2章 酸・塩基、酸化・還元 総まとめ

酸・塩基、酸化・還元 総まとめ
酸・塩基
ブレーステッド酸・塩基(H
ブレーステッド酸・塩基(H+)、ルイス酸塩基(非共有電子対)
1)ブレーステッド酸・塩基
強酸:
強酸: HCl(hydrogen chloride の水溶液をhydrochloric acidと
いう), HNO3(nitric acid) H2SO4 (sulfuric acid)
弱酸:
弱酸:CH3COOH(acetic acid), H2CO3(carbonic acid、水中で
のみ存在、単離不可), H2SO3 (sulfurous acid, 単離不可),
H2C2O4 (oxalic acid 蓚酸), サリチル酸(salicylic acid , pKa
2.97), C6H5COOH (benzoic acid安息香酸pKa 4.21)、C6H5OH
(phenol, 石炭酸、フェノールpKa 9.95)、H3PO4(phosphoric
acid, リン酸)・・強酸でも弱酸でもない。
強酸は電離度が大きい。弱酸は電離度が小さい。
。
酸素を含む酸をオキソ酸という。
強塩基(電離度大きい):KOH(potassium
hydroxide) ,
強塩基
NaOH(sodium hydroxide), Ba(OH)2(barium hydroxide),
Ca(OH)2(calcium hydroxide, 水酸化カルシウム、消石灰)
弱塩基(電離度小さい):NH
弱塩基
3(annmonia), Cu(OH)2, C6H5NH2(
アニリン,aniline)、C5H5N(ピリジンpyridine)
●Cu(OH)2, Fe(OH)3は水にほとんど溶けないが酸に溶ける:
Cu(OH)2 +2HCl →CuCl2 + 2H2O
●Al(OH)3, Cr(OH)3, Zn(OH)2 は水にほとんど溶けないが、
酸にも強塩基水溶液に溶ける。これらの水酸化物は酸に対
して塩基、塩基に対して酸として作用する(両性水酸化物)
Al(OH)3 + 3HCl → AlCl3 + 3H2O, Al(OH)3 + NaOH →
Na[Al(OH)4]
強
pKa
HI
−11
OH
phenol
石炭酸
−8
−10
HBr
−9
O C
OH
benzoic acid
安息香酸
HCl
−7
−2
−4
−6
H2SO4
−5
HO
C
O
H
O
salicylic acid
安息香酸
H2PO4−
7.2
HNO3
−1.3
HO
C
4
2
0
O
O
6
8
H3PO4
2.1
CH3CO2H
4.8
HSO4−
1.99
H2CO3
6.4
CH 3
H 3CO
HPO42−
12.3
10
O
O
NH 2
O
acetylsalicylic acid(aspirin) methyl salicylate
アセチルサリ チル酸
弱
14
HCO3−
10.3
C
C
12
サリ チル酸メチル
H
N
aniline
アニリ ン
pyridine
ピリ ジン
酸化物
1) 酸性酸化物(
酸性酸化物(非金属の酸化物):
非金属の酸化物): SO2, SO3, CO2, NO2, P4O10, SiO2
●水と反応して酸を作る(亜硫酸、硫酸、炭酸、硝酸、リン酸となる。SiO2
は水にほとんど溶けないが強塩基と反応して塩を作る
SiO2+2NaOH →Na2SiO3+H2O
●塩基と反応して塩を作る
●NO, COは非金属酸化物であるが水にほとんど溶けず、塩基とも反応
しないので酸性酸化物でない。
塩基性酸化物(
金属の酸化物):
2)塩基性酸化物
塩基性酸化物
(金属の酸化物
): K2O, Na2O, CaO, BaO, MgO
2)
●水と反応して塩基を作る。酸と反応して塩を作る。
●金属の酸化物でもCr, Mnの酸化物は酸化数によって次の酸化物を作
る
低い酸化数
CrO, MnO ・・・塩基性酸化物
中間の酸化数 Cr2O3, MnO2 ・・・両性酸化物
高い酸化数
CrO3, Mn2O7 ・・・酸性酸化物
3)両性酸化物
3)両性酸化物(
両性酸化物(両性元素Al, Zn, Sn, Pbの酸化物):Al2O3, ZnO, SnO, PbO
●酸及び塩基と反応して塩を作る。 塩基との塩の化学式は特殊なので
記憶する
Na[Al(OH)4], Na2[Zn(OH)4]
中和と塩 酸性物質+塩基性物質 → 塩 + 水
●酸性物質は、酸、酸性酸化物、両性酸化物、両性水酸化
物
●塩基性物質は、 塩基、塩基性酸化物、両性酸化物、両
性水酸化物、炭酸塩
1) HCl + NaOH → NaCl + H2O
2) 2HCl + CaO (塩基性酸化物)→ CaCl2 + H2O
3) 2HCl + ZnO (両性酸化物)→ ZnCl2 + H2O
4) 3HCl + Al(OH)3 (両性水酸化物)→ AlCl3 + 3H2O
5) CO2 (酸性酸化物) + Ca(OH)2 → CaCO3 + H2O
6) ZnO (両性酸化物) + 2NaOH + H2O → Na2[Zn(OH)4]
7) Al(OH)3 (両性水酸化物)+ NaOH → Na[Al(OH)4]
8) CO2 (酸性酸化物)+ CaO (塩基性酸化物)→ CaCO3
9) H2SO4 + 2NH3 → (NH4)2SO4
10) 2HCl + Na2CO3 (炭酸塩) → 2NaCl + CO2↑ + H2O
塩は中和反応の他、次の反応によっても生成される。
11) 2Na + Cl2 (金属+非金属)→ 2NaCl
12) 2Al + 2NaOH + 6H2O (金属+塩基)→ 2Na[Al(OH) 4] +
3H2↑
13) Fe + CuSO4 (金属+塩)→ FeSO4 + Cu
14) Cl2 + 2NaOH (非金属+塩基)→ NaCl + NaClO + H2O
15) Cl2 + 2KI (非金属+塩)→ 2KCl + I2
16) BaCl2 + H2SO4 (塩+酸)→ BaSO4 + 2HCl↑
17) FeCl3 + 3NaOH (塩+塩基)→ 3NaCl + Fe(OH)3 ↓
18) AgNO3 + NaCl (塩+塩)→ AgCl↓ + NaNO3
最終反応において↑
最終反応において↑、↓を入れないことが多いが、反応式を
考察するうえで極めて便利
塩の分類
正塩:H+やOH-が残っていない塩 NaCl, CuSO4, Ca(NO3) 2
