日本基準トピックス

日本基準トピックス
ASBJ 「税効果会計に適用する税率に関する
適用指針」の公表
2016年3月16日
第299号
■主旨

2016年3月14日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)は、企業会計基準適用指針
第27号「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」(以下、「本適用指針」)を
公表しました。

本適用指針は、繰延税金資産および繰延税金負債の金額の計算に用いる税率に
ついての適用指針を定めるものです。

本適用指針は、税効果会計に適用する税率の取扱いについて、実務上の課題が
あるため、日本公認会計士協会(JICPA)が公表した他の税効果に関する実務指針の
移管に先行して、開発されたものです

本適用指針は、2016年3月31日以後終了する連結会計年度および事業年度の年度末
に係る連結財務諸表および個別財務諸表から適用されます。

原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/zeikouka2015_2/
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1.経緯
本適用指針は、繰延税金資産および繰延税金負債の金額の計算に用いる税率について、
「税効果会計に係る会計基準」を適用する際の指針を定めたものです。
2013 年 12 月の基準諮問会議により、日本公認会計士協会が公表した税効果会計に関する
実務指針(会計処理に関する部分)について ASBJ に移管することが提言されました。このうち、
税効果会計に適用する税率の取扱いについては、以下の表に記載しているような実務上の
課題に早急に対応を図るべきという意見が聞かれました。これを受けて、実務の安定性の
観点から、他の実務指針の移管に先行して、これに関連する適用指針が開発されました。
税金
実務上の課題
法人税、地方法人税および 
地方法人特別税

3 月決算の企業において、決算日以前に税法を改正する
ための法律が国会で成立していても、官報による公布
が決算日間際までなされないことが多く、決算手続や
業績予測等の実務的な対応に困難が伴う。
決算日以前に税法を改正するための法律が国会で成立
していても、改正直前の税率により計算される繰延税金
資産および繰延税金負債の額は有用な情報とはいえ
ない。
1
税金
実務上の課題
住民税(法人税割)および 
事業税(所得割)
当事業年度において地方税法等を改正するための法律
が決算日以前に成立しているが、当該法律を含む改正
地方税法等を受けた条例の改正が当該決算日以前に
各地方公共団体の議会等で成立しない場合に適用
される税率の取扱いが明確ではない。
2.主な内容
(1)税効果会計に適用する税率
① 法人税、地方法人税および地方法人特別税に関する税率
個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針では、「改正税法が当該決算日まで
に公布されており、将来の適用税率が確定している場合は改正後の税率を適用する」(第
18 項)とされていましたが、本適用指針では、「決算日において国会で成立している税法に
規定されている税率による」(第 5 項)と変更することが提案されています(下記、(図 1)「税
率変更の反映時期」参照)。
(図 1) 税率変更の反映時期(3 月決算の場合)
<ケース 1>
税法を改正するための法律が決算日(3 月 31 日)以前に国会で成立し、公布日も決算日以前
の場合
⇒ 現行の取扱いと同じ
(本適用指針)
国会成立日
(現行)
公布日
決算日
3/31
<ケース 2>
税法を改正するための法律が決算日(3 月 31 日)以前に国会で成立しているが、公布日が
決算日後の場合
⇒ 現行の取扱いと異なる
(本適用指針)
国会成立日
決算日
(現行)
公布日
3/31
2
② 住民税(法人税割)および事業税(所得割)に関する税率
決算日以前に地方税法等を改正するための法律が国会で成立している場合に繰延税金
資産および繰延税金負債の金額の計算に用いる税率については、以下のとおりです。
改正地方税法等を
受けて改正された条例
条例での税率の
取扱い
繰延税金資産および繰延税金負債
の計算に用いる税率
決算日以前に各地方公
共団体の議会等で成立
している
―
決算日において各地方公共団体の
議会等で成立している条例に規定さ
れている税率(標準税率または超過
課税による税率)
決算日以前に各地方公
共団体の議会等で成立
していない
決算日において成立
している条例に標準税
率で課税することが規
定されている
改正地方税法等に規定されている
標準税率
決算日において成立
している条例に超過課
税による税率で課税する
ことが規定されている
改正地方税法等に規定されている
標準税率に、決算日において成立して
いる条例に規定されている超過課税
による税率が改正直前の地方税法
等の標準税率を超える差分を考慮
する税率(注)
(注)例示として、以下の 2 つの方法が示されています(なお、算定した税率が改正地方税法
に規定されている制限税率を超える場合は、当該制限税率を適用する)。
(A) 改正地方税法等に規定されている標準税率に、決算日において成立している条例に
規定されている超過課税による税率が改正直前の地方税法等の標準税率を超える
数値を加えて算定する方法
(B) 改正地方税法等に規定されている標準税率に、決算日において成立している条例に
規定されている超過課税による税率における改正直前の地方税法等の標準税率
に対する割合を乗じて算定する方法
ただし、税制改正の趣旨等を勘案して、上記の(A)、(B)以外の合理的な方法があれば、その方法
により税率を算定することを妨げるものではありません。
<実効税率算定上の翌事業年度における事業税(所得割)の税率の算定例>
(前提)
 当事業年度において、地方税法等を改正するための法律が国会で成立し、翌事業年度
に適用される事業税(所得割)の標準税率が改正された。

翌事業年度に適用される超過課税による税率を定める改正条例は当事業年度末には
成立していない。

事業税(所得割)の制限税率は、標準税率に 1.2 を乗じた税率である。

当事業年度において成立している法律または条例に規定されている事業税(所得割)
に関連する税率は以下のとおりである。
当事業年度
翌事業年度
標準税率
3.1%
1.9%
超過課税による税率
3.4%
未定
(上表の税率は、地方法人特別税が課される法人に適用される税率である)
3
(A)の方法
改正後の標準税率 1.9%+(改正直前の超過課税による税率 3.4%-改正直前の標準税率
3.1%)=2.2%
(なお、2.2%は、制限税率(1.9%×1.2=2.28%)を超えない)
(B)の方法
改正後の標準税率 1.9%×(改正直前の超過課税による税率 3.4%÷改正直前の標準税率
3.1%)=2.08%
(なお、2.08%は、制限税率(1.9%×1.2=2.28%)を超えない)
(2)決算日後に税率の変更を伴う改正税法または改正条例が成立した場合の取扱い
決算日後に税率の変更を伴う改正税法が成立した場合、税効果会計に関する会計基準の
取扱い(第四 4)を踏襲し、繰延税金資産および繰延税金負債の額に当該税率の変更を反映
せず、開示後発事象としてその内容および影響を注記することとされています。
なお、上記の取扱いには、決算日後に税率の変更を伴う条例が成立し超過課税による税率
が変更された場合は、通常、その影響の質的及び金額的な重要性が乏しいと考えられること
から、含まれていません。
3.適用時期等
本適用指針は、2016 年 3 月 31 日以後終了する連結会計年度および事業年度の年度末に
係る連結財務諸表および個別財務諸表から適用されます。
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