7月号 - 製鉄記念広畑病院

社会医療法人
製鉄記念広畑病院
地域医療連携だより
平成27年7月号 No.17
外傷整形外科医が漢方について思うこと
整形外科担当部長 圓尾 明弘
私は整形外科の中でも、超急性期の救急病院で外傷を専門にする整形外科医です。骨盤骨折、多発外傷や開放骨折
などの急を要する疾患を扱うことが多いのですが、漢方薬もよく使います。東洋医学の漢方薬といえば慢性疾患に効
果があると思われがちですが、そうではありません。漢方の中でも今ある症状をスパッと改善するもの、根本的な体
質を改善するものに分けられます。手術が好きな外科医=「いらち」ですので結果を早く求めることから前者を好み
ます。
たとえば、骨折すると局所は出血して、血腫となり熱を持って腫れます。そして全身
的には、循環血症量が減るので脱水になり、貧血をきたすので全身倦怠感を自覚しま
す。これを東洋医学的に読み変えると「局所の出血」→「血が滞る「瘀血」」になるの
で血の巡りをよくする「駆瘀血剤」が必要になります。熱をもって腫れるので、熱をさ
まして水の巡りをよくする薬が必要になります。血管内脱水は補液ですが、それが慢性
的に続くと組織内脱水になります。それを「陰虚」といって水を補う「滋陰剤」が必要
になります。急な貧血には輸血ですが、慢性的に血が足りない「血虚」には血を補う
「補血剤」が必要です。全身倦怠感は、気が足りない「気虚」で、それには気を補う
「補気剤」が必要です。このようにいくらでも漢方薬が活躍する場面はあります。
漢方の特徴はこのように患者さんの病態や体質に合わせた処方を選ぶことができることです。逆に患者さんの病態
や体質を見極めてそれにあった処方を選ばないと効果がありません。そこで、整形外科病棟では週に一回漢方廻診を
行い、問題のある人をピックアップし、東洋医学的な診察をしてそれに従って処方を出しています。周術期は病態が
刻一刻変化するので毎週処方が変わることもあり、我々も大変勉強になります。
外来ではリウマチ患者さんも多く診察しています。最先端の生物製剤も取り入れていますが、それでも出てくる不
定愁訴には漢方薬が効果を示します。長い付き合いになるので徐々に体質改善させてあげることができます。漢方だ
けでリウマチが治ることはないのですが、うまく併用する事
で病態が落ち着いてきます。
また、院内の漢方好きが集まって症例検討をしたり、講義
をしたり、診察の方法の実践を行なったりする「広畑臨床漢
方研究会」を2002年から定期的に行なっております。そこで
症例を出して、みんなで病態を考えて鑑別処方を挙げていき
ます。実はこのステップが非常に大事で、病態を見極める力
と、それにあった鑑別処方を挙げることで効果がなかった時
(広畑臨床漢方研究会の風景)
の修正ができます。ツムラさんにもらう効能書きを見て処方
をしてもなかなか効果がありません。
最先端の機器を取り入れて行う手術も外科医にとっては武器になりますが、温故
知新の東洋医学という武器を持っていると診療にも幅が出ます。地域の先生方も参
加していただいており、当院ホームページでもお知らせをしておりますので、興味
がある方は是非一度「広畑臨床漢方研究会」を覗いてみてください。
認 定 看 護 師 紹 介(1)
認知症看護認定看護師の役割と活動について
認知症看護認定看護師 黒田 恵子
近年の少子高齢化、認知症患者の急増に伴い、当院でも入院患者に占める高齢者の
割合が増えるとともに認知症をもつ入院患者数も増加しています。2015年1月に厚生
労働省は認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
を策定し、
『 認知症の人の意思が
尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができ
る社会の実現を目指す』ための取り組みが進んでいます。そのため、認知症看護認定看
護師に求められている役割は多岐にわたり、認知症の人が
“住み慣れた地域でその人ら
しく生活できる環境を整える”
役割の一翼を担っています。それは、生活場所が在宅、
介護・医療施設のいずれであっても同じことがいえます。
特に急性期病院では、認知症をもつ人が病気やケガによって急に入院生活を余儀なくされることで、住み慣れた生活