酸性塩:H+が残っている塩 NaHCO3, NaHSO4, NaH2PO4
塩基性塩:OH-が残っている塩 Cu(OH)Cl, Mg(OH)Cl
● 正塩、酸性塩、塩基性塩は単にH
H+,OH-が残っているかい
ないかかの形式的な分類
(非常に紛らわしい分類なり)。塩の溶液の液性(酸性か塩基
性)とは無関係なり。
複塩:2種以上の塩が一定の割合で結合した塩で、水溶液中
で個々の成分イオンに電離
ミョウバン AlK(SO4) 2∙12H2OAl3+ + K+ + 2SO42- + 12 H2O
さらし粉 CaCl(ClO) ∙H2O Ca2++Cl- + ClO- + H2O
錯塩:金属イオンと分子、金属イオンと陰イオンが配位結合し
た錯イオンを含む塩
錯イオン・・・[Ag(NH3) 2]+, [Co(NH3) 6]6+, Cu(H2O) 4]2+,
[Ag(S2O3) 2]3-, [Fe(CN) 6]4-
塩の水溶液の液性
塩が水に溶け、生じたイオンが水と反応して弱酸または弱
塩基を生じる(加水分解)。その結果水溶液は中性、酸性、
塩基性を示す。
1) 強酸と強塩基の塩:成分イオンは完全に電離しており加
水分解をしない
正塩の水溶液は中性、酸性塩の水溶液は酸性
(NaHSO4)
2) 強酸と弱塩基の塩:加水分解し、正塩でも塩基正塩でも
酸性(NH4Cl、Mg(OH)Cl)
3) 弱酸と強塩基の塩:加水分解し、正塩でも酸性塩でも塩
基性(K2CO3, NaHCO3)
4) 弱酸と弱塩基の塩:加水分解するが、中性
塩の反応:
塩の反応
1) 塩と酸の反応
●弱酸の塩+強酸 → 強酸の塩+弱酸
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + CO2 + H2O
●揮発性酸の塩+不揮発性酸 → 不揮発性酸の塩 +
揮発性酸
NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl
●難溶性塩の析出がある場合
BaCl2 + H2SO4 → BaSO4 + 2HCl
2) 塩と塩基の反応
●弱塩基の塩+強塩基 → 強塩基の塩+弱塩基
2NH4Cl + Ca(OH) 2 → CaCl2 + 2NH3 + 2H2O
3)塩と塩の反応
●難溶性塩、複塩、錯塩(非常に安定、難溶のとき)が生じるときに反
応が進む
AgNO3 + NaCl → AgCl↓ + NaNO3
Al2(SO4) 3 + K2SO4 + 24H2O → 2[Al∙K(SO4)2∙12H2O]
FeSO4 + 6KCN → K4[Fe(CN)6] + K2SO4
フェロ
フェロシアン化カリウム
酸はH+を供与する分子(HA→A-+H+)、塩基はH+を受容す
る分子(B+H+→BH+)と定義された(1923年)。水中では、
H2Oが塩基または酸として働く。
溶液中 HA + B ⇌ A- + BH+
酸 HA + H2O ⇌ H3O+ + A-
[H 3O + ][A − ]
Ka ' =
[HA][H 2 O]
塩基
[HB+ ][OH − ]
Kb ' =
[B][H 2 O]
より ,
[H 3O + ][A − ]
K a = K a '[H 2 O] =
[HA]
pKa=-logKa
B + H2O ⇌ HB+ + OH-
より ,
[BH + ][OH − ]
K b = K b ' [ H 2 O] =
[B]
共役酸・塩基で
pKa + pKb = 14.0
である。
pKb=-logKb
水素イオン指数(hydrogen ion exponent)
pH = - log10[H+]
(1909年の提案)
[H+]は水素イオンのモル濃度(mol/dm3)
●25℃, 中性で [H+] = [OH-]=10-7 mol/dm3 pH = 7
酸性 pH <7, 塩基性 pH > 7
酸・塩基問題
A)中和の量的関係
a) 0.12 mol/lの希硫酸15.0 mlを0.25 mol/lの水酸化ナトリ
ウム水溶液で中和するには、何mlの水酸化ナトリウム水
溶液が必要か
b) 0.18 mol/lの希塩酸5.0 mlを中和するのに、濃度が未
知である水酸化バリウム水溶液を4.5 ml必要であった。水
酸化バリウム水溶液の濃度は
化学反応式
化学反応式をしっかりと覚えるために・・・多種多様な反応
式を見る
●化学反応式(化学式を用いて化学変化を書いた式
→
化学反応式
や=で反応系と生成系を結ぶ)、
、
●イオン反応式(水溶液での反応で、関与する分子、イオ
イオン反応式
ンのみを含む、→で結ぶ)
○化学反応式:同種元素は左辺と右辺で等しい。反応に無
関係な化合物を入れない。
○イオン反応式:水に溶けない物質、沈殿、気体、水、弱電
解質は化学式のまま。強電解質を陽イオン、陰イオンで書
く。左右の原子数は等しい。左右の総電荷数は等しい。
化学量論的係数は連立方程式(未定係数法)で得る(簡単
なものは目算で)
例 化学反応式
1)化合
1)化合 A + B →AB H2 + Cl2 → 2HCl, 4Na + O2 → 2Na2O
分解 AB →B + C 2KClO3 → 2KCl + 3O2↑ 2NaHCO3
2)分解
→ Na2CO3 + CO2↑+ H2O
3)置換
置換 A + BC → AC + B
Zn + H2SO4 (金属と酸の反応)→ ZnSO4 + H2↑
Zn+2NaOH+2H2O(金属と塩基の反応)→Na2[Zn(OH)4]+H2↑
Fe + CuSO4 (金属と塩の反応)→ FeSO4 + Cu
Cl2+2KI(非金属と塩の反応)→2KCl+I2(ヨウ素は
ヨウ素はleaving
group)
group)
4)複分解
4)複分解 AB + CD → AD + CB
H2SO4 + 2NaOH (酸と塩基)→ Na2SO4 + 2H2O
CaCO3 + 2HCl (酸と塩基)→ CaCl2 + CO2↑ + H2O (単純な
複分解+分解)
Fe(NO3)3 + 3NaOH (塩と塩基)→ Fe(OH)3 + 3NaNO3
AgNO3 + NaCl (塩と塩)→ AgCl + NaNO3
係数のつけ方を以下の反応で試すこと
MnO2 + 4HCl →MnCl2 + Cl2 + 2H2O,
2C2H6 + 7O2 → 4CO2 + 6H2O,
4FeS2 + 11O2 → 2Fe2O3 + 8SO2
イオン反応式 (酸化還元反応での量的関係の考察に便利)
Ag+ + Cl- → AgCl, Ba2+ + SO42- → BaSO4
