急性期脳卒中患者に対する歩行能力の予後予測 【背景・目的】 近年,医療機関の機能分化の促進により,各施設は機能に応じた体制の整備が求められて いる.急性期病院では,疾患の治療と並行し早期に退院先を決定するための精度の高い予 後予測が有用となる.当院では早期退院のため,リハビリテーション(以下,リハ)の早期介 入や,多職種によるカンファレンスを定期的に実施しているが,自宅退院の可否を判断す るためのモニタリング項目やリハアウトカムの設定は療法士の経験に依存しているために カンファレンスが形骸化しつつあるのが現状である.本研究は,自宅退院の可否に影響を 及ぼすと考えられる歩行能力に着目し,急性期病院入院後 4 日目の状態から 2 週目の歩行 能力を予測する因子を明確にすることで,退院マネジメントをより早期から効果的に行え るようにすることを目的とした. 【対象・方法】 平成 25 年 12 月 1 日から平成 26 年 11 月 30 日で,脳梗塞もしくは脳出血にて当院へ入院 となりリハを実施した患者 526 例のうち死亡退院,入院期間が 2 週間未満,病前mRS が4 以上の患者を除外した 380 例を対象とした. 方法は退院時の歩行が自立か非自立を従属変数とし,①年齢②入院時 NIHSS と,4日目に おける③意識レベル④MMSE⑤12 段階片麻痺回復グレード⑥基本動作(起居・座位・起立・ 移乗・歩行)の介助量(自立・監視・介助)を独立変数としてロジスティック回帰分析を 行った. 【結果】 15 日目の歩行獲得に影響を与える因子として,4 日目の MMSE,下肢 12 段階片麻痺回復 グレード,起立動作が選択された(p<0.05) .判別的中率は 81.0%であった. 【考察】 今回の結果から 4 日目の MMSE,下肢 12 段階片麻痺回復グレード,起立動作が急性期に おける短期的な歩行予後を決定する際の有用な指標であることが示唆された.今後は在院 日数の短縮を視野に入れ,これらの因子の効果的な改善手段と具体的な退院マネジメント 方法について検討したいと考える.
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