6月8日号:チリ「不安が残る景気回復のシナリオ」

チリ
不安が残る景気回復のシナリオ
一次産品価格が2014年下半期
に急落し、スーパーサイクルは終わ
ったといわれる。これに伴い多くの
資源輸出国では景気が減速している。
世界最大の銅産国チリでは、昨年末
から年初にかけ、他の資源国に先駆
けて緩やかな景気回復の兆しがうか
がえる。しかし、このところ相次い
だ洪水や噴火などの自然災害の影響
が一時的に経済活動を下押しする可
能性が出ている。また、銅市況のほ
か、現政権が進める諸改革のインパ
クトを巡る不透明感も強く、景気の
先行きは予断を許さない。
チリの実質GDP成長率︵以下、
成長率︶は、 ∼ 年の5%台後半
から、 年には銅鉱山の開発サイク
ル一巡に伴う総固定資本形成の鈍化
を主因に4・2%に低下し、 年は
1・9%とさらに低下した。 年の
需要項目別寄与度をみると、総固定
資本形成は銅価格低迷を受けた鉱山
会社の投資手控えからマイナスに転
じた。また、民間最終消費は実質賃
金の伸び鈍化等を背景に低下した。
一方、純輸出は内需低迷を受けた輸
入の落込みから大幅なプラス寄与に
転じた。四半期の成長率︵前年同期
比︶は、 年第3四半期の1・0%
を底に、第4四半期1・8%、 年
13
14
14 14
15
第1四半期2・4%と緩やか
に回復している。
企業や消費者のマインドは
弱く、企業業況判断指数︵I
MCE︶は 年4月以降、消
費 者 景 況 認 識 指 数︵ I P E
C︶は 年6月以降、ともに
改善と悪化の分岐点である
㌽を下回っている。もっとも、
IMCEは 年 ∼ 月の
㌽強から 年3∼4月には
㌽強へと上昇し、企業の景況
感は持ち直す兆しがみえる。
一方、IPECは4月に ㌽
と約6年ぶりの低水準をつけ
た。
チリの中銀・民間調査機関、
IMF等の予測によると、緩
和的な金融政策スタンス︵チ
リ中銀は 年 月から 年
月にかけて2%㌽の利下げを
実施︶や公共投資拡大といっ
た政策面からの支援により、 年の
成長率は2%台後半に回復する見通
しである。さらに、IMFは 年4
月公表の世界経済見通しで、 年以
降も成長率は緩やかに上昇し、 年
には3・9%に達するとしている。
これらのシナリオが実現するか否
かについては、次の三つの要因がカ
450
銅価格(右目盛)
425
400
350
325
4
300
275
2
250
ギを握っている。①銅鉱山開発によ
り拡大した供給能力が輸出増加につ
ながるか、②世界最大の銅消費国で
ある中国の経済動向、③バチェレ現
政権が進めている諸改革︵教育改革
とその費用捻出のための税制改革、
労組の強化等を含む労働改革等︶が
企業活動に及ぼす影響に注目したい。
8
62
2015. 6. 8 金融財政事情
225
年
15
14
0
11
12
13
(出所)
Adimark-Gfk、ICARE、Cochilco
実質GDP成長率(左目盛) 375
6
セント/ポンド
475
%
10
銅価格と実質GDP成長率の推移
20
16 15
15
〔図表〕
50
48 40
38
10
12
14
14
14
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15
13
木下 直俊
国際金融情報センター 中南米部 研究員
10
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