(化学反応式は BaCl2 + H2SO4 → BaSO4 + 2HCl)
MnO4- + 8H+ + 5Fe2+ → Mn2+ + 5Fe3+ + 4H2O
(化学反応式は2KMnO4 + 8H2SO4 + 10FeSO4 → K2SO4 +
2MnSO4 + 5Fe2(SO4)3 + 8H2O)
主な酸化・還元反応式(良く見ておくと便利)
1) 2KMnO4 + 8H2SO4 + 10FeSO4 →K2SO4 + 2MnSO4 + 5Fe2(SO4)3 +
8H2O
2) 2KMnO4 + 3H2SO4 + 5H2O2 →K2SO4 + 2MnSO4 + 8H2O + 5O2↑
3) 2KMnO4 + 3H2SO4 + 5H2C2O4 →K2SO4 + 2MnSO4 + 8H2O + 10CO2↑
4) 2KMnO4 + 5SO2 + 2H2O →K2SO4 + 2MnSO4 + 2H2SO4
5) K2Cr2O7 + 7H2SO4 + 6FeSO4 →K2SO4 + Cr2(SO4)3 + 3Fe2(SO4)3 +
7H2O
6) K2Cr2O7 + 4H2SO4 + 3H2C2O4 →K2SO4 + Cr2(SO4)3 + 7H2O + 6CO2↑
7) 2HgCl2 + SnCl2 → Hg2Cl2 + SnCl4
8) Hg2Cl2 + SnCl2 → 2Hg + SnCl4
9) I2 + 2Na2S2O3 →2NaI + Na2S4O6
10) SO2 + 2H2S →3S↓ + 2H2O
11) Cl2 + SO2 + 2H2O →H2SO4 + 2HCl
ルイスの酸ルイスの酸-塩基
●ブレンシュテッドの酸・塩基の提案と同じ1923年に、八偶説(オク
テット則)を提唱したルイスが提案
●酸は共有結合を形成するため他の物質から一対の電子対を奪い
(電子対受容体、ルイス酸)、塩基(電子対供与体、ルイス塩基)は電
子対を与え、ともに希ガス型電子配置をとる。
電子式
例 K, L殻電子の元素 s軌道、p軌道を考えず、元素記号の周囲に
8電子までを記す。一個の丸は不対電子を示し、2個揃うと電子対を
形成したとする(孤立電子対、非共有電子対、N, O, F原子の赤丸2
個で示す)。一方、B原子には青四角で示す電子対のない軌道(空軌
道)がある。
H
Li
He
Be
B
C
N
O
F
Ne
【例1】H2Oの非共有電子対にH+の空軌道が配位し(配位結合)、キドロ
ニウムイオンH3O+を形成。 (H2Oはルイス塩基、H+はルイス酸)
H
O
2H
HO H
O
2R x
Rx O xR
R'
R'
H
HO H
【例2】NH3の非共有電子対にH+の空軌道が配位し、アンモニウムイ
オンNH4+を形成。 (NH3はルイス塩基、H+はルイス酸)
N
3H
H N H
H
H
H
H N H
H
【例3】BF3 + :NR3 ⇌ F3B:NR3 を八偶説に沿って図示
価電子、B3個、F7個、N5個、 R1個、
:正常共有原子価結合、
:配位共有原子価結合
●オクテット則を満たさない第13族元素(B, Al)の共有結合化合
物は、空の軌道(空軌道, vacant orbital, 非占有軌道
unoccupied orbital)を持つので強いルイス酸で、配位結合により
錯体を形成する。
●遷移金属元素の多くは共有結合に利用される価電子の他に
空のd軌道などを持ち(空軌道)ルイス酸となり、多くの種類の金
属 錯 体 が 配 位 結 合 に よ り 形 成 さ れ る 。
電気陰性度:電子をひきつける相対的強さを示す
電気陰性度
表はポーリングの値(他の電気陰性度の定義もある)。黄色部分は陽性元素(金属元素)
赤色部分は半金属。イオン結合:電気陰性度の差が1.7以上。共有結合:電気陰性度の
差=0で100%共有結合であり、電気陰性度の差が大きくなるとイオン結合性が増す
原子価 (原子量/当量): ある原子が何個の他の原子と結
合するかを表す数
族
1 2 13 14 15 16 17
常原子価
+1 +2 +3 +4 -3 -2 -1
逆原子価
-4 +5 +6 +7
主な原子の原子価
H(1),
H(1), Br(1), O(2), N(3), Si(4), P(5), Cl(1, 3, 5, 7), C(2,4), S(2,4,6)
主なイオンの原子価
●陽イオン +1: H, Li, Na, K, Ag, NH4,
+1 & +2: Hg, Cu,
+2: Mg, Ca, Ba, Zn, Pb, Fe(+2,+3), Sn(+2,+4), +3: Al
●陰イオン -1 : F, Cl, Br, I, OH, NO3, CN, CH3COO, MnO4, ClO, ClO2,
ClO3, ClO4, HCO3, HSO4, H2PO4
-2: O, S, SO4, SO3, SiO3, S2O3, C2O4, CO3, CrO4, Cr2O7, ZnO2
-3: PO4, Fe(III)(CN)6 フェリシアン, BO3
-4: Fe(II)(CN)6 フェロシアン
フェリシアン化カリウム(potassium
ferricyanide)は、ヘキサシアニド
ヘキサシアニド
フェリシアン化カリウム
鉄(III)酸
酸カリウム、錯塩の1種である。赤色の結晶または粉末であるこ
カリウム
とから赤
赤血塩とも呼ばれる。組成式は
K3[Fe(CN)6]。水に良く溶け、水
血塩
溶液は黄緑色の蛍光をいくぶん示す。フェロシアン化カリウムの溶液
に塩素ガスを通じると得られる。[Fe(CN)6]3−(フェリシアン化物イオン)
は、水溶液中で電離しても配位子のCN−が安定している(解離定数 K
は10−44)ため、無機シアン化物のような毒性は示さない。
ただし、光によって配位子の一部が解離し、微量のシアン化物イオン
を生じさせる。これは配位中心の鉄(III)イオンが光(主に紫外線)により
鉄(II)イオンへ還元されることによる。
無機化学では鉄イオンの検出などに用いる。2価の鉄イオンを含む溶
液に加えると濃青色沈殿(ターンブルブルー)を生じ、3価の鉄イオンの
溶液に加えると溶液が褐色になる。有機化学では穏やかな酸化剤とし
て使われる。生理学の実験では酸化還元電位を増加させる目的にし
ばしば使われる
光に影響される性質を活用し、写真の作成に古来
より利用されてきた。また、酸化剤としての性質は
鉄や銅による調色の際に使われる。
フェロシアン化カリウム
フェロシアン化カリウムは、ヘキサシアニド鉄
