12月号 - 製鉄記念広畑病院

社会医療法人
地域医療連携だより
製鉄記念広畑病院
平成27年12月号 No.22
アレルギー性鼻炎の手術療法
耳鼻咽喉科部長 佐伯 忠彦
アレルギー性鼻炎の手術療法は、薬物療法などの保存的治療を行っても症
状がコントロールできない重症例に対して適応となります。われわれ耳鼻咽
喉科医が取り組んでいるアレルギー性鼻炎に対する代表的な手術療法には、
鼻粘膜の縮小と変調を目的とした炭酸ガスレーザーやアルゴンプラズマな
どによる下鼻甲介粘膜焼灼療法(当科では後者を使用)、 鼻閉の改善を目
的とした下鼻甲介切除術や粘膜下下鼻甲介骨切除術、 鼻漏の改善を目的と
した後鼻神経切断術、などがあります。 は外来で局所麻酔下に反復して施
行できますが、
は入院のうえ、全身麻酔下に硬性内視鏡を用いて手術操
作を行います。今回は、当科で行っている手術療法のうち、粘膜下下鼻甲介骨
図1:粘膜下下鼻甲介骨切除術のアプローチ法
切 除 術と後 鼻 神 経 切 断 術 につ いて図を用 い な がら
概説します。
粘膜下下鼻甲介骨切除術は、下鼻甲介前端の粘膜を
切開して下鼻甲介深部に存在する下鼻甲介骨を取り除
く手術です(図1,2ab)
。下鼻甲介全体が縮小されますが、
鼻粘膜の表面線毛上皮は温存されるため、痂皮形成、感
染、鼻内感染の合併症は最小限に回避できます。また、
鼻閉改善において、安定した長期成績が期待できます。
図2a:左下鼻甲介の前端を粘膜切開刀にて切開
図2b:骨膜下に下鼻甲介骨を剥離露出
後鼻神経切断術は、下鼻甲介に分布する副交感神経と知覚神経の末梢枝をバイポーラーにて焼灼し切断することにより、難治
性の水様性鼻漏やくしゃみ症状を改善させる手術です(図3,4ab)。従来は蝶口蓋孔から出た部位で神経を切断していましたが、
近年ではさらに末梢の下鼻甲介後端近傍で切断することも多くなってきました(選択的後鼻神経切断術、当科でもこの方法)。
いずれの方法でも8割以上の患者さんに長期的な治療効果が得られます。 粘膜下下鼻甲介骨切除術と後鼻神経切断術は同時に施行することが一般的となっており、両手術を併用することで、アレルギー
性鼻炎の三主徴である、くしゃみ、鼻汁、鼻閉の全てに効果が期待でき
ます。なお、鼻中隔に弯曲がある例では、上記手術の鼻内操作の妨げや
鼻閉の原因にもなるため、鼻中隔矯正術を併用する場合があります。
図3:後鼻神経枝の走行と切断部位のシェーマ(浦長瀬論文より改変)
図4a:後鼻神経枝の走行
図4b:後鼻神経枝の焼灼切断
参考文献:浦長瀬昌宏:アレルギー性鼻炎 . 耳喉頭頸 86: 521-527, 2014.
