11 アリアンツ・グローバル・インベスターズ 洞 察 2015年11月 グローバル・ビュー 世界的なボラティリティの高まりに対して、インデックス運用は 防御策とならず 中国で投資家の不安感をあおる出来事が最近生じたの に続き、市場は米連邦準備制度理事会(FRB)がもたらす 動揺に端を発する一段の先行き不透明感に悩まされてい ます。FRBが若干0.25%ながら利上げに踏み切る可能性 があるため、投資家の不安はノアの大洪水のような大災 害に匹敵する水準まで高まっています。 投資家が不透明感を嫌うのは常です。しかし投資家は数 年間にわたり、現在も続く中央銀行による(人為的に金利 を低く押さえ込む)金融抑圧、および資産クラス全般に広 がる足元の「リスク・オン」の流れなどの金融政策による 明確な状況の恩恵を受けてきました。 二ール・ドゥエイン グローバル・ストラテジスト 同時に、先行き不透明感が増す状況で、金融市場はほ ぼ間違いなく投資家が過去に経験したよりも高水準のボ ラティリティにさらされるでしょう。我々がアクティブ運用を 確信する理由はここにあります。投資家はアクティブ運用 で新たな局面のボラティリティからもたらされる収益獲得 を目指すことができますが、インデックス運用ではボラテ ィリティによるポートフォリオの価格下落リスクに対して防 御策となりません。 実際のところ、債券と株式は2009年の世界金融危機の低 迷期から大幅に回復したにもかかわらず、現在、投資家 は金融政策が引き続き有効であるか、または政府債務の 実質価値を十分に減少可能な水準にインフレ率を導ける かといった明白な証拠を探しています。どちらの状況も明 白ではなく、投資家が金融政策の有効性を疑問視するだ けではなく、政策当局が信頼性を失っていることにも不安 を抱いている中、結果としてボラティリティがあらゆる資産 クラスで高まっています。 この「先を見据えた」答えと同じように、明らかに一部の投 資家はしばらく見失っていた明白さを探し続けています。 このような投資家に対し、我々は同じく明白な結論に至る よう、以下の一連の論理的ステップを踏むことをアドバイ スします。 2015年の夏から秋にかけて、政治的懸念がほぼ世界規 模で再燃しました。具体的には、中国政府の政策に対す る信頼性の低下、米国議会の財政問題に関する機能不 全、紆余曲折を経て決定したギリシャに対する第3次金融 支援、「シラク(シリアとイラク)」での情勢悪化を背景とし た欧州やアフリカにおける難民問題が挙げられます。 世界中で55回を超える利下げが行われ、世界経済が減 速する中、金融政策はほぼ全開な状態にあり、投資家は インカムのみならず、リターンも求めています。しかしなが ら、収益獲得が一段と困難になると同時に以前よりも低 水準となっていること、および企業の業績拡大は経済の 上げ潮時ではなく構造的な成長機会を通じてでしか達成 されないことが、最終的に現実となりつつあります。この ような状況下での投資先としては、配当利回りが債券利 回りを大幅に上回る株式が挙げられます。我々は、企業 の構造的な成長機会と配当の組み合わせを活用すること で、このような厳しい状況を無事に乗り切ることができると 考えています。 1 • 中央銀行がこのような環境に対応していくためには、 金融政策は引き続き緩和的かつ慎重である必要があ るでしょう(米国での利上げの見送りおよび日本と欧 州での超量的緩和策がこうした状況を裏付けていま す)。 • 過去10年に多くの産業部門で過剰投資、実際には誤 った投資が行われました。このため大幅な設備過剰と なり、値下がりを招きました。 • 政策や政治的先行き不透明感からボラティリティが高 止まりするため、債券とキャッシュからの予想収益は 低水準にとどまると考えられます。標準的なインデック ス戦略も同様です。 • 政策当局が失策を犯すリスクは高まっており、投資家 は、収益獲得を目指してリスクを取る必要があるでし ょう。アクティブ運用により、許容可能なリスク水準で の収益獲得を目指せると考えています。 