社会医療法人 地域医療連携だより 製鉄記念広畑病院 平成27年11月号 No.21 IBDとは 消化器内科部長 大内 佐智子 IBDとは炎症性腸疾患 (Inflammatory Bowel Disease) の略で、 主に潰瘍性大腸炎とクローン病を指します。 潰瘍性 大腸炎は主に大腸にびらんや潰瘍を作り、血便が出ることがほとんどです。一方クローン病はすべての消化管に潰 瘍を作り、 腸管が狭くなったりしますが、 血便が出ることは多くなく、 下痢や体重減少、 繰り返す腹痛など、 非特異的な 症状が中心です。発症年齢のピークはいずれも20歳代(図1・図2) と若年で、学校生活、受験、結婚、仕事など、 それ ぞれのライフステージの中で、 病気といかにうまく付き合いながら社会生活を営んでいくかが重要になってきます。 近年、罹患者数はどんどん増加し、 クローン病は4万人、潰瘍性大腸炎は15万人を超すようになりました。 この疾 患群は未だに病因が解明されておらず、国が定める難治性疾患:特定疾患に指定されていますが、昨年度より制 度が変わり、医療費助成は制限され、軽症の方は指定から外れるようになりました。 潰瘍性大腸炎は約7割の方が薬で病状をコントロールできていますが、中には慢性持続型で、なかなか病状 が落ち着かず、治療抵抗性の方がおられます。安倍首相がこのタイプではないかと言われています。 このよう なタイプの患者さんには通常の抗炎症薬(5ASA製剤)に加え、ステロイドや免疫調整薬、生物学的製剤である 抗TNFα製剤などで強力に免疫を調整することが、内科的治療の最終手段になります。 クローン病は潰瘍性大腸炎とは異なり、ほとんどが慢性持続型で病状は進行性です。 しかしながら、潰瘍性大腸 炎でも使われている抗TNFα製剤が著効することが多く、病勢のコントロールは飛躍的に容易になりました。その 3,00 2,50 2,00 ていることから、世界で最も売れている医薬品の上位を占 1,50 めています。日本の医師は特に多く処方していると指摘さ 50 96 91 86 81 7 71 76 66 6 61 56 51 46 41 36 26 31 潰瘍性大腸炎推定発症年齢別患者数 (図2) 7,00 6,00 5,00 4,00 3,00 2,00 1,00 85 90 81 86 91 95 96 100 80 76 45 41 61 65 66 70 71 75 35 40 0 31 36 46 50 51 55 56 60 20 25 30 16 21 26 6 0 5 0 1 を祈っています。 16 ような特効薬が、安価に、安全に使用できるようになること 21 0 1 れ、 しばしば関係者の間では問題視されていますが、 この 1,00 6 抗TNFα製剤は高価ではありますが、非常に治療に貢献し (図1) 3,50 11 らない生活を営むことができるようになっています。 この クローン病初診時年齢別患者数 6 10 11 15 いほど、生活の質が上がり、ほとんどの人が発症前とかわ 0 結果、 この生物学的製剤が登場する以前には考えられな 認 定 看 護 師 紹 介( 4 ) 当院での皮膚・排泄ケア認定看護師としての役割 ∼職員と一緒に成長していける認定看護師を目指して∼ 皮膚・排泄ケア認定看護師 仲井 千里 「ストーマ保有者を幸せにしたい! 」そんな想いから皮膚・排泄ケア認 定看護師となり、 はや8年が経過しました。皮膚・排泄ケア認定看護師の役 割は、褥瘡等の創傷・ストーマ造設・失禁に伴い生じる問題をアセスメント して、対象者に適したケアの実践や本人・家族・医療者への指導・相談を行 うことです。 当院での私の主な活動は、2014年から褥瘡ハイリスク患者ケア加算 の要件を受け、褥瘡管理者として褥瘡対策対象者に対する統計処理及び 病棟看護職員にスキンケアやポジショニング等の実践・指導を行っていま す。特に、近年、褥瘡学会でも注目されている摩擦単独あるいは摩擦・ずれ によって、表皮が真皮から分離(部分層創傷)、 または表皮及び真皮が下層 構造から分離(全層創傷) して生じるスキンテアや酸素マスク・NPPV管 理・固定装具等に伴う二次的・機械的な圧迫に関連する医療関連機器圧迫 創傷に着手し、発生予防と発生した創をどのようにケアするか検討しています。主として高齢者の四肢に発生するスキン テアは、 ターミナルや化学療法治療・放射線治療患者が脆弱な皮膚状態であることから生じる創傷も含まれるので、 日頃 からの保湿ケアを重点的に啓蒙しています。