ヘキサシアニド鉄(II)
カリウム 黄血塩
カリウム
ヘキサシアニド鉄(II)酸
(II)酸カリウム、黄血塩
(おうけつえん)とも呼ばれる、錯塩の1種。組成式は、K4[Fe(CN)6]。
通常は三水和物(K4[Fe(CN)6]・3H2O)の形で存在し、黄色の結晶また
は粉末である。水に可溶で、水溶液は淡黄色を示す。シアン化ナトリ
ウムに硫酸鉄(II)と塩化カリウムを加えると得られる。 フェロシアン化
カリウムはフェリシアン化カリウムよりも安定。熱希硫酸によって分解
し、シアン化水素を発生する。
なお、18世紀には動物の血液や内臓のような窒素を含んだ有機物に、
鉄と炭酸カリウムを加え、これを強熱することによって作ったために、
「黄血塩」という別名が付いている
[Fe(CN)6]4-と過剰のFe3+から濃青色沈殿(プルシアンブルー 顔料
の紺青)が得られる。フェロ、フェリシアン化カリウム、ターンブルブ
ルー、プルシアンブルーは共にヘキサシアノ鉄酸塩
紺青(プルシアンブルー):製法などにより、アイロンブルー
アイロンブルー (iron blue)、プルシアンブ
プルシアンブ
ルー (Prussian blue)、ベルリンブルー
ベルリンブルー (Berlin blue)、ターンブルブルー
ターンブルブルー (Turnbull‘s
blue)、ミロリーブルー
ミロリーブルー (Milori blue)、チャイニーズブルー
チャイニーズブルー (Chinese blue)、パリブルー
パリブルー
(paris blue)、など数々の異名がある。日本では、ベルリン藍がなまってベロ藍
ベロ藍と呼ば
ベロ藍
れた。
1704年にベルリンにおいて顔料の製造を行っていたハインリッヒ・ディースバッハに
よって偶然発見されたとされている。当時は安価な青色顔料「アズライト」はイタリア・
ヴェネツィアを通して輸入されていたため、イタリアより北のドイツなどの国では他に青
色顔料が存在しなかったため、それ以前に使われていた高価なアフガニスタン産のラ
ピスラズリ製顔料「ウルトラマリン」(フェルメールやレンブラントの時代までは主要な顔
料だった)をすぐに駆逐し、陶磁器に彩色するためにも広く使用されるようになった。そ
の後、彼の弟子によってパリでも製造されるようになったが、製造方法は秘密とされて
いた。
1726年にイギリスのジョン・ウッドワードがこの顔料が草木の灰とウシの血液から製
造できることを発表し、製造方法が広く知られるようになった。
日本では平賀源内が『物類品隲』(1763年)に紹介した。伊藤若冲が『動植綵絵』の
「群漁図(鯛)」(1765年から1766年頃)のルリハタを描くのに用いたのが確認されてい
る最初の使用例である。その後、1826年頃から清国商人がイギリスから輸入した余剰
を日本へ向けて大量に輸出・転売したために急速に広まった。なお、葛飾北斎が1831
年に描いた「富嶽三十六景」において紺青を用いて描いた濃青が評判になって全国に
広まったとする俗説が存在するが、実際には大量輸入による値段下落をきっかけに
流行となった紺青の絵具を北斎も利用したのが実情であると見られている。
理想的な組成式は Fe4[Fe(CN)6]3 であり、この点において製法による違いはあっても全て同じ
化合物であることが確認されている。ヘキサシアニド鉄(II)酸鉄(III)、フェロシアン化鉄(III)、フェ
ロシアン化第二鉄とも呼ばれる。式量859.25。
しかし、実際には結晶水を含んでいたり一部の鉄イオンが置換されていたりすることが多く、
一定の組成のものを得ることは困難である。そのためヘキサシアニド鉄(II)酸塩と鉄(III)塩から
得られたものはプルシアンブルーあるいはベルリンブルー、ヘキサシアニド鉄(III)酸塩と鉄(II)
塩から得られたものはターンブルブルーというように別の物質と考えられていた。
鉄イオン呈色指示薬や細胞の染色法、青写真の原理である。
フェルメールの絵に見られる鮮やかな青は、「フェルメール・ブルー
フェルメール・ブルー」とも呼ばれる。この青は、
フェルメール・ブルー
天然ではラピスラズリ(当時純金と同じほど高価だった)に含まれるウルトラマリンという顔料
に由来している。
フェルメール
伊藤若冲
魚群図(鯛)
魚群図(蛸)
群魚図(鯛):画左下のルリハタの体とヒレには、日本で現在確認されている中で始めて
紺青が使用されている
甲州石班沢(1831〜
〜35年/
年/『
甲州石班沢(
年/『冨嶽三十六景』
冨嶽三十六景』よ
り) 葛飾北斎 70歳〜74歳ごろ、藍摺絵(藍色の
濃淡のみで仕上げた画)の傑作。『冨嶽三十六
景』のひとつ。ベロ藍(プルシャンブルー)とよば
れる色がなんとも美しい。当時、海外の芸術家
たちを驚愕させたこの色使いは、“
“Hokusai and
Blue Revolution(青の革命)”
(青の革命)”とも呼ばれている
(青の革命)”
そうで。ちなみにこれ構図も面白くて、岩と猟師
の持っている網で富士山と同じ三角形を描いて
います。
北斎の代表作として知られ「凱風快晴」(通
称:赤富士)や「神奈川沖浪裏」が特に有名。
「神奈川沖浪裏」は、それを見たゴッホが画家
仲間宛ての手紙の中で賞賛したり、そこから
発想を得たドビュッシーが交響詩『海』を作曲
したりと、その後の西欧の芸術家に多大な影
響を与えることとなった。波頭が崩れるさまは
常人が見る限り抽象表現としかとれないが、
ハイスピードカメラなどで撮影された波と比較
すると、それが写実的に優れた静止画である
ことが確かめられる。
プルシアンブルー:理想的な組成式は Fe4[Fe(CN)6]3実際には結晶水を含んでいたり一部の
鉄イオンが置換されていたりすることが多く、一定の組成のものを得ることは困難である
酸化数
規則
①単体の酸化数はゼロ
例、例外
H2 (Hは0), O2やO3(Oは0), N2(Nは0),
He(Heは0)
②単一原子イオンの酸化数:価 Na+, Cl−, Ca2+, Fe2+, Fe3+の酸化数は
+1, −1, +2, +2, +3
数を酸化数とする
③Fの酸化数は常に−1
元素Fの電気陰性度は一番大きい
④Hの酸化数を原則的に+1、O 例外 H(−1), O(−1,−1/2,+1,+2)
H:金属とのイオン性化合物(ヒドリド
を−2とする
)で−1 LiH, NaH,CaH2
O:ペルオキソ結合(過酸化物)に含
例外
まれると−1 (H-O-O-H, BaO2, Na2O2),