から引き離されてしまいます。そこで、入院生活や治療上の制約によって大きなストレスにさらされ、一時的な意識障害
である
“せん妄”
や徘徊・興奮などの行動・心理症状が出現しやすくなります。それらの症状が出現すると、適切な医療を受
けにくくなって回復が遅れたり、精神症状に対して過度に行動制限したりすることで、患者さん自身の
“持てる力”
を損ね
る恐れがあります。そこで、退院後に住み慣れた生活場所に戻ることができるよう、患者さん自身の生活能力を保つ手助
けをすることが、急性期病院における認知症看護の使命だと考えています。私たちは、認知症をもつ患者さんにも安心し
て適切な治療を受けていただくために、生活背景や病態に応じた環境づくりを心がけています。
私は、現在姫路救命救急センターに所属し、救急病棟で活動して
います。ここでの認知症看護認定看護師としての活動を紹介させ
ていただくと、一つ目は、救命救急センターに搬送・入院された患者
さんの認知機能や精神状態の評価を行っています。当院では、精
神科医・神経内科医・老人看護専門看護師・薬剤師・看護師による
「せ
ん妄回診(精神科リエゾン回診)」を週に1回行っています。
しかし、
患者さんの救急病棟での滞在日数は半日∼数日間と短期間で集
中的な関わりが求められます。それに加えて、救急病棟から一般病
棟に転棟した後、退院後に元の生活に復帰していただくためには
継続的なケアを提供する必要があります。そこで、入院後の患者さんの認知機能や精神状態が入院前とどのように変化
したのか、変化したのであれば何が原因なのかを検討し、
アセスメントした内容をスタッフ間で共有し、対応を検討してい
ます。
このように超急性期からダイレクトに認知症看護を提供できることが当院の強みになるよう、
日々取り組んでいます。
二つ目は、認知症の人やせん妄を発症した患者さんのご家族からの介護についてお話をうかがっています。認知症の
人のご家族は、
自宅での介護での困りごとや退院後の生活についての不安を抱えておられます。また、認知症と診断され
ていない段階の患者さんのご家族から患者さんの認知症の診断や治療・経過について相談を受けることもありますし、
主介護者であるご家族自身が認知症をもっている場合は入院中のご家族へのサポートが必要な場合もあります。このよ
うに、介護相談や認知症の症状との付き合い方の相談を通して、認知症の人だけでなく介護されているご家族にも安心し
て入院生活を送っていただけるように日々心がけています。
今後の課題として、当院への入院が地域での認知症支援の導入のきっかけとなるよう、地域医療連携室をはじめ地域
の医療・福祉施設や認知症初期集中支援チームとの情報共有に努めていきたいと考えています。
中央診療部門紹介
人工透析室
透析療法指導看護師 冨川 直子
当院の透析室は、ベッド数24床、維持透析患者さん51名と、
その他手術や治療目的で入院された患者さんの一時的な透析を受け入
れています。
内科部長・血管外科専門医師を中心に、非常勤医師(腎臓内科専門医師2名・糖尿病医師1名・形成外科医師1名)
・臨床工学技士7
名・看護師7名で、医療スタッフが各専門的な立場から、がっちりスクラムを組んで透析生活を支援し、安全な透析を提供しています。ま
た、当院では透析学会でも推奨されている5時間以上の透析『検査データ・日常生活・循環器機能・その他』などを考慮した治療を、現
在18名に実施しています。
臨床工学技士は、患者さん一人一人にあった最適な透析を目指して、検査結果を踏まえたダイアライザーの選択・透析条件の評価を常
に行なうとともに、透析装置の保守管理や水質管理に努め、安全な透析が提供できるように取り組んでいます。看護師は、維持透析患
者さんのQOLを維持し、患者さん・ご家族が笑顔で日常生活が送れるように、検査結果を踏まえて、食事指導・
フットケア・服薬指導など
に全力で取り組み、事故の無い安全な看護ケアを実施することを念頭に、患者さん個々の人格を尊重し、笑顔と真心で対応しています。
また、一人の患者さんを臨床工学技士と看護師がチームを組み、日々の透析評
価を行なっています。
1回/月、医師・臨床工学技士・看護師で意見交換を行ない、最
適な治療が提供できているのかについてカンファレンスを実施し評価しています。
平成26年度から、地域医療の一環としてCKD(慢性腎臓病)チームを立ち上げ
