ヨウ素および臭素の降下量の経年変化 ~東京・秋田・石垣島の大気降下物試料の分析結果~ 村松研究室 07042008 内田悠香 【序論】ヨウ素は人や動物にとって必須元素であることから、栄養学などの面で重要 な元素と見なされている。また、核実験や再処理などで環境中に放出される放射性ヨ ウ素のうち、129I は生成量は少ないが半減期が 1570 万年と非常に長いため、環境安 全の面からも注目されている。そのため、ヨウ素の環境中での分布や挙動を調べるこ とが求められている。土壌などに含まれる 129I や安定ヨウ素(127I)の分析データは報告 されているが、大気降下物中のデータは非常に少ない。そこで本研究では、大気降下 物中のヨウ素、129I に注目して分析を行い、比較として臭素の分析も行った。 【実験】大気降下物試料は 1963 年~2005 年までに東京・秋田・石垣島で 5 月と 9 月に採取された試料を気象研究所から提供していただき実験に用いた。まず、乾燥さ せた降下物試料から、加熱分離法を用いてヨウ素と臭素を捕集溶液に分離した。そし て溶液の一部を用い ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)によりヨウ素・臭素濃度 を測定した。また残りの溶液からヨウ素を抽出し、AgI としたのち、AMS(加速器質 量分析計)により 129I/127I 比を測定した。 【結果および考察】測定したヨウ素および臭素濃度に、月ごとの全降下物量をかけ合 わせ、月ごとのヨウ素と臭素の降下量(μg/m2)を算出した。一例として、東京におけ るヨウ素降下量の結果を図 1 に示す。東京においてはヨウ素降下量が 17~730 μg/m2 の範囲にあり、採取年度や月により大きな変動が見られた。また、秋田や石垣島の試 料の分析結果から、ヨウ素の降下量は地域によってそれぞれ異なる変動を示すことも 分かった。一方、臭素の降下量は、年代や地域による大きな変動は見られなかった。 129I/127I 比の分析結果(東京)から、1960 年代の核実験が盛んな頃より 1980 年代の 方が顕著に高くなっていることが分かった。このことから降下物中の値は核実験によ る影響よりも、再処理施設からの放出による影響の方を多く受けていると考えられる。 なお、129I の分析については 2010 年に村松研で遠山らが、東京 5 月の大気降下物試 料に関する分析結果を出しており、本研究でその他の都市についての分析データが得 られ、地域の違いによる変動を知ることができた。 2 I の降下量 (μg /m ) 800 東京5月(遠山測定)・9月(本研究) 700 600 500 400 300 200 100 0 05 03 東京におけるヨウ素の降下量(μg/m2)の経年変化 01 図1. 99 97 95 93 91 89 87 85 83 81 79 77 75 73 71 69 67 65 63 西暦
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