肺症状:胸膜炎,間質性肺炎(肺線維症)など 他に壊死性血管炎,脾臓の onion skin lesion など.関節破壊はまれ. 《検 査》 ・汎血球減少 ・抗核抗体(+) ・LE 細胞(+) ・生物学的偽陽性:梅毒血清反応で 偽陽性(抗リン脂質抗体症候群) 抗 ds-DNA 抗体 抗 Sm 抗体 抗ヒストン抗体など 《一般臨床医学 各論まとめ》 43 【ベーチェット病】 ・口腔内アフタ性潰瘍 ・外陰部潰瘍 ・ぶどう膜炎 *ぶどう膜(血管膜)=虹彩+毛様体+脈絡膜 ・毛嚢炎様発疹,結節性紅斑,血栓性静脈炎 針反応・組織適合性抗原の HLA-B51 ♪ 【強皮症】(全身性強皮症) ・レイノー現象 白→紫→赤 ・肺線維症(間質性肺炎) ・仮面様顔貌 ・舌小帯短縮 皮膚がカチカチになる.特に手・指・顔・肺 以前は全身性硬化症 【多発性筋炎・皮膚筋炎】多発性筋炎に皮膚症状があれば皮膚筋炎 ・ヘリオトロープ疹(上眼瞼の紫紅色疹) ・レイノー現象 ・肺線維症(間質性肺炎) ・悪性腫瘍 の合併が多い ・ゴットロン徴候(鱗屑性紅斑) 指節関節伸側の鱗屑性紅斑 ・近位筋からの対称性筋力低下 鱗屑(りんせつ) 【シェーグレン症候群】 ・乾燥症状 (腺症状) *乾燥性角結膜炎(dry eye) *口腔内乾燥症(dry mouth)…高度の虫歯 *萎縮性胃炎,膵炎 ・腺外症状:関節炎,腎症など レイノー現象,間質性肺炎 ・約半数が他の自己免疫疾患(慢性甲状腺炎,関節リウマチなど)に合併 【結節性多発動脈炎】 ・中等大の筋型動脈の壊死性血管炎:フィブリノイド壊死 ・男性 に好発 ・自己抗体:陰性 《一般臨床医学 各論まとめ》 44 ■感染症■ 【後天性免疫不全症候群】 「AIDS」 ・HIV(ヒト免疫不全ウイルス)による ・CD4 リンパ球(ヘルパーT 細胞)に感染する.細胞性免疫の低下 ・感染経路は血液製剤,汚染された注射針,性行為,母子感染など ・10 年ほどは無症状で,徐々に CD4/CD8 比が低下 ・日和見感染が現れ AIDS 発症 ・日和見感染:ニューモシスチス・カリニ肺炎,真菌症, サイトメガロウイルス感染症など ・カポジ肉腫,悪性リンパ腫 ・感染後,数日から数週の間に感冒症状 ・HIV 抗体陽性になるのは感染後 6~12 週間後 ・発熱,体重減少,リンパ節腫脹などが現れる (AIDS 関連症候群) ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 参考文献 新・病態生理できった内科学シリーズ ビジュアルノート カラー図解:症状の基礎からわかる病態生理 機能解剖で斬る神経系疾患 《一般臨床医学 各論まとめ》
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