光合成は、植物と光合成微生物*に特異的な 生命活動ですが、一部に

自然に学 lエ ネルギー・環境技術
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光合成ウミウンに学心ヽ
動物―
植物の八イブリッド機構の解明
盗 んだ葉緑体 で
光合成 をするウ
海藻 の葉緑体を体内に取り込み、光合成
植物 の細胞 内小器官を動物 の身体 で機
希有な現象を実践する、光合成 ウミウ
動物‐
植物 のハイブリッド機構 の解明とは
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ヤ
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光 合成 は、植物と光合成微生物 *に 特異的な
生命活動ですが、一部に光合成を行う動物が存
在 します。たとえば、多くのサンゴやイソギンチ
ャクは単細胞性の藻類を自らの細胞 内に共生
させる “
細胞 内共生 "に より、光合成をすること
が知 られています。一 方 、嚢舌 ロウミウンの 仲
間には、海藻から葉緑体を取り込んで体内で警
文
週間から数力月にわたつて生かし、光合成を行
つている例が報告されています。
し れは、“
盗葉緑体 "と 呼ばれる特異な現象で、
多細胞動物ではウミウシの仲間にのみ見 出さ
れているものです。葉緑体 はわすかの遺伝情
報をもつた細胞内小器宮 (オ ルガネラ)で 、植物
コノ八ミドリガイと八ネモ
嚢 舌 ロウミウシの 1つ で あるコノ八ミドリガイ │よ 体長 2∼
3cm。 右上の写真はエサとなる八ネモで、
右下 │よ 緑色蛍光タ
ンパク質で発光させたもの。八ネモの葉緑体 、
ミトコンド
核、
リアのそれぞれを異なる色で蛍光標識 し、コノ八ミドリガイ
の体内での挙動を観察してしヽ
る。
細胞から分離すると、単独では機能できません。
では、光合成 ウミウンは葉緑体をどのように選
別 して取り込み、自らの体内で機能させている
のでしょうか?
過 去の報告では、葉緑体のみがウミウシの体
内で生きて光合成をしているとされてきました。
実は、藻類の核とセットで盗んでいる可能性や、
ウミウンが藻類の遺伝子を取 り込んで植物細
胞のように機能している可能性もあるのです。
その謎を解明するため、海藻の葉緑体、核、ミト
コンドリアをそれぞれ異なる蛍光で発色させ、
ウミウンの体内での挙動をリアルタイムで観察
する研究が行われています。
葉 緑体 は、シアノパクテリア (藍 藻 )が 植物細
胞の祖先に細胞内共生し、十 数億年という時間
のなかで 1つ の細胞内小 器官になつたと言われ
ています。この研究により、生物の進化 に関す
る新たな矢日見が発見されるかもしれません。そ
して、人工光合成系の開発など、動物と植物の
八イブリッドシステムの 構築につ ながる可能性
も秘めているのです。
ゲノムは動 的な存 在 で、
常 に新 しいもの をつ くりだして い る
京都府立大学大学院 生命環境科学研究科
小保方 潤一 教授
私の専 門は、
植物ゲノム研究です。一般にゲノム(全
遺伝情報 )研 究と言うと、どんな遺伝 子があり、どう
われわ
使われているかを見るものがほとんどですが、
れはゲノムの動きを見ます。ゲノムはどうして変化す
るのか、新 しい遺伝 子はどのよう│こ つ くられるのか。
ゲノムは動 的な存在であり、常 に小さな変化が起 き
ています。つまり、自然界では「ゲノムの進化実験 J
が、日々、繰り返されているわけです。光合成ウミウシ
の研究 は、そうしたゲノムの動きを見る研究の1つ な
のです。
シアノバクテリアには3000∼ 4000も の遺伝子がありま
すが、植物 の葉緑イ
本はわずか100程 度 の遺伝子 し
かありませ ん。細胞 内共生 のなかで遺伝子 は植 物
細胞 の核 に転移し、淘汰されていったわけです。そ
して、葉緑体が機 能するためには核遺伝子 のサポ
ートが不可欠なんです。では、ウミウシの細胞内では
何が起 こっているのでしょうか? 葉緑体とウミウンの
相互作用を通して、生物進化 の現場も見えてくるの
ではないかと思います。
苺
有