また、 これは、医療現場だけではなく在宅においても必要とすることから家族 指導も行なっています。さらに、医療関連機器圧迫創傷について、 クリティカルな領域では生命維持優先という絶対的な 条件の中でも皮膚を看るという習慣が定着し、予防ケアについて相談を受けることが多くなっています。 この活動には、2014年10月 (NO.8)の地域医療連携だよりでチーム紹介させていただきましたが、褥瘡対策チーム との連携は欠かせません。これまで当チームは、褥瘡及びスキンケアに関連する情報を「褥瘡だより」 と題し、患者さんの 皮膚を看ることの多い看護職員にのみ情報発信してきました。 しかし、患者さんの皮膚を看るのは看護職員だけではあり ません。そこで、医療従事者全員で患者さんの皮膚を守る取り組みが必要であると考え、今年6月より 「スキンケア通信」 に改め、院内の全職員に情報発信しています。 2007年より毎週水・木・金曜日のストーマ外来と毎週水曜日の褥瘡外来を立ち上げ担当させて頂いています。 ストーマ造設者に対しては、術前ストーマサイトマーキングを行い、退院後はストーマ外来で継続的なフォローを行って います (他院からの紹介も承っています)。ストーマ外来では、 ストーマ保有者が持つ問題のアセスメントを行い、問題を解 決するために局所ケアをはじめ、 ストーマ装具の選択、 ストーマ受容までのプロセスの援助、生活指導等、 より専門的な知 識と熟達した技術でケアを行っています。ストーマ保有者の中には、 日常生活や人間関係での苦悩を話し涙を流される方 もいます。心身両側面からのケアアプローチによって沈んだ心をリセットし、 「ここに来たら元気がでた!」 「また明日から頑 張ります!」 という言葉を聞いた時は、私自身の使命を実感します。 「自信を持って社会生活を送ることを支援する」 これ は、私の永遠の使命です。当院では、褥瘡重症度が高く難治性の方の入退院があります。退院後の褥瘡外来では、在宅環 境や処置方法における現状を再確認し、家族への生活指導と担当ケアマネージャーや施設職員との連絡・調整を図ってい ます。特に在宅での褥瘡ケアは、家族で熱心にケアをされる方が多く、介護者の負担が大きくなっています。褥瘡を治癒し たい思いが強い故に、過度のケアを行って介護疲れを生じてしまいます。在宅に戻った後は無理をしない・させないケアア レンジを重要他者と連携を取りながら進めています。 当院は今年4月から、より良い排泄ケアの提供を目指しておむつの院内支給体制を導入しました。まだ、駆け出した ばかりですが、今後は、病院・施設・在宅まで繋ぐ排泄ケアを構築していくことが私の課題であると考えています。入院・ 外来を問わず患者さんの皮膚を看る目を養い、皮膚を守ることを意識できる・ ・ ・そんな職員を育むことが当院での私 の役割です。今後も引き続き、患者さんに寄り添いながら、スキンケアの鬼と周囲から思われるくらい、 「 皮膚を看て、 予測して、治癒促進」出来る、そして、職員と一緒に成長できる認定看護師を目指して貢献したいと考えています。 薬剤部紹介 薬剤部と認定薬剤師 当 院薬剤部の認定薬剤師等 がん薬物療法認定薬剤師 1名 緩和薬物療法認定薬剤師 2名 救急認定薬剤師 1名 NST専門療法士 1名 糖尿病療養指導士 2名 漢方薬・生薬認定薬剤師 2名 公認スポーツファーマシスト 1名 日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師 3名 認定実務実習指導薬剤師 4名 薬剤部長 田中 一穂 平成24年より当院でも6年制薬学部卒業生が入職するようになりました。薬剤師も病棟に常駐する時代と なりかつての「調剤中心」の業務からより多方面且つ、 より専門性の高い内容が求められるようになってきてお ります。今回は当院薬剤部の認定薬剤師とその業務を紹介いたします。 がん薬物療法認定薬剤師 抗がん剤は最もリスクの高い薬と言えます。当院では専任の「がん薬物療法認定薬剤師」の指導のもと、抗 がん剤注射薬の投与時は当日の検査値から投与量をチェックし、検査値が基準より悪い場合は医師に投与 量の確認を行います。薬液の調製までを受け持ち、初回の方にはお薬相談室にて副作用を含めた入念な説 明も行います。当院には1名の認定薬剤師がおり、化学療法委員会、キャンサーボードへも出席しレジメン登 録から積極的に抗がん剤薬物療法にかかわっています。 