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教会
カトリック神戸中央教会
社会的背景
村上晶子
信徒への動機付け
(左)
写真1 カトリック神戸中央教会主聖堂内観/
(中)
写真2 広場での原寸体験/
(右)
写真3 ワークショップの様子
建設に関する印象を聞くと共に、信徒にとっての教会お
よび社会活動センターのプログラムを整理する。建設の
設計への応用
信徒への動機付け
歴史的に概観すると、教会建築は、既成のヨーロッパの
「目的」
「 要求」
「 機能」
をはっきりと認識してもらうことで、
聖堂の広場に対する駐車場と広場の関係は、駐車場も
教会の普遍のプログラムが 300 名の席数における典礼
建築空間に類型化されてきた。とはいえ、常にそこには、
信徒からの要求する機能的な提案と動機づけを発表しあ
取り込み、広場化する原寸体験による検証で決定した。
祭儀においてどのような形で、
よりよく行えるかを策定す
普遍のプログラムが内在している。キリスト教の中でもカ
い、問題点を導き出していった。
ワークショップで導かれた案は、2 つの案に集約された。
る。事前に、典礼そのものに対する勉強会を行うことで共
最終案に収斂・決定するために、実際の広場に全員参
通理解を得てからからワークショップを行うことが肝心であ
加でロープを張り、広場の大きさと聖堂の位置と大きさの
る。説明と検討には20 分の 1 の聖堂家具配置模型にて
確認と検証を行い最終案が決定された。
典礼祭儀の動きと共に検証した。
トリック教会では、20 世紀の第二バチカン公会議による
『 刷 新による教 会の現 代 化(アジョルナメント)』におい
グループワークと発表
て、新しい要求にも応え、各時代の性格にも調和するこ
6 つのグループに分けて、全体の配置計画のブロックモ
とが宣言されたことは、異なる文化、異なる地域のものも
デルを各グループに配布して検討してもらった。円滑に作
受け入れて典礼を行うことを含め、
ヨーロッパの建築空間
業ができるように、建設委員を各所に配置してプロセスの
の模倣ではないプログラムが必要とされている。日本に
説明の助けになるようにする。ディスカッションの後に、
グ
おいても、
日本独自の教会建築プログラムの創出が求め
ループの代表が、個別のモデルから100 分の 1スケール
られている。
しかし、伝統的に根付いてきた建築空間のイ
の着色した大きいブロックモデルに各グループの案を置
プログラムそのものを考察する目的での検討も必要であ
けた。
メージをもつ多くの人々が 1 つの建築に関わる教会では
き換える。各案を全員の前で順番に発表して、発表ごと
る。基本的聖堂空間の所作・典礼に対する機能的なプ
②各グループの作業内容は、聖堂内陣周辺に関係する
新しい試みのときの共通理解を得ることは難しい。ここで
に他の信徒からの質問時間も設けて他のグループの意
ログラムと精神的な認知的次元のプログラムの共存が
家具、附属室、等の項目の「優先順位付け」
あるいは
「取
は『教会の現代化』における、独自の建築空間のプログ
見も引き出すようにする。
求められた。グループに分けて、広く意見を述べる機会を
捨選択」
を行うことである。
ばの宣言、原寸体験などの手法を試みている。
設計方法の事例と応用(カトリック神戸中央教会・社会
活動神戸センター)
聖堂空間のイメージ策定と教会のプログラムの策定
グループに分
セッション形式を採用し、少人数( 6 ∼ 8 人)
設けることで、参加者それぞれが「設計プロセス」に関わ
ラムの創出の場面において、精神的な認知的次元にお
こと
けるイメージを共有化する手段としてワークショップ、
グループワークと発表
① 多 様な家 具を集 約するために、重 複を得られるバズ
ワークショップの結果考察
る部分が増え、相互コミュニケーションによる満足が得ら
ワークショップの結果考察
検証結果から設計作業の検討事項が明らかになった。い
れたものと思われる。結果として冷静で建設的な意見に
聖堂空間にもとめられる祈りの空間につながる精神的な
これ
ずれも関係者の中で意見が分かれている点であり、
集約される傾向がみられた。
(表1)
霊的要素を含む認知的次元の共通理解には、
「ことば」
を総合的に解決した案が自立的に求められた。
実施日=2002 年 3月∼ 6月
という強いイメージ力をもつもので集約することが助とな
被験者=教会建設委員会 12 名+信徒有志 合計 40
る。
しかし、ユーザーレベルでわかりやすく、意見を述べや
名程度
すい便利さや使いやすさなどの要素の場合、利害関係が
阪神淡路大震災から7 年、被災した3 つの教会と社会活
一致せず、個人の考え方も強く、意見の集約が難しい。
動の拠点の総合計画である。異なる用途の空間が同居
それゆえ、一般公共建築でも有効な手段としてのワーク
しながらも互いに影響を与えつつ干渉しない距離を策定
ショップ方式を教会建設の場面にも採用して、信徒それ
するためには、広場のあり方や大きさ、教会建築へのプロ
ぞれが「設計プロセス」に参加することによって、共通に
グラムの要求について、
ワークショップ方式によるプログ
目指す解決を得られる場を用意した。ワークショップを行
ラムの策定を数回にわたり実施した。
うことで、優 先 順 位の取 捨 選 択に役 立ち、共 通 理 解を
形成できうる
「場」
が設けられたことで収束することができ
全体計画のプログラム策定と広場のあり方の原寸体験
た。
本計画は3 つの教会と社会活動センターの複雑な統合
名称=カトリック神戸中央教会・社会活動神戸センター/所在地=兵
庫県神戸市中央区中山手通 1-28-7 /竣工年月=2004 年 9月/構
造:鉄骨造=地上2階/敷地面積=3800㎡/延面積=2000㎡/信徒
数=300席/設計監理=㈱村上晶子アトリエ/施工=㈱竹中工務店
神戸支店
のためのプログラム策定が求められた。
(表2)
実施日=2002 年 2月・5月
被験者=建設委員12 名+有志 60 名( 2月)、80 名( 5月)
表1 聖堂空間のイメージ策定と教会のプログラムの策定
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表2 全体計画のプログラム策定
4 事例
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