「制服組から見た安保法制」

平成27年 8月10日号
「制服組から見た安保法制」
防衛大臣政策参与
前統合幕僚長 岩崎
茂 氏
(平成 27 年7月 22 日 於日本記者クラブ)
隊員を代表しているとは思いませんけれども、私が
(講演要旨)
ただいまご紹介いただきました岩崎です。昨年 10
この 40 年間自衛官生活をやってきて感じていたこ
月までは統合幕僚長をしておりました。現在は防衛
と、それから今回の法制で何をしようとしているの
大臣政策参与ということです。身分がよく分からな
かということについて、それをまた制服の自衛官が
いのですけれども、半官半民みたいなことをやって
どう見ているかということについてお話したいと
おります。
思っています。
日本外交協会から、制服組として今回の安保法制
冷戦真っ最中に防大を卒業
をどう見ているかということをしゃべってほしいと
いう依頼がありまして、私は 40 年間自衛官として
少し経歴的なこと申し上げますと、私は 1975 年
やってきて、先輩たちや上司から言われた時になか
(昭和 50 年)に防大を卒業しました。昨年 10 月末
なか「嫌です」と断れない性格になってしまってい
ぐらいまでですので、39 年6~7ヵ月ぐらい自衛官
ましたので、
「はい、分かりました」と返事をしまし
生活をやったわけですけれども、私たちが卒業した
た。防衛大学校で先輩から教わったのは、
「いいか、 年の世界情勢はどうなっていたかといいますと、ご
先輩から言われた時には『はい、分かりました』
『有 承知のようにソ連とアメリカは冷戦状態ということ
難うございます』
『任せておいてください』、この三
で、国家間の衝突の可能性はかなり低い状態ではな
つの言葉しかないぞ」と言われておりましたので、
かったかなと思います。いろんなところで色々なつ
その癖が出て、つい「はい、分かりました」とお答
ばぜり合いをしていたとしても、もしかすると最終
えして、それから、さてどういうことをしゃべった
的に核戦争になるかもしれないという恐れがあると
らいいのかと思い始めてから、
「しまったな、やはり
いうことで、戦争になるかならないかを考えると、
お断りしておくべきだったのかな」と思ったのです
最終的に地球最後の日を覚悟しない限りは両方とも
が、もう時既に遅しでありました。
立ち上がれないだろうという感じのところがあって、
戦争の可能性は非常に低い時代だったのではないか
きょうは、自衛隊、自衛官の人たちがどう感じて
いるかを話すようにお願いされておりますけれども、 と思っています。これが 1989 年 12 月にマルタ会談
自衛隊には 25 万人の現役隊員がおりますので、
私が といわれた米ソ首脳会談が行われたり、90 年には東
西ドイツが統合されたりして冷戦の終結を迎えたわ
統合幕僚長に就いたからといって、なかなか全ての
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