(平成22年12月) 社会保険労務士 佐竹康男 社労士 社長 第44回 年次有給休暇の取得目的と時間単位付与 年次有給休暇の取得率は47%(平成20年)で、特に100人未満の中小企業で は低い取得率(約40%)になっています。ワークライフバランス(仕事と生 活の調和)を考えれば、年次有給休暇の取りやすい環境を作ることも労務管 理上大切になってきます。雇用環境を整備することは、優秀な人材の確保や 労働者のモラール向上につながり企業の発展に寄与します。 今回は、年次有給休暇の取得目的と今年 4 月に改正された時間単位の付与に ついて解説します。 年次有給休暇の取得目的 営業の齋藤が、親の介護のためという理由で年次有給休暇(以下年休とい う。)を請求してきたのだが、実際は旅行に行っていたらしい。こういう場 合も年休として処理しなければならないのかな。 虚偽の申告をしたことは問題ですが、年休の取得については目的の如何にか かわらず与えなければなりません。 年休をどのように利用するかは、労働者の自由で、使用者が干渉できるもの ではありません。 どのような目的でも与えなければならないのかな。 原則として、どのような目的であれ、与えなければなりません。しかし、一 斉休暇闘争など、労働者がその所属の事業場において、その業務の正常な運 営の阻害を目的として、全員一斉に休暇届を提出して職場放棄するもの等は、 ストライキに他ならないので、拒否することができます。 また、休職期間中や育児休業期間中など労働義務のない日については、労働 者が年休を請求する余地はありません。 どうも社内の雰囲気が年休を取得しづらい環境にあるので、虚偽の申告をし たらしい。年休取得の促進のために何か対策を考えたほうがいいのかな。 年休が取りやすい会社は少ないと思いますが、例えば、管理職が率先して年 休を取得することや計画的付与の制度を採用すれば、一般社員の方は、年休 を取得しやすくなると思います。 また、年休の時間単位での付与も考えてみてはいかがでしょうか。 年次有給休暇の時間単位付与 そういえば、わが社はまだ導入していないな。 今年 4 月の労働基準法の改正により、時間単位での年休の付与が可能になり ましたが、管理が大変なので、導入を見送りました。 労使協定を締結しなければならなかったかな。 そうですね。労使協定を締結しない限り、時間単位での年休付与はできませ ん。社員の方は、おそらく反対はしないと思いますので、会社が導入に踏み 切れるか否かだと思います。 年休が取りやすい雇用環境を作ることにより、労働者のモラール向上に繋が るのであれば、検討に値すると思う。導入後の管理が大変だと思うが、総務 課の担当者と協議の上、進めてください。 わかりました。 〈協定例〉 時間単位の年次有給休暇に関する協定書 □□株式会社は、就業規則第○○条に定める年次有給休暇の時間単位での付与に つき、労働者との間で下記の協定を締結する。 1.時間単位の年次有給休暇を付与する労働者の範囲は、全社のすべての労働者 (パートタイム労働者を含む)とする。 2.時間単位の年次有給休暇日数は5日とする。 3.時間単位の年次有給休暇における1日の時間数は、次のとおりとする。 パートタイム労働者 6時間 上記以外の労働者 8時間 4.時間単位の年次有給休暇における単位時間は、1時間とする。 5.届出のあった時間単位の年次有給休暇が、事業の正常な運営を妨げる場合は、 会社はその時季を変更することができる。 6.時間単位の年次有給休暇に対して支払われる賃金は、「通常の賃金」により 計算するものとする。 7.本協定の有効期間は、平成22年○月○日から1年間とする。 平成22年○月○日 □□株式会社 代表取締役 ○○○○ 印 □□株式会社 労働者代表 ○○○○ 印 *************** *************** 新刊書のご案内 法定事務のオールラウンドプレーヤー 納税協会の 総務管理者養成講座 『通信コース』 常時受付中です。 平成22年度税制改正事項完全収録! 平成22年版 法人税の決算調整と申告の手引 天羽和彦 編 一般法人の確定申告のために必要な、各事業年度の所得の金額 及び法人税額の計算並びに申告納付のための実務手引書とし (全6科目) ①総 務 実 務 ②経 理 実 務 ③源泉徴収事務 ④社会保険事務 ⑤労働保険事務 ⑥労務管理事務 受 講 料 納税協会会員 51,450円 <テキスト、添削指導料を含む> 収録。 (消費税込) 非 会 員 61,950円 *会員企業の社員は会員受講料となります 履修科目 在籍期間( 8 か月) 学習期間 講師による懇切な添削指導(合計 8 回)。提出日、順序は問いません。 テキスト一括配本。 て、法人税に関する法律・政令・省令及び通達を体系的に整理 ■B5判2,120頁・定価 4,830円 電子書籍版 書籍(「平成22年版 法人税の決算調整と申告の手引」)と同内容のPDFデータ テキスト テキスト 7 冊、添削 8 回、各種の資料 に、読みやすく使いやすい閲覧・検索機能を装備。 修 了 証 在籍 8 か月以内に全 8 添削を提出した方に授与 ■定価 3,780円 ・通信コース受講者は(初回分のみ)無料 平成22年11月改訂 スクーリング ・原則として毎年 6 月(または 7 月)、11月(または12月) の土・日曜日(年 2 回・各 2 日間)開催 *講義コース 次回開催予定:平成23年度春期大阪教室は来年 4 月開講予定です。 くわしくは下記まで 財団法人 納税協会連合会 事業部 〒540−0008 大阪市中央区大手前 1 − 5 −33(納税協会ビル 6 階) TEL 06−6937−5115 FAX 06−6937−5502 資産税の取扱いと申告の手引 譲渡所得 山林所得 相続税 贈与税 財産評価 松山明弘・安岡 彰 編 ★Web版サービス付き 資産税関係の法令・通達や諸様式の記載例まで収録し、その取 扱いの全容を正確に、かつ、広く理解できるように各項目を体 〈納税協会ホームページ〉 系的にまとめ、最新の税制改正事項を織り込み詳細に解説。 http://www.nouzeikyokai.or.jp ■B5判1,528頁・定価 4,620円 からも詳細内容の確認、お申込みが可能です ◆お求めはお近くの納税協会へ(税込価格)
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