成果 - 宮崎大学

研究の背景及び目的
近年、開発途上国の人口増加や畜産物や油脂類の消費拡大から、飼料となる穀物やダイズの需要が増加している。さ
らに、バイオ燃料の原料としての需要が増加したことからも、その国際価格は過去最高水準まで高騰している。一方、日
本では、国際価格の影響と2013-2014年の不作が重なり国内価格も大幅に高騰している。このような需給状況と国産ダイ
ズの重要性の高まりの中で、ダイズの安定供給を確保するためには国内生産性の向上が重要である。本研究は、本地
域におけるダイズ生産拡大と水田の有効利用を目的として、早期水稲後作を利用したダイズ生産による新規農業体系の
構築と特色ある農産物加工品の開発について検討するとともに、早期水稲後作水田における晩期ダイズ生産技術の開
発と普及を行うものである。 実施状況
n  晩期ダイズ栽培の概要
播種日は8月12日、出芽は4日後の8月16日で、開花は9月14日であった。栽培
期間中の気温は、8月から10月まで平年より低く推移したものの、11月以降は一
転して高く推移した。8月から10月までの降水量は8月下旬(台風到来)を除いて
平年に比べて低く、特に10月は極端に乾燥した。一方で11月中旬と12月上旬は
集中豪雨に見舞われ日照時間も短かった。収量自体は、昨年度と比べて約1.5
倍であったが集中豪雨のため品質が低下した。また、害虫防除にフェロモント
図1 平成27年度栽培状況を基にした宮崎県における
ラップを用いることで減農薬栽培が可能となり、高鍋農業高校では無農薬栽培が 晩期ダイズ栽培カレンダー(Ver.2)
可能であった。本結果をもとに晩期ダイズ栽培カレンダーVer.2を作成した(図1)。
n  ダイズ栽培および加工品(味噌)作成実習(高鍋農業高校)
宮崎県立高鍋農業高校フードビジネス科では、6次産業の一端を教
育するため、都城在来ダイズを用いた晩期ダイズ栽培から味噌加工
までの一連の実習を行った(図2)。実習時期の関係で播種日が遅れ
たため収量は低かったものの、味噌作成実習を実施できた。本取り
組みは実施校内の平成27年度プロジェクト研究発表会において最優
秀賞を獲得し、平成28年度宮崎県学校農業クラブ連盟大会プロジェ
クト発表部門において実施校を代表して発表することになった。
図2 宮崎県立高鍋農業高
校フードビジネス科におけ
る晩期ダイズ栽培と味噌加
工実習の様子
a:播種、b:栽培、c,d:収穫、
e:種子選別、f:味噌ラベル、
g-j:味噌加工実習の様子
n  ダイズ加工品の試食アンケート調査
都城在来を用いて豆乳※1、豆腐※1、豆乳アイス※2および冷や汁※3の試作と試食を行っ
た。試食アンケートの結果、豆乳、豆腐、および冷や汁は高い評価が得られたものの、豆
乳アイスは比較的低い評価であった(図3)。豆乳はダイズ特有の生臭さが無く、豆腐は甘
さが際立ち非常に美味であった。今後は、特に、豆乳アイスと冷や汁について更に試作を
重ね商品化を目指す。
※1:協和食品(小林市)と共同開発、※2:シーアンドジ宮崎(都城市)と共同開発、※3:株式
会社百姓隊(宮崎市)と共同開発
目標の達成度及び成果
平成27年度は概ね計画通りに実施し、成果が得られ
たと考える。新規農業体系の構築のための栽培カレン
ダーもブラッシュアップできた。また、高鍋農業高校(木
村教諭)が実施したダイズ栽培および加工品(味噌)作
成実習は高い成果が得られた。さらに、ダイズ加工食品
の試作においては、冷や汁と豆乳アイスの作成が着実
に進んでおり今後も進めていきたい。
図3 都城在来を用いた味噌加工食品
の試食アンケート結果
今後の課題及び展開
近隣地域である都城市内の数件の味噌加工メーカー
との情報交換では、宮崎県産ダイズを使用した味噌作
成に大変関心を持っている。今後はこのような会社やJA
および自治体等と、協議し収穫物の流通(販路)等を開
拓する必要がある。また、加工品メーカーは原材料の安
定供給と品質を重要視しており、生産量や品質の確保
が大きな課題である。 所属:宮崎大学農学部
氏名:明石 良
区分:地域課題解決型
課題地域:西都市
連携機関:宮崎県農政水産部、宮崎県総合農業試験場、西都市役所農政課、高鍋農業高校
<問い合わせ先>
みやだい COC 推進機構
住所:宮崎市学園木花台西1-1
Tel: 0985-58-7250
E-mail: [email protected]