アリアンツ・グローバル・インベスターズ 洞察 2015年11月 欧州の見通し 欧州では低金利環境が続く可能性が大 FRBがいつ利上げサイクルに入るのか議論が続く中、利 上げが米国の債券価格にマイナス影響を及ぼす可能性 およびその他市場の債券価格に影響が波及する可能性 に関して懸念が広がっています。米国とその他地域の債 券市場の間では、従来の相関が続く可能性が高い一方 で、欧州の債券利回りが今後数年間にわたり大幅に上昇 する可能性は低いと考えています。 カール・ハッペ 保険関連戦略CIO 第1に、世界中の中央銀行が長きにわたり低金利を維持 し、FRBが利上げサイクルに入ったとしても、利上げを速 いペースで、または従来通りのペースで行う可能性は低 いといえるでしょう。現実的には、利上げサイクルにおけ る上げ幅は合計1.5%~2.0%程度になると考えています。ま た、欧州では、欧州中央銀行(ECB)が今後数年間利上 げに踏み切る可能性は低いでしょう。実際、あらゆる状況 を勘案して 、ECBの現在の量的緩和策は終了予定の 2016年9月以降も継続されると考えています。 加えて、多くの市場関係者と議論した結果、欧州の保険 会社と年金基金はいまだデュレーションのミスマッチを完 全に解消しておらず、金利がいつ数十ベーシスポイント上 昇しようとも、長期債に対する潜在的な需要が存在すると 考えています。したがって、少なくとも今後数年間は欧州 債券市場で大幅に金利が上昇する可能性は低いとみて います。 グラスルーツ・リサーチ は自らの資産購入の予定または資産購入の自信の程度 に影響を及ぼさないとの考えを示しました。しかし、第1級 都市の回答者の25%が株式取引の資金調達のために資 産購入の予定を延期し、16%が市場心理の悪化を受けて より保守的になったとの考えを示しました。第2級および 第3級都市では、回答者の37%が資産購入の予定に影響 を及ぼさない、24%がより保守的になった、20%が株式市 場の下落を受けて資産購入により積極的になったとの考 えを示しました。都市の等級にかかわらず調査結果全体 では、今年の家計支出予算に影響を及ぼす上位2つの要 因として株式市場と雇用情勢が挙げられました。第1級都 市ではインフレが、第2級および第3級都市では不動産市 場がこれに続きました。 危機後の中国人消費者の視点 先ごろの中国A株市場(中国国内投資家向け市場)の下 落後、グラスルーツ・リサーチは家計の決定権を有する中 国人消費者約400名にインタビューを行いました。同イン タビューは、株式市場が中国人消費者の投資・消費意欲 に及ぼす潜在的な影響を測ることが目的でした。 インタビュー結果を集計したところ、34%が中国国内経済 について自信があるおよび/または楽観的、31%が中立、 18%が悲観的と回答しています。第1級都市(大都市)の回 答者と比較して、第2級(第1級に次ぐ大都市)および第3 級都市(小規模都市)の回答者は、過去6カ月の景気動 向に関して楽観的な見方を示していました。 足元の経済情勢および株式市況に関してみてみると、今 後6カ月間に、第1級都市の回答者が最も支出を増やす 可能性が高いとしたものは海外および国内旅行で、食料 品の購入とその他娯楽がこれに続きました。一方、最も 支出を減らす可能性が高いとしたものは高額家電製品お よび外食となりました。第2級および第3級都市では、回答 者が最も支出を増やす可能性が高いとしたものは国内旅 行、家電製品、衣料品および化粧品・スキンケア商品で、 最も支出を減らす可能性が高いとしたものは宝飾品・高 級品および高額家電製品となりました。 その他、調査結果から、回答者の投資先の約半分がキャ ッシュで、株式市場と不動産の順でこれに続くことが分か りました。下図が示すように、すぐにでも投資を希望する 第1級都市の投資家にとって、株式市場が上位1位の投 資を考えている先となっています。第2級および第3級都 市では、キャッシュが上位1位の投資を考えている先とな っており、株式市場がこれに続きました。 