活動を開始しています。腎臓内科専門医を中心に、内科部長・薬剤師・臨床工学技
士・栄養士・医事課・病棟看護師・外来看護師・透析療法指導看護師でチームを組
み、腎臓の機能を少しでも長く維持できるようにと活動しています。活動内容は、
1回/月CKDチームでカンファレンス(問題解決・学習会・その他)を実施、
1回/週
入院患者さんを対象に病棟回診、
1回/月(2名)CKD教育入院を受け入れています。
第20回 市民公開講座記念大会
平成27年6月6日(土)
14時より、姫路市立図書館広畑分館5階ホールにて、第20回製鉄記念広畑病院市民公開
講座記念大会を開催しました。これまでは院内の研修センターを利用しておりましたが、20回を機に、地域の皆様
により当院を知っていただくために、公共の会場をお借りしての開催となりました。
今回の記念大会は、
「がんは早く見つけて小さく切る」
をメインテーマに、診断・治療のスペシャリストの当院医
師による講演、及びご来場された方からのがんに関する
疑問・質問にお答えするパネルディスカッションを行いま
した。
当日は廣坂看護師長の総合司会の元、橘理事長・病院長の挨拶で幕を開けました。
講演は、最初に内科部長 藤澤先生の「がんの予防と早期発見」、次に内視鏡センター長 田淵先生の「がんを小さ
く切る 内視鏡による治療」、最後に外科担当部長 辰巳先生の「低侵襲な腹腔鏡下大腸手術」の順で行われ、各先
生とも短い時間の中でわかりやすく説明を行いました。
続くパネルディスカッションでは、藤澤先生が座長を務め、辰巳先生・田淵先生に加え、内科副部長・消化器内科
部長 大内先生もパネリストとして参加し、
ご来場の方の疑問・質問に丁寧に答えました。
最後に巽副院長の閉会の挨拶で幕を閉じました。
梅雨の時期と重なり当日の天気が心配されましたが、運よく好天に恵まれ多くの方にご参加いただきましたこ
と、深く感謝いたしております。
橘理事長・病院長
巽 副院長
藤澤 医師
田淵 医師
辰巳 医師
廣坂 看護師長
医師の異動
新任医師のご紹介
平成27年6月1日付
H27年6月末で退職 病理科 沖村 明 医師
平成2年に愛媛大学を卒業しました。
糖尿病・甲状腺を専門にしています。
チーム医療で着実に1つずつ患者さ
んの治療を進めていきたいと思ってい
ます。
どうぞよろしくお願い致します。
糖尿病内科部長
土居 靖子
平成2年卒
第 56 回
市民公開講座のご案内
広畑臨床漢方研究会のご案内
今後の開催予定
参加費無料・予約不要・無料駐車券配布
『高齢者の術後の倦怠感に補材の使い分け
気、
血、水のどれを補うか?』
予 告
【講 師】整形外科担当部長
第21回 市民公開講座
『下肢静脈瘤って知ってる?
(たかが静脈、
されど静脈)』
圓尾 明弘
【講 師】第一外科部長・血管外科部長
(兼)
福岡 正人
【日 時】平成27年7月4日㈯
10時∼11時30分(9時半受付)
【場 所】当院研修センター
【日 時】平成27年7月18日㈯
13時半∼15時
【場 所】当院本館2階多目的ホール
予 告
糖尿病教室のご案内
第22回 市民公開講座
『脳卒中について ∼脳神経外科医の立場から∼』
【テーマ】1.糖尿病と腎症 2.食事療法
【講 師】脳神経外科担当部長 魚住 洋一
【日 時】平成27年8月1日㈯
10時∼11時30分(9時半受付)
【場 所】当院研修センター
【講 師】内科藤澤医師、栄養科
【日 時】平成27年7月18日㈯ 10時∼
【場 所】当院研修センター
地域医療連携室 診察予約受付業務時間
平 日
8 時 4 5 分 ∼1 9 時 0 0 分
木曜日
8 時 4 5 分 ∼1 7 時 0 0 分
土曜日
8 時 4 5 分 ∼1 2 時 3 0 分
お知らせ
《日曜・祝日・年末年始は除く》
休診日や診療時間外に頂いたご予約で、各診療科の
判断が必要な場合は、お返事が休み明けの診療日に
なる場合がございますが、ご了承ください。
夜間・休日における受付窓口への直通電話をご利用ください。
☎ 079
(237)
8707
診 察 カ レ ン ダ ー
は全科休診日
7月
8月
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TEL.079-237-8477 FAX.079-236-3210