H −1
超酸化物イオンO2−(KO2, NaO2)で
O −2以外に、−1(過酸化物
Na2O2), −1/2(NaO2), +2/3(O3F2), −1/2, O2F2やOF2ではFが−1である
+1(O2F2), +2(OF2)
からOは+1, +2
⑤中性化合物の原子の酸化数 NH3 (Nは−3), CO2(Cは+4), CO(Cは
+2),CH4(Cは−4), CH3COOH(Cは0)
総和はゼロ
●フッ素以外のハロゲン元素については酸素の酸化数を−2として、I,
III, (IV,) V, VII (例 Cl2O[+1], Cl2O3[+3], Cl02[+4], Cl2O6[+5と+7],
Cl2O7[+7])のいずれかをとり、種々の酸化物とオキソ酸を形成する。
●窒素酸化物:一酸化窒素 (NO)、二酸化窒素 (NO2)、亜酸化窒素
(一酸化二窒素 笑気)(N2O)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素
(N2O4)、五酸化二窒素 (N2O5) など。化学式の NOx から「ノックス
ノックス」とも
ノックス
いう。
●NO: 1980年代頃から、その生体内での生理機能について研究が
進み、血管拡張作用を持つことなどが明らかにされたほか、この一
酸化窒素が神経伝達物質としても作用することが判明した。なお、
1998年のノーベル医学生理学賞は、この一酸化窒素の生理作用の
発見に対して贈られている。現在でも、その多様な生理機能につい
て研究が続いている。
●NO、NO2を吸入するとメトヘモグロビンが生成する。メトヘモグロビ
ンは、通常のヘモグロビンに配位されている二価(フェロ)の鉄イオン
が三価(フェリ)になっているもので、酸素を運ぶことができない。
●一酸化二窒素(N2O 笑気)は麻酔作用を持つため、吸入麻酔剤と
して医療現場で使用された
酸化剤・還元剤
酸化剤:相手を酸化し、自分は還元される(電子を奪う物質
酸化剤
、ルイス酸、酸素を与える物質、水素を引き抜く物質、親電
子的試薬)
還元剤:相手を還元し、自分は酸化される(電子を与える物
還元剤
質、ルイス塩基、酸素を引き抜く物質、水素を与える物質、
電子供与的試薬)
酸化と還元は同時に起こる
酸化剤
+
還元剤
還元された
酸化剤
+
酸化され
た還元剤
2)酸化剤と還元剤
酸化剤O2, O3, Cl2, Br2, HNO3(希、濃), H2SO4(熱濃), KMnO4, K2Cr2O7,
KClO3, MnO2, H2O2
還元剤 H2(高温), C(高温), CO(高温), SO2, H2S, H2C2O4, FeSO4, SnCl2,
Na2SO3, Na2S2O3,金属
酸化剤・還元剤のいずれにもなる物質
1)SO2
○SO2より強い還元剤のH2Sとの反応では酸化剤となり、Sを生成
SO2 + 2H2S→2H2O + 3S
○Cl2, Br2などの酸化剤との反応では還元剤
SO2 + Cl2 + 2H2O → 2HCl + H2SO4
2) H2O2
○H2O2より強い酸化剤のKMnO4との反応では還元剤(H2O2→O2 + 2H+
+ 2e−)となり
2KMnO4 + 3H2SO4 + 5H2O2 → K2SO4 + 2MnSO4 + 8H2O + 5O2
○SO2, H2Sなどの還元剤との反応では酸化剤(H2O2+2H++2e−→2H2O)
H2O2 + H2S →2H2O + S
イオン化傾向
金属は電子を放出して陽イオンになる。陽イオンになるなり
易さは金属によって異なる(下は水溶液中での傾向)。
K, Ca, Na, Mg, Al, Zn, Fe, Ni, Sn, Pb, (H2), Cu, Hg, Ag, Pt, Au
負の標準電極電位
陽イオンに成り易い
M0は強い還元剤
(自分は酸化される)
低い還元電位
:電池の負極
境
界
正の標準電極電位
中性に成り易い
M+は強い酸化剤
(自分は還元される)
高い還元電位
:電池の正極
金属のイオン化傾向:
金属のイオン化傾向:イオン化傾向は水溶液中における水和イオンと単体金属と
の間の標準酸化還元電位の順であらわされる。このとき水和金属イオンは無限希
釈状態である仮想的な1 mol/kgの理想溶液状態を基準とし、その標準酸化還元
電位と水和金属イオンの標準生成ギブス自由エネルギー変化とは以下の関係が
ある。
ここでFはファラデー定数、 zはイオンの電荷である。
金属のイオン化傾向を大きいものから順に配列すると以下のとおりになる(個別に
脚注のない金属の電位は『化学便覧 基礎編 改訂4版』]による)。ただし( )内は
ギブス自由エネルギー変化からの計算値。 タンタルおよびアンチモンなどはイオ
ン半径が小さく電荷が大きいため、水和イオンは非常に加水分解しやすく、強酸性
においても安定に存在し得ないため酸化物との電位で代用している。白金および
金などの水和イオンも非常に加水分解しやすく、特に金については単純な水和イ
オンは存在しないとされているため、正確な値とはいえない。
リチウム (Li),
セシウム (Cs),
ルビジウム (Rb),
カリウム (K),
バリウム (Ba),
ストロンチウム (Sr),
カルシウム (Ca),
ナトリウム (Na),
マグネシウム (Mg),
トリウム (Th),
ベリリウム (Be),
アルミニウム (Al),
チタン (Ti),
ジルコニウム (Zr),
マンガン (Mn),
タンタル (Ta),
亜鉛 (Zn),
クロム (Cr),
鉄 (Fe),
カドミウム (Cd),
コバルト (Co),
ニッケル (Ni),
スズ (Sn),
鉛 (Pb),
(水素 (H2)),
アンチモン (Sb),
ビスマス (Bi),
銅 (Cu),
水銀 (Hg),
銀 (Ag),
パラジウム (Pd),
イリジウム (Ir),
白金 (Pt),
金 (Au),
Li+(aq) + eLi(s),
+
Cs (aq) + e
Cs(s),
Rb+(aq) + eRb(s),
+
K (aq) + e
K(s),
2+
Ba (aq) + 2 e
Ba(s),
Sr2+(aq) + 2 eSr(s),
2+
Ca (aq) + 2 e
Ca(s),
Na+(aq) + eNa(s),
Mg2+(aq) + 2 eMg(s),
4+
Th + 4 e
Th,
Be3+ + 3 eBe,
3+
Al (aq) + 3 e
Al(s),
Ti4+ + 4 eTi,
4+