さらに、第1級都市の回答者の39%が、先ごろの株価下落 好まれる資産クラスは株式 株式 オンラインのウェルス マネジメント商品/ソーシャルレンディング キャッシュ/預金 投資信託 金その他コモディティ 不動産 投資を考えている先 上位1位 上位2位 上位3位 債券 従来の販売方法による ウェルスマネジメント商品 出所:グラスルーツ・リサーチ。2015年8月時点。 2 ケリー・レウバ グラスルーツ・リサーチ・ グローバル・ヘッド アリアンツ・グローバル・インベスターズ 洞察 2015年11月 視点 無名の人から主人公になった後、悪者に転落し、再び主人公に これから説明するエマージング債券の話は、映画的にい うと、名もない人が救世主になった後悪者に転落して、最 後には汚名を返上するシナリオになっています。 無名の人から主人公に 話は次のように始まります。長年にわたり、エマージング 債券はハイ・イールド債券と比較し一般的な投資先では なく、低迷した資産クラスでした。 グレッグ・サイチン グローバル・エマージング債券CIO その後、エマージング諸国は改革を行い、支払能力と信 用格付は改善され、初期の投資家を惹き付けました。実 際のところ、資源に対する中国の飽くなき需要を背景にコ モディティのスーパーサイクルが発生しました。中国は自 国の壮大な投資計画を維持するため資源を必要としてい ました。多くの新興諸国がこの恩恵を受け、思わぬ経済 効果から、新興国債券は投資適格債に引き上げられまし た。エマージング諸国の生産性が低下し始め、2008年の リーマン・ショックが引き金となり現在のミスプライシング が生じる結果となった前例のない金融緩和策が実施され ました。 現在、エマージング債券の取引停止が頻繁に報じられる 時期にさしかかっているといえるでしょう。すべてのエマー ジング国債が非投資適格債に格下げされた場合、ルール に基づき運用を行う数多くの投資家が、構造的に非流動 的な市場で売却を強いられる可能性があります。最近格 下げされたブラジルのエネルギー企業の例を思い出して みてください。これにより、インデックス運用者は数10億米 ドル相当の債券の売却を余儀なくされました。その結果、 ブラジル国債のスプレッドは天井を突き抜け大幅に拡大 しました。非常に高い流動性プレミアムによるとしか説明 できない価格の調整が要因と考えられます。 魅力的なリターン獲得を目指すことが引き続き困難な環 境下で、エマージング債券は同水準の格付の債券を上回 る高プレミアムを提供し、魅力的な資産配分先と考えられ ました。マクロ経済的要因から判断しても、これは正しい アプローチだったといえるでしょう。 悪者から主人公へ 最近、エマージング債券は投資先としての人気が低下し ているため、通説と事実を区別するのには良いタイミング といえます。 通説1。エマージング諸国の経済成長が減速し、世界成 長をけん引するのではなく安定させる役割を担っていると いう事実。このことは、エマージング諸国の政策当局が留 意すべき教訓といえます。経済を多様化する機会が失わ れた5年前に真の改革は止まりました。エマージング諸国 は資本を呼び込むために改革に再び取り組む必要があり ます。経済の自由化、法規範およびインフラ建設に重点 を置くことで競争力の強化を図るしっかりとした改革政策 により、これは成し遂げられるでしょう。 主人公から悪者に 残念ながら、原油価格の急落と中国経済の「突然の」減 速が致命的に重なり、エマージング諸国はほころびを見 せ始めました。実際には、これら二つの出来事は、背景 に金融抑圧があり、生産性の低下と地政学的リスクの上 昇による世界経済減速の当然の帰結といえるでしょう。 地政学的リスクの中でも、解決しないブラジルの贈収賄 汚職、ロシアを反西欧に向かわせた東ウクライナでの戦 争およびトルコの政治的混乱が相まって、エマージング諸 国は疲弊し始めました。 通説2。エマージング市場からの資本流出が新たな資金 調達危機のきっかけになる。