認 定 看 護 師 紹 介( 5 )
緩和ケア認定看護師としての活動
緩和ケア認定看護師 上田 るみ子
緩和ケアというと、治療が何も出来なくなり最期のケアと思
いがちです。でも決してそうではありません。緩和ケアはがん
と診断された時から始めます。重い病気を抱えながらも患者さ
んやご家族の身体の痛み、つらさをはじめ、不安や気持ちの落
ち込み、治療費や仕事などの悩みといった身体や心の様々な
つらさをやわらげて、生活していただくためのケアなのです。
私は2009年に緩和ケア認定看護師として内科・婦人科・救
急科混合の病棟に所属して活動を始め、今年9月からは外来の
放射線治療室に所属しています。がん治療には大きくわけると
手術療法、薬物療法、放射線療法があり2つ以上の治療を組み
合わせて行われる場合もあり、医師や放射線技師、看護師、薬
剤師、
ソーシャルワーカーと協働して外来や入院でがん治療を
行う患者さんとご家族の支援を行っています。
病棟では看護師から苦痛症状のある患者さん・ご家族の相談を受け、患者さんのベッドサイドでお話を聴いてい
ました。また、入院患者さんとそのご家族との関わりを通して、
サインを見過ごすことなく受け止めて、苦痛緩和が図
れるようなケアを提案し、患者さんにとって最善の方法をスタッフと一緒に考えケアを実践していました。現在所属
している放射線治療室でも患者さんの思いを聴いて放射線治療への不安が少なく、生活面での配慮をしながら治
療が完遂できるような援助を心がけています。 この様に病棟でも外来でも患者さんとご家族から、いち早く悩み
やつらい症状を聴いて医療チームで症状緩和を検討しながら、
直接ケアを提供できることが私の強みでもあります。
私は、
がん相談支援センターでがん専門看護師と共に、患者さん・ご家族からの様々な悩みを伺いながら、生活が
し易くなるように支援もしています。相談の内容は、主治医から診断の説明を受けこの先どうなるのか不安に思う、
療養中の生活をどのように送ったらいいのか、抗がん剤副作用である脱毛の悩みなどお話を伺いながら相談を承っ
ています。在宅療養に移行されても不安が少なく治療が継続して行えるように支援しています。
当院には医師・緩和薬物療法認定薬剤師・リンクナース・社会医療福祉士で構成する緩和ケアチームがあります。
私はチームメンバーの一員として毎週金曜日午後に各部署をラウンドしながら病棟スタッフや患者さん・ご家族から
の相談を受けて症状緩和が図れるようにケアを提案しています。
緩和ケアチームの介入は入院中のケアだけではありません。在宅療養に移行される患者さんに、地域医療を担う
先生方や訪問看護師さん、地域薬剤師さん、
ケアマネージャーさん、病棟スタッフ、院内リソースと協働して鎮痛剤
や輸液管理、創傷ケアの方法など、在宅でも入院中と同じ様な生活が送って頂けるようなケアを提案しています。
年齢や疾患、社会背景が異なる患者さんとそのご家族の緩和ケアはひとりの力では決して果たせません。緩和ケ
ア認定看護師は患者さんとご家族を医療チームの中心にして、
チームの橋渡しとなる役割を担っています。そのため
にセミナーや学会に参加して得た最新の援助を、
看護師をはじめとした医療チームに還元して、
患者さんとそのご家
族のつらさをやわらげ、
生活の自由度が広がることを目標にしながら、
緩和ケア認定看護師の活動を続けています。
診療技術部
リハビリテーション科
リハビリセラピストのご紹介
リハビリテーション科 療法士長 畑中 信吉
当院のリハビリでは院是の「和」の理念の下に、意図せずご不自由に
なられた患者さんの生活を再び取り戻すために尽くしていくことを信条として、個々の患者さんの病状に応じて発症急性期からの
リハビリ訓練に患者さん・ご家族が戸惑いを生じることのないように担当スタッフ間が連携を緊密にしながら日々の治療訓練に取
り組むよう努力しています。
具体的には高度リハビリテーションプログラムを実施するために、
関連他科
(脳神経外科、
神経内科、
整形外科を中心にほとんどすべ
ての科)
と連携し、
リハビリ依頼を受けると処方に基づいて主治医や看護師と連携を取りながら離床に向けて行くために、発症急性期
からICUや救急病棟での早期リハビリテーションや一般病棟でのベッドサイド訓練を経てセンターでの活動性向上まで行っています。
施設基準と在籍セラピスト
運動器・脳血管
(廃用)
・呼吸器・循環器の施設基準Ⅰそしてがんリハビリテーションの認定施設であり、
現在の在籍セラピストは理学療法
士11名、
作業療法士3名、
言語聴覚士2名で構成しており、
認定呼吸療法士や糖尿病療養指導士、
摂食嚥下認定士も在籍しています。
対象疾患について