Zr + 4 e
Zr,
2+
Mn (aq) + 2 e
Mn(s),
+
Ta2O5(s) + 10 H (aq) + 10 eZn2+(aq) + 2 eZn(s),
Cr3+(aq) + 3 eCr(s),
Fe2+(aq) + 2 eFe(s),
Cd2+(aq) + 2 eCd(s),
Co2+(aq) + 2 eCo(s),
2+
Ni (aq) + 2 e
Ni(s),
Sn2+(aq) + 2 eSn(s),
2+
Pb (aq) + 2 e
Pb(s),
2 H+(aq) + 2 eH2(g),
Sb2O3(s) + 6 H+(aq) + 6 eBi3+(aq) + 3 eBi(s),
2+
Cu (aq) + 2 e
Cu(s),
Hg22+(aq) + 2 e2 Hg(l),
+
Ag (aq) e
Ag(s),
2+
Pd (aq) + 2 e
Pd(s),
Ir3+(aq) + 3 eIr(s),
Pt2+(aq) + 2 ePt(s),
Au3+(aq) + 3 eAu(s),
2 Ta(s) + 5 H2O,
2 Sb(s) + 3 H2O,
E°= -3.045 V
E°= -2.923 V (-3.027 V)
E°= -2.924 V (-2.943 V)
E°= -2.925 V (-2.936 V)
E°= -2.92 V
E°= -2.89 V
E°= -2.84 V
E°= -2.714 V
E°= -2.356 V
E°= -1.90 V[3]
E°= -1.85 V[3]
E°= -1.676 V
E°= -1.63 V[3]
E°= -1.534 V[3]
E°= -1.18 V
E°= -0.81 V
E°= -0.7626 V
E°= -0.74 V
E°= -0.44 V
E°= -0.4025 V
E°= -0.277 V
E°= -0.257 V
E°= -0.1375 V
E°= -0.1263 V
E°= 0 V
E°= 0.1504 V
E°= 0.3172 V
E°= 0.340 V
E°= 0.7960 V
E°= 0.7991 V
E°= 0.915 V
E°= 1.156 V
E°= 1.188 V
E°= 1.52 V
不動態(不働態
不動態 不働態とも)
不働態
●金属表面に腐食作用に抵抗する酸化被膜が生じた状態
のこと。
●この被膜は溶液や酸にさらされても溶け去ることが無い
ため、内部の金属を腐食から保護するために用いられる。
●酸化 力のある 酸に さら され た場 合や、陽 極酸化処理
(anodite)によって生じる。
●不動態の典型的な被膜の厚みは、例えばステンレスに生
じる不動態の場合、数nmである。すべての金属が不動態と
なるわけではない。不動態になりやすいのは、アルミニウム、
クロム、チタンなどやその合金である。
陽極(anode:酸化作用)に接近するイオン・・陰イオン(anion)
陰 極 (cathode: 還 元 作 用 ) に 接 近 す る イ オ ン ・ ・ 陽 イ オ ン
(cation)
Ti Cr
K, Ca, Na, Mg, Al, Zn, Fe, Ni, Sn, Pb, (H2), Cu, Hg, Ag, Pt, Au
銅 銅は水とは反応しないものの、空気中の酸素とは徐々に
反応して黒褐色をした酸化銅の被膜を形成する。生じた錆に
よって全体が酸化されてしまう鉄とは対照的に、銅の表面に
形成される酸化被膜はさらなる酸化の進行を防止する。湿っ
た条件下では二酸化炭素の作用により緑青(水酸化炭酸銅)
を生じ、この緑色の層は、自由の女神像や高徳院の阿弥陀
如来像などのような古い銅の建造物などにおいてしばしば見
られる。
●銅はイオン化傾向が小さいため塩酸や希硫酸といった酸と
は反応しないが、硝酸や熱濃硫酸のような酸化力の強い酸と
は反応する。
希硝酸との反応
3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO↑
濃硝酸との反応
Cu + 4HNO3 → Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2↑
熱濃硫酸との反応Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + 2H2O + SO2
酸化・還元滴定
酸化還元反応の量的関係
グラム当量
【例1】
KMNO4の硫酸酸性溶液で、Mn(+7) → Mn(+2)に変化する
2KMnO4 + 3H2SO4 → K2SO4 + 2MnSO4 + 3H2O + 5(O)
酸化数の変化は5であり、KMnO41モルは5グラム当量に相
当する。
KMnO4 = 158なので,1当量は158/5=31.6 つまり1g当量は
KMnO4 31.6g
●酸化還元での1モルの物質が何電子のやり取りを行っ
ているかで何グラム当量が決まる。
代表的酸化剤の反応
電子を受け取る反応(イオン式)
1mol
酸化剤
酸素を与える反応
O3 → O2 + (O)
O3 + 2H+ + 2e− → O2 + H2O
2グラム当量
オゾン
H2O2 + 2H+ +2e−→2H2O
2グラム当量
過酸化水素 H2O2 →H2O + (O)
Cl2 + H2O → 2HCl + (O)
Cl2 + 2e− → 2Cl−
2グラム当量
塩素
2HNO3 → H2O + 2NO + 3(O) HNO3 + 3H+ + 3e− → 2H2O + NO 3グラム当量
希硝酸
2HNO3→H2O + 2NO2 + (O) HNO3 + H+ + e− → H2O + NO2
濃硝酸
1グラム当量
+
−
H2SO4 → H2O + SO2 + (O) H2SO4 + 2H + 2e → 2H2O + SO2 2グラム当量
熱濃硫酸
過マンガン酸カリウム2KMnO4 + 3H2SO4 → K2SO4 + MnO4− + 8H+ + 5e− → 5グラム当量
(in H2SO4)
2MnSO4 + 3H2O+ 5(O)
Mn2+ + 4H2O
MnO4− + 2H2O + 3e− 3グラム当量
過マンガン酸カリウム
→MnO2 + 4OH−
(中性、アルカリ)
K2Cr2O7 + 4H2SO4 → K2SO4 + Cr2O72− + 14H+ + 6e− 6グラム当量
二クロム酸カリウム
Cr2(SO4)3 + 4H2O + 3(O)
→2Cr3+ + 7H2O