1990年代とは異なり、エマー ジング諸国がペッグ制(固定相場制)またはクローリング・ ペッグ制(段階的平価変動制)を廃止してからすでに長い 年月が経過しています。さらに、インフレはおおむね管理 され、エマージング諸国は世界的なディスインフレの恩恵 を受けてさえいます。加えて、現地国内資本市場は14兆 米ドルを集め、今も増え続けており、外貨準備高は引き 続き高水準にあります。今後2年間、いかなる財政悪化の 可能性を考慮してもエマージング諸国のバランスシートは 健全であると結論づけることができるでしょう。 エマージング債券価格は急落し、2015年7-9月期だけで 210億米ドルが流出しました。こうした巨額の流出はリー マンショック以来のことです。現実のリスクと仮定のリスク を背景に、エマージング債券の利回りスプレッドは過去1 年間(2014年10月~2015年9月)に平均150ベーシスポイ ント拡大しました。 原油輸出国はEMBIグローバル・ディバーシファイド指数 の38%を占めていますが、昨年、原油価格とエマージング 債券のスプレッドの逆相関関係は90%に達しました。アフ リカや中央アジアの多くの資源国の債券スプレッドが大 幅に拡大しました。 通説3。エマージング諸国は米ドル建て債務の増加に苦し んでいる。「現地に精通していない」投資家の多くが、エマ ージング債券のだぶつき、およびそれが新たなエマージ ング諸国の危機の引き金となる可能性について懸念を抱 いています。これらの投資家が見落としているのは、米ド ル建て債務の半数が事実上政府機関債であり、エマージ 原油価格の下落が長期間続き、中国の経済成長率が5% を下回った場合、エマージング債券の信用度に重大な結 果をもたらすことは疑いの余地がありません。来年には 多くのエマージング諸国の格下げが予想されます。 (次ページへ続く) 3 アリアンツ・グローバル・インベスターズ 洞察 2015年11月 (視点 続き) ング国政府にはこれらの債務を必要とあれば所有するし か選択肢が残されていない点です。この種の債務の圧倒 的多数は外貨準備高が潤沢な中国、香港、ブラジル、メ キシコ、ロシアに集中しており、全体の60%を占めていま す。新たな金融危機と誤解してはなりません。エマージン グ国政府は必要とあれば自国の外貨準備高を積極的に 活用し、銀行または政府機関の支援に乗り出すでしょう。 また、金融抑圧の恩恵を受けて、エマージング国企業は 債務を10年以上の満期で借り換えることができ、資金調 達コストと表面利率は過去最低水準になりました。国が経 済的に完全に足を踏み外さない限り、短期ゾーンに借り 換え圧力は多くかかりません。 通説4。グロース投資でないのならば、バリュー投資。エマ ージング市場は来年以降数年にわたり弱気相場となり、 一段の信用格下げを目の当たりにするでしょう。スプレッ ドの変動幅は確実に拡大すると予想されます。しかし、低 経済成長環境下でのエマージング市場の調整は、金融 抑圧の足元の状況を変化させるものではありません。現 在、エマージング債券の投資適格債のスプレッドは400ベ ーシスポイントとなっています。償還によるキャッシュを保 有し続けている投資家にとっては、次の投資先はどこな のかが問題となるでしょう。よくいわれることですが、投資 家によっては、それはバリュー投資かもしれません。 読者の皆様はどのように考えますか。映画の主人公は復 活し、成功するでしょうか? 4 【ご留意事項】 • • • • • • • • • • 本資料は、アリアンツ・グローバル・ジャパン株式会社(以下、当社)の所属するAllianz Global Investorsグループ(以 下、AllianzGI Group)が作成する洞察を当社が翻訳したものです。 内容には正確を期していますが、当社が必ずしもその完全性を保証するものではありません。 AllianzGI Group各社はAllianz SE傘下のグループ会社です。 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