12.酸化と還元

12.酸化と還元
酸化還元とは
もともとの意味は(狭い意味では)
金属の単体と酸化物の間の化学変化
酸化: 4 Fe + 3 O2  2 Fe2O3
(鉄が錆びる)
還元: 2 Fe2O3 + 3 C  4 Fe + 3 CO2
(錆びた鉄が元に戻る)
酸化:酸素原子と結合すること
還元:もとに戻る(酸素原子を失う)
酸素との反応だけでなく,もっと広く酸化還元を
定義したいがどうすればよいだろうか?
4 Fe + 3 O2  2 Fe2O3
反応の係数が単純な
の代わりに,
2 Cu + O2  2 CuO
を考えてみる。
Cuの価電子は,どう変化したか?
Oの価電子の数から逆に考えてみる.
O2のOは,
酸素原子と同じ電子配置と考えられるので
価電子は6個
CuOのCuを+2価のイオンとすれば,
Oは,−2価のイオンとなるので
価電子は8個
よって
2 Cu + O2  2 CuO
の反応では
Oは,Cuから電子を2個奪ったと考えられ,
逆に2個のCuは,それぞれOに電子を1個づつ合計2個与えたとも考えられる.
酸素との結合でなく,
電子の授受で考えると
酸化されるとは,電子を失うこと.
還元されるとは,電子を得ること.
授受に関与する電子の数そのものでなく
ある基準からの変化量を示す方が,分かり易い.
酸化数
単体中の原子の酸化数をゼロとする
例えば,Cu(金属)の酸化数はゼロ
O2のOの酸化数はゼロ
イオンの酸化数は,電荷に等しい
CuOのCuの酸化数は+2, Oの酸化数は−2
Cu + Cl2  CuCl2
0
0
H2S + I2  S + 2 HI
+2(Cu)
S
−1(Cl)
0
I
−2
0
−1
H
+1
+1
Oの酸化数は通常−2
H2O
H2O2
−2
−1
クレベリン
ハロゲンの酸化数は通常−1
HCl
Cl2O(一酸化二塩素)
ClO2(二酸化塩素)
−1
+1
+4
水素の酸化数は通常+1
H2O
NaH(水素化ナトリウム)
+1
−1
酸化剤と還元剤
酸化と還元は電子の授受であるので,必ず同時に起こる
酸化剤:他の物質を酸化する物質(自身は還元される)
還元剤:他の物質を還元する物質(自身は酸化される)
電子の授受の相手次第で,酸化剤になったり,還元剤になったりする
SO2は,酸化剤にも還元剤にもなる.
SO2 + 2 H2S  3 S + 2 H2O
酸化数
+4
0
SO2 + 2 H2O + I2  H2SO4 + 2 HI
酸化数
+4
酸化剤
+6
還元剤
Li
K
Ba
Ca
Na
Mg
Al
Zn
Cr
Fe
Co
Ni
Sn
Pb
H2
Cu
Hg
Ag
Pt
Au
イオン化傾向
H+の溶液あるいは
液体の水と容易に反応して
水素を発生
金属樹
Cu線
AgNO3水溶液
H+の溶液あるいは水蒸気と
反応して水素を発生
Cu > Ag
H+の溶液と反応して
水素を発生
H2 
2H+
+
Cu + 2 Ag+  Cu2+ + 2 Ag
2e−
Cu線の周りに樹状の
Agが析出する.(銀樹)
イオン化傾向の小さな金属が析出
H+の溶液と反応しない
Zn/SnCl2(スズ樹)
Fe/CuSO4(銅樹)
酸化反応と還元反応を別々の場所で行わせ,
その間を導線で結ぶと,
一定方向に電子が移動し電流となる.
電池の原理
電池: 自発的な酸化還元反応に伴う電子を電気エネルギーとして取り出す装置
約1.1Vの初期電圧が,0.4∼0.5Vに低下してくる
ボルタ電池
負極
正極
Zn
Cu
放電の初期は,Cu板に付いたCu2+が
酸化剤となるため,1.1Vになる。
ZnとH2のイオン化傾向に由来する
電位差0.8Vよりも低くなる。
2 H+ + 2 e−  H2
H2SO4 aq
Zn  Zn2+ + 2 e−
2 H+ + 2 e−  H2
正極は,Cuである必要はない
には活性化エネルギーが必要(水素過電圧)
Cu板に付いたH2が 2 H+ + 2 e−  H2
を妨げたり
負極の周りのZn2+の濃度が上がるため,
Znのイオン化が妨げられる.
充電
リチウムイオン電池
負極
正極
放電
Li+
LiClO4
黒鉛(グラファイト)
CoO2
ethylene carbonate
リチウムイオンが可逆的に挿入脱離している.
(インターカレーション反応)
LixC
放電
充電
における
Li+の移動方向
C + x Li+ + x e−
Li1-xCoO2 + x Li+ + x e−
LiCoO2
リチウム電池
負極 Li  Li+ + e−
電解質(ジメトキシエタン等の有機溶媒 + 価塩素酸リチウム)
正極 MnO2 + e− + Li+ MnO2(Li+)