○酸素を与える(受け取る)反応で1モルの酸化剤(還元剤)が1個の(O)を与える(奪う)と1
モルは2グラム当量 (酸素2−なので)
○1個の電子を受け入れる(放出する)と1モルの酸化剤(還元剤)は1グラム当量(電子数
と1:1に対応)
○1個の関係元素の価数がn価減少(酸化剤)すると、nグラム当量
代表的還元剤の反応
還元剤
酸 素 を受け取 る 反
応
水素(高温) H2 + (O) → H2O
二酸化硫黄 SO2 + H2O + (O)
→H2SO4
H2S + (O) →H2O +
硫化水素
S
H2C2O4 + (O) →
蓚酸
2CO2 + H2O
硫酸鉄(II) 2FeSO4 + H2SO4
+ (O) → Fe2(SO4)3
+ H2O
塩 化 ス ズ SnCl2 + 2HCl +
(O) → SnCl4 +
(II)
H2O
ナトリウム 2Na + (O) →
Na2O
電子を与える反応
(イオン式)
H2 → 2H+ + 2e−
SO2 + 2H2O →
SO42− + 4H+ +2e−
H2S → 2H+ + S +
2e−
H2C2O4 → 2H+ +
2CO2 + 2e−
Fe2+ → Fe3+ + e−
1mol
2 グラム当量
2 グラム当量
2 グラム当量
2 グラム当量
1 グラム当量
Sn2+ → Sn4+ + 2 グラム当量
2e−
Na → Na+ + e−
1 グラム当量
●酸化剤(還元剤)の1規定液(1N)・・・酸化剤(還元剤)の
1グラム当量/l
●当量点で
酸化剤のグラム当量数=還元剤グラム当量数
●中和滴定と同様に、N規定の酸化剤水溶液VmlとN’規
ே×௏
ேᇱ×௏ᇱ
=
定の還元剤水溶液V’mlの当量点では
ଵ଴଴଴
ଵ଴଴଴
化学式 の名称(2
の名称(2)
原子価が2つ以上ある金属の化合物
●金属元素の後ろに原子価をローマ数字で( )内にいれる
●金属元素名の前に第一、第二と原子価の小さいほうからつける
FeSO4:硫酸鉄(II), 硫酸第一鉄、 Fe2(SO4)3:硫酸鉄(III)、硫酸第二鉄
例
Cu +1, +2
Cu2O 酸化銅(I), CuSO4 硫酸銅(II)
Hg +1, +2
Hg2Cl2(塩化第一水銀) HgCl2(塩化第二水銀)
Fe +2, +3
FeSO4, FeCl3(塩化第二鉄)
Sn +2, +4
SnCl2(塩化第一スズ) , SnCl4(塩化第二スズ)
Mn +2, +4, +7
MnCl2(塩化マンガン(II) ), MnO2 (二酸化マンガン、
酸化マンガン(IV)) , KMnO4(過マンガン酸カリ)
Cr +3, +6
CrCl3(塩化クロム(III)), K2CrO4(クロム酸カリウム),
K2Cr2O7(重クロム酸カリウム)
S −2, +4, +6
H2S(硫化水素), SO2(二酸化硫黄、亜硫酸ガス),
H2SO4(硫酸)
Cl -1,+1,+3,+4,+5,+7NaCl, NaClO2(亜塩素酸ナトリウム), KClO3(塩素酸
カリウム), Cl2O7(七酸化二塩素)
Cl
O
H
次亜塩素酸
二酸化塩素
HClO
O
O
Cl
OH
亜塩素酸
HClO2
O
Cl
OH
塩素酸
HClO3
七酸化二塩素
O
Cl
Cl2O7
O
O
O
O
OH
過塩素酸
HClO4
Cl
O
ClO2
O
Cl
O
O
Cl
O
O
O
●次亜塩素酸ナトリウムNaClO(次亜塩素酸ソーダとも呼ばれる。強アルカリ性で
ある。希釈された水溶液はアンチホルミンとも呼ばれる)
2NaOH + Cl2 → NaCl + NaClO + H2O
特異な臭気(いわゆるプールの臭いや漂白剤の臭いと言われる臭い)を有し、酸化
作用、漂白作用、殺菌作用がある。
●家庭用の製品の「混ぜるな危険」などの注意書きにもあるように、漂白剤や殺菌
剤といった次亜塩素酸ナトリウム水溶液を塩酸などの強酸性物質(トイレ用の洗剤
など)と混合すると、黄緑色の有毒な塩素ガスが発生する。浴室で洗剤をまぜたこ
とによる死者も出ているので取り扱いには注意が必要である。
NaClO + 2HCl → NaCl + H2O + Cl2
化学式 の名称(3)
の名称( ) 慣用名 例
化学式
化学名
Hg2Cl2
塩化水銀(II), 塩化第一水銀
HgCl2
塩化水銀(III)、塩化第二水銀
CaO
酸化カルシウム
Ca(OH)2
水酸化カルシウム
NaOH
水酸化ナトリウム
KOH
水酸化カリウム
(NH4)SO4
硫酸アンモニウム
NaCl
塩化ナトリウム
NaHCO3
炭酸水素ナトリウム
KNO3
硝酸カリウム
NaNO3
硝酸ナトリウム
Al2O3
酸化アルミニウム
CaC2
炭化カルシウム
SO3
三酸化硫黄
SO2
二酸化硫黄
CO2
二酸化炭素
Na2SO4
硫酸ナトリウム
K4[Fe(CN)6]
ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム
K3[Fe(CN)6]
ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム
CaCl(ClO)・H2O 次亜塩素酸カルシウム
または
Ca(ClO)2
慣用名
甘こう、カロメル
昇コウ
生石灰
消石灰
カセイソーダ
カセイカリ
硫安
食塩、岩塩
重曹
硝石
チリ硝石
アルミナ
カーバイド
無水硫酸
亜硫酸ガス
炭酸ガス
芒硝、グローバー塩
フェロシン化カリウム、黄血縁
フェリシン化カリウム、赤血塩
さらし粉
ヨウ素(I
ヨウ素 2, I, iodine)黒紫色固体、高い昇華性、毒物、でんぷんの検出:
ヨウ素でんぷん反応、
○消毒薬:ヨウ素のアルコール溶液がヨドチンキ、ヨウ素とヨウ化カリウ
ムのグリセリン溶液がルゴール液
●放射能汚染が起きた場合、放射性でないヨウ素の大量摂取により、
あらかじめ甲状腺をヨウ素で飽和させる防護策が必要である。
酸化銅(II)
酸化銅(II):
(II):黒色の粉末。天然では黒銅鉱として産出する。釉薬の着
色剤として利用される。陶磁器に酸化銅(II)を添加した釉薬をかけて
焼成すると、酸化焼成では青色-緑色に、還元焼成では赤色に発色
する。還元焼成で現れる赤色はかつては釉薬中の酸化銅(II)が金属
銅に還元されて発色したものと考えられたが、今日では酸化銅(II)が
酸化銅(I)に還元されて赤く発色すると考えられている。
酸化銅(I)Cu
酸化銅
2O
酸化銅(II)CuO
酸化銅
硝酸銀(I)
硝酸銀(I):
(I) 強電解質であり水によく溶けるが、非極性溶媒には溶けにくい。
