熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
点群データへの属性付与と道路空間の建設ライフサイク
ルでの利用に関する研究
Author(s)
藤田, 陽一
Citation
Issue date
2015-03-25
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/32317
Right
氏名 藤田
陽一
主論文審査の要旨
本論文は、点群データへ属性を与えることで点群データの高度利用につながり、さらに、建設
ライフサイクルにわたる利活用の可能性を示したものである。論文の新規性は 3点あり、点群デ
ータへの属性付与を提案した点、次に、属性付与手法および点群データの編集1去を提案した点、
最後に、道路空間に存在する構造物の属性分析手法を提案した点である。また、論文の有用性は、
道路空間の建設ライフサイクルでの点群データ利活用の可能性を示した点である。
第 2 章では、点群データの概要、現在の適用分野を記し、点群データの有用性を述べている。
さらに、点群データの課題をまとめ、解決すべき問題点として点群データに属性がないことに者
目している。
第 3章では、点群データへの属性付与の意義、属性付与手法、属性付与した点群データの利用
法を提案している。まず、点群データへ属性を与える意義として、建設ライフサイクルにわたる
利活用につながることを示している。次に、点群データへ属性を与える際の観点について整理し、
属性付与手法を示している。最後に、属性付与した点群データの利用法として、オブ、ジェクトと
しての利用と情報の紐づけ・可視化を提案している。オブ、ジェクトとして利用は、設計・施工段
階での協議・検討につながり、情報の紐づけ・可視化は、維持管理段階で利用につながることを
示している。
第 4章では、点群データを分割、分類するための手法を提案している。まず、点群データが有
する位置情報で点群データを分割可能とするエディタを開発しており、手動での点君事データ編集
を可能としている。さらに、開発したエディタに付加した機能を述べ、エディタの適用事例を示
している。次に、点群データが存する色彩情報の分析として、デジタル画像からの人工物抽出手
法を提案している。最後に提案した手法を用い、点群データから人工物を抽出した事例を示して
いる。
第 5章では、道路空間に存在する施設の属性分析手法を提案している。道路空間を、車道空間、
歩道空間、周辺空間の 3空間と定義し、車道空間と歩道空間に存在する地物を対象に属性分析手
法を提案している。属性分析は、点群データが有する位置情報と色彩情報を用いておこない、車
道空間の属性分析として、道路面抽出、架線抽出手法などを提案し、歩道空間では、柱状構造物
と待状構造物の抽出、属性付与手法を提案している。提案した手法を車道空間、歩道空間の地物
へ適用した事例も示している。
第 6章では、属性付与した点群データの適用事例として、建設ライフサイクルの維持管理、設
計、施工の各段階での利用例を示している。維持管理段階では、属性付与した点群データの利用
例として、情報の付加・可視化・紐づけ、さらに、立面情報を抽出した事例を述べ、属性付与し
た点群データの有用性を示している。設計段階では、新水前寺交通結節点改善事業の歩道橋予備
設計、交差点改良協議への適用を試みている。属性付与した点群データを用いることで、協議・
検討での利用が可能となり、形状検討や景観検討への適用、施工性の確認や干渉確認といった利
用法が可能となることを示している。最後に、施工段階では、新水前寺交通結節点改善事業の旧
歩道橋撤去計画の事例に適用している。撤去計画に従い、点群データの歩道橋を分割lし、撤去部
それぞれに異なる属性を与えている。これにより、点群データを用いた撤去工程の確認が可能と
なることを示している。加えて、歩道橋撤去に伴う周辺環境の変化も把握でき、交通規制時の自
動車誘導に対する改善案にも寄与できたことも示している。
上記の維持管理、設計、施工の事例を通じ、道路空間の建設ライフサイクルでの点群データ利
活用の可能性を示している。
これらの成果は、工学的に高く評価でき、博士(工学)の学位を授与するに十分値するもの
と認められる。