成果 - 宮崎大学

研究の背景及び目的
西都市は,宮崎県内で最も早く昭和61年頃からマンゴー栽培の産地化に取り組み,現在の完熟マンゴーの生産方法を確立してきた.しかしな
がら,現在では冬季加温のための重油価格の高騰や,他産地でのマンゴー生産の増加により,マンゴーの収益性が低下している.このような
状況において,マンゴーに変わる新しい熱帯果樹生産のニーズが高まっている. そこで,既に西都市において既に数名の生産者が導入してい
るアボカドでは現状の問題点を明らかにし,新規有望果樹として有望なパッションフルーツについては最適な施肥量を明らかにするための調
査・研究を行なった.
実施状況
1.アボカド栽培の課題の洗い出しと課題解決の検討
2015年7月に,協力者の寺田氏と共にアボカド栽培を
H26より始めた西都市内の生産者圃場を訪問.
外部講師によるアボカドセミナー・技術講習会の開催
どのように整枝・剪
定を行えばよいか分
からない・・・
米本仁巳氏(日本熱帯果樹協会,常任理事)によるセミナーと技術講習会の様子
冬をどうやって越せばよい
か・・・被覆資材を使用して
みたが,穂木が枯れてしまっ
た・・・
宮崎大学での実験
遮光が低温障害を抑制するか?
2016年1月20日~3月16日までアボカド(品
種:ベーコン,台木:ズタノ実生)を栽培し,
冬季の生育を調査した.
90%遮光区
70%遮光区
対照区
苗木導入後の初期段階
での冬季の管理方法は
大きな課題
(不織布+遮光ネット2枚)
(不織布+遮光ネット1枚)
(不織布1枚)
結果
枯死した穂木(赤矢印).一部の樹では,台木
から新梢が発生していた(左写真).
2.パッションフルーツ栽培に向けた
施肥量の検討
パッションフルーツは西都市での栽培も可能と思われる.西都市
の土壌を使用し,最適な施肥量を調査した.
遮光区で
最低
−4.5℃
結果:Nを十分に施用し、SPAD値を50以上(本試験ではN量
50g以上)にすることで栄養生長・開花数・果実品質(糖酸比が
高い)ともに優れた.
表1 西都市の土を用いたパッションフルーツの鉢栽培における窒素施用量が栄養生
長・開花数および果実品質におよぼす影響
N施用量
(g)
0
6.3
12.5
25
50
75
100
つる長
果実重 果汁重
SPAD値
開花数
(cm)
(g)
(g)
25.2
39.1
39.9
45.9
53.9
54.1
51.4
24
120
125
147
154
118
120
1
1
2
3
5
5
5
35.8
60.0
87.0
88.7
85.6
81.3
11.7
27.3
39.0
44.2
37.7
38.2
Brix
15.1
13.2
15.7
15.7
15.7
15.7
滴定酸度
糖酸比
(%)
3.6
3.6
3.2
2.7
2.7
2.8
4.2
3.7
5.1
5.8
5.8
5.7
対照区
各処理区の植物の様子
目標の達成度及び成果
今回の連携によって,西都市におけるアボカド栽培の現状を把握するこ
とができ,また問題点についても明らかにすることができた.栽培の問題
点を明らかに出来たのみならず,低温対策については解決策を提案するこ
とができた.外部講師の講演会では,アボカドには国内に市場があること
や南九州は産地として有望であるといったことについて聞くことができ,
新規導入果樹としての可能性について改めて認識することができた.また,
技術指導も行なってもらい,今後のアボカド生産の成功に寄与するものと
考えている.パッションフルーツの試験に関しては,西都市の土を用いた
試験をおこない,SPAD値を目安とした適切な施肥N量に関する指標がで
きた.
宮崎大学農学部植物生産環境科学科
本勝千歳(代表)
宮崎大学地域資源創成学部
近藤友大(共同研究者)
地域志向教育研究経費区分:Ⅲ.地域課題解決
対象となる領域:地域志向研究領域
70%遮光区 90%遮光区
上段:1月26日
1月23日~25日の
大寒波にも耐えた!
下段:2月24日
低温障害は遮光によって軽減した
ただし、障害軽減の理由は遮光によるものか、対照区と遮光区の
気温の差かについては、さらに調査が必要である.
今後の課題及び展開
アボカド栽培においては,今回冬季管理方法について端緒となるデータ
が出ているものの,生産性・商品性を考慮したときに,露地栽培がいいか,
温室栽培がいいかについてはさらに検討が必要であると思われた.パッ
ションフルーツの試験においては,今年度の試験は鉢栽培で9月下旬以降に
おこなったものなので,今後地植えの植物を用いて夏季におこない,施肥
量に関してさらに検討する必要がある.また,宮崎県内には,西都市以外
でもアボカド栽培に興味を持つ人がおり,県内全域を対象とした取り組み
に発展させることができるかが今後検討すべき課題であると思われた.
<問い合わせ先>
みやだい COC 推進機構
住所:宮崎市学園木花台西1-1
Tel: 0985-58-7250
E-mail: [email protected]