手につくと還元されて銀の微粒子が沈着し黒色に染まりしばらく取れない。
また酸化作用による腐食性を有する。銀鏡反応
銀鏡反応の試薬としてめっきに用いら
銀鏡反応
れることがある。
硝酸銀(I)は液体アンモニア(液安
液安)またはアンモニア水と反応して徐々に雷
雷
液安
銀(Ag3N と AgNH2 の混合物)と呼ばれる黒色の結晶を生成することがある。
これは非常に敏感な化合物であり、水溶液中でも少しの摩擦・熱でも爆発す
る。またナトリウムイオンの存在下でこの化合物の生成が促進されるので、
これらの化合物を誤って作った場合、硝酸銀(I)とアンモニアを混合した廃液、
銀鏡反応を行ったあとの廃液は食塩水または塩酸で分解してから処分する
必要がある。
銀鏡反応(ぎんきょうはんのう、英:silver
mirror reaction)は、アンモニ
銀鏡反応
ア性硝酸銀水溶液)によってアルデヒド基をもつ化合物が酸化されてカ
ルボン酸(※厳密にはカルボン酸アンモニウム)となり、還元された銀が
析出する化学反応である。19世紀前半に発見された。
実験室ではアルデヒド基の有無判定に使われ、工業的にも銀めっきの手法として利
用されている。この銀鏡反応による鏡作りは、化学反応によって直ちに実用品を作
ることができる数少ない貴重な例といえる。銀鏡反応は高等学校の教科書でも取り
上げられる程度に有名な実験であるが、硝酸銀とアンモニアが反応して爆発性の
雷銀を生じる場合があり、爆発による事故も起こっている。
硫酸ナトリウム:
硫酸ナトリウム:飽和水溶液から常温で結晶すると10水和物が得られ
る。普通この状態で存在することが多い。10水和物は俗に芒硝
芒硝あるい
芒硝
はグラウバー塩
グラウバー塩とよばれる無色の結晶。無水物はガラスの製造、乾燥
グラウバー塩
剤、十水和物は下剤にしたり、漢方薬などに配合される。また、温泉の
含有物質として代表的である。硫酸ナトリウムなど、アルカリ金属・ア
ルカリ土類金属の硫酸塩を含む温泉は総じて硫酸泉・硫酸塩泉と呼
ぶ。人体に対する安全性の高い物質の1つであり、家庭用の入浴剤の
主成分として炭酸水素ナトリウムとともに用いられている。これらの説
明書には「風呂釜を傷める硫黄分は含まれていない」という記述がな
されている。これは硫黄泉の成分を模した入浴剤(湯の花・ムトウ六一
〇ハップ™等)とは異なり単体硫黄を成分に含まない
単体硫黄を成分に含まないという意味であり、
単体硫黄を成分に含まない
硫酸ナトリウム自体は硫黄化合物の1つである。
酢酸鉛:甘味があり、歴史的に砂糖の代替物として用いられていた。古
酢酸鉛
代ローマにおいては、蜂蜜以外に手に入る甘味料は少なかったため、
完熟させたブドウの果汁(ムスト)を鉛でコーティングされた青銅器で煮
ることによって得られるサパ (sapa) と呼ばれるシロップが甘味料として
好んで作られていた。このシロップは殺菌効果もあったことから、当時ワ
インの甘み付けや果物の保存に一般的に使われていた。しかしこれに
は製造の過程で青銅器にコーティングされた酢酸鉛などの鉛化合物が、
加熱によって溶解される事に加えて焦げ付き防止のために掻き混ぜる
際擦れて溶け出し含まれてしまうため、大量の鉛が溶け出したシロップ
を添加したワインを好んで飲んだ者が鉛中毒となっていた可能性が否
定できず、多くの皇帝など古代ローマの記録に残る有名な人物の発狂
や死の原因ともなったと考える研究者がいる。作曲家ベートーヴェンが、
その晩年ほぼ耳が聴こえなくなった原因として、ベートーヴェンの毛髪か
ら通常の100倍近い大量の鉛が検出されたことから、近年の研究では鉛
中毒が有力説とされている。彼は生前年代を指定して飲むほどワインを
愛飲しており、当時のヨーロッパでは、ワインの醸造過程で甘味料として
酢酸鉛を含むサパなどの鉛化合物類が頻繁に加えられていた事から、
鉛入りのワインを大量摂取する形となり鉛中毒を引き起こしたとされる 。
リン(燐、phosphorus)白リン(黄リン)・赤リン・紫リン・黒リンなどの同
リン
素体が存在する。+III(例:六酸化四リンP4O6)、+IV(例:八酸化四リン
P4O8)、+V(例:五酸化二リンP2O5)などの酸化数をとる。白リン以外の
同素体は、安定でほぼ無毒である。
白リン 常温常圧で白色ロウ状の固体である。発火点は約60 ℃で些
細な事で自然発火するため、水中で保存する。空気中で室温でも徐
々に酸化され、熱および青白い光を発する。現在燐光は別の発光現
象の意味で用いられているがその語源でもある。ベンゼン、二硫化炭
素 (CS2) などの有機溶媒によく溶ける。強い毒性を持ち、にんにくの
ような臭いがある。1830年(天保元年)に、フランスのソーリアが黄燐
マッチを発明した。これは頭薬をどんなものにこすりつけても発火する
ため普及したが、その分自然発火が起こりやすく、また黄燐がもつ毒
性が問題となって、製造者の健康被害が社会問題化した。そのため、
19世紀後半に黄燐マッチは禁止されてゆき、1906年(明治39年)、スイ
スのベルンで黄燐の使用禁止に関する国際会議が開かれて、黄燐使
用禁止の条約が採択され、欧米各国は批准した。しかし、マッチが有
力輸出商品だった日本は加盟しなかった。後、赤燐を頭薬に使用し、
マッチ箱側面にヤスリ状の摩擦面をつけた赤燐マッチが登場。19世紀
半ばには側面に赤燐を使用し、発火部の頭薬に塩素酸カリウムを用
い、頭薬を側薬(横薬とも)にこすりつけないと発火しない安全マッチ
が登場した。
燃焼すると五酸化二リンが生成する。 4 P + 5 O2 → P4O10 白リンは
強塩基の水溶液と反応するとホスフィンを生成する。P4 + 4 OH- + 2
H2O → 2 HPO32- + 2 PH3。五酸化二リン
五酸化二リンはリンの酸化物である。組成
リン
式 P2O5 に由来する慣用名で呼ばれるが、分子の構造は十酸化四リ
十酸化四リ
五酸化リンとも呼ばれる。脱水剤、乾燥剤として利
ン (P4O10) である。五酸化リン
五酸化リン
用される。硫酸、硝酸を脱水することができ、それぞれから三酸化硫
黄、五酸化二窒素が得られる。有機化合物に対しては、例えばアミド
を脱水してニトリルを与える。ほか、脱水剤とし
ての用途は広く、電球製作時の脱水剤としても用
いられる。そのほか、医薬品や農薬の原料、試薬
としても利用される。強い脱水作用を有するため、
人体に対しては強酸や強アルカリ同様の腐食
性危険物であり、取り扱いには注意を要する。