JRDRハイライト (12)脂質異常症と心血管合併症発症との関連(図表12) 論文の概要 本邦における2003年、2004年の透析統計調査をもとに血液透析患者45,390人においてHDL-Cholesterol・ Non-HDL-Cholesterolと心血管合併症(急性心筋梗塞、脳梗塞、脳出血)の新規発症リスクとの関連を検 討した報告である。 タイトル:Elevated non-high-density lipoprotein cholesterol(non-HDL-C)predicts atherosclerotic cardiovascular events in hemodialysis patients 著者:Shoji T, Masakane I, Watanabe Y, Iseki K, Tsubakihara Y, for the Committee of Renal Data Registry, Japanese Society for Dialysis Therapy 収載誌:Clin J Am Soc Nephrol 6:1112-20, 2011 対象:2003年中で以前に心筋梗塞、脳梗塞、脳出血の既往のない血液透析患者45,390人 要因:HDL-Cholesterol(HDL-C)とNon-HDL-C (対照:HDL-CおよびNon-HDL-Cを四分位に分けた最低値群) アウトカム:1年間の心筋梗塞、脳梗塞、脳出血の発症と死亡 結果:新規に心血管イベントを発症した後の低BMI、高CRPは有意な死亡リスクであった。 2.9 心筋梗塞発症率(オッズ比) 3.0 2.5 2.0 Q4 1.0 1.5 Q3 1.0 0 -C Q2 0.5 Q1 Q1 Q2 Q3 Q4 No n- L HD 調整因子: 年齢、性別、糖尿病 透析年数、BMI、 血清アルブミン、CRP HDL-C (許諾を得て引用・改変) 解説 透析患者では、血清コレステロールと生命予後にはこれまで“reverse causality(相反する因果関係)” が示されてきた。そして、心血管病のリスクとその発症後の死亡率を明確に検討した報告はなかった。 本コホート研究では、急性心筋梗塞、脳梗塞、脳出血それぞれの発症率は、1.43、2.53、1.01/100人年で あり、発症後の死亡率はそれぞれ、0.23、0.21、0.29/100人年であった。新規に心血管イベント(急性心 筋梗塞、脳梗塞、脳出血)を発症した後の死亡リスクは低BMI、高CRPで高値であった。 また、HDL-CとNon-HDL-Cとでそれぞれ四分位に分け、年齢や性等で調整し、心筋梗塞の発症リスクを 検討したところ、高HDL-Cかつ低Non-HDL-Cに比して低HDL-Cかつ高Non-HDL-Cの群のオッズ比は2.91 で脂質異常症は透析患者におけるCVD発症のリスクであることが本研究で示唆された。 本検討は、日本透析医学会の血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドラインに 引用された。 63
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