チリ 不安が残る景気回復のシナリオ 一次産品価格が2014年下半期 に急落し、スーパーサイクルは終わ ったといわれる。これに伴い多くの 資源輸出国では景気が減速している。 世界最大の銅産国チリでは、昨年末 から年初にかけ、他の資源国に先駆 けて緩やかな景気回復の兆しがうか がえる。しかし、このところ相次い だ洪水や噴火などの自然災害の影響 が一時的に経済活動を下押しする可 能性が出ている。また、銅市況のほ か、現政権が進める諸改革のインパ クトを巡る不透明感も強く、景気の 先行きは予断を許さない。 チリの実質GDP成長率︵以下、 成長率︶は、 ∼ 年の5%台後半 から、 年には銅鉱山の開発サイク ル一巡に伴う総固定資本形成の鈍化 を主因に4・2%に低下し、 年は 1・9%とさらに低下した。 年の 需要項目別寄与度をみると、総固定 資本形成は銅価格低迷を受けた鉱山 会社の投資手控えからマイナスに転 じた。また、民間最終消費は実質賃 金の伸び鈍化等を背景に低下した。 一方、純輸出は内需低迷を受けた輸 入の落込みから大幅なプラス寄与に 転じた。四半期の成長率︵前年同期 比︶は、 年第3四半期の1・0% を底に、第4四半期1・8%、 年 13 14 14 14 15 第1四半期2・4%と緩やか に回復している。 企業や消費者のマインドは 弱く、企業業況判断指数︵I MCE︶は 年4月以降、消 費 者 景 況 認 識 指 数︵ I P E C︶は 年6月以降、ともに 改善と悪化の分岐点である ㌽を下回っている。もっとも、 IMCEは 年 ∼ 月の ㌽強から 年3∼4月には ㌽強へと上昇し、企業の景況 感は持ち直す兆しがみえる。 一方、IPECは4月に ㌽ と約6年ぶりの低水準をつけ た。 チリの中銀・民間調査機関、 IMF等の予測によると、緩 和的な金融政策スタンス︵チ リ中銀は 年 月から 年 月にかけて2%㌽の利下げを 実施︶や公共投資拡大といっ た政策面からの支援により、 年の 成長率は2%台後半に回復する見通 しである。さらに、IMFは 年4 月公表の世界経済見通しで、 年以 降も成長率は緩やかに上昇し、 年 には3・9%に達するとしている。 これらのシナリオが実現するか否 かについては、次の三つの要因がカ 450 銅価格(右目盛) 425 400 350 325 4 300 275 2 250 ギを握っている。①銅鉱山開発によ り拡大した供給能力が輸出増加につ ながるか、②世界最大の銅消費国で ある中国の経済動向、③バチェレ現 政権が進めている諸改革︵教育改革 とその費用捻出のための税制改革、 労組の強化等を含む労働改革等︶が 企業活動に及ぼす影響に注目したい。 8 62 2015. 6. 8 金融財政事情 225 年 15 14 0 11 12 13 (出所) Adimark-Gfk、ICARE、Cochilco 実質GDP成長率(左目盛) 375 6 セント/ポンド 475 % 10 銅価格と実質GDP成長率の推移 20 16 15 15 〔図表〕 50 48 40 38 10 12 14 14 14 11 10 14 15 13 木下 直俊 国際金融情報センター 中南米部 研究員 10 12
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