理学療法:骨折(多発を含む)、変形性関節症、脊椎・脊髄損傷、頭部外傷脳卒中、腫瘍、呼吸器疾患、代謝性疾患、熱傷、皮膚疾患など
作業療法:手指・上肢骨折、脊髄損傷、頭部外傷、脳卒中、脳腫瘍など
言語療法:頭部外傷、脳卒中、脳腫瘍など
理学療法・作業療法・言語療法について
患者さんの施術に当たっては入院前の生活活動状況の把握に努め、現状との違いや目標設定に役立てさせていただいていま
す。近年では対象患者さんの重症化が進んできているため、訓練中に対象患者さんの体調急変が起こることもあり、状態を詳細に
把握するため病棟看護師をはじめ他職種とのコミュニケーションの重要性が増しています。また、病棟生活においてもリハビリを
取り入れて行けるように看護師と協力しながら必要な指導・援助を行っています。今後は、ICU・救急病棟スタッフや有識者の協力を
得ながら早期離床(Early Mobilization)
にも努めていきたいと思います。
理学療法
外傷や疾病により運動機能が低下した状態にある患者さんの運動機能の維持・改善を目的に、運動療法、物理療法を手技とした
治療アプローチを行い、さらに日常生活に必要な基本動作能力の再獲得を図るための日常生活動作訓練を行っています。
作業療法
上肢の運動機能や巧緻性、日常生活動作、高次脳機能の向上を目的として訓
練を行います。当院の作業療法では、脳神経外科疾患や整形外科疾患の治療訓
練、日常生活上の指導・援助を主に行っています。
言語療法
コミュニケーション能力の改善を目標に、言語・高次脳機能の評価および訓練
を行っています。また、摂食・嚥下障害の評価および訓練も行い、病棟食生活の向
上に結び付くように指導・援助も行っています。
おわりに
当院を退院される多くの患者さん方は転院や地域で介護を必要とされることから、療法士間の連携を図っていくために当院で
のリハビリ状況をできるだけ詳しくお伝えすることを心掛けていますので、今後とも宜しくお願いいたします。
日
11月9
に
市民公開講座のご案内
世界糖尿病デー
イベント を 開 催しました
参加費無料・予約不要・駐車場無料
第25回 市民公開講座を開催
世界糖尿病デーは、増大する糖尿病の脅威に対する人々の
平成27年11月7日
(土)
、当院 糖
尿病内科部長 土居医師による、
『元気で長生き、糖尿病
より1991年に創始され、インスリン発見者であるFrederick
意識を高めることを目的に、国際糖尿病連合(IDF)とWHOに
Grant Banting博士の誕生日にちなんで11月14日に制定
もうすぐ世界糖尿病デー 』を
テ ー マとした 市 民 公 開 講 座 を
開催しました。
されています。当院では糖尿病を意識していない地域住民の
方や来院患者さんに、日々の健康管理について意識してもら
うことを伝えるための参加型イベントを開催致しました。体組
成測定や血糖測定でメタボのリスク評価を行い、ご飯盛り体
今 後の開催予定
予 告
験・簡単ロコモ体操を通じて、日常でも続けることのできる生
第26回 市民公開講座
活改善内容をアドバイスしました。月曜午前中開催の影響か、
『乳がん ∼最近の話題∼』
約100名の参加者は70歳代の方が大半を占めていました
【講 師】日本乳癌学会 乳腺専門医 箕畑 順也 医師
がん看護専門看護師 松本 仁美 看護師
【日 時】平成27年12月5日㈯ 10時∼11時30分
【場 所】当院研修センター
が、超高齢化を迎えている我が国の背景から高齢者の健康意
識 が 高まって いるこ
とも伺えました。1分
45秒に1人糖尿病に
予 告
第27回 市民公開講座
なっている現在、働き
『大腸がん撲滅に向けて』
盛りの年齢層への啓
【講 師】消化器内科部長 大内 佐智子
【日 時】平成28年1月16日㈯ 10時∼11時30分
【場 所】当院研修センター
蒙も行いたいと考え
ています。
地域医療連携室 診察予約受付業務時間
平 日
8 時 4 5 分 ∼1 9 時 0 0 分
木曜日
8 時 4 5 分 ∼1 7 時 0 0 分
土曜日
8 時 4 5 分 ∼1 2 時 3 0 分
お知らせ
《日曜・祝日・年末年始は除く》
休診日や診療時間外に頂いたご予約で、各診療科の
判断が必要な場合は、お返事が休み明けの診療日に
なる場合がございますが、ご了承ください。
夜 間・休日における受 付 窓口への直 通電 話をご 利 用ください。
☎ 079
( 237)
8707
診 察 カ レ ン ダ ー
は全科休診日
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患者総合支援センター 地域医療連携室
TEL.079-237-8477 FAX.079-236-3210