民俗経済学A 非常勤講師 菅野 英機 1.授業のねらい・概要 スエーデン型の福祉国家にも行きづまりがみられ,ソ連の崩壊にみられるように社会主義計画経済が終 演するなかで,アメリカ型の競争社会・市場原理主義にも多くの課題が明らかになる中で,日本では「日 本型市場経済・日本型福祉社会」の必要性が指摘される一方で,グローバル化の急速な進展とアメリカ基 準の大幅な導入により,日本の伝統と摩擦を起こしている。 さらに,イスラム教とユダヤ教あるいはキリスト教それぞれの原理主義の対立が世界規模で激しく対立 している。 そこで,民俗文化を「目印」として,地域の人々の「共同の心」 , 「永遠の故郷」 , 「根源的私」を読み解 くことによって,それぞれの地域の伝統文化の特質を読み解き,また暮らしとしての経済とそれぞれの地 域の伝統文化である民俗との相互依存関係を各地の具体的な事例を通して分析する。 民俗経済学Aでは,文化と経済の相互依存関係,文化の地域性,規範の多様性,文化と経済の歴史性, 文化と経済に関する「発展段階説」の錯誤,文化と経済の重層性,文化と経済の歴史経路依存性,文化信 念と地域経済の関連性などを中心に論ずる。 2.授業の進め方 テキストに従いつつ板書とノートを中心に進める。日本語が不十分で英語ができる受講生がいるときに は,日本語と英語の両方の板書をし,少し英語の説明を加える。 3.授業計画 1.民俗経済学とは。文化と経済の関わり 2.普遍性と多様性。家族の普遍性と多様性 3.共同体に包み込まれた市場経済 4.人間の宿命,永遠の故郷の構造,文化と規範の 多様性 5.根源的私の形成,風土と共同の心 6.日本の割り箸と韓国の銀箸。トイレと温泉 7.ケガレとミソギ。水に流す 8.発展段階説の誤り 9.仏教と神道にみられる文化の重層性 10.国際化とグローバリズムの錯誤 11.フランスの産業と歴史経路依存性 12.西洋と東アジアの差異。西洋とアジアの文 化と経済 13.北イタリアのマグリブ商人と南イタリアの キリスト教の商人 14.北と南の差異と歴史的事情 15.ギリシャ文化の精神。キリスト教の個人主 義 4.成績評価の方法・基準 講義中にほぼ毎回出席確認を兼ねて小テストを行い,期末テストはレポートを提出してもらい,両方の 合計で総合評価する。 5.テキスト・参考文献 テキスト:菅野英機著, 『民俗経済学への招待』 ,現代図書,2003 年 参考書:その他は講義の中で必要に応じて説明する。 6.受講上の留意事項 なし
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