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研究の背景及び目的
超高齢社会の到来に伴って色々な社会問題(医療、年金、介護・福祉等の負担増、雇用創出、労働力確保)が派生しており、
行政、地域、医療、介護、技術が一体となって取組む必要がある。このような時代背景の下で、宮崎県の地域特色を考慮した
高齢者のQOL(生活の質)向上と自立生活を支援するための見守りシステム構築に必要な要素技術開発を行う。
実施状況
転倒認識システムによって高齢者の転倒を即座に感知することができれば転倒による外傷に対して早急な処置を施
すことができる可能性が高くなる。これによって転倒後に高齢者が後遺症を患い健康で不自由の無い生活を奪われる
ことを抑制できる。このため、画像ベースでの、直立静止、歩く、かがむ、座る、横たわる、転倒等の基本的な姿勢・動
作について、検討を行った。まず、赤外線画像である距離画像を自動化したしきい値を用いて2値画像シルエットに変
換し、取り出したシルエット及びその時系列データから様々な特徴量を抽出した。その得られた特徴量を組み合わせて
生成した決定木によってシルエットの姿勢・動作を自動分類するアルゴリズムを作成した。また、基本的な姿勢・動作
の認識精度について評価実験を行って検討し、信頼性向上を図った。転倒の認識において有用性を示すことができた。
さらに、飲み物を飲む等のより複雑な姿勢・動作にも適用できるアルゴリズムを検討した。
ビデオ映像における人間の暴力行為を検知する能力は、リアルタイムでのセキュリティ監視システムや映像検索など
のアプリケーションにおいて重要な研究領域の一つである。このような行動解析として医療・福祉業界では在宅高齢介
護者の遠隔モニタリングなどに利用されている。監視者が24時間体制で多くの映像を見続けること、見分けることは多
大な負担であり、ほぼ不可能である。また、正確な検知や迅速な対応に関しても支障をきたすことが考えられる。この
ため、殴る、押す、蹴る等の暴力行為や握手、抱き締める等の非暴力行為の行動要素を定義し、喧嘩や介助等複数
人の相互作用を伴う動作の認識について、検討を行った。まず、動画像から人物のシルエットを時系列で切り出し、
得られたシルエットから形状や重心の移動と
いったパラメータを効果的に組み合わせるこ
とで、それぞれの行動に合わせた特徴解析
を行った。この特徴量を用いてこれらの行動
や姿勢を分類するアルゴリズムを提案した。
また、それぞれの姿勢・動作の認識精度に
ついて評価実験を行って検討し、有用性を
示すことができた。 開発システムの重要な
役割の一つに薬の誤服用防止がある。薬の
誤服用防止システムは介護現場でも要求の
強いものである。次年度に向けてビデオカメ
ラとRFIDの相補的利用による詳細行動の把
握のために、RFIDタグリーダーを用いた検討
を行った。
図1にマルチセンサ見守りシステムの概念
図を示す。
図1 マルチセンサ見守りシステムの概念図
目標の達成度及び成果
転倒を含む基本的な姿勢・動作の認識精度と信頼性を高
めるアルゴリズムを考案した。さらに、より複雑な姿勢・動
作にも適用し、喧嘩や介助等複数人の相互作用を伴う動
作を認識するアルゴリズムを考案した。
また、薬服用管理システムの要素技術として服用忘れ防
止と誤服用防止のためのアルゴリズム開発を行った。また、
監視カメラの映像から短時間背景差分を用いて薬を取り出
したかどうかを判定した。
今後の課題及び展開
行動のより詳細な意味理解のためのアルゴリズム開発を
目指す。例えば、ウェブカメラとRFIDタグ等のセンサとの併
用により、コーヒーを飲む、バナナを食べる、靴をはく、・・・
等のように詳細で具体的に行動の意味を理解することで、
異常事態の検知をより早く、正確に行える。また、食事をき
ちんとしているか、薬を飲んでいるか等、いわゆる異常事
態ではないが、いつもとは違う行動をしている意味での異
常も含めて見守ってくれるシステムの開発を目指す。
<問い合わせ先>
THI THI ZIN(ティティズイン)(工学教育研究部、准教授)
地域志向教育研究経費区分 Ⅲ.自由公募型
対象となる領域 C.地域志向社会貢献領域
みやだい COC 推進機構
住所:宮崎市学園木花台西1-1
Tel: 0985-58-7250
E-mail: [email protected]