2014/05/26 第6章 宿主要因(抵抗力の大小、栄養状態) 食生活と疾病との関わり 病気の発生 外的要因(環境からの負荷、病原体) 過去の病因論(1) 過去の病因論(2) ヒポクラテス(医学の祖)による ミアズマ(瘴気)説 悪い空気 呪い、祟り、超自然現象の結果:内因論(一種の宿主説) 悪い土 疾病は外的要因によって発生する (広義の環境説) 悪い水 病原体の予言と発見 大 死 身 体 側 梅毒や天然痘の研究から、 接触伝染(コンタギオンによ る媒介)説を提唱した 病的状態 フラカストロ(1478-1553) イタリア・ヴェローナ 変 化 量 } 炭疽菌、コレラ菌、結核菌の! 発見者! 伝染病が細菌によって生じる ことを証明 恒常性が維持 (健常な状態) 閾値 外的ストレスの大きさ 大 外的ストレスと疾病発生の関係 ロベルト・コッホ(1843-1910) 1 2014/05/26 栄養素欠乏による疾病 病原体の発見と日本人学者 ビタミンB1欠乏=脚気 ジフテリア菌 黄熱病ウイルス 赤痢菌 エイクマン 北里柴三郎 志賀 潔 抗血清療法の開発 野口英世 黄熱病の病原体を濾過性微生物 であると表現(当時はウイルスを 顕微鏡下で確認できなかった) 鈴木梅太郎 徳川家茂 慢性疾患の死亡率には加齢が関係している 300! 悪性新生物 250! 1800! 1600! 1400! 200! 150! 脳血管疾患 結核 死亡率(人口10万対) 人 口 10 万 人 あ た り の 死 亡 数 心疾患 1200! 1000! 800! 600! 400! 100! 肺炎 200! 0! 0! 不慮の事故 自殺 1950! 老衰 1960! 1970! 1980! 1990! 上 以 80 ! 79 〜 75 ! 74 〜 70 ! 69 〜 65 ! 64 〜 60 ! 59 〜 55 ! 54 〜 50 ! 49 〜 45 ! 44 〜 40 ! 39 〜 35 ! 34 〜 30 ! 29 〜 25 ! 24 〜 20 ! 19 〜 15 ! 14 〜 10 9! 5〜 4! 0〜 50! 2000年 年齢層 図6-2.日本人の年齢層別悪性新生物死亡率(2005年厚生労働省人口動態統計をもとに作図) 死亡者の60%は「悪性新生物」「心疾患」「脳血管疾患」 食生活と疾病の関係 食事の内容(質)は病気の発生に影響を与えるのか 小さな刺激の積み重ねが慢性疾患を生み出す 2 2014/05/26 アジアと欧米とでは多発するがんの部位が異なっている アジア型食事は上部消化管に負担をかける 糖質 脂質 タンパク質 低脂肪・高食物繊維= エネルギー効率の低い食事 →大量に食べる必要がある 図6-3.がん死亡率(年齢調整死亡率)の比較(2002年のWHOのデータをもとに作図) 食塩の過剰摂取は胃がんのリスクファクター 灰汁(アク)の強い植物性食品やカビは肝臓に有害 British Journal of Cancer (2004) 90, 128 – 134 高脂肪の欧米型食事は、過食を起こしやすい 結果として、体脂肪増加→コレステロール増加 →ステロイドホルモン分泌増加 糖質 脂質 タンパク質 高脂肪食は前立腺がんと乳がん発生と関連 3 2014/05/26 Int. J. Cancer: 119, 1475–1480 (2006) 効率大の欧米型食事は糞便が少ない 有害成分の大腸滞留時間が延長→大腸がんの増加 腸内細菌 繊維質 タンパク質不消化物 炭酸ガス (臭くない) 有害醗酵物 (臭い) アジア型食生活 欧米型食生活 × 食物繊維たっぷりが大腸がん予防 ○ 食物繊維が極端に少ないと大腸がんリスク増大 欧米人の死亡原因の第1位は血管が詰まるタイプの心臓病 虚血性疾患とは 人口10万対の年齢調整死亡率 120 血流の停止=虚血現象 100 虚血→細胞が酸欠 80 血栓(血管がつまる) 酸欠による細胞の壊死=梗塞 60 心臓の細胞が虚血による酸欠で壊死 →心筋梗塞 40 脳細胞が虚血による酸欠で壊死 →脳梗塞 20 0 日本 アメリカ イギリス フランス 中国 図6-4.虚血性心疾患年齢調整死亡率の比較 % 80 男性 過食による肥満は虚血性疾患のリスクファクター (高脂肪の欧米型食事は虚血性疾患を起こしやすい) 60 40 血中コレステロール 濃度の増大 20 0 % 80 女性 BMI 30以上 60 BMI 25-29.9 アテローム性(粥状) プラーク形成 40 20 0 日本 イギリス スペイン イタリア ギリシア フランス アメリカ 図6-5.過体重(BMI 25〜29.9)と肥満(BMII 30以上)の者の割合! 日本は平成15年国民健康・栄養調査、欧州はEuropean Nutrition and Health Report 2004、 米国は Chartbook on Trends in the Health of Americans2004に記載のものを引用し作図。 動脈硬化 狭心症 一過性脳虚血 心筋梗塞 脳梗塞 4 2014/05/26 だからといってアジア型食事が全面的にすぐれているのではない アジアの食事(低脂肪、高食物繊維、高食塩) 栄養不足、胃がん、肝臓がん、高血圧、脳出血 欧米の食事 肥満、虚血性疾患(心筋梗塞、脳梗塞) 大腸がん、乳がん、前立腺がん 高食塩 高血圧 脳出血 低脂肪 どちらかが一方的に優れているわけではない もろい血管 アジアには血管が破れるタイプの脳卒中が多い アジア型と欧米型の中間がいいようだが…….. 日本人の平均寿命が劇的に改善したのは 大 疾 患 の 発 症 リ ス ク 「食生活の半欧米化」のおかげといえる 胃がん・ 高血圧症など アジア型 虚血性疾患・ 大腸がんなど 現在の日本 欧米型 食生活のタイプ 先進国間の平均寿命の差はわずか 食生活のパターンごとにかかりやすい疾病は存在する しかし、「しっかり食べる」ことを第一に、食べ過ぎに注意すれ ば、どのような食生活であっても長寿を達成できる 食と健康の関連においては、食事は「質」ではなく、「量」がは るかに重要 「量」を調節すれば、どの民族の食事も「長寿食」になりうる 栄養不足の解消と医療水準の向上→約25年の延長 アジアと欧米の中間の食生活→約3年の延長 5
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