緩和薬物療法認定薬剤師 がんや難治性の疼痛を抱える患者さんは、疼痛コントロールに行き詰ることがありますが、当院では「緩和 薬物療法認定薬剤師」が医師、看護師と一緒にチームを組んで緩和ケアチーム回診に参加し処方の提案を 行います。特に薬物の選択や剤形を変更する時などは相談が多く、回診にかかわらず様々な医師、看護師、 そして病棟担当薬剤師からの質問に的確に答えていきます。 救急認定薬剤師 救命救急センターがオープンしてからは、センター専用の「薬剤サテライト」を新館1階に設置し、 「救急認定薬 剤師」を中心に3名の薬剤師が救急外来、 ICU、救急病棟の調剤から服薬指導までを24時間体制で行っていま す。中毒患者や大量服薬患者が搬送されてきたときなどは、医師や看護師から緊急を要する質問が寄せられる ことが多く、迅速に文献検索を行い情報を提供しています。 ドクターヘリやドクターカーの緊急薬剤の管理も大 事な仕事です。 「救急認定薬剤師」はその他研修への参加や一次救命処置の教育なども担当します。 このように、私たち病院薬剤師の業務も様々な「認定薬剤師」が 必要となってまいりました。他にNST専門療法士、糖尿病療養指 導士の資格を持つものもおり、院内の様々なチーム医療に参加し ています。現在は23名の薬剤師と2名の事務員で日々の業務に あたっております。今後も患者さんや、医師・看護師からの要望に 応えられるよう様々な業務にチャレンジしたいと考えています。 薬剤サテライト 糖尿病教室のご案内 【テーマ&講師】糖尿病と脳卒中(脳神経外科) 療養生活の注意点(看護部) 災害時の対応(看護部) 【日 時】平成27年11月21日㈯ 10時∼ 【場 所】当院研修センター 市民公開講座のご案内 新任医師のご紹介 平成27年10月1日付 参加費無料・予約不要・駐車場無料 信頼される医師となれる 第24回 市民公開講座を開催 よう努力します。 どうぞよろ 平成27年10月3日 (土) 、当院 老人看 護専門看護師 森山管理師長による、 『高齢者の「食べる」を考える あなた が、家族が、食べられなくなったときど うしますか 』をテーマとした市民公開 講座を開催しました。 しくお願い致します。 外科担当医師 田中 正樹 平成16年卒 平成27年9月までは栃木 今 後の開催予定 予 告 県の獨協医科大学病院で 働いておりました。 よろしく 第25回 市民公開講座 お願い致します。 『元気で長生き、糖尿病 もうすぐ世界糖尿病デー 』 形成外科担当医師 政岡 浩輔 平成19年卒 【講 師】糖尿病内科部長 土居 靖子 【日 時】平成27年11月7日㈯ 10時∼11時30分 【場 所】当院研修センター 予 告 10月からお世話になりま 第26回 市民公開講座 す。よろしくお願い致しま 『乳がん ∼最近の話題∼』 す。 【講 師】乳腺外科部長 箕畑 順也 医師 がん看護専門看護師 松本 仁美 看護師 【日 時】平成27年12月5日㈯ 10時∼11時30分 【場 所】当院研修センター 整形外科担当医師 古川 隆浩 平成25年卒 地域医療連携室 診察予約受付業務時間 平 日 8 時 4 5 分 ∼1 9 時 0 0 分 木曜日 8 時 4 5 分 ∼1 7 時 0 0 分 土曜日 8 時 4 5 分 ∼1 2 時 3 0 分 お知らせ 《日曜・祝日・年末年始は除く》 休診日や診療時間外に頂いたご予約で、各診療科の 判断が必要な場合は、お返事が休み明けの診療日に なる場合がございますが、ご了承ください。 夜間・休日における受付窓口への直通電話をご利用ください。 ☎ 079 (237) 8707 診 察 カ レ ン ダ ー は全科休診日 11 月 12 月 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 6 7 1 2 3 4 5 8 9 10 11 12 15 16 17 18 19 20 21 13 14 15 16 17 18 19 22 23 24 25 26 27 28 20 21 22 23 24 25 26 29 30 27 28 29 30 31 社会医療法人 製鉄記念広畑病院 患者総合支援センター 地域医療連携室 TEL.079-237-8477 FAX.079-236-3210
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