第 19 回東北内分泌研究会にて研究発表を行いました(2015/10/31)

第 19 回東北内分泌研究会にて研究発表を行いました(2015/10/31)
テーマ:災害ストレスと産婦人科疾患
場 所:リンクモア平安閣市民ホール(青森市)
災害産婦人科学分野の研究テーマの一つである「災害ストレスと婦人科疾患」について、当研
究所の三木康宏 講師(災害医学研究部門 災害産婦人科学分野)が口頭発表を行いました。
NPO 法人東北内分泌研究会/日本内分泌学会東北地方会は毎年、春と秋に開催され、内分泌
関連疾患に関する基礎研究や臨床研究、症例報告が発表されます。東日本大震災による内分泌疾
患への影響や仮設住宅での健康調査に関する報告、放射線の影響を受けやすい甲状腺に関する
研究発表もあり、内分泌学の観点による深い議論が成されています。三木講師は東北大学医学系
研究科との子宮内膜癌に関する共同研究として、ストレスホルモンであるコルチゾールがエス
トロゲン合成酵素であるアロマターゼの発現を高め、エストロゲン・バランスの撹乱を引き起こ
す可能性があることを発表しました(下記)
。
演題:子宮内膜癌組織におけるコルチゾール濃度とエストロゲン合成との関係
演者:三木康宏、笛 未崎、髙木清司、鈴木 貴、伊藤 潔
(下線は当研究所 災害医学研究部門 災害産婦人科学分野所属)
閉経前の女性ではエストロゲンは主に卵巣から分泌されます。閉経後では卵巣からのエストロ
ゲン分泌量は極端に少なくなりますが、副腎から分泌される弱いアンドロゲン作用を有するアン
ドロステンジオンを原料としてエストロゲンが合成されます。この合成を行っているのがアロマ
ターゼという酵素です。三木講師らの研究から、ストレスによって分泌されるストレスホルモン
のコルチゾールが、アロマターゼの発現を増加させ、その結果、エストロゲン過剰状態を引き起
こすのではと考えられます。以前からストレスによるホルモンバランスの撹乱が指摘されてきま
したが、本研究ではそのメカニズムを科学的に解明することができました。
次回、第 20 回東北内分泌研究会は、当研究所 災害産婦人科学分野 伊藤 潔 教授の会長のも
とで開催されます。当分野の「災害ストレスと婦人科疾患」はもちろんのこと、基礎研究や臨床
研究など様々な観点から災害と内分泌疾患の議論を深める場としていきたいと考えています。
ストレスとエストロゲン合成(左図)
ストレスによって副腎からコルチゾール
が分泌され、血中を流れて子宮に到達しま
す。子宮では同じく血中を流れてきた副腎
由来のアンドロステンジオンが、アロマタ
ーゼによってエストロゲンに変換されま
す。
文責:三木康宏(災害医学研究部門)