O2-B18 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016 回復期入院患者における入浴移乗動作自立度を予測する 因子について 片脚立位時間と TUG-T のカットオフ値の算出 石井 隆治(OT),森 聡(PT),床島 享典(OT) 公益社団法人地域医療振興協会 飯塚市立病院 リハビリテーション室 Key Words 入浴移乗動作・片脚立位時間・カットオフ値 【はじめに】 間の比較には,片脚立位時間と TUG-T を welch の t 検 臨床現場において,入浴移乗動作自立の判断は療法士 定,MMSE と FACT を Mann-Whitney の U 検定で検 の主観によるところが大きい。日常生活動作の自立度の 討した。入浴移乗自立度と各項目との関連性の検討には 報告は多くされているが,入浴移乗動作に関する報告は Spearman の順位相関係数を用いた。片脚立位時間と 極めて少ない。本研究は当院における入浴移乗自立度を TUG-T の カ ッ ト オ フ 値 は,Receiver Operating 客観的に判定することを目的とした。また,各項目と機能 Characteristic Curve(ROC 曲線)を用いて算出した。 的 自 立 度 評 価 表(Functional Independence 全ての統計学的検査は両側検定とし,有意水準は 5% 未 Measure:以下,FIM)の浴槽への移乗動作項目との 関連性を検討し,各項目におけるカットオフ値を算出し, 当院における入浴移乗自立度の指標を確立する。 【対象】 満とした。 【結果】 自立群は 14 名、非自立群は 11 名であった。年齢は, 自立群に比べ非自立群は有意に高かった(P<0.05)。 平成 27 年 3 月∼平成 27 年 8 月に当院回復期リハ 片脚立位時間は,自立群に比べ非自立群は有意に短かっ ビリテーション病棟に入院となった 25 名(男性 7 名, た(P<0.05)。TUG-T は,自立群に比べ非自立群は有 女性 18 名,平均年齢 78.4±24.4 歳)で,脳血管疾 意に長かった(P<0.05)。MMSE は,自立群に比べ非 患 4 例,整形外科疾患 21 例(股関節 6 例,膝関節 7 例, 自立群は有意に低かった(P<0.05)。FACT は,両群 体幹 8 例)を対象とした。 間で有意差を認めなかった(P≧0.05)。入浴移乗自立 【方法】 度 と 片 脚 立 位 時 間(r =0.83),MMSE(r =0.73), 評 価 項 目 は,片 脚 立 位 時 間,Timed Up and Go FACT(r =0.43)に有意な正の相関,TUG-T(r =− Test(以 0.67)に有意な負の相関を認めた。カットオフ値は,片 下 , T U G - T ), M i n i M e n t a l S t a t e Examination(以下,MMSE) ,臨床的体幹機能検査 (Functional Assessment for Control of Trunk: 脚立位時間が 3.82 秒,TUG-T が 11.4 秒であった。 【考察】 以下,FACT)とした。各項目は,退院日の前 2 日以内 本研究の結果より,入浴移乗動作自立には,体幹機能 に実施した。片脚立位時間の測定は,両上肢下垂位で よりも下肢を中心としたバランス能力が重要である可能性 2m 前方を注視した物的支持のない状態で行った。ストッ が示唆された。また,認知症が中等度以上に進行した場合, プウォッチを使用し,爪先が離地してから計測を開始し, それのみで ADL の自立度に影響を与えると言われてお 非支持側下肢が床に接地した時点で終了とした。上限は り,入浴移乗動作も MMSE が低値である場合,自立度 30 秒とし,左右 2 回ずつ測定し,最も良い記録を代表 が低下することが考えられた。カットオフ値の算出より, 値とした。TUG-T の測定は原法に則って,最適歩行速度 片脚立位時間は 3.82 秒以上,TUG-T は 11.4 秒以下 で計測した。椅子は肘掛けの有無を問わず,日常生活で で入浴移乗動作が自立する可能性が示唆された。今後, 歩行補助具を使用している場合は使用して行った。入浴 移乗自立度は,FIM の基準に基づき,7 点(完全自立) 対象者を増やし,検証していきたい。 【倫理的配慮,説明と同意】 と 6 点(修正自立) を入浴移乗動作自立群(以下, 自立群), 対象者に対し,本研究の目的や参加の同意及び同意撤 5 点(監視)と 4 ∼ 1 点(要介助)を入浴移乗動作非 回の自由,プライバシーの保護等につとめ,予め十分に 自立群(以下,非自立群)として 2 群に分類した。浴槽 説明し,署名にて同意を得た。なお,本研究は,当院倫 への移乗動作が自立している症例を自立群とした。両群 理委員会で承認を得て行った。
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